たきなファンの方、申し訳ありません!
「クルミ!! 右は、任せた、左は私が!」
「ああ千束!」
「ママって呼んで!!」
ダダダダッッ!!
千束とクルミの持つサブマシンガンから放たれる銃弾。
それらは目に見えぬスピードで回転し、標的である迷彩服の男たちへと向かって行く。
「おうっ!?」
「ぐはあっ!!」
男たちは血飛沫を上げてバタバタと倒れていった。
それと同時に弾が切れた二人は、即座にリロードしつつ、前へと進んでいく。
「よーし、いい所まで来たよ!!」
「けど分かれ道だな…… どうする? 千束」
たどり着いた先には二つの鉄扉があった。
千束はうーんと目を閉じて思考する。
「右…… の裏をかいて左、の裏をかいた! と思ったらその裏で行こうとしてまた裏をかいて右、でも今日の朝の占いで運勢が最下位だったので、左だあァァァァ!!」
「何の理屈も通ってないぞ、千束!」
「ママと呼んで! お母たまでも可!」
千束は咆哮と共に銃を発砲。
バンッ!! と着弾音と火花を散らしたかと思うと鉄扉が手も触れずに開き出した。
「さあ、ラストスパートだ!」
扉の向こう。
そこには──
『爆発まで残り一秒』
「は?」
時限式爆弾が設置されていた。
ドカァァァァンンンン!!!
『コンティニュー? 10、9……』
爆発に巻き込まれた二人は即死── と共に機械的なアナウンスが流れ
「はああああ!? ちょっ! 爆弾とかアリ!?」
「あーあー……… だから慎重に選べと」
そして死んだ筈の千束は怒りで銃を振り回し、そんな様子を見たクルミは呆れて銃を下ろした。
銃を下ろしたクルミは小さくため息をはき、周囲を見回す。
「まったく。好きなゲームとはいえ、僕が外で遊ぶことになるとは…………」
周囲はぬいぐるみやお菓子、フィギュアが入れられた通称、クレーゲーム、既存のキャラクターやオリジナルキャラクターが画面に映り操作する通称、トレーディングカードアーケードゲーム。
他にも様々な種類の媒体が設置され電子音や人々の声で賑わっていた。
「しかもガンシューティング」
「ちょっと、店員さん! なんかこのゲームおかしくない!?」
「お客さーん、あんた出禁にするよ。そのゲームは大手会社SAGIの新作だよ? あのハダカデバネズミで有名な」
「SAGIってか、詐欺じゃ、ねーのよ!! どこのパチモン会社? ふざけんなぁぁ!!」
いつもの制服姿ではなく私服姿の千束は怒りのあまり、頭をかきむしった。
そう。彼女たちは戦場に立っていたのではなく、ゲーセンによく置いてあるガンシューティングの媒体前に立っていたのである。
クルミが喫茶リコリコに現れ、銀時の娘であるという衝撃的事実に揺れるも、千束は積極的に仲良くしようと奮闘していた。
千束は銀時とくるみの二人を半場強制的に店から連れ出し、街に出た。(有給も無理矢理とった)
そして行き着いた先がクルミが好きだというゲームがたくさんある、ゲームセンターだったわけである。
「こうなったら意地でも攻略してやるわ!! 銀さん! 千円あげるから両替してきて!」
「ほいほい、今から俺が銀のメダルに錬金術してきてやるよ」
千束が千円を渡したのは後ろで控えて二人のプレイを眺めていた銀時である。
銀時はパチンコ、ただしゲーセン仕様にメダルゲームへと変えられた媒体前に座った。
「それ錬金できてないから!! エドの銀時計のごとく丸い銀メダルに変わるだけだから!!」
「いや、ゲーセンのは銀ですらないだろ」
そうこうしている内にコンティニューの制限時間が終了し、千束は頭を抱えた。
「あー、もう終わっちゃったじゃん。しょうがない………… クルミ、お腹空いていない?」
「唐突だな。いや、空いてるけど」
「よし、じゃあご飯にしよう! 銀さん! くの一カフェに行くよ! クーポンあるから」
「ちょっ、待てよ。今確変来てっから。勝利の女神様がガンダーラから飛び出して来てるよ」
その後、銀時は襟首を掴まれ強制的に店から連れ出されるのであった。
『くの一カフェ』
くの一のコスプレをした店員たちが売りのファミリー向けカフェでは、
「そうなんだ…… そうだったんだ…… あなたたちそういう関係だったんだ…………」
「俺はストロベリーパフェでたのむわ」
「銀さん、この間糖尿病寸前だって、山岸先生に診断されてたでしょーが。このカボチャの煮付けにしときなさい。あ、私はDXチョコバナナパフェてお願いしまーす。クルミは?」
「おい、なんか勝手に一人で修羅場ってる、くの一メガネがいるんだが、放っといていいのか?」
そこでは銀時たちの知り合いである赤い眼鏡をかけた女性、猿飛あやめ通称、さっちゃんが店員として働いていた。
何も知らずに注文を聞きに来たさっちゃんは、銀時たちの家族団欒(偽)を見るなり固まり、ぶつぶつと呪詛の様に言葉を漏らしている。
原因である銀時と千束は一切気にしていないが。
「おいおい煮付けなんて食ってられっかよ。いいから俺にパッフェを…… いやまて。ケーキ、増量キャンペーンなんてあるのか!? まじかよ、知らなかったわ。悩むな」
「そう。私は何も知らなかった……… バカみたい。これじゃあ、私はまるでピエロよ!!」
「まーたそんなこと言って。増量とか絶対ダメだから!! 素直に言うこと聞く!」
「素直に!? 素直にですって……… ふざけないで!! こんな事実受け止めきれないわよ!! 私の気持ちをもてあそんでいた癖に!」
「おい、もう耐えられないんだが、この空気」
完全に無視を決め込んでいる二人に対し、さっちゃんに慣れていないクルミは顔を青ざめている。
「認めない……… こんなの認めないわよおォォォ!! 余所者の白髪娘が本妻顔してんじゃないわよ!! 死になさい、こらあァァァ!!」
鬼の形相でお盆を武器に千束へと飛びかかるさっちゃん!
しかしさっちゃんの飛びかかった先は千束ではなく、たまたま隣のテーブル席に座っていたゴリラだった。
「ええええ! なんでぇ!? ぎゃあああ!!!」
「おらあァァァァ!!」
悲鳴を上げるゴリラ、ざわめく店内。
しかし千束は涼しい顔で
「い、いつの間に…………」
「似非くの一の攻撃など当たらなければどうということはない、ってね」
さっちゃんが飛びかかる寸前、千束は持ち前の身体能力により、さっちゃんの眼鏡を見事に盗んでみせたのだった。
視力が悪いさっちゃんは誰を相手にしているのかも気づかずゴリラを襲い続ける。
そんな騒ぎはありつつも三人の街を巡る一日はまだまだ続くのである──
『玩具屋さん』では
「銀さん、久しぶりに来てくれたんだね! 待ってて、今、母ちゃんと月夜姉呼んでくるから! 『ウィーン、ウィーン』母ちゃーん!!」
「おい、あいつ清太って言ったか? なんか手に持った玩具から、モビルスーツみたいな音鳴らして店の奥に行ったけど。なんで玩具にモザイクかかってるんだ? なんで店全体がモザイクに覆われてるんだ? なんで客層オッサンばかりなんだ?」
「銀時、千束、久しぶりじゃな。む? どっかで見たような気だるい目をした娘……… ?」
玩具屋さんでは一悶着を起こし、
『スナック スマイル』では
「いや、家族連れで来るところじゃないよな、さっきから」
「あら銀さん、千束ちゃん。依頼していないのに来てくれるなんて珍し── どっかで見たような気だるい目をした女の子……… ?」
「あー、お妙さん。この子は銀さんの隠し子──」
キャバクラでは不貞を働いた銀時がボコボコにされるという事件が起こり、
『剣の道場 柳生陳陰流』では
「おー、銀時殿に千束殿! これはお久しゅう。マルチバースからの刺客、悪の柳生軍団との戦いではお世話になりました。若もお二人が来たと知れば、さぞやお喜びになりましょうぞ。来てください、若!!」
「おい、さらっと流したらダメな情報出てきたぞ。なんだそのマーベルな戦いは。お前らに何があったんだ」
「藪から棒になんだとうじょ…… 銀時に千束か! 久しぶりではないか。ダニーのことは…… すまなかった」
「ダニーに何があったんだ。ダニーって誰なんだ。本当に頼むから教えてくれ」
「おっと暗い話をしてすまない。そうだ、二人とも見てくれ。最近買い始めた、ペットの小猿、ビチクゾ丸を── どっかで見たような気だるい目をした娘……… ?」
「うきっ!」
ビチャッ!!
銀時の顔が、猿のウンコまみれになったという事件が起こり、
『公園』では
「あ、やあ、千束ちゃん…… 銀さん…… 丁度今、金が── どっかで見たような気だるい目をした娘……… ?」
「銀さん、次の行き先何処いく?」
「んー? そーだなー…………」
「僕はそろそろ疲れたぞ」
「あれ、また無視ィ!? つーか、この小説での俺の出番ってこんなんばっかなの!?」
グラサンは無視した。
こうして街を歩いて周り、疲労がたまってきた銀時たち三人は休憩をとるために適当なベンチに座った。
クルミが真ん中に、千束と銀時が左右に座る形である。
「千束ー、もう充分遊んだだろ? 僕も満足したし、早く帰ろう」
「なにー? クルミ、さてはあんまり外で遊んだことないな?
肌も白くて綺麗だし、このこの」
「や、やめろ」
疲れきり、ぐったりと隣で座り込むクルミの頬を千束は指でムニムニとつつく。
「なんだお前引きこもりだったのか?」
「別に引きこもりじゃない。外に出る必要性がないから家にこもってただけだ」
「それを引きこもりと言うんだよ、ガキンチョ」
呆れた銀時は鼻をほじくり、クルミの頬につけようとする。
「本気で止めろ!」
「そっか、クルミは家で遊ぶ方が好きかぁー。ま、リコリコとは相性いいかもね。お客さんと一緒にボードゲームとか、たまにテレビゲームとかもするし」
「客相手に? どんな喫茶店だよ…………」
「そーいう喫茶店です。さて、と!」
千束はベンチから降り、クルミへと顔を向ける。
「そろそろ帰る──」
「おっ」
「前に!」
「ぐっ、まだなんかあるのか?」
やっと帰れると思ったクルミはがっくりと項垂れた。
「帰る前のお買い物。クルミに必要な物はリコリコの押し入れから大体出したけど、まだ足りない物があるからね~」
千束はニヤリと不適な笑みを浮かべて見せた。
「ここは……… 携帯ショップ?」
そこはアーケード型の商店街にある携帯電話専門店。
その店前に立ったクルミは何故と疑問符を浮かべた。
「そ。クルミ、スマホどころかガラケーも持ってないんでしょ?」
「………… ま、まあ。そうだけど」
「何かあった時、直ぐに連絡がとれればこっちも安心できるし、クルミの携帯も必要だなって。ね、銀さん」
「ん? ああ」
話をふられた銀時は特に興味がなさそうにしながらも否定はせず、適当に相づちをうった。
「というわけで、早速行くよ! たのも~!!」
「お、おい!」
「いらっしゃいませ~」
少し困惑気味のクルミではあったが、千束に連れられ、携帯ショップへと入店した。
店員から出迎えられた三人は取り敢えず、並べられた見本の携帯を見てまわる。
「色々あるけど、クルミはなにがいい?」
「いや、別に何でも── あ」
「ん?」
どうでも良さそうな反応を見せるクルミだったが、携帯アクセサリーコーナーを見ると何故か固まってしまう。
その様子に気づいた銀時がクルミの視線の先を見ると、そこには二頭身位のリスのキーホルダーがあった。
「なんだお前? 携帯よりもキーホルダーが欲しいのか?」
「へー、クルミはリスが好きなんだ。よく考えたら着てるパーカーもリスの絵が描いてるし」
「っ! そ、そんなんじゃない! ちょっと目に入っただけだ」
気恥ずかしそうに否定するクルミ。
思ってもみないクルミの反応に可愛いと思った千束はニヤニヤと笑ってしまう。
そんな家族(偽)の団欒がなされている中、空気を読まずに割り込んでくる者が一人。
「おやおやそこのお母さん、お父さん。ひょっとしてキッズキーホルダーをお探しで?」
店員である。
牛乳瓶の底のようなグルグル眼鏡をかけた老人は銀時の肩にポンと手をかけ、ニヤリと笑う。
「キッズキーホルダーってなんだよ。聞いたことねーよ。キッズ携帯じゃなくて?」
「そのキーホルダーに目をつけるとはお嬢さん、お目がお高い。それは曰くつきでしてねぇ」
店員の眼鏡がキラリと光った。
「それはかの二宮金次郎が奉公に出た際、薪にぶら下げていたキーホルダーの制作会社の息子の友達の隣の家に住んでるオッサンの知り合いのオッサンが乳首につけていたキーホルダーなんだよ」
「果てしなくどうでもいいキーホルダーだろうがあァァ!! 二宮金次郎が高校生気分でいんじゃねーよ!! つーかなんで最終的にオッサンの乳首にキーホルダーつけられてんの!? あー、もういい! 取り敢えずは中古品ってことだろ? じゃあそこの通話機能だけのキッズケータイもダダでつけろ、買うから」
「ああ待って! そのキッズケータイは曰くつきでね──」
激しくツッコミを入れつつ、店員に無茶振りをする銀時。
店員は何やらキッズケータイの曰くについても語りだしたが、無視して二つとも購入するのだった。
その日の夜。
クルミは誰の家て過ごすのか。
千束の家か、銀時の家か。
話し合ったのだが結局、二人の家ではなく、取り敢えずはであるが、喫茶リコリコの空き部屋に住むことになった。
大人として、しっかりしているミカにリコリコで見守ってもらった方がいいと判断した結果である。
「はあー、やっと落ち着けた…………」
クルミはリコリコの空き部屋の押し入れの中に椅子や布団を用意して過ごしていた。
それはその方が落ち着くからという本人の希望によるものである。
「まったく千束の奴め。妙に張り切ってくれるよ。銀………… いや、パパか。あいつもよく付き合ってくれるよ」
クルミは購入してもらったキーホルダーを見る。
「本当………… 気が滅入る位、良く付き合ってくれるよ」
クルミは一人で、何処か苦しそうな、誰にも聞こえない位のか細い声を漏らした。