スーパーサイヤ人ももんが!   作:ララコッペパン

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世界征服

 

 

 

 

  ナザリック地下大墳墓第一階層。

 普段は、第一階層から第三階層守護者であるシャルティアが守っているはずだが、今はまだ第六階層の闘技場にいるためここにはいない。

 しかし、このナザリック最初の防衛線でもあるここを空白にできるはずもなかったためモモンガは彼女(・・)に守護を当たらせていた。そしてモモンガはその彼女(・・)に会うため、近くにいたメイドの静止の声を振り切ってここに来ていた。

 

 「っ!」

 

 彼女(・・)が、突然転移してきたモモンガに戦闘態勢をとる。しかし、彼女(・・)はモモンガの姿を見た瞬間、その顔を驚愕に染め……。

 

 「!?モモンガ!!久しぶり!!」

 

 目に見えない速さで走り、急ブレーキをかけ、隠しきれない嬉しさを漏らし出しながら彼女はモモンガの名を呼んだ。

 

 黒い髪に黒いフードを深く被り、その背中からは、これまた黒い翼が。旗から見たら、その尋常ではないオーラに伴って悪魔にしか見えないが、そのフードからチラリと覗く整った幼い顔は、甲高い子供の声といいとても可愛らしい。

 

 彼女の名はルベド。種族は堕天使(フォールンエンジェル)。このナザリック地下大墳墓最強の個である。

 

 「久しぶりと言っても3日ほど前にも会っただろう?」

 

 会った。というのもゲームの中で、という補足が付くが。

 

 「ううん!3日も!だよ!寂しかった!」

 

 そう言い首に抱きついてくる姿はとても可愛らしい。が、力が強すぎてゴキッという絶対鳴ってはいけない音が鳴った。

 

 彼女ーーーールベドは、ダブラ・スマラグディナやその他の仲間たち(勿論自分も加わった)41人によって超希少アイテムや超希少素材、そして数多の課金を加え、凝りに凝られて作られたまさしく最強のNPCだ。

 彼女を作るのに成功した時には、みんなでリアルで宴会を開くほど喜んだものだ。しかし、時が進むにつれてわかったことがある。

 それは彼女の力はあまりにも強大すぎだということだ。その力はワールドチャンピオンであるたっち・みー、ワールドディザスターであるウルベルト、そしてあのスキル(・・・・・)を使ったモモンガですら1対1だと勝率50%を切るほどに。もしそんな彼女がワールドアイテムを使用され、操れられてしまったら………。

 それを危惧した彼等は彼女の電源を切り、第八階層の桜花領域に封印した。

 

 しかし、サービス終了日まであと半年といったところで、やはり彼女のことを不憫に思ったモモンガは、ルベドの電源を付け起動させたのだ。

 

 あの時は大変だった。なにせ、彼女の設定には【彼女は誰かに負けない限り、近づいて来た者たちを自動的に迎撃する】というものがいつの間にか加わっていたのだ。

 犯人は間違い無くダブラ・スマラグディナ。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで設定を変えることはできるが、あれはモモンガにしか使えないし、モモンガはそんな事をした覚えがない。誰かのNPCの設定を変えるなんてことはつい先ほどのアルベドが初めてだった。

 だから必然と、創造主と認定された者にしか使えないツールを使ってダブラさんが変更した。ということしか考えられない。

 ちなみにルベドに突然攻撃されたアインズは、とりあえずリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い転移し、たっち・みーに匹敵すると言われたナザリック外の友人たちと協力し、そしてモモンガもあのスキル(・・・・・)を使い、さらに対ルベドの対策を練りに練り挑んだ末にやっと勝てた。その後は、度々ルベドのところへ行き、もはや他のNPCたちと同じようにナデナデしたりして可愛がったものだ。

 多分その影響でここまで懐いたのだと思うが……。

 

 「すまないな、本当はお前も第六階層に集めたかったが、やはりナザリック最強であるルベドに防衛を任せるのが一番安心だど思ってな」

 

 「ぜんぜんだいじょーぶ!モモンガの役に立てるのは嬉しい!」

 

 はぁーもうこの子ほんといい子。皆さん作ってくれてありがとうございます。絶対彼女には傷ひとつ付けません。まあ誰も傷ひとつ付けれないと思うけど。

 

 「ふふっ…ありがとうな…そうだ、ルベドに伝えとかなきゃいけないことがあるんだ」

 

 首を傾げてこちらを不思議そうに見るルベドを撫でながら今ナザリックが異常事態に見舞われている事を伝える。

 

 

 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーーーー

 

 「と、いうわけだ。あと少しでシャルティアが戻ってくるから、この後はすぐに第八階層に戻るんだぞ」

 

 そう言って説明を終えると、ルベドが何やら、先ほどとは違い、ムスッとした顔でこちらを見ている。

 

 「?どうした?ルベド」

 

 「私といるのに、他の女の名前出さないでよ……」

 

 拗ねながら、顔を俯かせてそう言ってくるルベドに、モモンガは困惑を隠せずにいた。

 

 (仲が悪いのか?)

 

 そんな設定はなかったはずだが……。まあおそらく、他の子のことばかり気にして自分のことを構ってくれないお父さんに持つ嫉妬と似たようなものをルベドは持っているのだろう。

 

 「すまないすまない、ただお前たちが喧嘩するところは見たくないからな、くれぐれもそういうことはしないように」

 

 「…うん……」

 

 どうやらまだ拗ねているようなルベドに、モモンガは苦笑してからその黒髪に手を乗せた。

 

 「次、私が何か事をする時は真っ先にルベドを呼ぶ。それでチャラにしてくれないか?」

 

 「ほんとっ!?」

 

 さっきまでの不満げな雰囲気が嘘だったかのようだ。パァと、まるで花が咲いたかのような笑顔をルベドは見せる。

 

 「絶対、ぜーったい!呼んでね!?」

 

 見た目通り、子供のようにはしゃぐルベドに、思わず笑みを浮かべ(骸骨なのでよくわからないが)モモンガは「あぁ」と相槌を打ち、曲げていた膝を伸ばして立ち上がった。

 

 「ではな。ルベド」

 

 「ぁ…っ…うん!バイバイ!」

 

 寂しかったのだろう。一瞬だけルベドは顔を歪ませたが、すぐに笑顔になり、手を振る。

 そしてモモンガは右手を上げて、その薬指にはめられたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをキラリと照らし、転移の魔法で姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モモンガが転移行うために使ったリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが放った輝きを数秒眺めて、ルベドは一息ついた。

 

 「モモンガ…」

 

 呟くのは、このナザリック地下大墳墓たった一人(・・・・・)の支配者であり、そして、ルベドの愛する男(・・・・)の名前。

 

 「好き…好き好き好き好き……」

 

 一度口に出してしまったらもう止まらない。この溢れんばかりの愛おしいという感情は、崩れたダムから流れる水のように、止まることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 覚えている。

 

 ルベドはあの時のことを鮮明に覚えている。

 

 今となっては、モモンガを除き、忌々しい存在となったあの四十一人が己を作った時のことを。

 彼等は喜んでいた。口々にやったと言葉に出して、歓喜していたのだ。だから彼女も嬉しかった。自分はこんなにも必要とされているのだと。こんなにも愛されているのだと。

 

 しかし、違った。彼等にとって彼女は、ルベドは必要じゃなかった。

 

 彼等はルベドを作って数日経った頃、歓喜の声を一転させ化け物だと言い張った。危険だと言った。そして彼女を封印したのだ。第八階層の、誰もいない所へと。

 これで安心。そう彼等が安堵する中、一人だけ否定の声を上げる男がいた。

 

 モモンガだ。

 

 彼は唯一、最後まで反対していた。あんなに苦労したのに封印するのは勿体ない。彼女は貴重な戦力だ。と。彼の言葉で数人ぐらいはモモンガ側についたが、アインズ・ウール・ゴウンというギルドは多数決を重んじる。数人ついたぐらいで、封印するという意見の方が多い状況ではどうしようもなかった。

 

 しかし、ルベドが封印されて、半月…いや、もはや数えるのが億劫になるほどの月日がたった時、モモンガがやってきた。

 

 ルベドは嬉しかった。彼等がルベドを作って喜び、自分も喜んだ時とは比にならないほどに、嬉しかった。もう、必要じゃないと思っていたから。もう自分は要らないのだと思っていたから。

 彼がルベドの封印を解いた時、ルベドは抱きつきたい衝動に苛まれた。

 

 しかし、体は言うことを聞かなかった。体が動かなかった、などではない。それならばまだよかった。あろうことか、自分はモモンガに対して攻撃を仕掛けたのだ。犯人はダブラ・スマラグディナ。彼が、ルベドに対して迎撃などの設定をしていたのを思い出した。あの時ほど己の創造主を憎んだことはない。

 そしてモモンガはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使いどこか行ってしまった。

 その時ルベドに襲いかかったのは、絶望、不安、悲しみ。あらゆる負の感情。折角自分に会いに来てくれたと言うのに。折角、この地獄から逃れられると思ったのに…。 

 また自分は独りになるのか。そう考えたら体の震えが止まらなかった。

寂しい。助けて、もうこんなの嫌だ。最強として作られたとしても、この孤独という名の地獄に耐えることはできない。

 

 けれど、それは杞憂であった。

 

 悲しみに暮れていたルベドの元に、またモモンガがやって来たのだ。そしてモモンガは10人ほどの仲間?達と協力し、ルベドを倒した

 さらにその後、モモンガはルベドを復活させ、抱きしめたのだ。

  

 あの時、モモンガから発せられた言葉を、ルベドは未来永劫忘れることはないだろう。

 

 

【すまない。寂しい思いをさせてしまったな。けどもう大丈夫だ、俺がいる】

 

 

 「ふふっ…」

 

 ルベドにとっての幸せは、モモンガと居ること。モモンガの役に立つこと。それが彼女にとって幸せであり、生き甲斐だ。

 

 モモンガ以外は、どうでもいい。

 

 ナザリック外の者たちは勿論。ニグレド、アルベドを除いたナザリックの僕も。そして、あの四一人も。勝手に造って、勝手に捨て、勝手に何処か行った奴らなんか、どうでもいい。モモンガだけだ。モモンガの命令だけは絶対に従う。モモンガが死ねというのなら死ぬ。モモンガが四一人全員を殺せというのなら喜んで殺す。ニグレドたち姉妹を殺せというのなら、少し躊躇うかもしれない。しかし、それでも殺すだろう。

 ルベドにとってモモンガは絶対だ。神などという生易しい表現じゃ足りない。神は人を救わない。けれどもモモンガは、孤独に苛まれ、絶望の淵にいたルベドを救った。この恩は到底返し切れるものではない。だから、ルベドは誓う。この寿命のない生涯をかけて、一生、永遠にモモンガに尽くすのだ。

 

 ルベドはナザリック地下大墳墓の第一階層から、地表へと出た。そしてすっかり暗くなった夜空を見上げ、また一つ呟く。

 

 「大好き」

 

 幼くも、明確な愛を含んだその呟きは、夜風に吹かれて消えていった。

 

 

 

 ちなみに、唯のゲームだというのにルベドにあんな告白みたいなことを言ってしまったモモンガが羞恥心から身を襲われ、また一つ黒歴史が生まれたのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 ルベドと顔合わせをして数日。第九階層の客間にて、モモンガは自身の持つマジックアイテム等に不備がないかを確認していた。

 その傍らにはプレアデスの一人、ナーベラル・ガンマが付いている。

 当初、モモンガは一人で客間に行こうと思っていた。が、しかし。ナーベラルがどうしても着いて行きたいと懇願してきた為、モモンガの側に着かせている。

 ナーベラルはプレアデスの中だと戦闘能力という点に於いては最も優れている。だから護衛としても相応しいだろうという考えもあった。

 

 「ふむ」

 

 一通りマジックアイテムの確認を終えたモモンガは、次に150cmほどの大剣を握り、振るった。だが、大剣はモモンガが振る前にカツンと音を立てて落ちる。モモンガのレベルは100。膂力もそれ相応にあるため、重すぎて振れなかったなどということはない。

 今のモモンガは魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。恐らく、クラスが異なるために振れなかったのだろう。ここら辺はユグドラシルと同じようだ。

 

 それを見たナーベラルは、モモンガが落とした大剣を軽々と拾い手渡す。

 

 「ありがとう。ナーベラル」

 

 感謝の言葉を告げ、モモンガは頭を撫でた。

 そしてモモンガは気づく。しまった。いつもの癖でやってしまったと。またアルベドのように暴走しないかと危惧し、ナーベラルの顔を見てみたがそれはなさそうだ。ふにゃりと言った具合で顔を綻ばせている。いつものキリッとした表情は何処へ(いずこへ)

 

 そんなナーベラルに割と困惑しながらも、モモンガは魔法を唱える。

 

 「上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)!」

 

 一瞬にして漆黒の鎧姿に変身する。

 モモンガはナーベラルから渡された大剣を振った。

 ビュンという風切り音が鳴る。

 この状態ならば振るうことができるようだ。

 

 「さて、ナーベラルよ。私はこれから少し出てくる」

 

 「お供します」

 

 モモンガの手が離れ、「ぁ…」という声を出して名残惜しそうにしたがそれも束の間。いつものキリッとした表情に戻った。

 

 「いや一人で行く」

 

 「お待ちください!モモンガ様お一人では、もしもの時に私が盾となって死ぬことができません!」

 

 尚も食い下がらないナーベラルに彼は少しだけ強く告げる。

 

 「極秘に行いたいことがあるのだ。伴は許さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーーダメです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぇ」

 

 必死の形相で詰め寄ってくるナーベラルになんとも情けない声が漏れ出る。

 モモンガは困惑した。ここまで言えば流石に引き下がるだろうと思ったのだが、どうやらそうではないようだ。

 

 「っ!?…も、申し訳ございません!」

 

 余りにも出過ぎた真似をしてしまったと、ナーベラルは即座に頭を下げた。 

 よく見ると、体が微かに震えている。不敬なことをしてしまったという後悔からくるものもあるだろうが、それだけではない。

 

 ナーベラルは怖かったのだ。

 モモンガが一人で外に出ると言ったとき、他の、そう、至高の四一人の御方と同じように、何処かに行ってしまうのではないか。自分達を捨ててしまうのではないかと。

 今やナザリックに残っているのはモモンガたった一人。もしそのモモンガがここを去ってしまったら‥‥…‥。

 そう考えるとナーベラルは怖くてたまらなかった。

 

 「ナーベラル…」

 

 リアルの世界ではさまざまな事情から小卒であった頭のいい方ではないモモンガでも、ナーベラルの不安は伝わったようだ。

 

 「面を上げよ。ナーベラル」

 

 恐る恐る、彼女は頭を上げる。殺されるのだろうか。そんな思いを馳せながら。

 見せられたナーベラルの顔はなんとも痛々しかった。その美人な顔は絶望に染まり、瞳には涙が溜まっている。

 

 そしてそんなナーベラルを見たモモンガは、彼女の頭にもう一度手を乗せて撫でた。

 

 「すまないな。ナーベラル。少し強く言いすぎてしまったな」

 

 「い…ぃえ…そ、そのよぅなごとは……」

 

 元はと言えば自分が悪いというのに、主に謝罪させてしまった。そんな罪悪感から弁明を告げようとするが上手く言葉を出せない。

 モモンガはより一層、頭を撫でる手を強める。少し痛いとも感じるそれは、しかし、彼女の不安の取り除いてくれるかのような、優しさのこもったものであった。

 

 「安心しろ。ナーベラル。俺はどこに行かない」

 

 「ほんと……ですか…?どこにも、いかれませんか……?」

 

 普段のナーベラルからは想像もできないような弱々しい声。

 

 「あぁ、約束する。本当に少し外に出るだけだ。そうだな、ナーベラルも着いてくるか?」

 

 「っ!はい!是非!」

 

 涙を浮かばせながらもようやく笑顔になったナーベラルを見て。モモンガは安堵のため息をつくと共に、嬉しさを隠せずにいた。

 

 ナーベラルを含めたナザリックの僕たちは、モモンガの命令には絶対服従だ。やれと言ったものは即座にやる。そんな命令にただ従う彼等に、モモンガは少し気疲れしていたところだ。別にそれに不満がある訳ではない。敵対されることに比べたら全然マシだ。

 それでも、思ってしまうのだ。かつての仲間たちの様に、気軽に話せる様な存在は居ないのかと。

 ナーベラルはそんなモモンガの期待に応えた。彼女は、先程の命令に対して拒絶の意を示した。いや、伴は許さんというのは命令なのか定かではないが、似たようなものではあるはず。だから嬉しかった。前述した通り、NPCたちとかつての仲間のように気軽に接して行きたいモモンガにとって、これは大きな一歩だ。

 

 しかしそれでも、女の子を泣かせた罪は重い。

 

 (こんな場面を見られたら、二式炎雷さんに叱られちゃうな…)

 

 ナーベラルの創造主でもあり、【見付からなければ、当たらなければどうという事はない。防御なんてゴミ】を地で行くかつての仲間を思い浮かべながらもモモンガは泣きつく彼女の背中を優しく摩る。

 

 「もう大丈夫か?」

 

 「はい。お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません」

 

 そして一通り泣き止んだところで、ふとナーベラルの顔を見る。満面の笑みだ。

 

 「やはりナーベラルは可愛いな」

 

 「へっ…?」

 

 モモンガからすれば些細なひと言で、泣いてるよりも笑顔の方が可愛いと思ったから、ありのままの事を言っただけであった。

 しかし、ナーベラルからしてみればそうではない。敬愛する主人からの言葉は、何よりも重大になる。そんな、可愛いなどと言われしまったら……。

 

 ナーベラルの顔がポンと音を立てて煙を上げ、瞬く間に顔を赤く染めた。勿論煙は比喩表現だが。

 

 「よし。では行くぞ」

 

 「え…あ、はい!」

 

 (か、かかかかかわいい!?、つ、つまりそれって、それって、私とそういう関係になりたいということでしょうか……いやいやいや!モモンガ様にはシャルティア様やアルベド様がいる。私などが烏滸がましい……。いやでも、モモンガ様なら………)

 

 どこがつまり、なんだろうか。これ以上ないほど狼狽するナーベラルだか、転移の準備をしていたモモンガはいざ知らず。二人は一瞬のうちに姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 転移したモモンガは地表中央霊廟の出入り口へと繋がる大階段を登る。

 ぽけーっという具合で呆けていたナーベラルも、モモンガの後ろ姿見て慌てて追いかけた。

 

 主の逞しい後ろ姿を眺めながらナーベラルは問う。

 

 「モモンガ様」

 

 「ん?なんだ?」

 

 「何処へ赴かれるのでしょうか?」

 

 「あぁ…少しばかり地上に出ようと思ってな」

 

 「それならばやはり私以外にも護衛をつけた方が……」

 

 自信なさげにいうナーベラルに、モモンガは悪戯をする子供のようにニヤリと笑う。(表情はないが)

 

 「つまりそれは、お前だけじゃ私を守りきれないということか?」

 

 「そ、そのような事は!…しかしながら安全性を考慮した場合、他にも護衛が必要だと……」

 

 語尾にいくにつれて声が小さくなり、なにやらしゅんとした雰囲気になるナーベラル。

 

 「ふふ…すまない。意地悪な事を聞いたな。しかしナーベラルよ。私はお前を信用しているからこそ護衛につけたのだぞ。お前ならば一人でも私を守り切れると判断したのだ」

 

 「モモンガ様っ…!」

 

 先程の落ち込んだ感じとは一転し、すぐに笑顔になる。今日はコロコロと表情が変わっていく。

 

 「このナーベラル・ガンマ!命を捨てでも御身をお守りする事を誓います!」

 

強く握りしめた両拳を顔の前に持っていき、フンと鼻息を鳴らして誠意を示すナーベラルに「死ぬな死ぬな」と言を入れながら考える。

 

 セバスによると、ナザリックの周辺は草原になっており、ユグドラシルでは見たことのない小動物もいたとの事。

 それらから考えられることは、ナザリック地下大墳墓が異世界に転移したということぐらいだろう。

 ユグドラシルには九つの世界が存在する為、そのうちの何処かに転移したのかとも思ったが、それならばNPCが喋るのはおかしいし、匂いや感触があるのもおかしい。だからこの可能性はゼロに等しいだろう。

 どちらにせよ、まだまだこの世界について我々は何も知らない。だからこそ、モモンガは情報を得る為に地上に出て自分の目で確かめる必要がある。

 

 「まあ、この装備で魔法は使えないが、アイテムが使えるからなんとか…」

 

 あと少しで登り終わるというところで、モモンガはそこにいる三種の異系種に気付く。

 

 「っ!」

 

 同じくそれらに気付いたのだろう。背後にいたはずのナーベラルがいつの間にか主人を守らんとモモンガの前に立っていた。

 

 「ナーベラル。止めよ」

 

 静止の声。

 

 「し、しかし!」

 

 「よく見るんだ。アイツらはデミウルゴス直轄の三魔将たちだ」

 

 モモンガからの説明を聞き、はっとなったナーベラルは警戒を解く。

 

 見ると、いつの間にかその三魔将たちは膝をついてモモンガに頭を垂れていた。

 漆黒の姿に誰かと疑問を浮かばせていたが、自分たちの正体を知っていたことと、ここに転移できるのは至高の四十一人だけだと思い出し、彼の正体がモモンガだと気付いたのだ。

 

 彼等はデミウルゴスの部下たち。左から嫉妬、強欲、憤怒だ。レベルは80以上となかなかに強い。

 嫉妬は豊満な胸を覗かせる女体に、両腕は翼状になっている。強欲は引き締まった体に2本の角と牙を持った戦士。憤怒はその巨体に炎の翼を生やし、鎧の如き体皮を持つ。

 

 そしてそんな三魔将の間から、人が、いや人に見える悪魔が出てきた。

 

 両腕を背中に回し、キラリとひかる宝石の瞳が眼鏡から覗いて見える。デミウルゴスだ。

 デミウルゴスは一瞬、三魔将たち同様「ん?」ど疑問の念をその漆黒の戦士を見つめたが、すぐに膝をついた。

 

 「これはモモンガ様…に、ナーベラル。一体どのような要件で…しかもそのお召し物」

 

 モモンガは一瞬で正体がバレたことに驚くが、まあこいつらなら当然……なのか?いや当然か。

 そう思ったため、すぐに冷静さをとり戻した。

 

 「いやすこし事情があってな」

 

 「…なるほどそういうことですか」

 

 「あぁそういうことだ」

 

 脊髄反射で咄嗟に返事をするが、どういうことだ。

 

 (俺が自分の目で情報を集めたいってのがわかったのか?さすがデミウルスゴス)

 

 よくわからないが、大方そのあたりか。

 

 「しかしながらモモンガ様。護衛がナーベラルだけというのは些か不安が残るかと」

 

 眼鏡をクイっと上げて物申すデミウルス。

 そしてその言葉を聞き、頬を膨らませむっとするナーベラル。

 

 「いや大丈夫だ。ナーベラルなら私を守れるさ」

 

 「ですが……」

 

 「そこまで言うのなら、お前も私に着いてくるがよい」

 

 「おぉ……このデミウルゴス。命を捨てでも御身をお守りする事を誓います」

 

 さっきのナーベラルと全く同じことを言っている。

 

 (あんまり接点はないと思っていたが、実は仲がいいとか?)

 

 だったら嬉しいなと思うモモンガだが、実のところそうではない。

 

 まだまだ未知数な所はあるが、もうすでにこのナザリック周辺に脅威となる存在がいない事は確認済みだ。なので別にナーベラル単体でも、後少しばかり召喚された者たちがいれば護衛は十分だった。    

 

 しかしデミウルゴスやナーベラルたちNPCは、最後までナザリックに残り、自分達に優しくしてくれるモモンガに対してその忠誠心はとっくの昔に限界突破している。

 だからこそ、デミウルゴスはそんなモモンガの側で主人をお守りするという役を与えられていた彼女に嫉妬した。 

 

 故に、彼はモモンガがあれだけ大丈夫だと言ったのに関わらず食い下がらなかった。自分も護衛につきたかったからだ。

 

 そんな彼等は今、モモンガの後ろをついていきながらバチバチと目先で火花を散らしていた。

 別に仲が悪い訳ではないが、モモンガの事となると違うのだ。

 

 三人はしばらく歩き続けると、地上に出るための出入り口に到着する。

 モモンガは顔を上げ、空を見た。

 

 「おぉ……」

 

 その美しい夜空に、思わず感嘆の声が出る。

 リアルの世界では、あの汚染された世界では絶対に見ることのできなかった景色だ。

 

 (ブルー・プラネットさん…)

 

誰よりも自然を愛した男を思い出し、そして、もしここにきていたら見せてあげたかったと思ってしまう。

 

 「飛行(フライ)!」

 

 モモンガはアイテムを取り出して唱え、空に向かって飛んだ。それに続いて、デミウルスは半魔形態に変わり飛び、ナーベラルは自身の魔法を用いて飛んだ。どちらが先にモモンガに追いつけるか、少しばかり競争しながら。

 

 大気圏を超え、見上げる。

 飄々と輝く星が無数にあって、その景色は正に。

 

 「キラキラと輝いて、宝石箱みたいだな」

 

 「この世界が美しいのはモモンガさまを飾る宝石を宿しているからかと」

 

 デミウルスが言い、隣に浮かぶナーベラルもうんうんと頷く。

 

 「そうかもしれないな。私がこの地に来たのは、誰も手にしたことのない宝石箱を手にするため……いや、私が独り占めするべきものではないな。ナザリックと私の友たち、アインズ・ウール・ゴウンを飾るための物かもしれないか」

 

 「お望みとならばナザリック全軍を用いて手に入れて参ります」

 

 「恐れながらこのナーベラル・ガンマも協力させていただきます」

 

 夢物語。だが彼等の力なら、現実になるかもしれない言葉。

 そんなデミウルゴスとナーベラルに、モモンガはふっと笑った。

 

 「この世界にどのような存在がいるかも不明な状態でか?」

 

 そうだ。俺たちはまだこの世界のことを何も知らない。この世界はなんなんのか、何が存在するのか何が存在しないのか、レベル100を超える強者いるのか。そんな事を、まだ何も知らない。

 しかし、知らなければいけない。

 仲間たちが残してくれた、子供たちを守る為に。

 

 「だが、そうだな」

 

 月をバックボーンにし、少しばかりカッコつけて言ってみた。

 

 

 「世界征服なんて、面白いかもしれないな」

 

 

 モモンガからすれば、厨二心が疼いて呟いちゃったと言う具合の軽さだ。

 しかしながら、彼等は、NPCたちは違う。

 ナザリックに存在する僕たちは皆一様に、モモンガが想像を絶するほどの忠誠心を持っている。それこそドン引きするほどに。

 彼等にとって、モモンガがの言葉は何よりも重くなり、何よりも最優先事項になる。

 

 だから、そう。仕方がないのだ。

 

 これを聞いたデミウルゴス、ナーベラルの二人を主軸に本当に世界征服を企んでしまうことは、仕方がない。

 

 だってモモンガは知らないから。

 

 この世界のことだけではない。

 

 モモンガが寂しさを紛らす為に行ってきたモノは、NPCたちにとっては寵愛だ。 

 

 そんな寵愛を受けたNPCたちが、どれほどの忠義を持っているかなど。

 

 

 知る由も、ないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ほんとはマーレが土でナザリックを覆う所の描写も書く予定だったんですけど、思いの外文量が多くなっちゃって……まあそこら辺はモモンガがマーレに指輪渡して、アルベドに指輪渡して、後ナーベラルにも指輪を渡して感じです。適当ですみません。

 後次回やっとモモンガさんのあのスキルの出番です。(遅すぎ)


 ー追記ー

 ルベドの封印反対に賛成した一人は武人建御雷です。彼曰く、【ルベドが支配されて全滅するのもまたゲームの楽しみの一つ】とのこと……。
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