カガヤクンデス・マーチ!   作:Naoh_Seiju

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※:この作品の設定は私の想像の産物です。
  公式設定と齟齬があった場合は、生暖かくスルーして下さい。
4号と8号が、試作型のイクラキャノンのテストをさせられるお話です。
前々作、前作に出て来たゴローとサキも居るのでオリ主タグを付けてあります。
とりあえず今回で、一度お話を区切る事になると思います。
ありがとうございました。


カガヤクンデス・マーチ! 3

ドゴオォォォン!!!

 

ハイカラスクエアの西、ハイカラ湾に面した港から爆発音が響いた。

ただ、かなりの規模の爆発事故にしては…あまり騒ぎ立てられなかった。

そこに居たのは、クマサン商会の息の掛かったスタッフのみだからだ…。

 

 

『ここ最近はずっと無事故で、私も油断していた様だ。スタッフに厳重注意を徹底させる事』

クマサンは事故報告書を確認した後、現場に注意を促した。

『金イクラは高エネルギー物質、扱いにも注意しないとね…』

…ふと出た自分の発言を反芻する。

 

「金イクラは高エネルギー物質」

 

『ふむ…あまりにも身近過ぎて、思い付かなかったねぇ』

先日の調査中に遭遇した超大型シャケ…暫定名「オカシラシャケ」

アレに対抗する手段を検討はしていたものの、全く進捗が進まない状況に…光が差したのかもしれない。

クマサンブキの様に金イクラを「エネルギー源として」使っていては限界がある。

だが…金イクラ自らを「火力の高い爆弾として」運用すれば…

『貴重なエネルギーだから躊躇いもするが、時には手段を選んでいられない事もあるから…ね』

それに、もしもオカシラシャケから得る物が大きいのならば…一時的な投資で済むとも言える。

 

『研究班に…金イクラを弾丸として撃ち出す、対オカシラシャケ用のブキの試作を要請したまえ』

 

 

 

 

「…んぁ?」

朝が来た。

目覚ましを見る…設定時刻の5分前、いつもの通り。

目覚ましのアラームを切ってベッドから起き上がり、洗面所へ向かう。

顔を洗い口を濯ぐ頃には、目覚ましが鳴る。

 

PiPiPiPiPi…

 

鳴っているのはあたしのではなく、4号の目覚まし。

当分起きないだろうから、目覚ましの音を聞きながら朝食の支度をする事になるだろう。

何時もの事だ。

「あー!うるせー!!」

 

ガチャ

 

あら…今日は目覚めのいい事。

「ふあぁぁあ…うーす」

「…おはよ。ご飯、もう少し待って」

「あんがと」

 

 

二人で朝食を取りながら今日の予定の話をする。

「ハチ、今日ってまた狩場調査の日だっけ?」

「…そう。今回は二人だって」

「マジかよ…あのデカブツ出て来たらどうすんだよ」

今迄何度かハイカラ湾西側の調査を行ったけど…初回以降、超大型のシャケとは遭遇していない。

クマサンが言うには、バンカラ湾に近付き過ぎなければ大丈夫…との事だけど。

「…二人なら逃げるにしても身軽」

「クマサンの旦那が撤退させてくれりゃあ、だけどな…」

「…自分の命が最優先」

「まー通常海域でのバイトみたいに、回収班が来てくれる保証はねーしなぁ」

改めて、何故こんな危なっかしい仕事をバイト待遇でやっているのか…疑問。

お世話になってる4号が行くと言うなら…付いて行くしかないんだけど。

「…クマサンの手伝いをするのは、あたしが止めても聞かないから諦めた。でも…命は大事にしてね」

「まぁそこは…俺も死にたかねーしなぁ…さて、んじゃ行きますか!」

「…うん」

 

 

クマサン商会の小型艇で未調査の探索へ向かう。

位置はヨコスカ半島ハイカラ湾側の小島。

それ程大きくなく、シャケもほぼ見かけない。

狩場としては条件があまり良くないと判断して、軽い調査に留める事になった。

「今回はホントに見学だな。 …その割には物騒なモン持たされたけど」

「…緊急信号発信機、『手に負えない』って判断する前に通報しないと間に合わない…よね」

「使わなくていい事を祈るか…あー普通にバイトしてぇ!平和なバイトが懐かしい…」

…たつじん最高LVのバイトは、平和じゃないと思う。

 

 

「さて、調査はこの辺りで切り上げるか」

「…うん」

小型艇に乗り込もうとしたその時…海岸からオオモノシャケが姿を現す。

「およ?何だ、シャケ居たのか。じゃあ手ぶらってのもアレだし…狩っとくか」

「…待って!反対側からも…!」

逆側の河岸からもオオモノシャケが上陸し始めている。

「おいおい急に賑やかに…はぁ!?」

どうやらオオモノシャケ達が偶然集まっていたわけでは…なさそうだ。

オオモノシャケ達の群れの奥に、もう見たくなかった巨大な影が見える。

あたしは躊躇せず、緊急信号を送った。

ただ…間に合うかどうかは……分からない。

 

 

 

 

「はぁ~今日もバイトご苦労さんっとくらぁ!」

「今日のバイトは順調だったナ」

ニヤニヤしながら掌を掲げるサキに、同じく掌を重ねる。

ハイタッチと言うらしいが…どうにも慣れないな。

「どうするゴロー?何か食ってく?」

「そうだナ…」

作業着から着替えようとする私とサキだったが、すっかり馴染みとなった声に呼び止められる。

『君達、バイトを終えたところ申し訳ないのだが…一つ頼まれてくれないかね?』

「何スか、クマサン?」

『平たく言うと4号と8号が危険に晒されている。救助に向かって欲しい』

「…何だト!?」

「一大事じゃないスか!…でもあの強いお二人がピンチってどういう事っスか?」

『例の超大型のシャケ…「オカシラシャケ」が現れた様だ』

最初に出会った『オカシラシャケ』とやらを思い出す…強いなんて物ではなかった。

「我々が救助に出て、どうにかなる相手では無いと思うガ…?」

『対策はある。後は…その「対策」を運用する人材が必要なのだよ』

どちらにせよ…考える時間すら惜しい。

「…了解しタ。直ちに向かうから、道中で『対策』とやらの説明を求ム」

「俺も行くぞ!前よりずっと強くなった…ハズだ!」

『頼むよ、君達。 …小型艇では間に合わない。ヘリを用意しよう』

 

 

バラバラバラバラバラ…

 

「すんゲー!こんなでっかいのが空飛んでる!」

ヘリの内部には、降下兵用の椅子とブキラックが四つ据え付けてあった。

後…見た事もないバックパックの様な物が、二つ。

『…気になるかね?それが「対策」…試作型イクラキャノンだ。現場に出せるのは二つだけだが…十分だろう』

「…イクラキャノン?」

如何にも試作品と言った、配線剥き出しのバックパックを見る。

『こいつに金イクラを装填、射出してシャケにぶつける事で大ダメージを与える』

「金イクラをぶつけちゃうんスか!?」

『背に腹は代えられないからね…特に、大事な従業員の命には、ね』

白々しい台詞はともかく、これは恐ろしいシロモノではないだろうか?

私が所属していた軍はシャケと取引しているので、話には聞いた事がある。

金イクラと言えばかなり高レベルのエネルギー物質のハズだ。

それを直接ぶつけるとなると…。

「これは私やサキではなく、バイトリーダーやハチが扱うべきだろウ…」

誤射は致命的な事になりかねない。

なにより、金イクラが弾丸と言う事は…弾数も限られる。

練度の高い、バイトリーダーとハチが適任だろう

「私とサキでオオモノシャケを狩る。金イクラを二人に渡して射出して貰ウ…コレがベストだナ」

「りょーかい!」

『現場での対応は君達に一任するよ…検討を祈る』

このイクラキャノンとやらの火力を信じるしかないな…。

「今回はオカシラシャケをブキで直接撃つ必要は無イ。前衛は護身用のクマブラ、後衛はクマチャー。これを二組、ダ」

「じゃあ俺とハチさんがクマチャーだな?」

「ああ。サキはハチにイクラキャノンとクマチャーを渡してくレ。二人でサポートを頼ム」

「俺に任せとけって!…くぅ~!俺もこんな事言える様になったんだなぁ…」

「サキ、お前はあれから強くなっタ。大丈夫ダ」

「おぉよ!」

 

 

 

 

「4号!伏せて!」

4号が咄嗟に伏せ、射線が開いた。

ドスコイ二匹を貫通、4号の前面の脅威をとりあえず排除する。

…とりあえず、だ。

後…どれだけ持ち堪えられるのだろう?

「ハチ、高台の上から見てどんな感じだ?少しはシャケの数…減ったか?」

「…倒しても倒しても湧いて来る」

何故か、超大型のシャケは前に出て来ない。

ただ…二人でこの数のオオモノシャケを相手にするのは、流石に無理がある。

「…死んだら恨むからね、クマサン」

「それなら…恨まなくても済みそうだぞ!何か飛んで来た!」

 

バラバラバラバラバラ…

 

「回収準備よし!…つーかこのまま二人を回収して逃げた方がよくね?」

「クマサンがここまで色々貸し出しているのダ。手ぶらで帰って…納得すると思うカ?」

「…ねーな」

「ビーコン発動!サキ、マイクを使エ!」

 

『あーあー…テステス。4号さん!ハチさん!ビーコンに向かって跳んで下さい!』

 

「…ビーコン?」

あたしは、静かに目を閉じる。

確かに、あの空飛ぶ機械の中に…微弱な電波を感じる。

…あそこまでなら、跳べる。

「…一度退くよ!4号!」

「おう!」

あたしと4号がインクの弾丸となり、ヘリへと跳ぶ。

 

 

「…掻い摘んで言うとそういう事ダ。二人にはイクラキャノンの射手を願いたイ。弾丸は我々が用意すル」

「何とまぁ…クマサンの旦那も大胆だねぇ。『オカシラシャケ』に『試作型イクラキャノン』…か」

「…金イクラを三発まで詰め込んで射出出来るって…大丈夫なの?」

配線剝き出しのバックパックからは、不吉な予感しかしない。

「言いたい事は重々承知ダ。だがコレが無いと勝負にもならン…バイトリーダー、クマブラとイクラキャノンダ」

「サンキュ。まぁここまでクマサンの旦那にアシだのモノだの用意されたら…タダじゃ帰れないわなぁ」

「…こうなったのはクマサンのせいなんだけど?」

言っても無駄な愚痴だと分かってはいるけど…愚痴りたくもなる。

「んじゃ二人は、オオモノシャケを倒しまくって金イクラの回収を頼む!」

「うっス!もう足手纏いじゃないっスよ!」

「イクラキャノンのメイン射手は俺がやる、余裕があればハチも撃ってくれ」

「…了解」

とりあえず回収班は来てくれたんだし、全滅は無い…と思う。

やれるだけ…やろう。

 

 

「バイトリーダー、金イクラダ」

「おぅ! …へへ、じゃあ試し撃ちと行くか!」

 

ドォン!

 

後方で眺めていたオカシラシャケに金イクラが直撃する。

成程、確かに凄い威力だ。

 

ガオオオォォォン!!

 

不意打ちに激昂したオカシラシャケが、腹を揺すりながら突進して来た。

「俺はアイツの注意を引きながら動き回る。キャノンを食らってアイツが怯んだ隙に金イクラを渡してくれ」

「了解ダ」

「…サキ、貴方はゴローに気を取られたオオモノシャケを撃ち抜いて。金イクラは4号優先に回して」

「うっス!」

つい最近まで素人だった二人が…思った以上に頼りになってる。

これなら何とか、大丈夫…かも。

 

 

「よし!もう一息だ!食らえ!イクラキャノン!」

…これで致命傷、かな。

と思った、その時。

 

カッ!……ドゴオォォォン!!!

 

「…え?」

4号の試作型イクラキャノンが…吹っ飛んだ。

「…4号!?」

ぷかりと浮き輪が浮かぶ。

「4号さん!今蘇生させるっス!」

サキの狙撃によって4号は蘇生した…けど…

「うは…死ぬかと思ったぜ。しかし…ブッ壊しちまったな」

「…それは壊したんじゃなくて壊れたの!」

しかし…そうなると悩ましい。

オカシラシャケはあと少しで倒せるとは言え、それはイクラキャノンあればこそ。

そのイクラキャノンは、あたしの背中の一つ…だけ。

次に撃つ一発で暴発したら…オカシラシャケを倒す手段は無い。

「頼むぜハチ!」

…気軽に言ってくれるなあ。

とにかく、一回なら撃てる…と信じよう!

 

 

「…4号!ゴロー!どうにかオカシラシャケに口を開けさせて!その中に撃ち込むから!」

「かなりの無茶振りが来たゾ、バイトリーダー」

「…普段は堅実なんだけどなぁ、ハチ」

二人は肩を竦めると、クマブラでオカシラシャケの目を撃ち続ける。

 

ドパパパパパパパ!!

 

ダメージはあまり通っていないが、視界を塞がれ続けて気が立ったのであろう。

 

ガオオオォォォン!!

 

堪らず咆哮を上げる…今!

どうせ壊れるなら…その前に全部、撃つ!

 

ドォン!ドォン!ドォン!

 

弾倉に残っていた金イクラを、オカシラシャケの口内に三連射する。

 

ガアァァ………

 

オカシラシャケの動きが、止まった。

 

ドォオオオン!!!

 

断末魔を上げ切る前に、オカシラシャケは前のめりに地面に突っ伏した。

「…倒した……きゃあ!!」

 

ボンッ!!

 

あたしのイクラキャノンも火花を吹いて爆発した。

…やっぱりクマサンは、信用出来ない。

 

 

満身創痍のあたし達を乗せて、ヘリが凱旋する。

途中ですれ違ったヘリは…オカシラシャケの死骸の回収ヘリだろうか?

「ようやくリベンジ出来たぜ!やっぱ負けっぱなしだとモヤモヤしていけねぇや!」

「俺もっス!ざまぁ見ろっスよ!!」

相変わらずインクリング達は騒がしい…。

『お疲れ様。皆のお陰で実に実りのある調査となった。礼を言わせてくれたまえ』

「まぁ俺にかかればこんなモンだって!」

…頭が痛い。

「クマサン、あの機構で装弾数を増やすと暴発の危険性が高くなル。単装式にするべきと進言すル」

『成程、研究班に伝えておこう。現場の感想は貴重だからね』

「…ちなみに、今後もアレを使わなければいけないの?」

『アレ…イクラキャノンかね?安心したまえ。アレはバンカラ地方の支店での運用がメインになるだろう」

「…あんなのを背負わされるなんて、バンカラ地方のバイトは可哀想」

「バンカラ地方かぁ…俺もバイトしに行きてぇ~!」

…このバイトジャンキーめ。

『とにかく…この試作機の運用データが、バンカラ地方の多くのバイト達の役に立つだろう。本当に感謝するよ』

しかし…今回の件で改めて思い知った。

あたし達は、何て恐ろしい物を…集めさせられていたんだろう?

クマサンはあんなモノを何に使うんだろう?

…多分深入りしない方が、いい気がする。

もう面倒事は勘弁して欲しい…音楽に包まれて安らかに生きていたい。

 

 

 

 

『ふむ…イクラキャノンを用いれば、最終的には金イクラの回収効率が上がりそうだ。大変結構』

収支予想報告を確認して、独り満足気に頷く。

『計画の成就は近い…』

 

ホントウニ…ソレデイイノダロウカ…

 

ダガ…イマサラ……ドウシロト?

 

『さて、今日も一日…頑張って働いてくれたまえ。諸君』

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