曇らせ愉悦部VS曇らせ許さないマン   作:コ↑コ↓ナッツ

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薄情「前向き」な男の娘(女)

 

 

地下牢に入れられたリオンは状況を整理する

 

(力ずくで脱走して誰かに他の牢屋の位置を教えてもらうのが早いけど今は私、罪人扱いなんだよね...)

 

(鈴木さんが言った様に街で暴れる訳にもいかないし夜まで身動きが取りづらいなぁ...)

 

コツコツ

 

「見張りご苦労様、地下は寒いわね」

 

エミリーが階段から降りてくると

看守達は震えながら敬礼をした

 

「鈴木さんに何かしたら許さないっすから」

 

「自分の心配をしたら?リオン・マクネル」

 

「鉄の柵なんかすぐに出られるっすよ」

 

エミリーは手を組みリオンを見つめる

 

「お姉様に匹敵する魔力...貴方何者なの?」

 

「元盗賊っす、痛い目に遭いたく無いなら鈴木さんの居場所を教えるっすよ」

 

「私に勝てたら場所を教えてあげてもいいけど?」

 

...

....

.....

 

少し時間は遡る

 

『2人を別々の場所に隔離して色々分かったけど、キモオタが私を認識すると変身魔法が使えなくなる、視界から外れても10分はそのままね』

 

『お姉様、膨大な魔力の持ち主は男の隣に居たリオンという茶髪の少女です』

 

『そのリオンって子に首輪を着ければこちらが有利ね、キモオタには悪いけど私達の家が立ち直るまで牢屋に住んでもらうわ』

 

フランはエミリーを抱き寄せ

心配の声を上げた

 

『リオンと戦えるのはレミィ貴方しかいないわ、いつも負担を掛けてごめんね』

 

『お姉様そんな事仰らないでください!!私はお姉様の死に顔が見られるだけで幸せです』

 

『えーっと...確かに私も愉悦を感じているけど、死ぬ時めっちゃ苦しいし家が軌道に乗ったらもう死なないわよ?』

 

『お姉様?今は忙しいからエミリーも魔女の真似事の時だけで我慢していますが、落ち着いたら毎日死んでくださるんですよね?』

 

『えッ?』

 

『ん?』

 

...

....

.....

 

エミリーは姉とのやり取りを思い出し気合いを入れる

 

「私と戦いに勝てたら男の場所を教える、そして貴方が負けたらメイドとして私達に仕える」

 

「メイド?俺は男っすよ?」

 

エミリーはリオンを二度見し鉄格子に顔を近づけた

 

「おとこ?...声も顔も女でしょ?」

 

「ち◯こ付いてるっす」

 

 

女の姿をした男という概念を持ち合わせていないエミリー

 

転生者はジェンダーについて創作物や社会問題などで触れる機会は多い

 

しかし箱入り娘の異世界令嬢は常識をトンカチで殴られた様な衝撃が走る

 

「それはつまり女の姿をした男という種族があります...の?」

 

「普通の人間っすよ、俺は自分を女だと思ってるからそれが体に影響してるかもしれないっすね」

 

「女の姿をした男が自分を女だと思っているって事?」

 

「複雑だけど、大体そんな感じっす」

 

エミリーは鉄格子に手を伸ばしリオンのほっぺをひっぱり伸ばす

 

「何するんすかッ!!」

 

「意味が分からないわ、男なら男、女なら女らしくあるべきよ」

 

(あなたのお姉さんも元男ですよ...)

 

「ていうか早く戦うっす」

 

「へぇー...よく考えなくて大丈夫?黒の魔女に勝てる自信があるのかしら?」

 

「魔法使いとのタイマンは初めてだから楽しみっすね」

 

(見かけによらず好戦的ね)

 

牢屋から外に移動し

グルグルに縛ったリオンの縄を掴みエミリーは空へと視線を移す

 

「場所を移すわ」

 

エミリーは目を赤く染めると

翼を羽ばたかせ縄を握った

 

「ピィィィィィィィン」

 

リオンの甲高い泣き声が街中に響くと

涙の小さな虹が掛かった

 

 

__

 

 

辺りは木や岩すらない広々とした荒野に

エミリーとリオンは戦闘態勢に入る

 

 

「ゼェッ...ハァハァハァ...」

 

「ルールは殺さない事、急所も回復魔法が効く範囲で攻撃する事、戦闘不能の場合潔く負けを認める事、いいかしら?」

 

「も...問題ないっす...行くっすよッ!!」

 

肩で息をしていたリオンはようやく息を整え

エミリーに真正面から突進する

 

 

亡者の奴隷(スレーブ)

 

乾いた地面から幾つもの手が出てくると

大量のグールがエミリーの壁となる様に出現した

 

 

「ゾンビッ!?」

 

 

リオンはグールを殴りつけ吹き飛ばすとヌチッと嫌な感触が拳に残った

 

「臭いも素晴らしいっすね」

 

 

殴る蹴る投げる

殴る蹴る投げる

殴る蹴る投げる

 

グールの数は一向に減らず闇雲にリオンの体力が削られていくだけの状況にエミリーは違和感を感じた

 

(何故魔法を使わないのかしら...)

 

「キリが無いっす!!」

 

リオンは足払いで周りのグールを蹴散らし

自分の足元を思い切り殴りつけた

 

 

バッコーーンッ!!

 

 

地面が波の様に割れ

余波で髪がなびくエミリーはリオンの魔法が身体強化の極地だと察した

 

 

「まともに食らったら全身の骨が砕けそうね」

 

広範囲の地面が大きく陥没し足場が悪くなると

歩行性の悪いグール達はまともに歩けず無力化されていた

 

「ゾンビ共は片付いたっすよッ!!」

 

今度は割れた地面を飛ぶ様にリオンがエミリーに近づくが

 

突如厚い炎の壁がリオンの行手を阻む

 

「アチッ!?炎の壁!?」

 

リオンは炎から距離を取ると

炎の中からエミリーがゆっくりと歩いて出てくる

 

「近接戦は対策しない限り魔法に勝てない、それくらい常識でしょう」

 

エミリーはリオンが姉フランにも迫る魔法使いだと予測していた分落胆していた

 

中級火魔法(ファイヤウォール)

 

逃げ場のない炎が360°包むと

リオンはあまりの熱さに呻き声を上げた

 

「敗北宣言しないならこのまま焼け死ぬけれど?」

 

「俺の負けっす...」

 

 

...

....

.....

 

 

白髪の双子は街を出て自宅に帰り

新しく入ったメイドを横目に観察する

 

「流石、私の妹だわレミィ」

 

「ありがとうございます!お姉様!」

 

メイド服を着たリオンは鈴木の心配もあったが既に気持ちを切り替えていた

 

(鈴木さん、力になれなくて申し訳ないです...私は約束通りメイドとして生きていきます!!)

 

「リオン、紅茶の準備とシェフに今日のメインディッシュはお肉がいいと伝えといて」

 

「はいっす!フランお嬢様!!」

 

それから1週間

明るく元気で真面目に働くリオンはメイド達ともすぐに仲良くなっていった

 

 

「そういえば、フランお嬢様って日本の転生者なんすよね?」

 

「えっ?どうしてその事を...?え...?」

 

「フランお嬢様が元男の転生者だって鈴木さんから教えてもらったっす」

 

「ファっ!?あのキモオタなんで知ってるのッ!?」

 

「鈴木さんと俺は同じ日本の転生者っすから」

 

ダラダラと汗を掻き始めるフラン

 

「鈴木さん...鈴木さん...」

 

「見た目と名前はモロ日本人すけどね」

 

「ま...まさかリオンさんが自分の事を女だと思い込んでいるって」

 

「私の前世は女性でした」

 

「すいやせんしたァァァァァ!!」

 

フランは綺麗に体を畳むと

美しさすら感じる土下座をかました

 

 

...

 

 

 

「スキュア隊長、前回の魔女が出現してから1週間ですが作戦は、」

 

騎士団部隊長唯一の女性、スキュア・メルランドはそろそろ現れるであろう黒の魔女対策を考えていた

 

「魔女が何処に現れるかも分からん、だからと言って手広く散策しても戦力が足りない」

 

「隊長、この村が襲われて予測が付きましたが、魔女はやはり一度襲った村や街には現れない傾向があります」

 

スキュアは黒く艶やかな髪をまとめ上げると

顔を隠す無骨なヘルムを被った

 

「博打は嫌いだがこれ以上被害を出さない為にも山を張るぞ」

 

騎士団は修復が終わった村を後にし

魔女討伐へと乗り出した

 

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