ウマ娘漫才風小話集   作:愉快な笛吹きさん

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クリーク「一緒に読み聞かせをしてほしいんです」

「トレーナーさん、おりいってお願いがあるんです」

 

「ん? どうした? 授乳体験はまだ踏ん切りがつかないってこの前断ったはずだろう?」

 

「ええ。でも気が向いたらいつでも言って下さいね。そうじゃなくて、今度実家で子どもたちに読み聞かせをやることになったので協力してほしいんです」

 

「それならお安い御用だ。涎掛けとおしゃぶりは準備した方がいいか?」

 

「おしゃぶりは大丈夫ですよ。着けたままだと流石に話しづらいですから」

 

「そうか、助かるよ。それで一体何を読み聞かせるんだ?」

 

「桃太郎です。初めてだから理解してもらいやすい方がいいかなと思いまして〜」

 

「うん、いいんじゃないか? それじゃあ早速練習しないとな」

 

「ちゃんと、でちゅねを付けるのを忘れないようにして下さいね〜」

 

「おっとすまない、わかったでちゅ。それでは――昔々あるところに」

 

「赤ちゃんごっこが大好きなおじいさんとおばあさんが住んでいました」

 

「いきなり特殊性癖が付与されたけど大丈夫でちゅか?」

 

「ええ、問題無いですよ〜。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯に行きました」

 

「ミルクやよだれでいつもベトベトになっちゃうもんな。毎日の手入れは大事でちゅ」

 

「おばあさんが洗濯を終えたその時です。突然上流から、トレーナーさんのお尻4つぶんくらいの桃が流れてきました」

 

「毎日のオムツ替えのおかげでサイズはばっちり把握されてまちゅからね――『何とも大きな桃じゃのう』そう言うとおばあさんは桃を大切に抱えて持って帰ることにしました」

 

「こんな感じですね〜ほおら、いい子いい子」

 

「ばぶばぶ、ばぶばぶ…………ええと、おじいさんが山から帰ってくるとおばあさんは早速桃を割ることにしました。赤ちゃんのように大切にしてたのに速攻でかち割る辺り、確かなサイコパスみを感じるでちゅ」

 

「桃の中から現れたのは身長約50㌢体重約4500㌘の元気な赤ちゃんでした。おぎゃあと泣いたその子を宝物のように抱き上げたおばあさんは愛おしそうに何度も頬ずりします。その姿を見たおじいさんは、『次は自分の番じゃ』と声を上げました」

 

「ちらほら省略してもよい描写が見受けられまちゅね……おじいさんのくだりまでやるでちゅか?」

 

「『はいどうぞ、おじいさん』とおばあさんが言うと、たちまちおじいさんは仰向けになりました。『マンマ、マンマ』と嬉しそうにおばあさんを手招きしています」

 

「自分の番ってそっちの意味でちたか。まだまだ精進が足りないでちゅ」

 

「思う存分赤ちゃんごっこをしたあと、二人は子供に名前をつけました。桃から生まれたので桃太郎です。二人からたっぷりに愛情を注がれた桃太郎はすくすくと大きくなりました。時に反抗的になったり乱暴な口を利くこともありましたが、それもまた成長の証です」

 

「一気に思春期にまで突入ちまちたね。ここは母の忍耐力が試されまちゅよ」

 

「ちょうどそのころ、都では多くの鬼さんたちが暴れていました。我が子を感情的に怒ったり、周りの子と比較したり、興味の無い習い事をいくつもハシゴさせるんです」

 

「いわゆる鬼母。現代社会でも今なお起こっている根深き問題でちゅね」

 

「噂を聞いた桃太郎は子どもたちを救うために立ち上がります。二人から沢山のきびだんごをもらって旅に出た桃太郎は、途中で弁護士さん、児童保護施設の所長さん、政治家さんの三人をお供にします」

 

「さすが黄金色のきびだんごは効果抜群でちゅね」

 

「都に着いた桃太郎たちは早速裁判所に向かい、訴状を提出しました。長く厳しい法廷闘争の始まりです」

 

「いくら問題でもやっぱり暴力はだめでちゅからね。正当な手段でちゅ」

 

「弁護士さんは六法で噛みつき、所長さんは集めた証言で相手を引っ掛け、政治家さんは鬼母の旦那さんの会社を影から突っついて圧力をかけ続けました」

 

「最後えげつないやり方でちゅね。刺されても文句は言えないでちゅよ」

 

「そして、ついに鬼さんたちは降参しました。涙を浮かべながら、しきりに家のローンを気にしているようでした」

 

「脅しが効きまくってまちゅね……トラウマになってしまわないか逆に心配になってきまちゅっちゅ」

 

「こうして子どもたちの平和を守り抜いた桃太郎は、おじいさんおばあさんの元に帰ります。それからは三人で幸せに暮らしました。めでたしめでたし――どうでしたか? トレーナーさん」

 

「うん、中々良かったよ。けど最後は『赤ちゃんごっこをしながら幸せに暮らしました』の方が良くないかな?」

 

「まあまあ。そうでしたね。ありがとうございます、トレーナーさん」

 

「それじゃもう一回頭からいきまちゅよ」

 

「はい。いつでもどうぞ〜」

 

 

 

 

「――い、一体何だったんだあれは……あ、あれがクリークのトレーナーなのか?」

 

「そうや。ああなってしもたらもう引き返せへん。ステージ4や。全てのプレイを受け入れ、肯定してしまうようになる。ウチももう少しでああなるところやった……」

 

「それは見てみた――いや、恐ろしいな」

 

「今見てみたい言いかけたやろ……まあとにかく、これでクリークの恐ろしさはわかったな?」

 

「ああ……そうと決まればすぐにこの場を離れよう。もうこんな恐ろしいところにはいたくない」

 

「あ、アホ! 去る前にそんなフラグを立ててもうたら――」

 

「――あらあら。誰かと思えばその声は、タマちゃんとオグリちゃんじゃないですか」

 

「―――っ!」

 

「うふふ、隠れんぼなんかしてないで、そこから出てきて下さい。今日はオフなので、夜までい〜っぱい、いい子いい子してあげられますから。お友達ができて嬉しいですよね、トレーナーさん」

 

「ああ、皆で早く一緒にオムツを履きたいなあ。最初は抵抗あるかもしれないが、なあに慣れれば快適さ」

 

「「ひっ! た、助け……うわあああ!」」

 

 〜終〜

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