環境破壊が進み、人の住めるところすら制限されてしまったこの世界で、その自由度の高さ、グラフィックの華麗さから瞬く間に人気を掻っ攫ったゲーム。一時期は社会現象すら起こしたこの
それに伴い、頂点に立つという野望を抱えた数多のプレイヤー、ギルドやクランは廃れていき、かつてのあの輝きは見る影も無くなっていた。
そしてそれは、1500人の侵攻をも撃退し、たった四十一人で当時のギルド世界ランキング10位以内にも上り詰め、その数々の悪名から非公認ラスボスとまで謳われた伝説のギルド【アインズ・ウール・ゴウン】も例外ではなかったーーーー
「今日がユグドラシルサービス終了日ですし、せっかくですから、最後までのこっていかれません…か」
悪名高きギルド【アインズウールゴウン】の本拠地、ナザリック地下大墳墓の第九階層、巨大な円卓を中心にした部屋。
その円卓を囲むように41人分の席が置かれている。そんな多くの席があると言うのに、しかし、座っている人物はただ一人。
最終日はみんなとユグドラシルを終えたいと思い、彼ーーアインズウールゴウンギルド長であるモモンガは、ギルドメンバー全員に久しぶりにみんなで集まりませんかといった連絡した。
が、結局来たのはヘロヘロただ一人。そのヘロヘロもブラック会社勤めということもあり、疲れから早々にログアウトした。
「はぁ……」
一人、ため息をつく。
思えば、もう1年ほど前からずっと一人だった。一人でログインして、一人でナザリックの運営のための資金を集めて、一人で攻め込んできた敵を相手にして、でもそんな敵ももういなくなって、ほんとに一人になって、ずっと一人で………。
あんなに輝いてたみんなとの思い出は、次々とメンバーが抜けていくことによってもはや過去の遺物となっていた。
そんな事を考えて、憂鬱になりながら時計を見ると、23:30:30。
後三十分ほどで、12年間の思い出は消えてしまう。
そう考えるとまた、鬱々とした気持ちになる。
せめて、みんながいたら、あの輝かしい宝があったなら、こんな気持ちにもならなかっただろう。
しかし、その考えはすぐに取っ払う。ダメだダメだ。こんなの、みんなのせいだって言ってるようなものじゃないか。
仕方ないんだ。みんな、ゲームより現実を優先しただけで、それは当たり前のこと。こんな、何にもならないゲームに縋っている自分がおかしいんだ。
そうだ、仕方がないんだ……。
(とりあえずはここを出よう。ここに残っていても何も良いことはなさそうだ。)
ーーーーー
大理石の床に、シャンデリアから照らし出される美しき碧の光が反射されている。
中央には赤い絨毯が引かれており、その先にあるのは玉座。神々の住処だと言われたら信じてしまうほどの広間。
そしてその玉座に君臨するのは、アンデットの最高位種族である
「いつ見てもすごいな……ここは」
モモンガは最後を迎える場として、ここーーーーーーー玉座の間を選択した。
玉座の間はナザリック地下大墳墓の最下層、第十階層に位置する大広間だ。
ここを攻め切られるということは即ち、アインズ・ウール・ゴウンの敗北を意味する。
と言っても、例えどんなにプレイヤーたちが攻め込んでこようが第八階層で【あれら】たちと共に敵を殲滅してしまうので、ここを攻め切られるどころか、仲間たちやNPC以外に足を踏み入れさせたことすらない。
(アルベド…)
玉座に座りながらちらりと横を見ると、艶のある黒の髪をした、なんとも眉目秀麗な女性が微笑みながらこちらを見て立っていた。
しかし、その頭に生える角と、腰から生えている翼が人間ではなく異業種であることを示している。
(どんな設定だったか…うわ)
ふと彼女の設定が気になり覗いてみる。すると、なんとも長ったらしい文章が連なっていた。
(設定魔だったもんな、タブラさん)
彼女ーーーアルベドを創ったダブラ・スマラグディナは狂気的なまでに設定に拘る人だったと、モモンガは思い出す。
(でも、空っぽだった自分にとってはそれも楽しかったんだよな)
そんなことを考えながらも、数十秒くらいスクロールしていたモモンガは最後にある文を見つけてしまう。
“ちなみにビッチである”
「えっ…」
あまりにも衝撃的するそれに、思わず驚きの声が出た。
(ギャップ萌え…)
そういえば、ダブラさんは普段クールな女性が笑うとすごく可愛かったとか、そういうのが好きな人だった。
彼女ーーーアルベドは一見すればお淑やかに見えるし、なんなんら天使にも見える。とういうかダブラさん自身がそう設定している。
だからこそ、そういう清楚そうな人だからこそ、ビッチだったら萌えるとか…?
まあ、確かに自分もギャップに萌えることは何回かあるが……
(いくらなんでもないだろこれは…)
かつての仲間にちょっぴり引いたモモンガは、ここに来る際に持ってきたスタッフ・オブ・アインズウールゴウンを使い、普通はツールがないと変えることができないNPCの設定を変更する。
羅列するビッチであるという言葉を消去し、どんなモノに変えようかと思考した。
別に何も書かずにそのままにしても良いのだが、モモンガのちょっとした子供心からくるそれが、なにか別のものに書き換えようぜと言ってくるのだ。
(モモンガを愛している……うわーー!恥ずかし!)
正直こんなのビッチよりも恥ずかしいじゃないかと思うが、まあ最後なんだしタブラさんも許してくれますよね…?
そんな希望のような疑問を抱きながら、確定ボタンを押し、設定を閉じる。
(はぁ…明日は四時おきか…早く寝ないと、仕事に差し支える…)
普通の社会人であるため、平日である明日も当然仕事だ。
円卓に居た時とは別の憂鬱さを感じながら、目を瞑る。時刻は23:59:50:。あとはもうただこのユグドラシルの終わりを待つだけ。
「楽しかったんだ……」
ほんとうに…楽しかったんだーーーーーーーー
00:00:00
00:00:01
「んっ…?」
モモンガはすぐにその違和感に気づいた。
(?…なんでサーバダウンしないんだ)
そう、時刻はもうとっくにサービス終了時間を過ぎている。
だから、普通ならここでユグドラシルというゲームは終わり、強制的にログアウトするはずだったのだが…。
(まさか、ユグドラシル2か…?)
サービス終了が決まるに伴って、ユグドラシル2の噂が某掲示板やユグドラシルのチャットなどで話されていた。
しかし、GMコールも効かず、そのチャットも開けない。流石のクソ運営でもこんな監禁じみたことはしないはずだ。メリットなんて何も無く、デメリットしかないそんなことは。
そして進むはずのない時計は着々と進んでおり……
「どうなっているんだ!」
あまりにも摩訶不思議な現状に、思わず声を荒げてしまう。
「モモンガ様…?如何なされましたか…?」
そして、隣から凛とした声が聞こえ、モモンガは余計困惑してしまった。
ーーーーー
とりあえずは状況を整理していこうと思う。
まず、ユグドラシルはサービス終了日が過ぎたままにも関わらず強制ログアウトがされなかった。
これだけなら自分がサービス終了日の日にちを間違えたのかと思うが、それを否定する決定的なものがあった。
それは、NPCが勝手に動き出したことである。
本来、NPCとはNon Player Characterの略の通りプレイヤーが操作しないただのAIだ。
それが、そのNPCが、つい先ほどまるで自分の意思を持っているかのように動き出したのだ。例えば、アルベドは突然声を荒げたモモンガの安否を確認する仕草をし、セバスやプレアデスたちはモモンガがとりあえずナザリック周辺を調べるように命じたら、「畏まりました、モモンガ様」と言い、調査を始めたのだ。勿論この返事の仕方は何も設定していないし、そもそもナザリック周辺を調査しろなどという細かい命令を聞けるはずがない。
このことから考えられるのは、鈴木悟ーーーもといモモンガが、ユグドラシルという世界に転移した。などと言うラノベ的な展開しかないのだが…。
「あの…モモンガ様……今日はいつもの
突然、まるで水晶のような美しさを持たせた声が気持ちよく耳を燻る。
玉座に座っている自分の右隣に目を向けると、この声の張本人ーーーアルベドが、下で手を組みながら上目遣いでこちらをチラリチラリと見ていた。彼女の美しい容姿からか、その仕草は非常に可愛らしい。
そして、彼女の言う
一年ほど前からだったろうか。かつての友人たちももう引退して去って行った時のこと。
もう誰もいなくなってあまりの孤独に耐えられなくなった自分はNPCたちに手を出した。いやこの言い方だと少し語弊があるが、実際にそういう18禁的な事をしでかしたわけではない。そもそんな事をしたら即BANされる。こう言うところは無駄に仕事が早いのだ。あのクソ運営は。
では何をしたのかというと、それは、女性NPCなら頭を撫でながらいつもありがとうな、などと感謝をしたり、男性NPCなら肩を叩きながらお前は自慢のNPCだ!と言ったりといったもの。
最初それらをやる時は垢BANされるんじゃないのかと不安になったものだが、どうにでもなれとばかりに勢い任せにやった。そしたら普通にできたので、調子に乗っていろんなNPCたちにやってしまった。階層守護者や領域守護者は勿論、プレアデスたちや一般メイドたちにもやっていたのだ。旗から見たらただの頭おかしいやつだし、自分でも頭おかしいなと思っていたが、それをしてきたからこそまだ自分はここ、ナザリック地下大墳墓を離れずにいられたのだ。
そういうわけで、アルベドが今求めているのはそのナデナデだと思われる。
………あの時、ユグドラシルでゲームの中で撫でていた頃は当然ながら感触はなかった。だが今はどうだろうか。NPCたちは自我を持って自分で行動している。よくわからないが、ここがユグドラシルではないのは確実だ。
モモンガは玉座から立ち、アルベドのその艶のある髪の毛に手を伸ばした。
ナデナデ
瞬間、「ふぁ…」と言った具合でアルベドの顔が崩れ落ちた。普段クールな感じの彼女がこんな顔になるとは……。なるほど、ダブラさんのいうギャップ萌えの良さがわかってきた気がする。まあそれでもビッチはないが。
しかし、違う。今考えるべきはそれじゃない。変わったのだ。彼女の表情が。そして今撫でている自分の手にも間違い無くそのサラサラの髪の感触が伝わっている。
ここまできたらもう確定だ。ここはゲームではない。2138年の技術を持ってしても、感触を伝えることなど不可能。
そして、匂い。
モモンガは彼女の体を抱き寄せその頭部の匂いを嗅いだ。「ぁ…」という小さな声は無視する。
やはり、ある。匂いがあるのだ。フローラルな、ずっと嗅ぎたくなる甘い香りが。モモンガはもっと鼻を押し込みその匂いを堪能ーー
「って何をやっているんだ私は!!」
バっと咄嗟に彼女の体を怪我しないように突き放した。レベル100の防御型の彼女がその程度で怪我をすることなど絶対にないと思うが、それでも彼女が傷つくことはしたくなかった。「あぁ…」という残念そうな声は聞かなかったことにし、即座に彼女に謝る。
「す、すまない!女性にこのようなこと…!」
やってしまった。自分はやってしまったのだ。ダブラさんが造った娘とも言えるアルベドを、突然抱きしめて匂いを嗅いで、挙句の果てには突き放すなどという愚行を犯した。ダブラさんに、そしてアルベドにどう顔向けすればいいのかわからなくなり、色なんてない骸骨の顔が青ざめていく。
しかしアルベドは俯いたまま動かない。その姿を見て、(あ、終わった)とモモンガは盛大に後悔した。おそらく彼女は恥ずかし過ぎて顔を上げられないのだ。こんな骸骨に抱きしめられるなどという屈辱を味わい、その羞恥心から彼女は激怒し、絶望しているのだ。
(ダブラさん…すいません。設定を変えるに留まらず、あなたの娘を汚してしまいました)
ここにはいない
対してアルベドは「はぁ…はぁ…」と息を荒くして肩を揺らし始めた。来た。おそらく私は今から彼女に殺されるのだ。
あぁ…まだこのユグドラシル?に来てから十分も経ってないのに死ぬことになるとは。自分はなんて馬鹿なんだ。来世はもっと慎重にちゃんと考えて生きるとしよう。そんな決意を胸に。覚悟を決める。元々の原因は自分だ。己が殺されことによって彼女の怒りが収まるなら、命なんて惜しくなーーー
「モモンガ様ぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
ぬぇぇえぇぇえ!!!??
ーーーーー
「ではさらばだ、お前たちなら、私の期待に応えてくれると信じているぞ…」
シュンと、モモンガは玉座の間につながる廊下に転移した。
そのままモモンガは、周りをキョロキョロと見回し誰もいない事を確認する。そして誰もいなことがわかった瞬間。ガクンと膝を落とし、両手を床につけて項垂れる。
「疲れた……」
あの後ーーーーアルベドの突然の暴走を超高速ナデナデと抱き着きLv100によって収めた後。周辺調査をしていたセバスから
後は第六階層の守護者であるアウラとマーレたちに実験として
ここまではどこにでもあるような?平和な日常?だったのだが、問題は別にあった。
コキュートスが3人を宥めた後、デミウルゴスとアルベドが集まって全員集合となったモモンガは「お前らにとって私とはなんだ?」どういう質問を投げかけた。これはNPCたちが反旗を翻さないかと危惧した上での行動だ。流石に自我を持った全NPCたちを相手に生き残れる自信なんて微塵もなかったからな。
しかし、返ってきたのは賞賛の嵐。
まずアウラとマーレは「優しくて、いつも僕たちを気にかけてくれる慈悲深きお方です。モモンガ様がいないと生きていけないのです!!」と言ってきた。将来的に見て、大人に成長するであろうアウラとマーレ。彼らが望んだら何百年後には自立させて、自分たちで生きてもらおうと思っていたのだが……その趣旨を伝えた瞬間に絶望した顔になって「捨ててしまうのですか……?」と大泣きしてしまったのを見るに、それは難しそうだ。
次にシャルティア。美の結晶やら言っていたがあんまよくわかんなかったので、適当に「お前も十分美しいぞ」と言ったら、「あぅ…」と喘いで下を向いたままになった。どうしたか心配したが、俺の中のナニカが「今のシャルティアには話しかけるな」と囁いてきたので放置した。
後は、デミウルゴスだったら「深き智謀を持った御方、端倪すべからずという言葉がふさわしい」とか言ったり、コキュートスだったら、「他の至高の御方よりも強者である御方」だったり、まあ、確かに
そんなこんなで彼ら彼女らの忠誠心を受け取り、敵になる者はいないようだと安心はした。安心はしたが……。
「あいつら…マジだ」
モモンガによる愛を受け取り蓄積された忠誠心は、ただの一般人であった彼には重過ぎた。
ーーーーー
ナザリック地下大墳墓の第六階層。ブルー・プラネットが造った美しい夜空の下で、守護者各員、そしてセバスにプレアデスと言ったナザリックの主戦力は先ほど転移で去っていったモモンガがいた所を数秒間凝視し、そして歓喜の声をあげた。
「あぁ!!モモンガ様!わたしたちのような僕如きにあのようなお言葉を……!」
そう言い、その喜びを己の体全体で表しているのは守護者統括であるアルベドだ。普段は美人でお淑やか彼女は、しかしモモンガの
【ではさらばだ、お前たちなら、私の期待に応えてくれると信じているぞ】
それはすなわち、私たち僕の忠誠を認めともらえたということ。至高の御方に仕える事が生きる意味である彼等にとって、これに勝る喜びはない。
「それにしてもすごかったね、お姉ちゃん」
「うん。押し潰されるかと思ったよ」
「マサカ、アレ程トハ」
ダークエルフの双子、アウラとマーレ、そしてコキュートスの3人がモモンガから発せられた強烈なオーラについて話す。彼等の音色はどこか嬉しそうであった。おそらく、あそこまで強大なオーラを発したのは、自分たちを信用してくれたからだと思っているからだろう。まあ実際のところ、モモンガ自身が緊張しすぎて絶望のオーラ醸し出しちゃっただけなのだが。
そしてそんな3人を眺めていたデミウルゴスが「しかし」と話の舵を投げた。
「コキュートス。君はモモンガ様について、他の至高の御方よりも強き御方と言っていたね。あれは、どういう意味だい?」
心底不思議とばかりに質問を投げかけるデミウルゴス。そしてそれに同調するかのように頷くコキュートス以外の者たち。
確かに、モモンガは強い。それも単純な戦闘能力だけでは無く、相手に虚偽の情報を掴ませ驕り高ぶったところを蹴散らすといったPVPにおいての戦い方、すなわち戦略の立て方が非常に巧みだ。実際モモンガのPVPの勝率は高い。しかしそれでもユグドラシル内でおいてモモンガは精々中の上、フル装備でも上の下といったところだ。つまり、上の上であるウルベルトやたっち・みーには劣るはず。だからこそ、デミウルゴスは至高の御方よりも強者であると明言したコキュートスに困惑を隠せずにいた。
(まさかあの場で嘘をつくとは思えないが……)
もしそうならば、不敬罪として此処で彼と戦うことになる。デミウルゴスにとってコキュートスは親友とも呼べる仲。それは避けたかった。
しかし、返ってきた言葉はそんな不安を投げ飛ばすものだった。
「ソウカ、デミウルゴス達ハ知ラナイノダッタナ。
「
意味深にそんな事を言ってくるコキュートスにデミウルゴスは他の守護者たちの思いを代表して問う。
コキュートスは、そのデミウルゴスの問いに、フスーと冷気を出し、一拍置いてから話し始めた。
「アレハ、随分ト前ノ話シニナルーーーーー」
まだたっち・みーやウルベルトがこのナザリック地下大墳墓を離れる前のこと。
彼等二人はモモンガと一緒に第五階層に来たのだという。あまりにも珍しいその組み合わせにコキュートスはクエスチョンマークを浮かべた。が、それも束の間、3人は突然PVPを始めたのだ。
たっち・みー対ウルベルト対モモンガで。コキュートスはもしや仲間割れかと思い、止めに入ろうとしたがなぜかその時は体が動かせず、ただ黙って見ることしかできない己を恨んだのだという。
しかし、そんなコキュートスの不安は勘違いだったらしく、何やら楽しそうに談笑しながら戦っていたのを見てホッとしたらしい。そしてコキュートスは今後絶対に見れないであろうその戦いを固唾を飲んで見届けた。
戦場はほぼウルベルト対たっち・みーであった。先ほども述べた通り、モモンガは強いが精々上の下程度、その持ち前の戦略で最初の数分ぐらいは奮闘したようだが、ワールドチャンピオンとワールドディザスターの前では無意味だ。
そして残ったのはウルベルトとたっち・みー。普段から二人は仲が悪いため、モモンガが間にいた時とは違い、数々の罵詈雑言を言い合いながら戦いは行われた。互いの憎悪をぶつけながら行われたソレは正しく神話のようだっだという。そして数分の時間が経ち、たっち・みーの
ーーーーーウルベルトとたっち・みーの間に金色の強大な爆風が立ち塞り、二人を吹き飛ばした。否、爆風かと思われたソレは、一人の個人によって放たれたただのオーラであった。
その人物は荒れ狂う砂埃の中、徐々に姿を現す。そして見えたのは、豪華なローブに身を包んだ美しき白骨のスケルトンーーーーモモンガであった。しかし、普段のモモンガとは明らかに様子が違った。まるで神の如き黄金色のオーラを纏い、ビリビリと稲妻をその身に走らせていたという。
そこからは一方的な蹂躙だった。
たっち・みーの
その後はたっち・みーたちがモモンガに向かってちーと?などとと叫んでいたらしい。
「ーーーーート言ウ訳ダ」
一息付き、アレハ思イガケナイ僥倖デアッタ……と呟くコキュートスを側に、彼等の胸に沸くのはふたつの感情。
一つは、あまり聞けることのない至高の御方々の話を聞けたとことに対する歓喜。
そしてもう一つは、このナザリック地下大墳墓に最後まで残られたモモンガの、たっち・みーたちすら圧倒したという底知れぬ強さに対する憧憬だ。
たっち・みーとウルベルトが創造主であるセバスとデミウルゴスは少し複雑な思いだが……それでも、畏怖の気持ちが圧倒的に勝っていた。
そんな感情によってしばらく呆けていた彼等だったが、突如アルベドがハッとしたように顔をあげた。
「い、いけない!突っ立ている場合じゃないわ!皆、各自自分の持ち場につきなさい!アインズ様からご勅諭を受けたマーレたちも即座に行動を開始すること!」
アルベドのその命令で、彼女と同じように呆けていた彼等も意識を呼び起こす。
「はっ!」
そして気持ちのいいほどに息の合った返事が闘技場に響いた。