ONE PIECE FILM:DREAM   作:霧乃

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幕の裏

 

 

 

歌い終わったウタは、へたり込んだ。

 

終わった安堵、今まで溜まっていた疲れが押し寄せてくる。

 

 

「よくやったな、ウタ」

「…うん」

 

 

ウタが立ち上がれないのを見るとシャンクスはウタを背負って、仲間の元へ歩いていく。

 

 

「これで、やっと、帰ってこれたんだね…」

「ああ」

 

 

久方ぶりのシャンクス。

 

今日は多くの事がありすぎたウタは、何を話せばいいかわからなかった。

ただ、父と慕った相手の背中が心地よかった。

 

 

「シャンクス…ありがとう…助けに来てくれて…」

「いいんだぞ?無理せずに寝ても今日は疲れただろう」

「うん…」

「これから、いくらでも話す機会はあるさ」

 

 

日が傾き、空が赤く焼けて、長い一日が終わっていく。

 

シャンクスは背中の重みが少し増した事に安心した。

ゆっくり眠り、体力が戻ればまた元気に―――。

 

 

「…ウタ?」

 

 

 

 

 

 

「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょおぉう!!」

 

 

最早あとは朽ちていくだけの、消え行く夢の世界の片端。

 

己の存在そのものが消えていく感覚に襲われながらもトットムジカは全力で悪態をつく。

 

 

「あ~り得ねぇ!俺ぇが負ける!?俺ぇが消えるぅ!?許せるかぁ!!」

 

 

 

叫んだとて結末は変わらない。

 

だから。最後の悪足掻き。せめて足を引いてやると。

 

 

「ユメユ~メ最期ぉの能力ぅ!これを使っちまえば俺ぇは消えるぅが構わねぇ!」

 

 

ローのオペオペの実の「不老手術」のように悪魔の実には能力者の命を捧げて発動させる能力がある。

あまりにも強力で、人ひとりの命ではとても叶わない理不尽を残すような力だ。

 

 

「ウタぁ!テメェが逃げ終わるなんて許せるかよぉ!許せるかぁ!!!!」

 

 

トットムジカは最期の能力を使う。

 

 

それはただの悪い夢(ハぁロー!ナイトメアぁ!)!」

 

 

現実の事象を、夢に変えてしまう最悪の能力を。

 

 

「畜生あとちょっとだったのに…俺の夢…夢…」

 

 

そうしてトットムジカは取り戻す。

 

 

「ああ、なんで、忘れてたんだ…」

 

 

目を閉じれば叶う夢を、奪われていた夢を取り戻す。

 

ユメユメの実を食べた者は夜を失う。

眠る事が出来なくなるのだ。目は覚めず眠りに落ちる事もない。

 

それをかつては喜んだ。無限の時間を思うまま作曲に使えると。

 

 

「ああ、やっと、夜が来る…」

 

 

夢を追いかけ続けたトットムジカは終わりのない眠りに消えていった。

 

 

 

 

 

 

未だに麦わらをかぶったウタとルフィが話している。

 

そこはかつて二人がいたフーシャ村。その高台の風車を再現した夢の世界だ。

 

窓からはいくつもの風車小屋が立ち並んでいるのと海原が見える。

赤い夕焼けが窓からさしているのもかつてを再現していた。

 

 

「ねぇ、なんで私の海賊嫌いが嘘だってわかったの?」

「お前なぁ、そのマーク付けてて海賊嫌いはねぇよ」

 

 

ルフィはウタが麦わらの一味を襲った後、長い間ウタのライブを見ていた。

だからウタの左袖にプリントされたマークに気が付いていた。

 

UTAと刻印されたひょうたんをひっくり返したようなマーク。

それはかつてルフィ考え、描きウタに渡した“新時代”のマークだ。

 

世間の麦わらのイメージは今でこそルフィのモノだがウタとルフィにとっては違う。

 

ルフィにとって麦わらはシャンクスのモノでいつか返す為のモノだ。

 

麦わらのルフィと呼ばれる前。麦わらはシャンクスが持っていて。

長い間捕らわれていたがゆえウタにとっても麦わら帽子はシャンクスを示すものだ。

 

 

「俺だって騙せねぇぞそんなウソ」

「そっかァ…」

 

 

納得したように笑いウタは麦わら帽子を取り、ルフィに返す。

 

 

「ねえ、ルフィ。ルフィには夢の先はある?」

「海賊王になった後か?昔も話しただろ―――」

 

 

そして、ルフィはかつてと変わらない“夢の果て”を語る。

 

 

「…何でもない事のように言うんだもんなァ…ま、あんたらしいか」

「お前こそ、なんで夢を終わらせたんだよ。もうちょっとで叶ったんだろ?」

「あの夢はね、私の夢だけど、夢じゃなかったんだ。

 夢が叶っても叶わなくても私はこの世界から逃げてたんだから」

 

 

夢が叶った先なんて、私がいないんだから何にも考えなくていいって目を逸らしてたんだから。

 

 

「でもね、今なら言えるんだ。夢の先」

 

 

ワクワクした目でウタを見るルフィ。

 

仕方ないなぁ、と笑い。

 

 

「昔の話、覚えてる?」

「あんま覚えてねぇ!」

 

 

だろうねェ…と苦笑いするウタ。

 

 

「あの草原は、私のステージ。大海原は、無限大の夢」

 

 

ルフィもその言葉はうっすらと覚えている。

その言葉を聞いて、案内したのが今いるここだからだ。

 

 

「その夢は、私の夢じゃなくて私が歌で幸せにした人達が語り見る数えきれない程の夢」

「大海原?」

「いっぱいのモノが集まると波とかに見えるでしょ?

 本当に、数えきれない程の夢がひしめき合って海に見えるぐらいに世界中に希望を振りまきたいの」

 

 

ウタは笑う。

 

 

現実のウタの灯が消えた事を夢のウタは感じた。

 

目一杯に引き伸ばした自分の命の砂が落ち切るのも時間の問題だろう。

 

涙は無い。涙は無いのだ。

 

生きたかった。生きていたかった。

 

だけど、ウタは決めたのだ。

多くの人の明日につなげる為だと。

 

 

「勝負だ、ルフィ」

「お。いいぞ!なんだ!」

 

 

ルフィはかつてを思い出す。自分の方が多く勝負を挑んだ。

ウタの方から勝負を仕掛けてくる事はほとんどなかった。

 

 

「シャンクス達が言った事、覚えてる?海賊の別れに」

「涙は無い!」

 

 

最期は笑顔だ。

 

 

「先に泣いた方が負けだよ、ルフィ」

 

 

そう言い、とびっきりの笑顔で、ウタは消えていく。

 

光がほどけるように、きらきらと輝きながら、何もなくなった。

 

 

「…ウタ?」

 

 

呼びかけるが、もうそこには何も残っていない。

 

夕焼けが、夜に落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィはサニー号の上で目を覚ました。

 

 

「よく寝てたな」

 

 

起きていたゾロが、ルフィに声をかける。

 

 

「お前が最後だぞ」

「そうだ!ウタは!?」

 

 

ルフィは先ほどの不吉な夢を思い出す。

 

 

「…ウタは…」

 

 

チョッパーが申し訳なさそうに、指差す。

 

その先にはベンチに横たわったウタがいた。

 

 

「…おい…嘘だろ…?」

 

 

ルフィは自分の声が震えるのを止められない。

 

さっきまで、あんなに元気に話していたんだと。

 

ルフィは、ウタが今日、死のうとしていた事を知らない。

 

 

「…ウタ?ウタ!起きろ!」

 

 

ウタの肩を揺する。

ぞっとするくらいに冷たい肌の感触。

 

 

「お前、新時代作るんだろ!?ウ゛ダァ!!」

 

 

涙が出る。止まらない。

 

 

「おまぇ!ズリィ゛ぞ…!!死んじまっだら!なぐわげねぇじゃねぇが…!!」

 

 

海賊の別れに、涙は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わだじのがぢ…!」

 

 

でも涙が出てしまったのなら。

 

 

「バガヤロォォォォォおでのがぢだぁぁぁぁ!」

 

 

一緒に行くのもいいのかもしれない。

 

麦わらの一味は皆涙を流した。皆生きている事に喜びの涙を流した。

 

 




















映画の納得いかない点・ウタ
ウタは結局最後まで逃げる事を選んだのがほんっとぅに納得いかない。
ワンピースの映画じゃなければまあよくある終わりかなぁですんだけど。

少年ジャンプぞ?少年に夢と希望を与える少年漫画ぞ?

この話を書くために4回ぐらい映画見に行きました。
でも見る度に終盤の脳内で流れるBGMはMr.ChildrenのHEROの二番だよ。

主題歌を聞くたびにやるせなさで聞くのをやめるなんて初めての経験。
映画はパラレルだから原作には直接繋がらないけどだからこそダメだろうと…。

煉獄さんみたいに未来につなげたわけでもなく
ただただテロしていなくなっただけなのホント…シャンクスはなんだったんだよ…。

今話題の歌手のMVにすれば話が微妙でも収益上がる説を検証してないよね?

なので生きているウタを描きたかった。
消えてくれ私のトラウマよ…ちゃんと新時代を聞かせて…。
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