曇らせ愉悦部VS曇らせ許さないマン   作:コ↑コ↓ナッツ

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猫の亜人は曇らせたい

 

大学2年生の一人暮らし

俺は流行り病にかかり病院に行ったが病室は空いてなく代わりに勧められたホテルに行かず自宅療養していた

 

 

ピピピ...ピピ

 

『40.2℃』

 

「熱が下がらん...」

 

ホテルに居るべきだったと後悔したが今更仕方ない

あまりのキツさに水分も取らず朦朧した頭で横になって過ごした

 

 

 

______ここは?

 

 

何も無い白い空間

目の前にポツンと玉が浮いている

 

「あー君ね、死んじゃったんだけど覚えてる?」

 

白い玉から聞こえる性別不明の声

 

「夢だよな...」

 

「夢じゃないんだよなぁ、案外死ぬ時はあっさりよ」

 

さっきから聞いてれば人事のように話す玉に苛立ちを覚えてきたが

この玉野郎は物語でよくある神様だの女神だのだと予測した

 

「それで俺はどうなるんだ?」

 

「選択肢は2つ、このまま輪廻の輪に還るか私の願いを訊いてくれるか」

 

「輪廻の輪...?」

 

「輪廻転生、人が死んだら次は鳥とかに生まれ変わるサイクルの事」

 

「俺の自我は」

 

「勿論ないよ、綺麗サッパリ忘れて来世にGOだね」

 

全て忘れるというのは恐怖心を感じる

 

「あんたの願いは何だ?」

 

白い玉はドレスを着た美しい女性へと姿を変えた

 

「ふーん、君は私の事女神か何かだと思ってる?」

 

「違うのか?こんな事できるのは神様だろ?」

 

女神はニコニコとした顔で近づき俺の鼻を突いた

 

「君の人生は全て覗かせてもらったよ、人柄、道徳心、社交性、正義感どれも面白い」

 

「は?」

 

「違う世界、君の知識でいう異世界転生して貰おうかと」

 

異世界転生

流行りに流行り、もはや使い潰されたその設定は今もラノベやアニメで一定の人気を博している

俺も嗜む程度にはアニメを観ていた為知っていた

 

「何の為に、まさか勇者になって魔王を倒せとか...」

 

女神はププっと吹き出して小馬鹿にしたように肩を叩いてくる

 

「違う違う、私は無害な邪悪が一番嫌いでね」

 

「無害な邪悪?」

 

「そう、例えば傷ついている女の子が倒れていたら助けるでしょ」

 

「まぁ...助けるな」

 

「その女の子の身体の怪我は治っても心の傷は治らずトラウマを患っている」

 

「可哀想だな...」

 

「そして君が車で轢かれそうになった所を庇って女の子は更に傷つく」

 

「...」

 

心が痛くなるようなただの不幸話

この女神は何が言いたいんだ...

 

「だけどそれは作られた悲劇、女の子は心の中では悲しんでいる君を見てほくそ笑んでいる」

 

「どういう事だ?」

 

「心配されたい、周りの気持ちを曇らせたい、そんな自己中心的な欲望の為に自分が死んでもいいと思っているしそう企てている」

 

「なんだそいつ」

 

人の親切や心配を駆り立てておいて

その状況を愉しむ?

そんな奴が本当にいるのか?

 

「そういった奴らを私は成敗したくてね君の力を貸してほしいんだけど」

 

「力も何も俺は何も...」

 

「大丈夫、その辺は転生したら丸っと分かる様にしてるから」

 

転生か、まさか当事者になるとは

 

「その曇らせを企てている奴らを阻止すればいいんだな?」

 

「そういう事、あ!じゃあ見た目とか種族はどうする?」

 

「勿論俺はこのままでいい」

 

女神はまたも吹き出し背中を叩いてきた

 

「OK OKじゃあ後は頼んだよー」

 

 

__

 

 

むくり。。。

 

知らない街の中でポツンと俺は立っていた

頭や思考はスッキリとしている

 

ふと近くにあるガラスを覗くと眼鏡を掛け

痩せこけた頬、撫で肩に身長168センチと

紛れもない俺がいた

 

【転生して美男美女になる?】

 

親から産んでもらった大切な顔や体を違う物にしたらそれはもう俺が俺ではなくなってしまう

 

「この街に1人いるな」

 

女神から貰った能力でTS転生者の居場所を察知した

 

______

 

 

「鈴木正隆 すずき まさたか」

 

_スキル一覧_

 

言語習得

TS転生者感知

転生特典無効

神託

 

__

 

 

ベッドで普通に寝て起きたら

赤ちゃんの亜人になっていた

それも成長すると自分でも唸るほどの美少女に

前世は男だったのになぁ...

 

そして僕は転生者だからなのか亜人の苦手とする

魔法の才能もあって村のみんなからチヤホヤされていた

 

 

__つまんないの__

 

 

争いも何も無い平和な日常

魔法も最初は楽しかったが次第に飽きていき

ゲームや動画サイトなどの娯楽で溢れていた現代社会を生きてきた僕にとって苦痛でしかない毎日を送っていた

 

そして僕はどんどん歪んでいき普通の遊びでは愉しめない身体になっていった

 

 

「オラっ!!さっさと出やがれ奴隷共!!」

 

僕は手足に付いた枷を引きずりながら道を歩く

 

あぁ...美少女の僕がこんな汚い奴らに酷い事されちゃうよ?

 

誰か僕を助けないの?

 

一生尽くしてあげるから

 

曇り顔を頂戴

 

 

__

 

 

女冒険者のセラフィ・アルトールは奴隷商会に顔を出していた

 

(男の奴隷は論外ね、また夜襲われたら怖いし、女の奴隷も体力的について来れないだろうから難しいわね)

 

 

「お客様ですね、私はここ奴隷商の主人ペリドットと申します」

 

店の奥から怪しい黒い丸眼鏡を掛けた

スーツ姿の背の低い主人が出てくる

 

「えっと、Bランク依頼にもついて来れる体力のある女性奴隷はいるかしら?」

 

「ふむ困りましたね、Bランク依頼となると男性奴隷でも一握りしかおりません」

 

「そうですか...」

 

3メートルを超える大トカゲや巨大な蜘蛛を狩るBランク依頼はベテラン冒険者でも気が抜けない程である

 

自分の見通しも甘かったがダメ元で来た分落胆は少ない

 

「そういえば...1人条件に当てはまる奴隷がいますがご覧になります?」

 

「本当ですか!?」

 

 

そして案内された檻の中にはまだ子供の亜人が蹲っていた

 

「子供に見えますが亜人の年齢だともう直ぐ成人です、身体能力もBランク冒険者の荷物持ち程度なら問題ありません」

 

私は檻の中にいる黒髪ショートの亜人に声をかけてみる

 

「聴こえてるかな?私は冒険者なんだけど素材を剥いだり、拾ったり手伝ってくれる?」

 

「お姉ちゃん...?」

 

檻の中の亜人が顔を向けると精巧な人形のような可愛らしい顔をしていた

 

「おぉ!!どうして喋れるのですかぁ!!」

 

主人は興奮しているのかハンカチで額の汗を拭いている

 

「え?この子は喋れなかったんですか?」

 

「ここに来てから3ヶ月一言も喋りませんでした」

 

「またどうして...」

 

「よくある話ですよ、顔が良かった為に業者からオモチャにされ心が壊れたらポイですな」

 

「そうですか...」

 

私を呼んでくれたのもあるが

曇った目をしたこの子をこのまま放っておけない

それに打算ではあるが亜人は人間より体が丈夫な分この先の冒険にもついて来れる

 

 

「この子買います」

 

 

この子は名前が無くメルと名付けた

それから沢山の事があった

 

メルは男性を極度に怖がったり

私をモンスターの攻撃から守る為に何度も身を挺してボロボロになったり

 

だけどその分絆は深まり

今ではかけがえのない家族だと想ってる

 

 

__

 

 

背丈の高い赤髪の女性と

短い黒髪と尻尾を揺らす猫の亜人

 

 

「あ...」

 

ビクッ...

 

「メル大丈夫?私が居るから大丈夫だよ?」

 

セラフィはギュッと僕の手を握って自然と通りかかった男の人の壁になってくれる

 

 

あぁ〜たまらねぇぜ^^

 

セラフィの曇った顔でご飯が無限に食えますわ

 

セラフィは僕が過去に沢山の男共から乱暴された過去があると知っているが実は違う

 

黒魔法で出来た幻影の僕に盗賊達は空虚に腰をヘコり散らかしていて

 

僕はゲラゲラと笑っていた

 

だけどこうして男性恐怖症を演じつつセラフィだけには心を許してますアピールで得られる成分はその内癌にも効くようになるはず

 

 

「お前が曇らせTS転生者だな」

 

え?...いつの間に僕の目の前に?

 

 

__

 

 

「メル後ろに!!何ですかアナタ!!」

 

気配も無く近づいていた眼鏡を掛けた覇気が無くパッとしない男

 

男性が近づくとメルが怖がってしまう

 

「他をあたってくださいこの子が怖がってしまうので」

 

震えているメルの手を強く握りしめる

 

「その亜人に用がある」

 

メルに用事?

まさかメルが魔法を使える事を知っている?

 

「これ以上話す事はありません、それとも痛い目に遭いますか?」

 

私は剣の柄を握り威嚇するが...

 

 

【日本語だと分かるよな?】

 

 

異国の言葉?この男、一体何者...

 

 

【転生者が僕以外にも居たなんて!】

 

!?

 

後ろで震えていた筈のメルは私の前に出て

異国の言葉を話し始めた

 

 

【お前から特有の邪気が漂ってる】

 

【邪気?】

 

【お前そこの飼い主を誑かしてるだろ】

 

「ちょっとメル〜?急にどうしたのかなぁ?」

 

【誑かす?僕はセラフィを守ってるだけだよ】

 

【その被害者ヅラした演技を止めろ】

 

【ふーん...何で知っているかは知らないけどアンタには関係ないでしょ】

 

「メ...メルちゃ〜ん?何をこの人と話しているのかなぁ?」

 

【真実をこの女に話す、その程度でお前達の絆が壊れる事は無い】

 

【やめろぉ!!曇らせ愉悦を僕から奪うなぁ!!】

 

「メルッ!?」

 

突如発狂したメルが男に手をかざし

 

 

初級雷呪文(ライトニング)

を手から放つと

 

耳鳴りのような甲高い音と一緒に鋭い雷が男に直撃した

 

 

「メルッ!?こんな街中でどうして魔法を!?」

 

「僕の魔法が...効いてない...」

 

 

男は平然と立ち尽くしていたが

咄嗟にメルはセラフィの手を引いて走り出した

 

「メルゥゥー!?」

 

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