ONE PIECE FILM:DREAM   作:霧乃

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第六幕

 

 

 

夢の世界はウタの思いのままだ。

 

全力で激しいダンスをこなしながら一人きりで歌い続けても。

疲れる事も汗をかく事もお腹がすく事もない。

 

それは観客も同じ。

 

違和感を抱かないほどに快適な気温、音もない涼やかな風。

ひずみ一つないクリアな演奏と心をとらえて離さない歌に熱狂し続けても、観客達は何一つ変わらない。

 

それを不思議に思う観客もいるが、今日の自分は調子がいいのだなと思う程度だ。

幸せな時が続く事に違和感を持てる者はごくごく少数だった。

 

 

だがそれは夢の世界の話だけだ。

 

 

現実のウタは升席に座り、チョッパーとブルックの二人と話をしている。

 

 

「空飛ぶ鳥に乗って戦ったの!?ルフィが!?」

「そう!そうしてルフィは金獅子のシキを―――?」

「…」

 

 

その中でウタは一瞬意識が飛んだようにボーっとする。

 

 

「だ、大丈夫か?」

「…大丈夫」

 

 

ネズキノコの毒とウタウタの能力の維持は今もウタを蝕んでいた。

 

それでもファンの前では、と強がりを張るウタ。

 

久しくなかったゴードン以外との人との交流。

自分の知らない世界とルフィの冒険譚。それらはウタには魅力的な話だった。

 

 

(不味い…息も脈拍もさっきより早くなってる。意識が軽く飛ぶような症状も増えてきた)

 

 

医者としての観察眼を駆使するチョッパーはウタの状態が悪くなってきてしまった事を察するが、

薬の投与を許すような精神状態ではないだろう。

 

ルフィ達の帰還がかかっている手前、チョッパーには無理矢理という選択肢は取れない。

 

ネズキノコの毒は眠れない以外に感情、衝動を暴走させる。

その情動は普段は取らない選択肢すら許容させ、最悪の場合自死を選ぶ可能性もある。

 

ドレスローザのホビホビの実という恐ろしい前例があるだけに最悪は常に考え続けなければならなかった。

 

だが、チョッパーはこの瞬間を待っていた。

今だからこそ聞ける言葉を引き出すチャンスでもあったからだ。

 

根っこにある、ウタの歪みの原因を知るための。

 

 

「なあ、ウタ!新時代が来た後ってどうなるんだ?」

「え?」

「こっちの世界とは違って新時代ってずっとに続くんだろ?

 おれは万能薬になってみせるって夢があるからウタの世界にはいかないけど…」

 

 

自分の夢を語るチョッパー。

ウタの夢の世界では病気やけがで苦しむ事はない。

 

治すべき病気や怪我のない世界。医者の必要のない世界ではチョッパーの夢は叶える事が出来ない。

 

 

「ヨホホ。そうですね。私も偉大なる航路を回った後、友人に会いに行き、

 私の航海の軌跡を語るという夢がありますのでウタさんの世界には行けませんが…ウタさんの夢はそうではないでしょう?」

 

 

ブルックも生前のルンバー海賊団の航海の中で出会い、途中で別れる事となり、

今も双子岬でルンバー海賊団を待ち続けているアイランドクジラのラブーンという友に再び会いに行くという夢をアフロと共に持っている。

 

 

「…夢を叶えた先…?皆が平和で、平穏な世界で住み続けられるんだよ?

 私の音楽を聞いて、ずっと楽しくしていればいいじゃない」

 

 

どこか危ない光をたたえた目でウタはそう言う。

 

 

「私の歌は、世界中すべての人を―――」

 

 

――なあ、ウタ。この世界に平和や平等なんてものは存在しない。

 

 

かつての場面がウタの脳内にフラッシュバックする。

 

 

「―――やめて」

 

 

――だけど、お前の歌声だけは、世界中すべての人達を幸せにすることが出来る。

 

 

かつての夜。麦わらをかぶったシャンクスが言った言葉。

 

 

「やめて!」

 

 

ウタは衝動的に叫んだ。

今は目の前にいない人間に向けて。

 

手で頭を抱え、縮こまるウタ。

 

 

「もうすぐ、悪い人達がいない、新時代がやってくる」

 

 

ウタは呟く。きっとそうだと自分に言い聞かせているようにしかチョッパーには聞こえなかった。

 

 

(…これ以上刺激するのは不味そうだ)

(チョッパーさん、ウタさんは任せました。私はちょっと周囲を見て…)

 

 

声が届かないようにこそこそと話をし、

ブルックが升席の縁の逆側からウタに見えないように幽体離脱モードでするりと抜けて、

 

 

「おや…?」

 

 

ブルックの目におかしなものが映る。

 

への字の口。皺の寄った眉間。

ムッスーとした顔で胡坐のままステージの片隅で骨付き肉を齧っているルフィが見えた。

 

 

 

 

ルフィはウタの歌に何となくリズムを合わせ揺れたり、軽い鼻歌で真似したり。

それでも何か違うな、と首をひねってすぐにムスッとむくれている。

 

そんな姿を升席で酒を飲みながら眺めるゾロとスープ鍋の前であれこれしているサンジ。

 

騒動からそれなりの時間がたった。

あの気の短いルフィがこれだけの間じっとしていられるのは奇跡的だなとゾロは思う。

 

 

「ルフィは何考えてやがんだ?」

「レディを殴るのは気が引けるんだろ」

「テメェじゃあるまいし、んな事考えるような奴じゃねぇだろ」

「少なくとも、この宴を力づくでどうこうするのは違うって思ってんだろうな」

 

 

ああ、とゾロはちょっとだけ腑に落ちたような顔。

幼馴染をどうこうとなるとゾロにも思い当たるものがあり苦い顔。

 

 

「こちらのウタさんはそのままライブを続けているんですねぇ」

 

 

いつもの骸骨より輪郭の薄い半透明のブルックがしみじみという。

 

 

「…!?」

「…ブルック!?」

「あれ?ゾロさんサンジさんもしかして、見えてます?」

「お前、一体どこに…?チョッパーの奴は?」

「あ、はい」

 

 

ブルックは現状を説明する。

 

何故だかわからないがライブの途中でチョッパーと共に何故か皆の眠っている会場に飛ばされた事。

そこでウタと出会い、このライブの行われている世界がウタの作り出した精神世界であると知らされた事。

チョッパーにウタとの会話を任せて周辺の状況を探ろうと幽体で飛ぼうとしたら何故か精神世界であるはずのここにつながった事。

 

 

「おめぇは大丈夫なのか?」

「本体とつながってる感じはしますので戻る事は出来るかと」

「…なるほどな。通りで何回作ってもスープの味が変わんねぇわけだ」

「テメェずっと鍋に張り付いてたのはそれが原因かよ…」

「黙れ緑マリモ。こっちにとっちゃ死活問題なんだよ!舌が狂っちまったかとひやひやした!

 それにこれじゃ誰が作っても同じ味だ。そうなるならナミすぅわんやロビンちゅわんに褒めてもらえないだろうが!」

 

 

空を抱くようにくるくるくねくねしながら悩まし気に踊るサンジに言葉も出ないゾロ。

 

気を落ち着けるようにサンジは煙草を一回吸って、

 

 

「料理人にとっちゃ地獄だぜ、ここは。精進のし甲斐がねぇ…」

「で?どうなんだ何か策はあんのか?」

「…正直な話こちらは手詰まり感がありますね。ウソップさん達に期待するしか…」

 

 

現実のウタをこれ以上は刺激できない。

それに今説得できてしまうような決意なら自分の命を懸けた計画など実行しようとはしないだろうとブルック。

 

 

「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

ルフィの叫び声がした。

 

ついにルフィの我慢が限界を突破したのだ。

 

 

「おい!ウタ!こんな世界の何が楽しいんだ!」

 

 

ステージの片隅に座っていたルフィの叫びに演奏中の音楽が停止して、

 

 

「ちょっとルフィ!邪魔しない約束でしょ!」

「お前がずーっと歌ってるのを見ながら肉食うだけじゃ詰まんねぇよ!

 こんなのがお前の言う新時代かよ!」

 

 

そんなルフィのいいようにウタはあからさまにムッとして、

 

 

「そうだから子供なんだよルフィ。この平和な時間がどれだけ貴重かわからないんだ」

「知るか!俺は自由に生きてんだ!じっとしてらんねぇ!」

「じゃあ、昔みたいに決闘で決着をつけるしかないね」

 

 

すっと身構えるウタにルフィは、

 

 

「いやだ!」

 

 

拒絶を叫んだ。

 

 

「はぁ?」

「そういう話じゃねぇだろこれは!これのどこがお前の新時代なんだよ!」

 

 

ルフィの叫びに意味が分からない、とウタは困惑の表情。

 

 

「お前は見た事あるのかよ!こんな小さな島で!昔みたいに頭の中に閉じこもってばっかりで!」

 

 

静まり返る会場の中でルフィは叫ぶ。

 

 

「見上げるほどデッケェ巨人族の姿や、雪の島に咲く大きな桜!

 すんげぇ高い空の上に船ごと飛んだ先にあった空に浮かぶ島も!海を走る列車や燃える海!

 雷の降り注ぐ島や山ほど大きな魚の泳ぐ姿も!魚人達が住んでる海の中の国も!」

 

 

対決する2人の巨人。冬の島に咲いた桜。空に浮かび雲を歩ける島。

海の上を走る列車。砂漠の国。燃えて凍る二つの顔を持つ島。

海の中のとんでもない魚の群。魚人達の島。

 

数々の情景が巡る。

多くの海をルフィは旅をしてきた。

 

 

「何が大人なれだ!俺は広い世界を見てる!見に行ってる!

 何にも見たことない癖に!自分の中の頭ん中だけがすんげぇと思ってるんじゃねぇ!」

「…何が言いたいの?」

「お前だってシャンクスの船に乗ってただろ!冒険する楽しみだってしってるじゃねぇか!」

 

 

シャンクスの名にウタは顔をしかめる。

 

 

「あんたは、シャンクスが私に何をしたのか知ってるの?」

「知らねぇ!だけど、シャンクスはそんな事しねぇ!お前が一番知ってんだろ!」

 

 

無茶苦茶すぎるだろ、とゾロは離れた升席で頭を抱える。

 

 

「…じゃあ」

「お前の夢に、俺が海賊で何の問題がある!」

 

 

ルフィは叫ぶ。

 

 

「お前の夢を叶える事に文句はねぇ!ただ俺の夢の邪魔をするなぁ!!」

 

 

元々両立可能な夢だろうと。

 

ルフィはここが夢の世界である事を知らない。

ウタが世界中の人間を閉じ込めて新時代を作る事を計画している事も。

ウタが、今まさに死に向かっている事も。

 

ルフィがわかっているのはウタが海賊を嫌いになったフリをしていて。

何故かこの島にルフィ達を足止めしようとしている事だけだ。

 

ルフィは許せない。

 

新時代を作ると約束した相手が、自由じゃないままに、曇った顔のまま。

これで夢がかなったなどと言っている事が。

 

 

「おい!ルフィ!」

 

 

突然、サンジが叫ぶ。

ルフィはサッとその場から飛びのいた。

 

次の瞬間、上から降ってきた大きな影がルフィのいた場所を両手を組んだアームハンマーで破壊する。

 

 

「ゥタァァァ……」

「…ゴードン?」

 

 

のそりと身を向けた相手をウタが困惑する声で名を呼ぶ。

 

その人影はゴードンと呼ばれていた男の面影があった。

 

だがこんな幽鬼のような低い這うような声ではなかった。

こんな巨体でも、いきなり暴力を振るうような人柄でもなかったはずだ。

 

その異常な体は服が今にも弾け飛びそうなほどに不自然に肥大化し、

両拳が降り降ろされたステージの一角は抉れるように砕けていた。

 

 

「なんだアイツ…?」

「ハァハッハハハッハハハー!」

 

 

トットムジカの耳障りな高い笑い声が響く。

 

 

「…カジム…?」

「やれよぉ、ゴォドォォォン。かぁい賊だぜぇ!」

 

 

トットムジカの声を聴き、その巨体に似合わぬ速度でゴードンが升席に飛び、ゾロに向かって拳を振り下ろした。

 

 

「…ッチ!」

 

 

ゾロは持っていたジョッキを放り捨て、剣で受けるが耐えきれずに吹き飛ばされる。

 

 

「何しやがるこの!」

 

 

サンジは升席に乗り込んできてゾロを吹き飛ばした格好のゴードンに咄嗟の動きで足技を叩きこむが、

 

 

「重ェ!?」

 

 

全力ではないとはいえゴードンの巨体はビクともしない。

 

ゴードンは叩き込まれた足を掴み、力任せに放り投げる。

 

 

「ゾロ!サンジ!」

 

 

ルフィはその光景を見て叫ぶが、

 

 

「ルフィ、こっちはいい。退屈してたんだ。相手になってやるぜ。

 おいクソコック!これ以上は手も足も出すなよ!」

「…チッ!やられんじゃねぇぞ」

 

 

吹き飛ばされたが即座に跳ね戻ってきたゾロの返事。

空中を跳ねて体勢を立て直し少し高い所に着地したサンジの悪態。

 

ルフィは、ステージの奥から高笑いと共に出てきたトットムジカに目を向ける。

 

 

「なんだお前?」

「俺ぇ?俺ぇは…」

「カジム!何してるの!?ゴードンに何をしたの!?」

 

 

ウタがトットムジカに詰め寄る。

 

ニヤニヤとトットムジカは嗤った。

 

 

「ああ、ウタ。そう名ぁ乗ってたんだっけなぁ」

 

 

バッと万歳するように手を広げ、ウタに大仰に頭を下げるトットムジカ。

 

 

「あぁりがとよぉ、ウタ!食ぁべたんだろうぅ!?ネズキノコをぉ!

 だぁから、さようならだぜぇ…」

「は…?何言ってんのカジム…」

「分ぁからないか?お前はもうよぉ済みさぁ!」

 

 

アハハハハと狂気じみた笑い声をあげ、

 

 

「俺ぇはトットムジカ!エレジアに封じられた魔ぁ王にして、ユメユメの実の能力者さぁ!」

 

 

トットムジカの狂ったような笑い声だけが響く。

 

 

「ユメユメの実…?」

「これは…!?」

 

 

会場は静かだった。あまりに静かだった。

あれだけ盛り上がっていたライブが中断されたにもかかわらず。

 

辺りを見まわしたサンジは観客席にいる誰もが彫像のように動きを止めている異様な光景に気づいた。

 

 

その観客の顔がドロリと、溶けた。

 

老いた老人の顔が、若い女性客の顔が、少年の顔が、少女の顔が皆解けて黒い塊になっていく。

 

塊はもぞもぞとうごめき、やがてウタの出した音符の兵隊のような人型になった。

 

その全てが、嘲笑うような顔が、ウタを見ている。

 

 

「ぅタァァァァ!」

「それしか、言え、ねぇのか!」

 

 

ゾロは巨大な拳を振り下ろし続けるゴードンの攻撃を弾き続ける。

 

 

「三刀流!牛鬼勇爪!」

 

 

ゴードンの早いとはいえ大振りの攻撃にゾロは体勢を低く3刀を構え突進し、その攻撃を跳ね除け突きを放つ。

 

攻撃力特化の突きの攻撃がゴードンに直撃するが、その切っ先は、

 

 

「どんな硬さしてやがる…!?」

 

 

手ごたえは確かにあるが通らない。

 

 

「ぅまない…ぅタァァァァ!」

「ッチ!」

 

 

赤い雫を顔から滴らせ、ゴードンは叫ぶ。

 

その叫びは衝撃波となって周辺を吹き飛ばした。

ゾロはたまらず升席からステージへ飛び移る。

 

 

「能ぅ力を使いすぎて眠らないように!馬ぁ鹿みたいに感情に振り回されて!

 しぃん時代の呼び水になって…死ね。俺ぇの為にさぁ」

「何言ってんだお前!ウタ!なんだこいつは!」

 

 

トットムジカの名を聞いたウタは自分の身の震えを止める事が出来なかった。

 

その名を、ウタは知っていた。

 

 

「カジム、嘘だよね。だって、私のウタウタの実には新時代を作る力があるって…

 ファンの皆は新時代に行きたいって…」

 

 

トットムジカは嗤っている。

 

見ているその顔が突如水のようにぐにゃりと歪んだ。

 

グニャグニャと粘土のように形を変え、整ったその後、そこには女性の顔があった。

 

 

「『私達みたいなのには皆興味がないんだ』」

 

 

もう一度歪む。老人の顔があった。

 

 

「『私の息子は海賊に殺された』」

 

 

そして、もう一度変化して。幼い少女の顔になる。

 

 

「『ずっとウタちゃんの歌だけ聞いて過ごせるような世界に行けないのかな…』

 そぉんな事、誰が言ったんだぃ?ウタぁ…」

 

 

少女の顔のまま、トットムジカの声でそう言った。

 

それらの顔をウタは覚えていた。

映像電伝虫を通して感想と感謝を述べてきたファンの顔だ。

 

 

「あ…ああ…」

「…ウタ?お前!ウタに何を…!」

 

 

飛び込んできたゴードンがルフィを殴り飛ばす。

急な攻撃に対応しきれず、ルフィは縦に回転しながらステージの反対側に吹き飛ばされた。

 

トットムジカは元の顔に戻り、高らかに笑う。

 

 

「ハァハッハハハッ!だぁれの為だって?こぉれだからガキはよぉ!

 夢の中がへぇい穏!平和!え~い遠に続く理想ぉの世界だってさぁ!」

 

 

トットムジカはウタの新時代のすべてを嘲笑う。

 

 

「バカがよぉ!愚かなまま死ねよぉ!

 死んだらなぁんにもねぇ!幸せに体なんて必要ない?

 やったこともねぇ癖に賢しらに、分かったように語りやがってぇぇ!」

 

 

嗤いを即座に憤怒に変えトットムジカは叫ぶ。

 

 

「夢の世界はなぁ!平和さ!へ~い穏さ!常に凪いだなんんんんんにもない退屈な世界さぁ!!」

 

 

耳を塞ぎ、ウタは座り込む。聞きたくないと。

 

 

「驚きがない!進歩がないぃ!成長も!過~去すら忘れて何もなくなっていく!

 当然だぁ!俺ぇ達は、俺ぇ達が知るものしか知らない!お前の歌さえ聞いていればみんな幸せになれる!?

 独りよがりを押し付けるんじゃねぇよクソガキィッ!お前ぇの席なんざ最初からこの世界にはねぇんだよ!!」

 

 

座り込んだウタを殴りとばそうとトットムジカは鍵盤のような右腕を構え体を捻り、バックハンドで右腕を振るう。

 

 

「ウタに何しやがる!」

 

 

その拳を寸でのところで、ルフィが受け止める。

 

 

「ウタ!お前もやられっぱなしじゃねぇだろ!さっきみたいに…!」

「できない…ウタウタの能力が…」

 

 

トットムジカが現れてから何度もウタは能力を使おうとした。

だが自分の思い通りになるはずの世界は、何一つウタの思い通りになる事はなかった。

 

 

「ここはもぉう、ユメユメの世界。

 お前のウタウタの能力で眠らせた人間も世界も全て俺ぇの支配下さ。こんな風に、な!」

 

 

叫びと共に腕が振るわれ、それを受け止めていたルフィがまた吹き飛ぶ。

それと同時にトットムジカも後ろに飛ばされた。

 

「うわぁー」と緊張感のない叫びと共に海に落ちそうになったルフィをサンジが受け止め回収した。

 

 

その光景を見て後ろに飛びながらトットムジカは舌打ちをする。

 

今の一撃でルフィを無力化する予定だったのがそうはならなかった。

それどころか薙ぎ払いに合わせて力をぶつけられトットムジカは後ろへ飛ばされた。

 

この世界は未だユメユメとウタウタの両方の能力が混在する世界なのだ。

全てがトットムジカの思い通りになるわけではない。

 

しかし信じてきた全てが揺らぎ、毒に蝕まれるウタと

積み上げてきた陰謀が結実したトットムジカ。

 

その差は夢の世界の支配権の多くをトットムジカに握らせている。

 

 

「お前が鍵さウタ!お前の歌が全てを奪うんだ!」

 

 

コロンと後ろに一回転して跳ね立ち、嗤う。

 

 

「さいっしょっからさぁ!さいっしょっから大嘘さ!俺ぇも!」

 

 

ウタを追い詰め、この世界を奪う為に。

 

 

「お前も!皆を幸せにしてみせる?ファ~ンのためぇ!?

 逃げたいだけだろぉ!?言葉を飾って目をそらしたいだけだろうぉ!?」

 

 

だからトットムジカは虚偽を歌う。

 

 

「エぇレジアを!今もまた豪ぉ勢に世界中の人間を皆皆殺して!

 自分は悪くないって酔っぱらいながら何かもから逃げ出したかっただけさぁ!」

 

 

ウタが覚えている惨劇。エレジアを焼いたあの夜は全てウタが起こしたのだと。

 

そして、これから現実世界で起こる全てはお前が招いたのだとトットムジカは嘯いた。

 

 

「ほぉぼした…!ぅタ…!ぅまない…!」

 

 

助けを求めようとしたウタは聞く。

 

異形と化したゴードンはゾロを相手にその暴威を振るい続けていた。

その目からは赤い涙。口からは謝罪の言葉を吐き続けながら。

 

ゴードンの人柄を知るウタにとってその途切れ途切れの言葉はあの夜の惨劇の肯定にしか聞こえない。

 

 

ウタに見える何もかもが、悪夢に落ちていく。

 

 

嗤うトットムジカ。異形と化したゴードン。嘲笑うように責めるように見つめる観客だった全ての人。

 

ルフィがウタの横に立つ。

 

ウタは手を伸ばし、ルフィの服の裾を掴む。

 

そんなウタに目もくれずルフィはトットムジカを睨みつけたままだ。

 

 

「…ルフィ…」

 

 

すがるように言葉を口にする。

 

 

「…助けて」

 

 

そして、

 

 

 

「嫌だ」

 

 

 

 

ルフィのはっきりとした拒絶の声。今度こそ何もかもに見捨てられたとウタは消えてゆく。

 

ユメユメの世界から弾かれ。夢に逃げる事も出来ずに、その場からウタの姿は消えていった。

 

 

 





映画の納得いかない点その7・トットムジカが良くわからない
悪魔の実が存在する世界だからまあ魔王が存在してもおかしくはないんだろうけど…
それともいつか何かしらの補足があるのか。
小説版も読んだけれどよくわからないとしかならなかった。


原作の映画はまあまあ良かった。

個人的に引っかかる部分が多かったからこんな小説を書いてるのですが
自分で書いているとあまりの文才と物語構成能力の無さに絶望する…。
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