銀の死神   作:日彗

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第二十六話 フューレンへ

 

「何やってるんだ……?」

 

 目の前の光景に理解が追い付かない紅はそう疑問を零した。

 

「紅! やっと来たのか! シアの呼吸と心臓が止まっている! 急いで心肺蘇生を!」

「……ユエにやらせれば?」

 

 仰向けにして寝かせたシアは、顔面蒼白で白目をむき呼吸と心臓が停止していた。よほど嫌なものでも見たのか、意識を失いながらも微妙に表情が引き攣っている。

 

「ユエは心肺蘇生を知らない! そもそも回復魔法があるこの世界にはその概念自体がない可能性がある!」

「理解した。頑張れハジメ」

「テメェがやるんだよ! 嫌そうな顔すんな! 俺だって嫌だわ!」

 

 いつから意識を失っていたのかわからないが、一刻を争うことは確かだ。怪我をしているわけでもないし、水を飲んでいるところに更に水分を取らせる訳にもいかないので神水は役に立たない。だがそうなると当然……

 

「オレ、人工呼吸なんてしたことないぞ……」

「気道を確保して空気を送り込むだけだ! さっさとやれ!」

 

 ハジメに言われるがまま渋々シアに近づく。だがやはり、違う世界とはいえ友人の嫁に口づけするのは物凄く嫌だ。気まずいなんてレベルじゃない。だが当のハジメが後ろから「さっさとやれ」と目で訴えかけてくる。

 

「…………はぁ」

 

 その視線に耐え切れず、紅は意を決してシアに心肺蘇生を行った。その様子をハジメとユエは大人しく見ている。そう、ジッとジーと見ている。紅の心は既に折れかけていた。

 

(泣きそう……なんでオレがこんなことを。確かにみんなを守りたいとは言ったけどこういう事ではないと思う……)

 

 何度目かの人工呼吸のあと、遂にシアが水を吐き出した。水が気管を塞がないように顔を横に向けてやる。体勢的には完全に覆いかぶさっている状態だ。

 

「ケホッケホッ……コウさん?」

「……ああ、そうだ。お前ここまで来て溺死はないだ───何のつもりだ」

 

 むせながら横たわるシアに至近から呆れた表情を見せつつも、ホッとしたのも束の間、ボーと紅を見つめていたシアは、突如、ガバチョ! と抱きつきそのままキスを……しようとして顔面を鷲掴みにされた。

 

「んっ!? んーー!!」

「死にかけていた……というか死んでいた割には元気だな。心肺蘇生なんかしなくても自力で蘇生できたんじゃないのか? 蘇生直後に襲い掛かってくるとは思わなかったぞ」

「んー!! ん、んんーー!!」

「何言ってるのかわからん」

 

 顔を掴まれながらもジタバタ抵抗し続けるシア。ドン引きしているハジメとユエ。その地獄のような光景に紅はようやく手を離した。

 

「うぅ~酷いですよぉ~コウさんの方からしてくれたんじゃないですかぁ~」

「したくてした訳じゃない。なんで大迷宮の攻略者が溺れてんだ。おかしいだろ」

「つーかお前、意識あったのか?」

「へ? う~ん、なかったと思うんですけど……何となく分かりました。紅さんにキスされているって、うへへ」

「怖い怖い怖い、ハジメどうにかしてくれ。それとキスじゃない、救命措置だ」

「でも、キスはキスですよ。このままデレ期に突入ですよ!」

「本気で怖い。第三位階(ディザス・トロワ)よりずっと怖い」

 

 そんなこんなで一命を取り留めたシアを連れ、近場にあるブルックの町へと向かう一行。肉体よりも精神的な疲労が大きい大迷宮だった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 ライセン大迷宮攻略からおよそ一週間。

 紅達は冒険者ギルド:ブルック支部に来ていた。ギルド内のカフェには、何時もの如く何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごしており、ハジメ達の姿に気がつくと片手を上げて挨拶してくる者もいる。身を休めるために滞在していたのに連日のように(主にハジメの周辺で)事件が起き、その度に対処していた。

 

 そんなわけで、この町では、〝股間スマッシャー〟たるユエと、そんな彼女が心底惚れており、決闘が始まる前に相手を瞬殺する〝決闘スマッシャー〟たるハジメのコンビは有名であり一目置かれる存在なのである。ギルドでパーティー名の申請等していないのに〝スマッシュ・ラヴァーズ〟というパーティー名が浸透しており、自分の二つ名と共にそれを知ったハジメがしばらく遠い目をしていたのは記憶に新しい。

 

「おや、今日は四人一緒かい?」

 

 カウンターに近づくと、いつも通り、おばちゃん……キャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、ハジメ一人かシアとユエの二人組だからだ。紅はあまり部屋を出ず、出たとしても郊外で鍛錬するのみである。

 

「ああ。明日にでも町を出るんで、あんたには色々世話になったし、一応挨拶をとな。ついでに、目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ってな」

「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」

「勘弁してくれよ。宿屋の変態といい、服飾店の変態といい、ユエとシアに踏まれたいとか言って町中で突然土下座してくる変態どもといい、〝お姉さま〟とか連呼しながら二人をストーキングする変態どもといい、決闘を申し込んでくる阿呆共といい……碌なヤツいねぇじゃねぇか。出会ったヤツの七割が変態で二割が阿呆とか……どうなってんだよこの町」

「えっ、そんなことがあったのか……?」

「なかには『お姉さまに寄生する害虫が! 玉取ったらぁああーー!!』とか叫びながらナイフを片手に突っ込んで来た奴もいる。裸にひん剥いて亀甲縛りして一番高い建物に吊るし上げた挙句、〝次は殺します〟と書いた張り紙を貼って放置したがな」

「お前が一番ヤバいじゃないか。間違いなく七割の変態の仲間入りだぞ」

 

 そんなことがあったなんて初耳だ。町中に出ない様にして良かったと心底思う。

 

「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」

「嫌な活気だな」

「で、何処に行くんだい?」

「フューレンだ」

 

 そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。

 

 フューレンとは、中立商業都市のことだ。ハジメ達の次の目的地は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるので、大陸一の商業都市に一度は寄ってみようという話になったのである。なお、【グリューエン大火山】の次は、大砂漠を超えた更に西にある海底に沈む大迷宮【メルジーネ海底遺跡】が目的地だ。

 

「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ……どうだい? 受けるかい?」

 

 キャサリンにより差し出された依頼書を受け取り内容を確認するハジメ。確かに、依頼内容は、商隊の護衛依頼のようだ。中規模な商隊のようで、十五人程の護衛を求めているらしい。紅とユエとシアは冒険者登録をしていないので、ハジメの分でちょうどだ。

 

「連れを同伴するのはOKなのか?」

「ああ、問題ないよ。あんまり大人数だと苦情も出るだろうけど、荷物持ちを個人で雇ったり、奴隷を連れている冒険者もいるからね。まして、ユエちゃん、シアちゃんも結構な実力者だ。見た目からは分からないが銀髪の兄ちゃんも強いんだろう? 一人分の料金でもう三人優秀な冒険者を雇えるようなもんだ。断る理由もないさね」

「そうか、ん~、どうすっかな?」

 

 ハジメは少し逡巡し、意見を求めるように後ろを振り返った。正直な話、配達系の任務でもあればと思っていたのだ。というのも、ハジメ達だけなら魔力駆動車があるので、馬車の何倍も早くフューレンに着くことができる。わざわざ、護衛任務で他の者と足並みを揃えるのは手間と言えた。

 

「……急ぐ旅じゃない」

「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」

「……そうだな、急いても仕方ないしたまにはいいか……」

 

 ハジメは二人の意見に「ふむ」と頷くと最後に紅へと視線を向けた。ユエの言う通り、七大迷宮の攻略にはまだまだ時間がかかるだろう。急いて事を仕損じては元も子もないというし、シアの言うように冒険者独自のノウハウがあれば今後の旅でも何か役に立つことがあるかもしれない。

 

「いいんじゃないか偶には。決断はまかせる」

「そうか。ならその依頼を受けようか」

「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」

「了解した」

 

 ハジメが依頼書を受け取るのを確認すると、キャサリンがハジメの後ろのユエとシアに目を向けた。

 

「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ? この子等に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」

「……ん、お世話になった。ありがとう」

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」

「ハジメ、ぶん殴られるのか……可哀そうに」

「なんで俺だけなんだよ。泣かせるとしたら俺より紅だろ」

「あんた等も、こんないい子達泣かせんじゃないよ? 精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

「……ったく、世話焼きな人だな。言われなくても承知してるよ」

「……できる限りの努力はする」

 

 キャサリンの言葉に苦笑いのハジメと普通に苦い顔の紅。そんなハジメに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。

 

「これは?」

「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」

「……えっ」

 

 バッチリとウインクするキャサリンに、思わず頬が引き攣る。手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるアンタは一体何者なんだ という疑問がありありと表情に浮かんでいる。

 

「おや、詮索はなしだよ? いい女に秘密はつきものさね」

「……はぁ、わーたよ。これは有り難く貰っとく」

「素直でよろしい! 色々あるだろうけど、死なないようにね」

 

 謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。ハジメ達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。

 

 

 そして翌日早朝。

 

 ブルックの町民達を思い出にしながら、正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来たハジメ達を見て一斉にざわついた。

 

「お、おい、まさか残りの四人って〝スマ・ラヴ〟なのか!?」

「マジかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

「いや、それはお前がアル中だからだろ……」

 

「……〝スマ・ラヴ〟ってなに? そんなに広まってるのか?」

「俺に聞くな。無視しろ」

 

 ハジメが、嫌そうな表情をしながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

「君達が最後の護衛かね?」

「ああ、これが依頼書だ」

 

 ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

「……もっとユンケル? ……商隊のリーダーって大変なんだな……」

「バカ、失礼だろ……」

 

 日本のとある栄養ドリンクを思い出させる名前に、ハジメの眼が同情を帯びる。なぜ、そんな眼を向けられるのか分からないモットーは首を傾げながら、「まぁ、大変だが慣れたものだよ」と苦笑い気味に返した。

 

「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちは紅とユエとシア」

「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね? それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 モットーの視線が値踏みするようにシアを見た。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女だ。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たるハジメに売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。

 

 その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸り紅の背後にそそっと隠れる。ユエのモットーを見る視線が厳しい。だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは、すなわち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーが責められるいわれはない。

 

「ほぉ、随分と懐かれていますな…中々、大事にされているようだ。ならば私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」

「って言ってるが、どうする紅?」

「ちなみにおいくらほどで?」

「あなたは私を庇おうって気はないんですか!? 私よりお金の方が大事なんですか!? この薄情者! 人でなし! 女の敵!」

「ただの冗談だったのに……」

 

 身体強化MAXで紅の背中をドカドカ殴る。いやドカドカどころではなかった。地味にダメージが蓄積されながらも耐え続けているのは本人にも罪悪感があったからだろう。

 その様子にモットーも少々引いている。だが手放さないだろう事は感じていた。それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとする。

 

 だが、

 

「申し訳ないが彼女(を含めた全員)を守ると(未来で親友と)誓った身だ。もしも無理矢理奪うつもりなら、例え神でも許すことはできない」

「…………なるほど。では仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願います。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

 紅の発言は相当危険なものだった。聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言、というか完全にアウトな発言である。これを仮に聖教教会へと伝えれば即刻異端認定が押される。それだけの覚悟があるという事だろう。故に、モットーは紅達がシアを手放すことはないと心底理解させられた。

 

 すごすごと商隊の方へ戻るモットーを見ていると、背中に何やら〝むにゅう〟と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回され紅を抱きしめてくる。

 肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。

 

「重い、離せ」

「お、重い!? 女の子に抱きしめられた感想がお、重い!? 嘘です! 今体重を軽くしてるので重いはずがありません!」

「耳元で叫ばないでくれ……」

「けどかなり優秀な商人だ。仲良くしておいて損は無いと思うぞ。ユンケルの名は伊達じゃ無い、か」

 

 腕を組み、うんうんと頷いていたハジメはその顔に不気味な笑みを浮かべて紅を見つめた。

 

「気持ち悪い笑い方してどうした」

「黙れ……んなことより、お前いつ誓ったんだ? なあおい。いつシアを守るって誓ったんだぁ? 白状しやがれツンデレが!」

「そうですよぉ! んもう! 紅さんってばいつからそんな、うふふ、うふふふふ~」

「……シア、ちょっとキモイ」

 

 三者三様の反応を表すハジメ達を白けた眼で見つめる。

 

「いつって言われると……奈落に落ちた日かな」

「「「……え?」」」

 

 三人を無視して商隊の方へと向かう。後には口を開けて佇むハジメ達だけが取り残された。

 

「……実は紅さんも未来が視えていたり?」

 

 当たらずも遠からずである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ブルックの町から中立商業都市フューレンまでは馬車で約六日の距離である。

 

 日の出前に出発し、日が沈む前に野営の準備に入る。それを繰り返しながら進み続けた。道中ハジメ達が熱々の食事をハフハフしながら食べ、全冒険者が涎を滝のように流しながら血走った目で凝視し、物凄く居心地が悪くなったシアが、お裾分けをすることもあったが。

 

「紅さんも、そんな隅っこにいないで一緒に食べましょうよぉ~」

「……オレはいらない。みんなで食べてくれ」

 

 シアが何度か食事を持っていくも、紅は食べようとしない。食べなくても問題ないというのもあるが、他の冒険者に分けてやれということだろう。

 

「いらないなら俺が食うぞシアちゃーん! こんな美味いモン食わねぇなんて正気じゃねぇぜ!」

「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる! シアちゃん俺もおかわり!」

「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ? 身の程を弁えろ。ところでシアちゃん、町についたら一緒に食事でもどう? もちろん、俺のおごりで」

「な、なら、俺はユエちゃんだ! ユエちゃん、俺と食事に!」

「ユエちゃんのスプーン……ハァハァ」

 

 ぎゃーぎゃー騒ぐ冒険者達に、ハジメは無言で〝威圧〟を発動。熱々のシチューモドキで体の芯まで温まったはずなのに、一瞬で芯まで冷えた冒険者達は、青ざめた表情でガクブルし始める。ハジメは、口の中の肉をゴクリと飲み込むと、シチューモドキに向けていた視線をゆっくり上げ囁くように、されどやたら響く声でポツリとこぼした。

 

「で? 腹の中のもん、ぶちまけたいヤツは誰だ?」

「「「「「調子に乗ってすんませんっしたー」」」」」

「楽しそうだな……」

 

 見事なハモリとシンクロした土下座で即座に謝罪する冒険者達。彼等のほとんどは、ハジメよりも年上でベテランの冒険者なのだが、そのような威厳は皆無だった。ハジメから受ける威圧が半端ないというのもあるが、ブルックの町での所業を知っているのでハジメに逆らおうという者はいないのである。

 

「まあいいか。シアもハジメ達の所に戻れ。あっちの方が楽しいだろ」

「そうですね。ではお隣失礼します」

「…………え?」

 

 有無を言わせず隣に座るシア。その様子に混乱するしかない紅は目を丸くするだけだった。

 

「なんで隣に座った? オレの言葉に肯定してたよな?」

「そんなことよりも、はいっ! いい加減何か食べてください」

「だからオレはいらないって……」

「私の料理が食べられないって言うんですか!!」

 

 めんどくさい。そう思いハジメに助けを求めるが目を逸らされる。ならば、とユエを見るが一向にこちらを見ようとしない。

 

「……わかった。ならその串焼きだけでいい。シチューはみんなに分けてやってくれ」

「ふふ、これが食べたいですか? で、では、あ~ん」

「…………」

 

 シアが頬を染めながら上手に焼けた串焼き肉を、紅の口元に差し出す。どうやら食べさせたいらしい。どうしても食べたいわけではないので無視してもいいのだが……

 

─── ジーーーー

 

 何やら複数の視線を感じる。食事していた冒険者達と、先程まで目を合わせようとしなかったハジメとユエ。態々食事の手を止めてまで何がしたいのか分からない。

 

「そういうのはハジメにしてやれ。喜ぶぞ」

 

ドパンッ!

 

 一発の銃声が響きわたり、閃光が紅の鼻先を掠っていった。

 

「……おいハジメ」

「くちゃくちゃ、ゴクンッ。ガツガツ……」

「………〝銀気創け───」

「ま、まあまあまあ、冷静になりましょう! ほらハジメさんも! 食事中にいきなり撃たないでください!」

 

 とは言うが、紅が頭を逸らさなければ当たっていた。電磁加速までして本気で狙ったのだ。本人は知らぬ顔で食事を再開しているが。

 

「くちゃくちゃくちゃくちゃ、ゴクンッ」

「狩竜───」

「やめてくださいってばーー!!」

 

 

 その後、魔物の群れに遭遇してユエのオリジナル魔法〝雷龍〟で蹴散らし、その魔法を見た紅が何故か急に不機嫌になったりなど色々あったが、一行は遂に中立商業都市フューレンに到着した。

 

 フューレンに着いてからも、モットーがシアの身柄とハジメの持つアーティファクトを引き取ろうと交渉を持ち掛けたり等あったが、誰一人死なずに着いたのだから良しとしよう。

 




お・ま・け

「とうとうビームまで出す様になっちまったか……」
「ビームじゃない、斬撃だ」
「しかも剣の振りはまんまエクス〇リバー……」
「エク〇カリバーじゃない、狩竜閃だ」
「しかも魔法阻害効果付き……」
「あそこは密閉空間だったから……」
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