ONE PIECE FILM:DREAM   作:霧乃

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第三幕

 

 

 

ウタはルフィに顔を近づけて、ささやく。

 

 

「私が勝ったんだから教えて。シャンクスは?」

「知らね」

「だったらその帽子は?それはシャンクスのでしょ?」

 

 

焦れるようにもう一度ウタは訊ねる。

 

ルフィを覗き込むその目は必死さすら感じる剣幕だ。

 

 

「これは預かってるだけだ」

 

 

そうルフィは返した。

 

そんな二人にナミが、

 

 

「ねぇ、ルフィとウタははどこで知り合ったの?幼馴染なんでしょ?」

「ああ、こいつはフーシャ村にシャンクス達の船に乗ってきてたんだ」

「フーシャ村ってルフィの故郷の村だったかぁ?」

「ああ」

 

 

フランキーの言葉にルフィが頷く。

 

そして、その過程で何か引っかかったのかルフィは怪訝な顔になって、

 

 

「そういやお前、急に居なくなったよな?」

「急にってどういう事だ?」

「え~~っと、確か…あの日はシャンクス達が帰ってきた日だったけど…」

 

 

頭をひねる。

何せ12年も前の出来事だ。

 

だが、それでも、あの日のシャンクス達の様子と。

 

 

「そうだ。シャンクス達の様子がいつもと違って、なんか元気がなかった。

 んでウタに話聞こうと思ったら、ウタがいなくて…」

 

 

友達がいなくなった日の事。

 

強烈な印象は過去をあまり振り返らないルフィの記憶にもしっかりと残っていた。

 

 

「ウタがいない!って騒いだら、シャンクスが…

 そうだ、確か「ウタは歌手になる為に船を降りた」って…」

 

 

あまりに力のない返答だった。覇気がなかった。

いつも自信や威厳に満ちていたシャンクスやその船員たちのその顔は。

 

何かがあったのだろう、幼心にもそう感じるだけの落ち込みようだった。

 

そして、その後もしばらくシャンクス達が荒れていたのも覚えている。

 

 

「へぇ…」

 

 

ルフィの話を聞いたウタは乾いた声と遠い目でそう返す。

 

 

「なあウタ。なんでお前急に海賊になるのやめたんだよ。あれだけ赤髪海賊団が好きだったのに」

「…海賊より、歌手になりたいって思ったから。ほら、私、二年くらいの活動で世界中にファンができるほどだし」

「フーン」

 

 

一瞬、目を伏せ、そう答えるウタ。

 

 

「…ルフィは、やっぱり、海賊になったの?」

「ああ!海賊王になるんだ、俺!」

「…そっか…」

 

 

何の躊躇いも、疑いもなく言葉を放つルフィ。

 

 

 

「ねぇ、ルフィ。海賊、やめなよ」

 

 

 

ウタの唐突な言葉。

 

その言葉を聞いた、横で聞いていた麦わらの一味は耳を疑ってウタの方を見る。

 

 

「何言ってんだお前?」

 

 

流石のルフィも聞き返す。

 

 

「…海賊なんて、誰かを傷つけて、誰かを裏切って、何かを奪って。それだけでしょう?」

「プリンセス・ウタ…そりゃ、そういう奴らもいるけど…ルフィはそんなことしねぇよ」

 

 

ウソップが思わず、という風に口にする。

 

だが、その言葉も今も磔にされながら騒いでいる海賊達がいるのがわかっているので歯切れが悪い。

 

そんな弱い言葉をウタは聞かず、まっすぐにルフィを見る。

 

 

「海賊なんてやめて、ここで一緒に楽しく暮らそう?

 友達の皆も私のファンなんでしょ?ずっと一緒に居られるんだよ?」

 

 

場の空気に反した明るい声が空しく響く。

 

ルフィはじぃっと、ムスッとした顔でウタを見つめ返す。

 

真剣な目で睨みあう。

 

 

「やめねぇ」

 

 

ルフィはきっぱりと言う。

 

ルフィもウタも目を逸らさず更に睨みあって。

 

 

「ウタ。お前、海賊ナンバーは歌わないのか」

 

 

虚を突かれたウタは目を見開いて、顔を伏せ、

 

 

「…歌わないよ、あんな歌」

「そうか」

 

 

返答を聞いたルフィは短く答えて、

グリルの上で焼いていた残りの肉を口の中に詰め込んで、咀嚼しながら升席の階段へと歩いていく。

 

 

「ウタ」

 

 

ルフィは、振り返らないまま、

 

 

「久しぶりに会えて、嬉しかった。お前ら、俺肉も食ったし先にサニー号に帰って寝る」

 

 

顔を伏せたままのウタ。

 

困惑したままのウソップとナミとフランキーとロビン。

我関せずのゾロ。鍋に張り付いたままのサンジ。

 

 

「お前もやりてぇ事やってるみたいだし、良かった!じゃあな!」

「ちょっとルフィ…」

 

 

ルフィは明るい声のまま、階段を下りていく。

 

流石にこの空気はどうかとナミがルフィを引き留めようとして、

 

 

「行かせないよ」

 

 

敵意の色味を帯びたウタの声を聴いた。

 

直後、フランキーの巨大なサイボーグアームの先から出した小さな、それでも一般人より大きい拳がナミの服の首の襟を引っ張った。

ナミの服の襟が無理矢理にひかれ、広がった視界の先、音符の濁流が流れるのが見えた。

 

 

「ナミさん!?」

「な、何!?なんだ!?プリンセス・ウタ!?」

 

 

即座にルフィを除いた麦わら一味全員が臨戦態勢へと移る。

 

かつての旅の教訓だ。どんな相手も侮ってはならない。

先ほどあれだけの能力で海賊を圧倒した相手ならなおさらの事。

 

ウタは避けられた事にやや苛立った様子で長く息を吐く。

 

その注目の中心から勢いよく後ろへとジャンプ。升席の外の中空へとその身を飛ばした。

 

即座にウタの足元へ音符が集まり、音符型のフロートボードが現れそれに着地。

 

ウタのヘッドフォンから光と共にマイクが伸びて、

 

 

「みんな―!また海賊を見つけたよ!どうしよう?」

 

 

明るいがどこか病的な響きを持つ声をそう会場へと声を響かせた。

 

その声は即座を以って会場を駆け回り、そして、

 

 

「―――U・T・A!」

 

 

怒りを以って、声は響く。

 

最初は会場の片隅で聞こえた怒号のような合唱は折り重なり、憎しみを以って大きくなっていく。

 

 

「U・T・A!U・T・A!U・T・A!」

 

 

海賊なんて要らないのだと。

居なくなってしまえと。

 

その声援を受けてウタは、満足したように大きく頷くと。

 

 

「OK!じゃあ、みんなのために私が海賊をやっつけちゃうね!」

 

 

ウタは言葉と共に、照明が落ちる。

 

演奏が始まり、ウタは両手で頭の上で手拍子。

 

会場中がその手拍子に合わせ、手拍子をはじめて、荒々しい伴奏と合わさって、その怒りの表現を強めていく。

 

その音に合わせ会場に幾色もの光のレーザーライトが乱舞する。

 

それに合わせて光の音符が現れ、宙を躍り、集まって、

それぞれが武器を持ち鎧をまとった屈強な戦士へと変わった。

 

 

「いくらルフィの昔馴染みだからって、こりゃやりすぎじゃねぇか?」

 

 

音符を象った造形の戦士が突き出した槍を抜刀した刀で弾きながらゾロは叫ぶ。

 

 

「なんだこいつら!?」

 

 

ウソップは空中を泳ぐように飛び回る戦士を特大のパチンコで見事に迎撃するが、

弾の当たった戦士は音符の群れになって散り散りに消えた。

 

その光景に驚いたウソップの後ろから飛び掛かった戦士をゾロは一太刀で切り伏せる。

 

が、

 

 

「感触がねぇ!」

 

 

ゾロの振るった刀には何もついていない。

そのゾロに切られた胴から真っ二つになった戦士は元の音符に戻り、空気に溶けるように消える。

 

そして、また升席の外の空中に音符が寄り集まって先ほどの数倍の戦士が踊るように湧き出てきた。

 

 

「これキリがないわよ!?」

「この忙しい時にブルックとチョッパーはどこ行ったぁ!?」

 

 

槍を構えて飛んでくる戦士達からナミをかばいつつサンジは戦士をまとめて蹴りながら、

辺りを見回すが仲間のうちの目立つ二人の姿はそこにはない。

 

 

「やっぱりこの島は魔王の島…?いえ、それだと説明がつかないわね…」

 

 

ある程度この島の事情を調べたロビンは自身の考えに矛盾を見つけ呟く。

 

 

音符型のフロートボードに乗って浮遊するウタに升席の階段の踊り場からルフィは叫ぶ。

 

 

「ウタ!お前何やってんだ!やめろ!」

「ルフィ、あんたが海賊だっていうからいけないんだよ。私の友達なら、海賊やめてよ」

「何言ってんだお前…!」

 

 

目を伏せたまま答えるウタを見てルフィは頭に血が上り戦闘態勢を取ろうとした。

 

けれど、

 

 

「…やっぱりやめた。戦う理由がねぇ」

「そ。あんたがやらなくても、私にはある。やるよ」

 

 

そして、フロートボードが舞い上がる。

ウタの指さしと共にレーザーライトで席にいる麦わらの一味を順に射抜き、ウタは歌う。

 

 

〈逆光〉。

 

 

冷たく刺々しい悪党への敵意に塗れた―――それでも悲痛な叫びの歌を。

 

会場中を踊るカラフルなレーザーライトの激しさと共に戦士はその強さと凶暴さを増していく。

 

最初はまばらに居た程度の戦士は今や、升席の空中を埋め尽くすほどに増えていた。

 

 

「六輪咲き――クラッチ!」

 

 

陣形を組んで飛んできた戦士達の胴体から生えたしなやかな腕が

接近しながら飛んでいた戦士の互いの足や腕を掴みバランスを崩させて墜落させた。

 

だが戦士達は音符となって散り、また直ぐに寄り集まって元の戦士の姿へと戻ってしまう。

 

 

ルフィは階段の途中に座りその光景を見る。

 

 

ウタは歌う。その声が響くほど戦士は強く、速くなる。

 

ゾロはウソップをかばいながら片っ端から戦士を切り伏せ、叩き落し。

 

サンジはナミとロビンを守りながら、立ち回る。

 

フランキーは隙を見て、体中に仕込まれた武器をウタに向けるが、

激しく歌うウタに呼応する音符がその一切をシャットアウトした。

 

数々の戦いを戦い抜いてきた麦わらの一味。

負ける気はしない。だが、攻め手が見つからない上に、

 

 

「おー」

「お前も感心してないで戦えぇ!」

 

 

船長であるルフィに戦意が見られない。

 

 

「俺はいい。お前ら、一旦逃げろ」

「はぁ!?」

 

 

それどころか、意味の分からないことを言い出す始末だ。

 

ウタはその声を聴いてか、人差し指でまっすぐにルフィを指差す。

 

その指先から一条の光が発され、ルフィを絡めとって、グルグル巻きにした。

 

 

「ルフィ!?」

「…ッ!チクショウ!一旦逃げるぞ!仕切り直しだ!」

「そうね」

「仕方ねぇな」

「行くぞ、超煙星!」

 

 

その光景を見ながら、ウソップは周りの升席全てを飲み込むような煙幕を発生させる。

 

煙幕の幕を払うように音符群れが渦を巻き、生み出された爆風が煙を一瞬で吹き飛ばす。

 

その幕が払われるよりも早く升席の端から飛び降りた

ウソップ、ナミ、ロビン、フランキーは下の海面に浮かんでいた小舟に手早く乗り込んでいた。

 

ウタは歌いながらもその逃亡を当然阻止しようと両手から光の帯を出して捕えようとするが、

 

 

「わりぃが通さねぇ」

「レディの邪魔は心が痛むんだが仕方ねぇ」

 

 

空を飛ぶ斬撃を放つ3刀流の剣士がその帯を断ち切り、

赤い脚の料理人が空と共にその断ち切られた帯の行く先を蹴り飛あげる。

 

 

風来砲(クー・ド・ヴァン)!」

 

 

その一瞬の隙でウソップ、ナミ、ロビン、フランキーを乗せた小舟は文字通り飛ぶように逃げ去った。

 

そして、グルグルに縛られたルフィが宙を運ばれ、ステージの上にボトリと落とされた所で曲は終わる。

 

 

「…流石、億越え海賊の仲間というべき?」

「俺の仲間だ。当然だろ」

 

 

ウタが一曲を歌い終えるまでにあの麦わらのルフィを捕らえ、その仲間を撃退。

 

その事実に熱狂する会場とは裏腹にウタは苦い顔をした。

捕まえきれる、と思っていた結果がこれだ。

 

ゾロは仕事はもう終わったとばかりに升席で酒を飲みはじめ、サンジは鍋に張り付いている。

 

ルフィはグルグルに巻かれたままだが暴れもしないで平静そのものの様子。

 

それがウタを苛立たせた。

 

 

「みんなはさァ!海賊をどう思う!?」

 

 

会場中を煽るようにウタは叫ぶ。

 

 

「おれの街は海賊に焼かれた!」

「私の夫は海賊に殺された!」

「母ちゃんを返せ!」

 

 

皆口々に、海賊の非情を叫ぶ。

 

そんな叫びの雨をステージの上に晒されたルフィにぶつけるために。

 

そんな中でウタはルフィを縛っていた光の帯を消した。

ルフィはステージの上で胡坐をかいてウタと向きなおる。

 

 

「これが現実だよ、ルフィ。海賊ってだけでこれだけ憎まれちゃうんだよ?」

「…それがどうした」

「懸賞金15億ベリー?世界に指さされながら!バカみたいな夢を振り回して!誰もいない所でやってよそんなの!」

「バカっていう奴がバカだろ!俺は馬鹿じゃねぇ!」

「大人になってよ!あんな大それた夢なんて絶対に叶いっこないのにさ!」

「叶う!他の奴なんて知ったことか!俺は海賊だ!」

 

 

海賊として疎まれる事などどうだっていい。そんな事を気にするよう暇などないと。

 

ルフィには誇りと夢があった。それを海賊旗に掲げて海へ飛び出したのだから。

 

 

「気に入らねえ奴はぶっ飛ばすし肉を食う!」

 

 

バシャッと話していた横合いからルフィに水がかけられた。

 

話していた二人にそっと近づいていた観客の一部がルフィに桶に入った海水をぶちまけたのだ。

 

 

「海賊がウタちゃんに近づくな!」

「海水で力の入らない能力者なんて怖くないぞ!」

 

 

ルフィは水をぽたぽたと垂らしながらそんな観客を一瞥して、

 

 

「…こんな程度で力が抜けるわけねぇだろ」

「え…」

 

 

その一言を聞いて観客は怯えたような表情になり後ずさる。

 

確かに悪魔の実の能力者は体が水に浸かれば力が抜けてしまう。

だが、桶一杯の海水を頭から浴びたとしてもその水は流れ落ちてしまい条件を満たすことはない。

 

 

「俺は暴れる気はねぇぞ。だけど仲間を傷つけるやつには容赦する気はねぇ」

 

 

ルフィの眼光に武器を構えていた観客達は怯え、我先にと逃げ出していく。

 

ルフィはフンっと鼻を鳴らしウタを見る。

 

 

「…これがお前の夢か?」

「まだ違う。だけど、もうすぐ叶うんだ」

 

 

ニヤリ、と意地悪い昏い笑みをウタは浮かべ、

 

 

「これで私の勝ち」

「負けてねぇ」

「でた、負け惜しみィ」

 

 

先ほども見た、昔のままの両手で空を揉むようなその動作。

 

だがウタは急に表情を曇らせ、肩を落とし、

 

 

「何が不満なの?ここは音楽に溢れてて、平和なんだよ!

 飢える事もない!着るものもいくらでも出てくる!住むところにだって困らない!」

「でもここはつまんねぇ」

 

 

断ち切るようにルフィは言葉を放つ。

 

 

「お前の歌は嫌いじゃねぇけど、それだけ聞いて過ごしてられねぇんだ」

 

 

それに、とルフィは言葉を放つ。いつも通り自由に感じたままに。

 

 

「俺は昔のお前の歌の方が好きだ」

 

 

敵意もない、ありのままの言葉がウタに突き刺さる。

 

 

「うるさい…」

「今の歌もお前の思いが乗ってる。だけど…自由じゃねぇ。お前、もっと歌いたい歌があるんじゃねぇのか」

「うるさい!」

 

 

聞きたくないと、ウタは大声で叫ぶ。

 

 

「…もう、いいや。邪魔はさせない」

 

 

そういうとウタはルフィの被っている麦わら帽子を手に取った。

 

 

「…」

 

 

ルフィは静かにそれを見送る。

 

離れた升席でゾロは目を疑った。

あれだけこだわりのあった麦わら帽子を取られてなお静かなままのルフィなど見た事がなかったからだ。

 

ウタは麦わら帽子を小さな音符に変えるとヘッドホンへとしまい込んだ。

 

そして、ステージの中央へ進み出て、

 

 

「みんなー!ライブ中断しちゃっててごめんね!これからまた再開するから!」

 

 

その声に応えるように再び会場に声援が戻る。

 

UTA!UTA!のコールが鳴り響く中。ライブが再開した。

 

 

ステージの片隅に胡坐をかいてじっとウタの姿を見据えるルフィを残したまま。

 

 

 




映画の納得いかない点その2・会話しねぇウタとルフィ
自己完結で話を終わらせるウタと麦わら返せと仲間を傷つけるなとシャンクスしか言わないルフィ。
なんか上級者が見えればルフィにはとんでもない感情が渦巻いているのが見えたらしいけど私はそこまでの領域ではなかったらしい。

映画の納得いかない点その3・序盤の戦闘にやたら弱い
映画を盛り上げるためには仕方ないけど、ドレスローザやら越えていて戦闘経験のないウタに一方的に負けるのってゾロが腹を切る案件では。

映画の納得いかない点その4・万能海水
桶一杯の海水食らってしばらく動けなくなるのはおかしい。
ウタワールドだから効いたみたいな解釈もできなくはないけど公式(漫画)で否定されてる案件だからルフィがもっと疑問に思ってもおかしくないし、
これで動けなくなるなら雨アウトだし海軍は水鉄砲装備している。
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