悲鳴と怒号に包まれた街を駆け回る街の冒険者と騎士団員50名は2人一組に別れロングソードでグール達に応戦していた
「グールは頭を切り落とせ!怪我人を優先して救助しろ!!」
「魔女はどうするッ!?」
「スキュア隊長が居ないと討伐は厳しい...」
幾つかの部隊は周りのグールを一掃し怪我人を運んでいたが、
ボコボコと街のタイル式の道路から手が生え新たなグールが街を襲う
「ダメだ...早く魔女を倒さないと」
「住人の避難はどうなっている?」
「ギルド、教会、酒場などの避難所で冒険者達が身を挺して守ってくれている」
「それならしばらくは保つか...」
「悠長にグールと戦っている暇はないぞ」
身体強化、中級魔法も使える騎士団員もいる為、救助は順調であったが肝心の魔女の姿が見えず長期戦を余儀なくされていた
__
エミリーは体内にある溜め込んだフランの魔力を練り上げ大空の中で聖級魔法の詠唱を終える
【
シンッ...
「ここら辺のゾンビは全員ぶっ飛ばしたっす!」
「流石リオンさん!!...あれ、何か暑くないですか?」
後ろで怪我人を治療しているフランは汗で髪がぺったりとしていた
「この暑さ懐かしいっす」
「懐かしい?」
「妹さんから魔法で焼かれそうなった時の様な...」
フランが突如驚きの顔を見せるとカタカタと指を上空に指した
「ん?どうしたすか」
フランの指の方を見上げると空を覆い尽くさんばかりの煮えたぎる巨大な火の玉がゆっくりとこちらの街に落下している
「...」「...」
無言で火の玉を見つめ合う2人
「フランの初級魔法でアレどうにかならないすかね?」
「水魔法は私使えないんですよ...使えたとしても焼け石に水って奴ですが...」
リオンは辺りを見回した
「怪我人を置いて自分だけ逃げれないっすね...」
「逃げたとしても衝突までに3分無さそうなんで、どっちにしろ...」
「...」「...」
「詰みましたね...」
「詰みっすね...」
「あんな強力な魔法は見た事ないですが恐らくエミリーの魔法かと...」
「どうして最後にこんな事になったんすかぁァァァァァ!!」
「すみません!すみません!エミリーは根は良い子なんです...」
「根は良い子が大量虐殺なんかしないっすッ!!」
リオンがフランの顔の前で言い捨てると周囲がやけに涼しい事に気付いた
(リオンさんもしかして...!!)
__
【一閃】
8体集団で居たグールを一筆書きで切り付け
胴体を二つに裂き、ロングソードを納刀する
その一連の動作に無駄は一才無く流麗
「やはりここを狙ってきたな黒の魔女め」
全身武装のスキュアはグールを切り伏していき騎士団員の多く滞在している街の中央広場へと向かっていた。
足の速いスキュアは鈴木を置いてけぼりに進むと
目の前に他とは違う異色なグールが立ち塞がった
「グルゥゥゥゥゥ」
肌は青黒く血管が浮き出ているが筋肉の張りがある
身長3mほどのグールがスキュアを発見し唸りをあげた
大きく振り下ろしたグールの拳をスキュアは紙一重で躱し腕に数回斬撃を与えるが
傷口はすぐに塞がっていく
「再生持ちか、なら火力で押しつぶすッ!」
【
バチバチと雷を纏うその一撃は
巨大グールを縦に真っ二つに切り裂いた
「遅いぞ囚人」
「ハァハァハァハァハァハァ...」
「お前偉そうな事を言っていた割には体力が無いな?」
鈴木は肩で息をし地面に手を置いた
「ハァハァハァ...ハァハァハァ」
「お前少し息が臭うぞ...」
鈴木はビクッと反応し息を整え立ち上がる
「魔女の姉は近い、そのまま真っ直ぐだ」
「あ...あぁ?」
合流した2人が進み出そうとした瞬間
街中に熱風が襲う
「なんだあれはッ!?」
「遅かったか...」
突如現れた街に向かって落ちてくる巨大な火の玉
「あの火は魔女の魔法なのか!?だとすると私達では到底手に負えんぞッ...」
「おい騎士団、俺の近くに寄れば助かる」
「何故だ?というかあまり近づきたくないのだが...」
スキュアはそっと人差し指を鼻の下に添えた
「俺にあの魔法は効かない」
「効かないだと?火のレジストスキルを持っているのかっ!?」
「説明している時間が無い、そこら辺にいる人達も俺の周りに呼べ」
スキュアは一瞬目を瞑るが
戦場における判断に時間は掛けない
「分かった今私に出来る事は無い、お前に従おう」
咄嗟の判断で男の指示に従い
近くにいた男性2人を鈴木の元に連れて来る
「おい、本当にあの火をどうにかできるのか?」
「あぁ、他の人までは助けられないが」
「ありがとうございます、どうせ死ぬんだ最後は1人になりたくない」
スキュアも後ろからやって来る
「もう辺りに人はいない、私達だけだ」
一行はどんどん近づいてくる火の玉をただ眺める事しか出来なかった
...
......
........
「ここまでか...」
火の玉が街直前まで近づきスキュアが腹を括った瞬間
パキィッ
巨大な火の玉が一瞬で凍てつきバラバラに砕け散る
「なん...だとッ?」
流石の鈴木も予想していなかったのか
驚き目を見開いた
「おい!火が消えたぞっ!!助かったんだぁぁぁぁ!!」
「あぁ神よ...」
「これは...囚人がやったのか?」
鈴木はゆっくり首を横に振るが犯人は直ぐに目星が付いた
雪の様に降り注ぐ氷の雨が鈴木を避ける様に地面へと落ちる
(この氷は転生者の力だ...恐らく魔女の姉だな)
__
「成功っすね...」
「まさか本当にできちゃうとは...」
リオンは尻餅をついて地面に倒れ込んだ
...
....
......
『ほらっ!リオンさんの魔力が冷気になってます!!』
『冷気...すか?』
『感情が昂ると魔力に影響するんです!』
『それがどうしたって言うんすかぁぁ』
リオンは緊張が途切れてピィーピィー泣き出した
『リオンさんは魔法が使えるんですよっ!!』
『グズッ...ま...ほう?』
『そうです!エミリーがリオンさんは身体強化しか使えないと言っていましたがたぶん違ってリオンさんは魔法を使った事が無いだけなんです!」
『冷気の魔法でアレを止めるすか...』
体育座りの間に顔を埋めながら後ろの火の玉を指さすリオン
『らしくないですよリオンさん!当たって砕けろっス!!』
目をくの字に曲げ励ますフラン
『砕けろ...』
岩の砕ける音が頭をよぎると
今の状況はあの一件に比べるとそこまで怖くない事に気がついた
『そうっすね...俺らしくないっす、弱気になるのは死んでからっす!!』
フランはリオンに魔法の基礎を説明し
すぐ様実行する
『魔力を感じて、身体に循環させて、頭でイメージして...』
『そうです...水が少しずつ凍るイメージで』
唸るリオンの手のひらに小さな氷の結晶が出来上がった
『氷だぁッ!?』『出来ましたねッ!!』
あ...
真剣になり火の玉の事をすっかり忘れていた2人の頭上には巨大な火の玉が直ぐそこに
『てな感じでアレを凍らせてください♡』
『無茶振りにも程があるっすぅぅぅぅぅ!!』
__
「お姉様の魔法が...凍った...」
魔力を消費したエミリーは地面に降り
羽が崩れて消失した
__
「魔女は何処だ?」
鈴木がフランの場所へ到着するとリオンが飛んで出てきた
「鈴木さんッ!!大丈夫だったすか!?」
「リオンか、お前目が腫れてるぞ」
「マジで死ぬところだったんすよッ!?泣き喚いて悪いっすかッ!?」
フランもいそいそと鈴木の前へと足を運んだ
「鈴木さんご迷惑お掛けしました」
綺麗な土下座の前に鈴木は質問を投げかける
「どういう風の吹き回しだ、魔女は何処だ?」
「あー...魔女は勝手に暴走した感じっす、フランさんは反省して曇らせを止めるみたいっすよ?」
鈴木は鼻息を吐くと
背を向け踵を返した
「もういいんすか鈴木さん?」
「魔女のケアはお前達がしろ、曇らせないなら此処に用は無い」
フランはパチクリと瞬きをする
「もう妹さんに魔力を渡しちゃダメっすよ?」
「はい...とりあえずレミィと話し合おうと思います」
「じゃあ家に帰るっすかぁー」
「え?リオンさんは鈴木さんについて行かないんですか?」
「俺はもうブッシュ家のメイドっすからね」
その後多額の支援金と人員がブッシュ家から割り当てられ街はすぐに復興した
魔女の襲撃による死亡者は騎士団の活躍もあり0名
魔女こそ仕留められなかったものの
この襲撃以降黒の魔女が姿を現す事は無かった