ONE PIECE FILM:DREAM   作:霧乃

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第五幕

 

 

太陽は天から傾いていく時間帯。街の中を歌が響いている。

 

人の行き来のある大きな通りにつながった多くの人が憩う公園。

人々の集まる酒場。物資の積み下ろしをする港。村の皆が集まる広場。

 

歌が響いている。

 

人々の活気を示すような、炊事の煙が幾本もあがる時間帯。

人々の声も。道を叩く靴の音も。鳥の鳴き声も動物の遠吠えもない。

 

風のそよぐ音と一人の歌声だけが響いている。

 

人々が眠っていた。

 

ある者はベットに。ある者は芝生の上で。ある者はベンチで。

大通りの真ん中の地面に。広場の真ん中で肩を組みながら。

机に突っ伏して。ジョッキを片手に。映像を映し出す電伝虫の前で。

 

その映像を映し出す電伝虫も映像を映し出しながら眠っている。

夢に描かれた映像を吐き出し続けていた。

 

ウタの歌声を聞いた世界中が、夢中に落ちていく。

 

 

 

 

会場から離脱したウソップ、ナミ、ロビン、フランキーは船を降り、

エレジアの街並みを警戒しながら進んでいた。

 

ウソップは今歩いてきた道のりを慎重に振り返り、辺りを警戒しながら、

それでもこちらを追う気配がない事を拙い見聞色で感じ取りようやく息を吐く。

 

 

「ふー、どうやら追っては来ないみたいだな?」

「どうするのよ。ルフィもゾロもサンジもあっちに残ったままよ?」

「チョッパーとブルックも見当たらねぇな。全くどこ行っちまったんだあいつら」

「それにウタの能力がわからないんじゃ戦いようがねぇ。

 俺でも倒せる程度にせよ、あの量はどうにもならねぇぞ」

「…ロビンどうかしたの?」

 

 

ウタへの対策をあれこれ言う中でロビンはエレジアの街の民家を調べていた。

 

エレジアの美しい街並みは何があったのか、その大部分が何かかが大暴れした後かのように破壊されている。

 

 

「ちょっと気になる事があって…」

「気になる事…お宝でもあった?」

「ロビンはお前とは違うっつーの。妙ってのは?」

「…確かに、妙だな。エレジアの事件があったのは12年前って話だったよな?」

 

 

フランキーは巨大な手で民家の壁を触る。

 

その家は屋根が吹き飛んでいるが、壁の煉瓦は手入れが行き届いていて比較的綺麗だ。

 

 

「会場もだが、こいつぁ、昨日まで人が住んでたって言われても納得するぜ?」

「…それが変なのか?」

「…ちょっと待って、エレジアはもう住んでいる人がいないはずよね」

「えぇ…それに…」

「誰だ!?」

 

 

ロビンが何かを言いかけたところで、

何者かの気配を感じウソップとフランキーが臨戦態勢へと移る。

 

一瞬の静寂の後、

 

軽やかな電子音と共に民家の影から

「UTA」と書かれた電飾がビカビカと光る飾りを背負ったシロクマのミンク族が現れる。

 

 

「…すんません」

 

 

その顔には見覚えがあった。

トラファルガー・ローが率いるハート海賊団の航海士ベポだ。

 

誤爆した電飾を止めながらこちらへ近づいてきた。

 

 

「あんたトラ男のとこの…」

「ベポだっけ?」

「うちのキャプテンを馬鹿にしてるわけじゃないんだろうが普通に呼んでくれねぇかな…」

 

 

ベポはやや複雑な表情をしながら、

 

 

「あんたら、うちのキャプテン見てねぇか?」

「トラ男も来てるのか?」

「ああ、来てたんだが…始まったら起こせって言われてたんだけど。

 俺はまあすっかり忘れてて…」

「忘れんなよ」

「気付いたらいなくて。お前らが逃げたのを見て、追っかけてきたんだけど…」

 

 

明らかに気落ちしたように肩を落とすベポ。

 

そこに横合いから「君達」と声がかかる。

 

そこには傷の残った禿げ頭と側頭部の髪を伸ばしたサングラスの老齢に差し掛かる男性‐ゴードン‐がいた。

 

 

「…君達は、麦わらのルフィを知っているか…?」

「は…?」

「ルフィはうちの船長だけど…」

「知る訳はないか……船長ぉ!?」

 

 

絶望的だと思いながら問うたまさかの可能性を引き当てたゴードンは驚愕の叫びをあげた。

 

名乗りあった後、ベポはローを探しに会場へ戻り、

ウソップ一行はゴードンに町の中心部にあった比較的無事である建物へと案内された。

 

 

「あらためて自己紹介をしよう。私はゴードン。かつてこの国エレジアを治めていた者だ」

 

 

ゴードンという名にロビンは目を細める。

 

とりあえず、と最初の疑問をフランキーが飛ばした。

 

 

「なんで、あんたはルフィを探してたんだ?」

「…彼がウタの幼馴染だからだ。私は…」

 

 

私は、ともう一度小さく呟き、

 

 

「…ウタの話をしよう」

 

 

ゴードンは口にしようとした言葉を飲み込んで、別の言葉を吐く。

 

 

「国民がいなくなったエレジアで、ウタは私が育てた」

「あなたが?つまりウタの育ての親って事」

「ああ」

 

 

そして、この12年間の話をゴードンは語る。

 

彼女を世界一の歌姫にするために音楽に関する事を教育してきた事。

滅びてしまったエレジアを訪れる者は少なく、二人っきりであった事。

 

必死に励まし、手を尽くしたが、ウタの心の擦り減りを止められなかった事。

 

 

「あの子は歌を愛していた。そして、その歌声は正に天に与えられた贈り物かのようだった。

 その二つがそろったあの子の才は筆舌に尽くしがたい。私の音楽のすべてをスポンジのように吸収していったよ」

 

 

誇らしげにと語るその顔に嘘はなかった。

 

 

「だが問題は、いつどうやって彼女の歌を世界に発信するかだった。

 彼女は外の世界をほとんど知らずに育ってしまったから。だが…」

 

 

そのタイミングは意外な、思いもよらない形で訪れた。

2年ほど前、エレジアの海岸を歩いていたウタは偶然、新種の電伝虫を拾ったのだ。

 

それは今の配信でも使われている、世界中の不特定多数の相手へ発信できる特別な電伝虫。

 

ウタは解き放たれたように、自分の歌を外の世界へ発信した。

 

彼女の歌声は多くの人間を魅了し、瞬く間にファンを増やして、世界中にウタの名を広げていった。

 

 

「だが、断片的に外の現実を知るうちに、彼女の中に…使命感が生まれていった。

 歌声を誰かに届ける、その為に始めただけだった。だが、いつの間にかウタの事を救世主だと。

 この時代を変える人間だと崇め始めた人々がいたのだ」

 

 

電伝虫を通して世界中の人々がウタの歌声を受け取り、

そしてまた電伝虫を通して賛辞と応援の言葉をウタに届けた。

 

その声は、歌声を聞いて喜んでくれる人々達からの声は孤独だったウタの心を勇気づけた。

 

ウタの声は海賊や海軍、世界政府、天竜人―――様々なモノに虐げられながら生きている人々の心を

吹き渡る爽やかな風のように太陽の温かさのように包み込んで慰め、癒した。

 

村を燃やされた怒りを。家族を奴隷にされ奪われた悲しみを。

略奪され何もなくなってしまった空しさを。助けを望むことも出来ないやるせなさも。

 

ウタの歌を聞いている間だけは忘れる事が出来ると。

 

 

「だからウタは海賊を憎んでたって事?」

「…あの子が海賊を憎むのは…いや、よそう…」

 

 

ひたすらに言葉を濁すゴードン。

 

 

「だからウタは、決意した。決意してしまった。…「新時代」を作るのだと」

 

 

ゴードンは顔を両手で覆う。

 

 

「…もう止める事は出来なかった。

 私一人ではウタの孤独を止める事が出来なかったのだから」

 

 

ゴードンは重く、溜息を吐く。

 

 

「あの子に請われ、私はこのライブを企画し、ありとあらゆる事を手伝った。

 アニマルバンドを招待し、船の手配をし、世界中へ宣伝をした。…計画を知りながら」

「計画って…」

「私の声ではもう届かない。ウタが唯一気にかけた、麦わらのルフィ。

 彼の言葉ならと思ったのだ。だが…ダメだったか」

「まだ決まっちゃいねぇよ!」

 

 

ゴードンは会場にルフィがいると知り肩を落とす。

そんな様子にウソップは声を荒げ叫んだ。

 

 

「一つだけ、確認させてもらっていいかしら?」

 

 

ここまで何か考え込んでいたロビンが声をかける。

 

 

「「魔王」はこの島に存在するの?」

「…イエスであり、ノーとも言える」

「あんたずっと曖昧なのよ!なんでそんな歯切れが悪いの!あんたの育てた子の話でしょ!?」

 

 

耐えきれなくなったナミが叫ぶ。

 

ずっと歯切れが悪いまま、一番都合の悪い部分には踏み込まないような喋りをゴードンはしていた。

 

 

「あんたは何がしたいの!?あたし達に何をさせたいのよ!?」

「それは…」

「エレジア事件」

 

 

歯切れの悪いままのゴードンの言葉に重ねるようにロビン。

 

 

「滅びるはずのないエレジアがなぜ滅びたのか」

「いいや、あの夜。一夜にしてエレジアは滅びたのだ…私の…」

「いいえ」

 

 

ロビンはもう一度声を出す。

 

 

「エレジア事件の犠牲者はたった二人。当時の国王と国を訪れていた女の子。それも行方不明になっただけよ」

「…何だって?」

 

 

信じられないような事を聞いたかのようなゴードン。

 

 

「え?あの赤髪のシャンクスがエレジアを襲った事件だろ?そんなもんだったのか?」

「なんせ昔の話だからあんま覚えちゃいねぇが赤髪海賊団がエレジアを滅ぼしたって話じゃなかったか?」

「ええ、大袈裟に伝えてはいたけど…奇妙な話はその後なのよ」

 

 

奇妙?とフランキーとウソップは顔を見合わせる。

 

 

「記録によると事件の後にエレジアの住民はその全てが逃げ出したらしいの。それがエレジアの滅亡の要因」

「…逃げ出したって」

「皆一様に襲われる悪夢を見たらしいわ。エレジアの「魔王」に襲われた、と」

「まさか…」

 

 

ゴードンの顔から血の気が引いていくのを皆が見た。

 

 

「まさか、馬鹿な、この12年…」

 

 

うわごとのように、呟き、戦慄き、そして、

 

 

「トットムジカァ!!」

 

 

怒りと共にゴードンは叫んだ。

 

 

「いかん、ああ、クソ、ああ…ウタ…許してくれ…」

「なんなの!?あんた何を知ってるの!?」

「ウタじゃない!!」

 

 

ゴードンは叫び、

 

 

「ウタウタの実じゃない!奴は、計画は、」

 

 

そこまで言った所で、

 

 

「いけないないなぁ、ゴォドォォォォン?そいつはいけないぜぇぇ…?」

 

 

声が響いた。

 

轟音と共に建物の半分が砕かれ、吹き飛ぶ。

 

素早く動いたフランキーが身を挺して、吹き飛んできた破片を防いだ。

 

 

「なんだぁ!?」

 

 

そこにはウタにカジム、と呼ばれた男がいた。黒い大きな帽子を斜めにかぶり左目に大きな傷を残した男だ。

その男のマントから出る両腕はその身に不釣り合いなほど大きく広げられ白と黒の無機質な鍵盤のようだ。

 

 

「いかん。逃げ…」

 

 

白黒の左腕が一瞬の間で伸び、ゴードンを鷲掴みにした。

 

そして、巨大な右腕が今一度、建物と同じようにウソップ達を吹き飛ばそうと振るわれる。

 

 

「オゥ!こいつぁストロングだぜ!?」

 

 

耳障りな激突音。衝撃で多少後ずさりながらも見事に受け止めたフランキーが叫ぶ。

 

 

「もうなんなのよ!」

「夢だ!これは全部夢なんだ!」

「そぉぉぉさぁぁぁ!だぁからぁ!」

 

 

フランキーは受け止めた右腕が震えるのを感じる。

直感に従ってウソップは叫んだ。

 

 

「ロビン!掴んでくれ!フランキー!俺達ごと吹き飛ばせ!」

六輪咲き(セイスフルール)

風来砲(クー・ド・ヴァン)!」

 

 

即座の動き。ロビンとフランキーはウソップの言葉を正しく理解し、吹き飛んだ。

 

ロビンは体から咲かせた腕でナミ、ウソップ、フランキーを掴み一塊として。

フランキーは風来砲を加速として先ほどと同じように離脱する。

 

 

寝色(ねぇいろぉ)!」

 

 

そしてカジムの腕が爆発したかのように見えた。

右腕から発された力が空間を歪ませ、一瞬前まで4人がいた場所が地面ごと粉々に砕け散って粉塵が舞い上がった。

 

 

「それぇで逃ぇげたつもり…?」

 

 

カジムは追撃しようとしたが飛んだ4人が行く先、中空が不自然に歪んで、開いた。

 

その開いた扉のような穴に吸い込まれ、あっという間で扉が閉まり、そこにはもう何もなくなっていた。

 

 

「ち…まぁ、いぃいか」

 

 

カジムは舌打ち。

 

 

「トットムジカぁ!貴様、最初から…!」

「あぁ、あぁ!ばぁれちまった。こいつぁいっけねぇやぁ」

 

 

言葉とは裏腹ににやにやと顔を歪ませながらカジム――トットムジカは言う。

 

だが、直ぐにトットムジカはそのニヤニヤ顔を収め、

怒りに顔を歪ませ、左腕で掴んだゴードンを目の前に掲げる。

 

 

「ゴォドォォォン…「魔王」はどこだぁ…?」

「く、く、残、念だったな。あれは、処分したよ…」

「そぉ…かぁ…ざぁんねんだ…」

「ぐ、ぐお、何が…?あああああああぁぁぁ!?」

「じゃあぁ…手ぇ伝ってくれよぉ、ゴォドォォォン…」

 

 

言葉と共に左腕がゴードンを離す。

 

ゴードンの体に異変が起こった。

 

体中が膨らみ、服が引きちぎれるほどに膨張して体が赤黒く変わっていく。

多少の面影を残しながら異形へと変形していく。

 

ゴードンの思考が埋め尽くされていく。シャンクス、ウタ、ウタ、ウタ。

自分が、何をしたのか、その全てを思い出しながら。

 

 

「ああ、違う!違うんだ!シャンクス…ウタ…!」

「何も違わないさゴォドォォォン」

 

 

トットムジカは嗤う。

 

 

「ぜぇんぶ、お前ぇのせいだろぉぅ?」

 

 

どうしようもない現実を突きつけられ、罪悪感のままにゴードンの思考は闇に落ちていった。

 

 




納得できない点・その6 ウタウタの実強すぎ
強いのはいいけど強すぎというか夢関係なくない?
精神世界作って閉じ込めるって歌関係なくない?
そういう風に覚醒してたって考える事は出来るけれど映画の後出せないよねってなってウタの結末が大体読めてしまった。
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