ウマ娘漫才風小話集   作:愉快な笛吹きさん

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ドトウ「わ、私が年度代表ウマ娘にいい〜!」

「トレーナーさあ〜ん! ど、どどどどどど」

 

「工事現場のモノマネか? どうしたんだいきなり」

 

「ど、どうすればいいですかあ〜! さ、さっきたづなさんから話がありまして! わ、私が年度代表ウマ娘に選ばれたって」

 

「ああそうみたいだな。ま、宝塚に秋天に有馬まで取ったんだから選ばれたっておかしくないだろう」

 

「あうう……良いんでしょうか? 私なんかが選ばれてしまったら問題になるんじゃ……」

 

「問題になんかならないさ。ドトウが結果を出したからこそこうして認められたんだから」

 

「で、でも……選ばれたってことは、大勢の人たちの前でスピーチをするんですよね? 問題になるんじゃ……」

 

「それは問題になるな。どう予想しても噛み噛みでグダグダになる結果しか出てこない」

 

「ううっ、そうですよね……ならやっぱり式は欠席します〜。会場には猫のヌイグルミでも飾っておいてもらえれば……」

 

「放送事故かよ。まあいくら苦手とはいえ、ここで放り出すのは応援してくれたファンの人たちにも失礼じゃないか?」

 

「ううっ、じゃあどうすれば……」

 

「というわけで練習あるのみだな。幸い当日まで時間はあるし、何度もリハーサルすればマシになってくると思うぞ」

 

「な、なるほど……わかりました。じゃ、じゃあ早速特訓しましゅね。聞いて下さい」

 

「とりあえず噛まないようにな……」

 

「で、ではいきます! ――ほ、本日はお日柄もよく」

 

「式典は夜なんだが」

 

「ひゃあああごめんなさいごめんなさい……終わります」

 

「いや終わるなよ。何一つ始まらなかったぞ」

 

「で、でも、こういうときに一体何を言えばいいのかわからなくてぇ……」

 

「よくそれで見切り発車しようとか思ったな……とりあえず最初は自己紹介からだな。マイクを渡されたら只今ご紹介に預かりました○○です、って言っとけばまず大丈夫だろ」

 

「わ、わかりました。で、ではいきます――マイクを渡されたらただいまご紹介に預かりましたマルマルです。よおし、言えましたあ!」

 

「そうだな。でもシチュエーション部分まで口にしなくてもいいからな。マルマルのところも自分の名前を当てはめるように」

 

「わ、わかりました……ただいまご紹介に預りましたメイショウドトウですう」

 

「うんうん、らしくなってきたな。じゃあ次は受賞を知ったときの気持ちを伝えてみるといい」

 

「わ、わかりました。ええと、受賞を知った時は穴に入りたい一心で、この式のことを思うと毎晩枕元でぶるぶる震えていました」

 

「魔王でも襲来してきたかのようなコメントだな……まあ緊張しているのは事実だし、もうちょっと前向きな言葉に変換してみようか」

 

「そ、そうですね。で、では……受賞を知った時は身体がかーっと火照ってきて、この式のことを思うと毎晩身体がもぞもぞしていました」

 

「悪くはないが、妙ないやらしさを感じるな。ウマスポ的というか……いや、いい。もう一声だ」

 

「受賞を知った時はとても驚いて、この式のことを思うと毎晩どきどきしていましたあ」

 

「よしよし上出来だぞ。じゃあそのまま周囲の人たちへの感謝に繋げていこう」

 

「は、はい――こんな私がここまでやってこれたのも、トレーナーさんやオペラオーさん、アヤベさんにトプロさん、あといつも忘れ物を教えてくれる同室のシャカールさんに、前向きな言葉をかけてくれるウララちゃんに、同じ不幸仲間のライスさん、あとは――」

 

「いや多過ぎるわ。あと最後何気に失礼なこと言ってるぞ。とりあえず一人ひとり挙げていくのはキリが無いから、適度にグループ化していくんだ」

 

「な、なるほどぉ〜、参考になります。で、ではもう一度――こんな私がここまでやってこれたのも、トレーナーさんやライバルのグループA、日常生活をサポートしてくれたグループB、哀れなグループCがいてくれたから――」

 

「商品説明のプレゼンか。哀れなグループCとかさっきよりなお酷くなってるからな。グループ分けをしたら代表者を一人ずつ挙げていく形でいいんだよ」

 

「な、ならこんな感じでしょうか……こ、こんな私がここまでやってこれたのも、トレーナーさんは勿論、オペラオーさんをはじめとしたライバルの存在や、日頃おっちょこちょいな私を気遣ってくれるシャカールさんたちがいてくれたおかげです」

 

「いいじゃないか。ライスのグループを口に出さなかったのも好判断だぞ。ここまで来たらあと少し。最後は今後の抱負や目標を伝えてから御礼の言葉で締め括るんだ」

 

「は、はい。これで最後ですね。いきます――こ、これからもカッコいいオペラオーさんの3歩後ろを金魚の糞のようにくっついていきたいと思います。ありがとうございました」

 

「貞淑な妻かパシリかわかんねえなこれ。何にせよ、ちょっとへりくだり過ぎだな。他人におもねる目標じゃなくて、自分がやりたいこと、頑張りたいことを一番に押し出していくんだ」

 

「わわわ、私如きがそんなことを皆の前で主張するなんてえ……む、無理です。それができるんなら翌日には日本が爆発しちゃってますよぉ」

 

「核スイッチか何かか? 何をどう転んでもそんなことにはならんから安心してくれ。それで、いったい何を目標にしていくんだ?」

 

「ううう、そ、それは当日までの秘密ということでえ……」

 

「……? ああわかった」

 

 

 ――式典当日

 

「――シャカールさんたちがいてくれたおかげです」

 

(よしよし良い調子だな。結局最後まで目標は聞けなかったけど……まあサプライズだと思うことにしよう)

 

「そ、それで今後は……いっぱいレースを頑張って、ドジをしないようにして。それで、それでええ――いつかトレーナーさんに告白しまあああす! ありがとうございましたあああ!」

 

「えええーーー!!」

 

(えええーーー!?)

 

『あ、ありがとうございましたメイショウドトウさん。しかしまさかこのような場でトレーナーさんへの想いを口にされるとは……本当に驚きました』

 

『いや凄いサプライズでしたね。ご覧下さい。現在受賞式が検索トレンド一位、各SNSや動画コメントも末永く爆発しろ、などの投稿で溢れかえっております!』

 

「……ええと、とりあえずお疲れ様。ドトウ」

 

「はいい……トレーナーさんの特訓のおかげで何とか言うことができました〜。そ、それで……どうでしょうか……」

 

「ん、まあ……何というか、マジで爆発しちゃってるな日本。やっぱりお前は凄いウマ娘だよ」

 

 そう言うと、参ったとばかりに両手を上げる。

 すっきりしたのだろう。えへへと笑うドトウの顔は少しだけ誇らしそうに見えた。

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