ウマ娘漫才風小話集   作:愉快な笛吹きさん

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フラッシュ「やっぱり映画はいいですね」

 ――映画館前――

 

「ふう、素晴らしい話題の映画でしたね。お菓子の国に行った子供たちのハラハラドキドキの大冒険。観た後に猛烈にスイーツが食べたくなるという宣伝文句は嘘じゃないようです」

 

「あれ、フラッシュじゃないか」

 

「あ、トレーナーさん偶然ですね。もしかしてトレーナーさんも映画を見に?」

 

「ああ、何か時間がぽっかりできてさ。せっかくだから今の話題作でも観てみようと思って」

 

「そうですか。私もさっき観終わりました。内容は控えますが、とても刺激的な映画でしたよ」

 

「そうなのか、楽しみだな」

 

「ええ、楽しんできて下さい。また明日にでも映画の感想を語り合えたらと思います」

 

「そうだな。それじゃあまた明日」

 

 

 ――二時間後――

 

「いやさすが問題になった話題作だな……そんじょそこらのうまぴょいビデオよりよっぽどエロかったぞ。ていうかフラッシュはあれを最後まで鑑賞したのか……」

 

 

 ――翌日

 

「お疲れ様です」

 

「ああ、お疲れ様フラッシュ。映画観たけど確かに刺激的だった。よくあれ上映できたよな」

 

「そうですね。やはり子供から老人まで皆が楽しめる内容だったからだと思います」

 

「こ、子供は楽しめるのかな、あれ……ドロッドロの不倫ものだったけど」

 

「(トロットロのプリン……ああ、ありましたね)ええ、さぞ喜んだと思いますよ。私も割と好きですし」

 

「え、マジか? フラッシュはそういうのに厳しいと思ってたけど」

 

「実家はケーキ屋ですが、何もケーキしか作らないわけではありません。それと同じかと」

 

「印象だけで判断するなってことか……すまない。少し軽率だった」

 

「いえ……それで、トレーナーさんはどの場面がよかったですか? 私はヒロインがチェリーを美味しく食べるところなんですが」

 

「ああ、あそこな。ヒロインがほんと恍惚としていたよなあ。俺はあそこかな。いけないと思いながらも主人公が徐々に抗えなくなっていくところ。葛藤や苦悩が実によくわかるシーンだった」

 

「そうですね。昼どきにあの誘惑は抗いがたいものがありました。私も映画館を出たあとすぐに食べに向かってしまったくらいで」

 

「えっ? た、食べにって……そういう意味のか?」

 

「……? 他の意味があるようには思えませんが? 検索して、評判が良かったところで済ませました」

 

「そ、そうか。はは……そ、それで……どんな感じだったんだ?」

 

「そうですね。評判通りサービスは良かったと思います。店内も清潔で、メニューもかなり豊富でした」

 

「豊富な……メニュー……な、何を頼んだんだ?」

 

「初めてだったので、とりあえずマスターのオススメ的なものにしました。ああいうのが一番お店のカラーが出ると思いますから」

 

「く、う……ま、まさか、オプションなんかも?」

 

「鋭いですねトレーナーさん。レビューにホットミルクが新鮮でオススメと書いてありましたので、1杯注文しました」

 

「い、一杯注文したのか……代わる代わるやって来て、お前を……」

 

「あ、そうなんです。案内してくれた店員さんの一人がトゥインクルシリーズをよく見ている方だったみたいで。私がダービーウマ娘だとわかった後は、スタッフの方々が入れ替わり立ち代わり写真や動画を撮りに来られました」

 

「ぐふうっ! ああ、あ……」

 

「あ、一応ネットなどには上げないように伝えておきました。その代わりにぜひまた来てほしい、とはお願いされましたが」

 

「い、いや……ダメだフラッシュ! そんな誘いに乗っちゃいけない。これは罠なんだ。行けばお前はまた食い物にされてしまう!」

 

「まあ割と高くつきましたのでその自覚はありますが……それに見合う味ではあったのでまた行きたいと思います。この間は栗を沢山剥いて仕込んだらしく、もうすぐ新しい商品が出せるとのことでした」

 

「ク、クリを剝いて商品にって……そ、そんなの、最後には金持ちの中年親父に買われる未来しか残ってないじゃないか!」

 

「ええ、富裕層の方々には大変人気があると聞きました。プレゼントにちょうどいいらしくて」

 

「くうう……なんで……そうまでして」

 

「まあ言ってしまえば探究心ですね。あ、良かったらトレーナーさんも一緒にどうですか?」

 

「お、俺……も?」

 

「ええ。一度実物を見てみるべきかなと。映画のラストのように、店内では皆笑顔に溢れていましたから」

 

「映画のラスト……ああ、確かに誰もが笑顔だったな……俺も同じさ。涙が溢れ出そうなのに、何故か興奮しながら笑ってしまうんだ……」

 

「そんなにも食べたかったんですね……なら是非一緒に」

 

「いや、俺は止めとくよ。その代わり、お店に行った時の話を後で聞かせてくれ。なるべく、詳細にだ」

 

「え、ええ……わかりました」

 

 ――数日後――

 

「ったくお前は……あのエイシンフラッシュがそんなことするわけないだろ?」

 

「そ、そうだよな。てっきり俺……」

 

「まあ何かの勘違いだって。そんなに心配なら今日は彼女オフなんだよな? ちょっと連絡取ってお出かけでもしてこいよ」

 

「そ、そうだな……よし!」

 

『――あ、トレーナーさん。どうしましたか?』

 

『ああ、フラッシュ。休みのところ悪い。今ちょっと時間あるかな』

 

『い、いえ……今はちょっと手が離せなくて……え? あ、わかりました。ちょっとオーナーさんに変わりますね』

 

『オ、オーナーだって? も、もしもし、フラッシュ?』

 

『ちぃーす、そちらエイシンフラッシュさんのトレーナーさんッスか?』

 

『だ、誰だ……君は?』

 

『何言ってるんスか。この店のオーナーッスよ。いやあフラッシュさんこないだからすっかりウチのファンになっちゃったみたいで。今日も予約してくれるっていうから宣伝も兼ねて他の客たちと交流会してくれないかって訊いたら二つ返事でOKしてくれたんスよ。いやー本当、良い娘ッスねえ』

 

『な、何……だと』

 

『へへっ、ダービーウマ娘が来るからってもう皆写真やら動画やら取りまくりッスよ。まあフラッシュさんも嬉しそうにしているんで企画した甲斐があったってもんですがね』

 

『あ、あ……』

 

『ま、お礼に俺からもたっぷりサービスしますんで。帰って来たらさぞお疲れだろうからたっぷりねぎらってやるといいんじゃないッスかね。んじゃフラッシュさんに代わりまーす』

 

『フ、フラッシュ……』

 

『あ、トレーナーさん……あ、駄目ですよ。順番にお相手しますから、きちんと並んで下さい。それで、何かご用でしたか?』

 

『……いや、大したことじゃないから、もう切るよ。また帰ってきたら……話を聞かせてほしい』

 

『ええ、わかりました。あ、押さないで――』

 

「…………」

 

「…………すまん」

 

「いや…………でも、俺は……俺はどうすればいい?」

 

「……その時、ふと閃いた! この経験はエイシンフラッシュのトレーニングに――」

 

「活かせるわけねえだろ!」

 

 ――その後、全て誤解だったとわかったトレーナーは実に様々なアイデアを閃いたとか。

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