銀の死神   作:日彗

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第十八話 修行と告白

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

 フェアベルゲンを追い出され、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、ハジメの第一声がこれだった。

 

「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

 困惑する一族を代表してシアが尋ねる。

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」

「な、なぜ、そのようなことを……」

「なぜ? なぜと聞いたか残念ウサギ? 紅! 説明してやれ」

「……え、オレ? あ~、まずオレ達がハウリア族と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。では、案内が終わった後はどうする? 庇護がなくなり、逃げ場も隠れ家もない。だが、魔物も人も容赦なく狙ってくるだろう。このままではどちらにしろ全滅してしまう。ならばどうするか、はいハジメ」

「なんで俺に戻す……答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」

「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

 兎人族は弱いという常識が否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いてもハジメの言う様に強くなど成れるものか、と。

 

 ハジメはそんなハウリア族を鼻で笑う。

 

「俺達はかつての仲間から〝無能〟と呼ばれていた」

「え?」

「〝無能〟だ〝無能〟。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達は俺を〝無能〟と呼んでいたんだよ。それに見てみろ(こいつ)なんて天職も技能も魔力もない、ぶっちゃけ俺以下の〝無能〟だ」

「痛い……」

 

 ハジメは左腕の義手で紅の頭をガンガンと叩く。

 

「奈落の底に落ちて俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないかなんて頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った。……気がつけばこの有様さ」

 

 淡々と語られる内容に、しかし、あまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったということだ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。自分達なら絶望に押しつぶされ、諦観と共に死を受け入れるだろう。長老会議の決定を受け入れたように。

 

「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭ないからな。残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合ってすごせばいいさ」

 

 どうする? と目で問うハジメ。ハウリア族達は直ぐには答えない。いや、答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。ハジメは、正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に、約束が果たされれば容赦なく見捨てられるだろう。だが、そうは分かっていても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、ハジメの提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。ハジメの様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難なのだ。

 

 黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

 樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

 

 不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐと見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

「ハジメ殿……宜しく頼みます」

 

 言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

「わかった。覚悟しろよ? あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしないからな。おまけに期間は僅か十日だ……死に物狂いになれ。待っているのは生か死の二択だからな」

 

 ハジメの言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……えっと、今回あなた方を指導することになった西村紅です」

「「「「「よ、よろしくおねがいします!」」」」」

 

 今回、訓練するにあたりハウリア族の大多数をハジメが、ユエはシアとワンツーマン、そして紅は五人のハウリア族に指導することとなった。

 

 最も年配の、ガルム。

 背が低いが年は紅達と変わらない、シン。

 兎人では珍しい眼鏡をかけた青年、アイザック。

 ハウリア族一の大男、クリストファー。

 技能〝気配遮断〟持ちの女性、ナサレナ。

 

 なんとまあ、個性的な者が集まったものだ。適当に五人選んだのだが失敗だったのかもしれない。

 

「では全員、ハジメから貰った装備を横に置いて座ってください」

「「「「「は、はあ……?」」」」」

 

 目の前で本当に腰を下ろす紅に戸惑う。今から訓練をするのではなかったのか。

 

「こ、紅殿? 我々を強くするために鍛えるのでは……?」

 

 そう質問するアイザックに周りもコクコクと頷く。

 

「本格的な特訓は明日から。今日一日まるごと使ってあなた方の心構えを作ります」

「心構え?」

 

 次に聞き返してきたのはクリストファー。

 

「そうだ。まず座れ。話はそれからだ」

 

 雰囲気が変わった紅に渋々と座る五人。それを確認してから全員の顔を見渡し、話始める。

 

「まず、こうして座ってもらった理由から説明しよう。あんた等は自分たちがどういう種族か理解しているか?」

「種族……ですか?」

 

 意図が分からないという顔のナサレナ。他もそういう顔をしている。

 

「兎人族は情に厚く、慈愛深い。故に武器を与えたところで戦う事なんて到底できない」

「そんなことっ!」

 

 反論しようとするシンを制して話を続ける。

 

「いいか、オレはあんた等を強くする。だがそれは敵を殺すための強さじゃない。自分を、自分の大切なものを理不尽から守り抜くための強さだ。想像しろ、目の前で家族を無惨に殺される光景を。想像しろ、理不尽に屈するしかない未来の自分を。オレがあんた等に与えるものはただ一つ。理不尽な未来を打ち砕く強さだ。弱い事が悲しいか。奪われることが憎いか。踏み出せないことが悔しいか。その気持ちは痛いほどよく分かる。分かるからこそこのままではいけない。守りたいと願ったものすべてを守るためにはもっと強く。もっと、もっと、限界を超えたその先にまでいかなくちゃいけない」

 

 紅の言葉に内側から熱いものが込み上げてくる感覚を覚え,それは全身に廻っていく。

 そんな彼らに対して不敵な笑みを浮かべた。

 

「それじゃ始めよう。時間はたっぷりある」

 

 誰よりも己の弱さを知る男による修行は、こうして始まったのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 時間というのはあっという間に過ぎ、約束の十日目となった。

 

「なあハジメ。オレ達は一体どこで間違えたんだろうな」

「……お前は別に間違えちゃいねぇだろ」

 

 紅とハジメは腕を組んで近くの樹にもたれたまま瞑目していた。

 そこに近づく気配。ゆっくり目を開けると全く正反対の雰囲気を纏わせているユエとシアがいた。

 

「よっ、二人共。勝負とやらは終わったのか?」

「……ああ、やっぱり勝負してたのか。どうりで遠くまで音が聞こえたわけだ」

 

 まあ、魔力を直接操作できるシアには勝負形式での修行の方が効率はいいだろう。だが二人の表情からしてもしや……。

 

「紅さん! ハジメさん! 聞いて下さい! 私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ! いや~、本当お見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを! 負けたと知った時のユエさんたらもへぶっ!?」

 

 身振り手振り大はしゃぎという様相で戦いの顛末を語るシア。調子に乗りすぎて、ユエのジャンピングビンタを食らい錐揉みしながら吹き飛びドシャと音を立てて地面に倒れ込んだ。よほど強烈だったのかピクピクとして起き上がる気配がない。

 

「で? どうだった?」

 

 勝負の結果というより、その内容について質問するハジメ。正直、どんな方法であれユエに勝ったという事実は信じ難い。ユエから見たシアはどれほどのものなのか、気にならないといえば嘘になる。ユエは渋々といった感じでハジメの質問に答えた。

 

「……魔法の適性はハジメと変わらない」

「ありゃま、宝の持ち腐れだな……で、それだけじゃないんだろ? あのレベルの大槌をせがまれたとなると……」

「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベル」

「……へぇ。俺達と比べると?」

 

 ユエの評価に目を細めるハジメ。正直、想像以上の高評価だ。珍しく無表情を崩し苦虫を噛み潰したようなユエの表情が何より雄弁に、その凄まじさを物語る。ユエは、ハジメの質問に少し考える素振りを見せるとハジメに視線を合わせて答えた。

 

「……強化してないハジメの……六割くらい」

「マジか……最大値だよな?」

「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」

「おぉう。そいつは確かに化物レベルだ」

「油断して負けたわけじゃないんだろ? 伸びしろがあるのは良い事だ」

 

 強化していないハジメの六割というと、本気で身体強化したシアはほとんどのステータスが6000を超えるということだ。これは、本気で強化した勇者の二倍の力を持っているということでもある。まさに〝化物レベル〟というに相応しい力だ。曲がりになりもユエに土をつけることが出来たわけである。泣きべそをかきながら頬をさすっている姿からは、とても想像できない。

 

 シアは、呆れ半分驚愕半分の面持ちで眺められている事に気がつくと。いそいそと立ち上がり、急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情で歩み寄った。背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事をするのだ。いや……むしろ告白と言っていいだろう。緊張に体が震え、表情が強ばるが、不退転の意志を瞳に宿し、一歩一歩、前に進んで紅達の元へ行き、想いを告げた。

 

「紅さん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

「………」

「………」

「………」

「……あ、あの、紅さん?」

「ん? ……あ、オレに言ってるのか? リーダーはハジメだからハジメに聞いてくれ。で、どうなんだハジメ」

「断る」

「えぇっ!?」

 

 まさかあの雰囲気からシカトされ、あまつさえ断られるとは思っていなかったシアは、驚愕の面持ちで目を見開いた。

 シアは憤慨した。もうちょっと真剣に取り合ってくれてもいいでしょ! と。

 

「ひ、酷いですよ! こんなに真剣に頼み込んでいるのに、それをあっさり……」

「いや、こんなにって言われても知らんがな。大体、カム達はどうすんだよ。まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

「ち、違いますよ! 今のは私だけの話です! 父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど……その……」

「その? なんだ?」

 

 何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでとある方向をチラチラと見る。あざとい。実にあざとい仕草だ。ハジメが不審者を見る目でシアを見る。

 

「その……私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

「はぁ? 何で付いて来たいんだ? 今なら一族の迷惑にもならないだろ? それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

 

 モジモジしたまま中々答えないシアにいい加減我慢の限界だと、ハジメはドンナーを抜きかける。それを察したのかどうかは分からないが、シアが女は度胸! と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。

 

「紅さんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

「………」

「………」

「………」

「……あ、あの、紅さん?」

「ん? ああ援護してほしいのか? 仕方がないな。ハジメここは異世界だ。お前がハーレムを作ろうがナニしようがお前を裁く奴はいない。幸せになれよ」

「………」

「………」

「………」

「……なにこの空気」

 

 ハジメ、ユエ、シアの三人から冷たい目で見られている紅。特に女性陣からの目線が痛い。

 

「……お前、本当にこいつでいいのか?」

「……今ならまだ間に合う」

「なにが? なにが間に合うって?」

 

 最初は手で顔を覆いながらあわあわしていたシアだったが、両の掌で頬をパンッと結構強めに叩きつけ、ゆっくりと紅の元へ歩み寄る。今度こそ、しっかり視線を合わせて。

 

「紅さん、あなたが好きです」

「……んん?」

 

 シアは目を逸らさない。ハジメ達は一歩後ろへ下がる。紅は……混乱していた。

 

「…………なんでハジメじゃないんだ? お前を救ったのもハウリア族を救うと決めたのもハジメだ。ほらよく見てみろ、あいつはかなりいい男だぞ」

「それでも、あなたは地面に衝突しそうになった私を受け止めてくれました。あなたの言葉がなければハジメさんは私達を救おうとは思わなかったでしょう。それに、あの怪物に喰べられそうになった時あなたに命を救われました」

「……目の前に落下してきたら誰だって受け止める。オレの言葉がなくても遅かれ早かれユエが言っただろう。……お前の言う怪物は、オレが殺したくて殺しただけだ」

「ええ、そうかもしれません。ですが、だからこそ惹かれたのかもしれません」

「……お前には、ハジメの〝特別〟になってほしかった」

「それはよくわかりませんが……私はあなたの傍にいたい」

 

 紅はハジメに視線を移す。だがフイッと目を逸らされた。さっきは同行を断ったくせに……。

 

「お前の一番の恐ろしさは身体強化云々じゃないな。心臓はアザンチウムで出来ていたか」

「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか! うぅ~、やっぱりこうなりましたか……ええ、わかってましたよ。紅さんのことです。一筋縄ではいかないと思ってました」

 

 突然、フフフと怪しげに笑い出すシアに胡乱な眼差しを向ける。

 

「こんなこともあろうかと! 命懸けで外堀を埋めておいたのです! ささっ、ユエ先生! お願いします!」

「は? ユエ?」

 

 完全に予想外の名前が呼ばれたことに目を瞬かせるハジメ。まさかここで自分たちが巻き込まれるとは思わなかったのだろう。

 

「……………………………………ハジメ、連れて行こう」

「いや、なんだその間。明らかに嫌そう……もしかして勝負の賭けって……」

「……無念」

「お前このためにユエと勝負したのか!」

 

 リーダーであるハジメが頷けば紅は納得せざるを得ない。だがハジメも難敵だ。だからこそ、ユエを味方につけるという方法をとった。〝命懸け〟というのもあながち誇張した表現ではないはずだ。生半可な気持ちでユエを納得させることなど不可能なのだから。この十日間、ほとんど見かけなかったが文字通り死に物狂いでユエを攻略しにかかったに違いない。つまり、それだけシアの想いは本物ということだ。

 

「……あ~、すまん紅。ユエに頼まれたら断り切れない。今度錬成でなんか作ってやるから勘弁してくれ」

「……はぁ。シア・ハウリア」

「はい」

 

 一度深々と息を吐くとシアとしっかり目を合わせて、一言一言確かめるように言葉を紡ぐ。シアも静かに、言葉に力を込めて返した。

 

「オレは、人を愛さない。愛してしまえば、愛されてしまえば、失うことが怖くなる。恐怖で足が止まってしまう。……これから先、たとえ付いて来たとしても応えてやれるかわからないぞ」

「知らないんですか? 未来は絶対じゃあないんですよ?」

「む……」

 

 それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。未来は覚悟と行動で変えられると信じている。そしてその言葉が紅を揺らす。

 

「危険だらけの旅だ」

「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

 

 長老にも言われた蔑称。しかし、今はむしろ誇りだ。化物でなければ為すことのできない事があると知ったから。

 

「俺の望みは血族を、すべての竜を滅ぼすことだ。それはハジメの〝故郷に帰る〟よりもはるかに危険で常に〝死〟と隣り合う地獄だ。……もう家族とは会えないかもしれないぞ」

「話し合いました。〝それでも〟です。父様達もわかってくれました。それに私はまだまだ強くなりますよ?」

 

 今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。それにもう恐怖に屈したりはしない。自分にとって本当に恐ろしいことが何か、理解したから。

 

「敵は第八位階(メルグブデ)なんか話にならない、今のオレでも倒せないかもしれない理不尽の塊みたいな奴もいる。それでもか?」

「何度でも言いましょう。〝それでも〟です」

 

 シアの想いは既に示した。そんな〝言葉〟では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。

 

「………」

「ふふ、終わりですか? なら、私の勝ちですね?」

「勝ちってなんだよ……」

「私の気持ちが勝ったという事です。……紅さん」

「……ああ」

 

 もう一度、はっきりと。シア・ハウリアの望みを。

 

「……私も連れて行って下さい」

 

 見つめ合う紅とシア。紅は真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。

 そして……。

 

「………はぁ~、ハジメが許した以上オレがどうこう言う気はない」

 

 それは事実上の敗北宣言。あらゆる理不尽をねじ伏せる〝強さ〟を授かってから初めて〝死神〟が敗れた瞬間だった。

 樹海の中に一つの歓声と拍手が響く。見てみると拍手はハジメの仕業だった。

 

(なにやってんだこいつら。……あ〜、()()()にも怒られそうだな……)

 

――― 知らないんですか? 未来は絶対じゃあないんですよ?

 

 思い起こされるのはシアの発したたった一言。

 

「……ああ、それに関してはオレも大いに同感だ」

 

 そのために、自分はいるのだから。

 




 最初はね、ヒロインとか作る気なかったんですよ。純粋な異次元の極限バトルが描きたかったんですよ。ハジメさんのハーレムは崩したくないしオリヒロインとか作りたくないし……なのにどうしてこうなった?いやほんとなんで?八重樫さんは?
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