モブ「そこのリコリス! 止まりなさい」
たきな「っ!」
千束「どうどう、たきな。いきなり丸腰の人に銃向けないのー」
たきな「私達の正体を知って声をかけてきたのですよ! 警戒すべきです」
千束「いやでも相手は丸腰だから。 それに失礼でしょー。すみませーん、お姉さん! 私達に何か用ですか?」
モブ「い、いきなり銃を向けるとは噂に違わぬ……。こほん。我々はあら^〜機関のものです」
たきな「! アラン機関! 千束に何の用です!」
千束「だから銃を向けるな! ごめんなさいお姉さん、吉さんの知り合いですか?」
モブ「いえ、我々はアラン機関ではなくあら^~機関です」
千束「……あらー機関?」
たきな「千束、誰であろうと我々の正体を知っていたのです。警戒を……」
千束「ちょーっと落ち着きなさいって。それで、そのあらー機関の方が何の用ですかね? どうしてリコリスのことを?」
モブ「我々は世界にあまねく点在している百合の素質を持つ女性の方々を支援する機関です。今回あなた方から百合の素質を見出したためこうして支援に伺ったのです」
千束「は?」
たきな「百合? なんですかそれ。私達に花を育てる素質があると? 千束、やっぱり怪しいですよこの人」
モブ「いえ、百合というのは花のことではなく、女性同士の恋愛のことです」
たきな「……? 女性同士? なんですかそれ。千束知ってますか?」
千束「う、うん、まあ百合の言葉の意味は分かるけど……」
モブ「とにかく! あなた方お二人は我々の調査により、百合の関係が成立すると考えられています!」
たきな「……千束、撃って良いですか」
千束「いや、だから待って待って! なんでそんなに好戦的なのよー」
たきな「こんな胡散臭い話に付き合う必要無いですよ。時間の無駄です」
千束「だからって一般人撃っちゃ駄目でしょーが。 あのーお姉さん。その調査ってどうやったんですか?」
モブ「あなた方のデータをあらゆる通信網から収集し、AIの分析にかけることで導き出したのです」
千束「む、無駄にハイテクだな。あの、お姉さん、リコリスのことは?」
モブ「ああ、収集した情報にリコリスでの活動記録もあったので」
千束「待って。それって機密情報駄々洩れしてない? ヤバいって」
たきな「千束、やはりただの一般人ではありません。捕縛して身柄を引き渡すべきです」
千束「流石にほっとけないかぁ。ごめんなさいお姉さん。 ちょっとじっとしてて」
モブ「へ?」
バチン!
千束「よーし、捕まえたー」
たきな「抵抗しないでくださいね」
モブ「な、これは一体……」
千束「あ、もしもし先生? ちょっと変な人捕まえて。なんか、あらー機関とか名乗ってて。いや、アラン機関じゃなくて、あらー機関。うん、うん、別に攻撃されたわけじゃないけど、私達の正体を知ってるみたいで」
たきな「動かないでくださいね」
モブ「くっ、私をどうする気? いやしかし、これもあら^~機関の本懐を遂げるため」
千束「よし、先生すぐ来てくれるみたいだからちょっと待ってようか。あーあせっっかく今日はたきなとお出かけだったのに」
たきな「まだまだ今日は時間ありますよ。水族館も閉館時間はまだ先ですし」
千束「……そうだね! おぉ、今日は新しいペンギンショーやるみたい! 楽しみだねー」
たきな「そうですね。楽しみです……動くな」
モブ「せめて機関に連絡を」
千束「あのーちょっとそれは待ってください。一応お姉さんの事情を確認してから」
モブ「いえ、デートに浮かれる二人、これは新鮮な百合データです。早急に送らなければ……」
たきな「千束、やっぱり撃って良いですか」
千束「ダメダメ駄目だって! あ、お姉さんその百合認定についてちょっと訊きたいんですけど」
たきな「千束! こんな胡散臭い情報を聞く必要ありませんよ!」
モブ「な、我々の情報は最新のAIを使った精度99.9999%を誇る……」
千束「へー本当ならすごーい。あのーそれってどんな基準で認定してるんですか?」
モブ「簡単です。恋愛的な好意を持っているかどうかです」
千束「ほぉー。……それって、二人ともですか?」
モブ「いえ、片方でも好意を持っていれば」
千束「……あーそうなんですねー」
たきな「……! そんなこと信じられません!」
モブ「ひっ! また銃を……。錦木さん! ちゃんと恋人の手綱握っていてください!」
千束「いやー恋人じゃあないんですけどねぇ」
モブ「それにですね、我らがあら^~機関の誇るAIの認定基準はそれだけではなくて……」
ミカ「千束! たきなちゃん!」
たきな「あ、店長! この人です! 早く連れて行ってください」
千束「あ、たきな待って、もうちょっとだけ話を……」
たきな「これ以上何を訊くんです!? どう考えてもただの詐欺ですよ!」
千束「いや、まあそうなんだけどね」
ミカ「一体何を話していたんだい? とにかくすぐに連れて行こう。リコリスの情報が洩れているのだとしたら、これは一大事だ」
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「……」「……」
千束「お、ほらこれ美味しそうなケーキだよ。良いねぇ日頃の疲れが癒されそう」
たきな「……ええ、そうですね」
「……」「……」
千束「いや、でもこっちの新作っていうのも気になる……。ねえ、たきなはこっち頼まない? 半分こしようぜ!」
たきな「……ええ、そうですね」
「……」「……」
千束「あ、あのさーたきな」
たきな「なんですか」
千束「さっきの話だけどぉ」
たきな「あんなの絶対嘘ですよ」
千束「あ、まあ……うん。そうだよねぇ」
たきな「……もしかして、私が千束のこと好きなんじゃないかとか思ってます?」
千束「へ。ああ、いや! それは」
たきな「絶対、違いますから」
千束「あ、あははー。そこまで言い切られるとそれはそれでちょっと寂しい……」
「……」「……」
千束「……それにしてもたきなー。百合を育てる素質は流石に無いんじゃないのー? ぷぷ」
たきな「な!? 仕方が無いでしょう。知らなかったんですから。大体、女性同士の恋愛ってなんですか。意味不明です」
千束「えー? でもでもほら、店長と吉さんのこともあるしー」
たきな「……すみません、取り乱しました」
千束「うん。いやーそれにしてもあれだよね。私達が育てるんなら百合よりヒガンバナの方が似合うよね、きっと」
たきな「……そうかもしれないですね」
「……」「……」
たきな「本当ですから」
千束「へ?」
たきな「私、千束のことなんて、本当になんとも思ってませんから」
千束「……そんな釘刺さなくてもだいじょーぶ。ほら、早く頼もう?」
たきな「……はい」
千束「ねえ、たきな」
たきな「……なんですか?」
千束「もし本当にそうだとしてもたきなのこと嫌いになったりしないから」
たきな「! し、しかし。いえ、私は本当に」
千束「むしろそうならもっと甘えても良いんだぞー?」
たきな「何を馬鹿なことを言ってるんですか」
千束「あた! こら何すんの!」
たきな「千束が揶揄うからです!」
千束「……冗談で言ってるわけでも無いんだけどね」
たきな「……」
千束「あのね、たきな。前にも言ったけれど私、たきなに会えたこと、すっごく嬉しく思ってるから」
たきな「……ありがとう……ございます」
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「くっ。○○○が捕まっただと」
「代わりの誰かを派遣しますか」
「当たり前だ! こんな逸材は他にはいない」
『井ノ上たきな 職業:リコリス 拠点:喫茶リコリコ 錦木千束への好意レベル:高』
「もう一人の最新データも私にも送ってくれ。再度確認したい。あと、相性データも頼む」
「承知しました」
『錦木千束 職業:リコリス 拠点:喫茶リコリコ 井ノ上たきなへの好意レベル:高』
『井上たきな-錦木千束 結ばれる確率:100%』
「……あの、1つお伺いしたいのですが」
「なんだ」
「この二人、支援の必要あるんでしょうか」
「……我々には、百合を見守る使命がある。例え支援を必要としなくても義務は果たさなければならん」
「……は! 承知しました!」
あら^~機関。それは高精度AIの計算により導き出された女性同士結ばれる確率が一定以上の組み合わせに支援をする組織。
しかしその実態は大半のケースでただの野次馬に等しいものであった。
終わり