不屈の悪魔   作:車道

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キング・クリムゾンの重圧 その②

 何もせず傍観を続けると『加圧』が進み一方的にプアー・トムが有利になる。

 『加圧』の影響で顔から血を流しているなのはからは、体力的にも精神的にも段々と余裕がなくなってきていた。

 黙って見ていては(らち)が明かない。遠隔自動操縦型のスタンドなのに本体が姿を現したことに疑問を覚えつつ、なのはは次なる一手を打った。

 

「近寄れないなら、それはそれでやりようがある! キサマには後悔する時間をも与えんッ!」

 

 キング・クリムゾンに床板を引き剥がさせて宮殿を展開する。そのまま槍投げのように床板をプアー・トム目がけて投擲した。

 宮殿の内部での行動は相手には把握できない。当たる直前で解除すれば、確実に避ける間もなく攻撃を食らうはずだった。

 

「ん? いま、なにかしたか?」

 

 目を見開き驚いているなのはに対して、とぼけるように答えるプアー・トムは座ったままタバコを吸っている。

 頭部を貫く軌道で投げたはずの床板はプアー・トムには当たらず壁に突き刺さっていた。

 キング・クリムゾンの力加減を間違えて軌道がずれたわけではない。なのはの目からは確実にプアー・トムの頭部を貫いたように見えた。しかし、まるで実体が無いかのようにすり抜けてしまったのだ。

 後ろを振り返って壁に突き刺さった木片を見たプアー・トムは、ようやく自分が何をされたのか気がついた。

 最初から手頃な物を投げて攻撃してくるのは予想の範疇だったようで慌てる様子はない。

 

「ワシがその程度の攻撃を予想してないわけがないだろ。こうして姿を見せているのは、確実に始末できるという自信があるからぢゃ」

「……大した自信だな」

 

 ダラダラと止まらない血を手の甲で拭いながら、なのはは思考を続ける。プアー・トムがこうも無駄話をしているのは時間を稼ぐためだろう。

 黙って見ていても『加圧』で倒せるからか。なのはを承太郎たちと合流させたくないからか。その両方の可能性もある。

 ろくな遠距離攻撃のないキング・クリムゾンには、これ以上プアー・トムに有効打を与える手段が残っていない。

 無理やり時を飛ばして近づいて『加圧』を受けながらプアー・トムを攻撃するのは、なのはにとってリスクが大きすぎた。

 恭也や美由希ですら耐えられなかった強烈な『加圧』を受けながら一撃でプアー・トムを再起不能にするには、なのはの体は華奢すぎるのだ。

 

(コイツのスタンド能力は密閉された空間に作用する。キング・クリムゾンを使ってみんなを車に運べば能力の範囲外に逃げられるかもしれない)

 

 逃げて他のスタンド使いに助けを求めるのも選択肢のひとつだ。時を止められる承太郎のスタープラチナならオゾン・ベイビーの能力を無視できる可能性は十分ある。

 

「逃げても無駄ぢゃ。逃さないために、こうして直接ワシが乗り込んできたんだからな」

 

 撤退するため、倒れている恭也と美由希をキング・クリムゾンで担ぎ上げようとしたなのはにプアー・トムが語りかける。

 吸っていたタバコの火を床に擦り付けて消したプアー・トムは、立ち上がって伸びをしながらオゾン・ベイビーの能力を説明しだした。

 

「車に乗って範囲外に逃げようと考えたな? それも想定内の行動なのによお。絶望させるためにあえて教えるが、オゾン・ベイビーの射程距離は半径100メートルだ。

 車で逃げたって、これだけの射程があるなら付け回すことぐらい簡単なんだよなあ。わかるか? おまえたちは、もう負けているんだよッ!」

 

 プアー・トムはあえて教えなかったが、オゾン・ベイビーの『加圧』は射程距離外に出れば緩やかに元の気圧へと戻る。

 射程距離から逃れるために車を選んだのは間違いではなかった。しかし、プアー・トムも己のスタンド能力の欠点はよく理解していたのだ。

 

 オゾン・ベイビーはホワイトハウスのような見た目のヴィジョンを地面に埋めるか、本体が直接触れることで発動する変則的なスタンドだ。

 逆さまにしたバケツのような頭部を持ったヴィジョンは相手が『結界』の影響を受けていると出現するサインのようなもので、それ自体に意味はない。

 

 地面に埋めた場合は自動で半径100メートル内の密閉された空間の『加圧』を始める。

 本体がどれだけ遠くにいても能力は解除されないので、埋める手間がかかるが使い勝手はこちらのほうが上だろう。

 それなのに、あえて本体を晒すというリスクを犯しているのは確実になのはを始末するためだった。

 吉廣からの情報でキング・クリムゾンの特性を知ったプアー・トムはなのはを一番の難敵に位置づけた。

 直接操作しなければ能力の範囲外に逃げられ、対策を練られる可能性が高いとすら考えていた。だからこそ、こうして直接始末するために対峙しているのである。

 

(なぜ、ヤツに攻撃が当たらなかったんだ……本来の能力は『加圧』ではないのか?)

 

 ズキズキと痛む耳鳴りに耐えながら、なのははエピタフの予知を頼りに推理を進める。

 スタンド能力は原則として一人につき一つしか現れない。キング・クリムゾンとエピタフも時の飛ばし方を変えているだけで、基本の能力から派生したに過ぎない。

 つまり根本から異なる能力を複数宿しているスタンドは存在し得ないのだ。その点を踏まえて、なのははじっと考える。

 

(本体に近づいたり『結界』の内部にいると『加圧』されるのは能力によるものだ。それらは過程であって結果ではない。

 ヤツは実体がないかのように、わたしの攻撃を(かわ)してみせた。

 なにかカラクリがあるはずだ。()()()()()()()()()……これらに関連する現象がなにかあるはず……)

 

 スタンド使いは特異な能力で超常的な現象を引き起こすが、物理法則を完全に無視するわけではない。

 オゾン・ベイビーもそうだ。スタンド能力で『加圧』と『減圧』を起こすだけで、減圧症などの事象は現実でも起こりうる範疇である。

 つまり、先程の攻撃を(かわ)した手段も本体を透過させる能力などではなく、『加圧』と『減圧』の能力から派生した事象のはずなのだ。

 

「わかったぞ……わたしの攻撃が当たらなかった謎が! キサマは『加圧』によって気圧をズラして()()()()()()()()()()()んだなッ!」

 

 蜃気楼という現象をご存知だろうか。砂漠に有りもしないオアシスが見えたり、海上にビルや山があるように見える現象である。

 かいつまんでメカニズムを説明すると、これらの現象は密度の異なる大気の中で光が屈折して違う場所の風景が映し出されることで起こる。

 オゾン・ベイビーは本体に近ければ近いほど大気を『加圧』させることができる。『加圧』するということは密度が変化するということだ。

 自然ではありえないレベルの気圧差を発生させることで、光を屈折させてプアー・トムはなのはたちに自分の位置を誤認させたのだ。

 

「この短時間でワシのオゾン・ベイビーの能力をそこまで理解するか。本当に油断ならないヤツぢゃな、おまえは。

 ……で? 謎が解けたのはいいが、どうやってワシを倒すつもりなんだ? やろうと思えばこういうことだってできるぞ」

 

 膝の上にホワイトハウスのようなオゾン・ベイビーのヴィジョンを乗せたプアー・トムが手のひらを合わせると、生暖かい空気が道場に広がった。

 大気は密度が上がると温度が上がっていく。自転車のタイヤに空気を入れていると空気入れのポンプが熱くなるのは、空気が圧縮されているからだ。

 プアー・トムは手のひらを合わせることで簡易的な『結界』を作って一気に『加圧』を促進させたのだ。それと同時にプアー・トムの姿がブレる。

 

「ば、馬鹿なッ!?」

「こうなってはどれが本当のワシかなんてわからんよなァァアア────ッ!」

 

 五人に数を増やしたプアー・トムが一斉に口を開く。彼は気圧の差を更に大きくして光を乱反射させることで、合わせ鏡に写すように多数の自分の姿を投影してみせた。

 いかにエピタフで未来が読めても、選択肢が多すぎてどれに攻撃したらいいかすら分からない。攻めあぐねいて唇を噛み締めているなのはの肩を士郎が叩いた。

 

「ここは俺に任せてくれ」

 

 目を閉じ袖口から取り出した鋼糸を手にした士郎が構える。プアー・トムは一つだけ計算に入れていなかったことがあった。

 吉廣から情報を貰っていなかったというのもあるが、彼は士郎を()()()()武術の使い手だと思っていたのだ。

 

「ギッ……グッ……ど……どうやってワシを見分けたッ!?」

 

 誰もいない場所に向けて放たれたように見えた鋼糸は、しっかりとプアー・トムの首にくくりついていた。

 士郎が減圧症により負傷しているのもあって、いきなり首をへし折れはしなかったが、ボンレスハムのように肉に食い込んでいる鋼糸を指で引き剥がすのは不可能だ。

 

「気配を感じ取った。ただそれだけだ」

 

 士郎は今までずっと目を閉じてプアー・トムの気配を探っていた。御神流には視界に頼らず、音と気配だけで相手の居場所を察知する奥義がある。

 言葉にするだけなら簡単だが、実際に姿の見えない相手がどこにいるかピンポイントで見極めるのは不可能に近い。驚くべきは、それを可能にした士郎の技術だろう。

 

「こ、こんな目にあうなんてよ……ワシ()はおまえらをサッサと始末して、吉廣が隠し持っている()()を対価に貰うだけの予定だったのによお」

「下らない無駄話に付き合っていられるか。このまま首を締め上げて頚椎(けいつい)を折って──っ!?」

「パパッ!?」

 

 ピンと張った鋼糸をプアー・トムが手のひらで挟み込む。ただそれだけの動作で、士郎の脇腹がバギョンッと音を立ててえぐれるように大きく陥没した。

 

「ワシに直接触れるなら覚悟しろよ。おまえが触れている加圧の数値は、直接だから一気に登っていってるからな!」

 

 オゾン・ベイビーの能力はパッショーネの暗殺チームの一人、プロシュートのスタンド『ザ・グレイトフル・デッド』と同じく直接触れることで一気に能力を促進させられる。

 その圧力は遠隔攻撃時とは比較にならない。袋に入れられて掃除機で圧縮されている布団のように、ベコベコと士郎の体が見る見る間に加圧されていく。

 

「ワシの頚椎はまだ折られてないぞッ! このワシの体より早く……おまえの身体内部を潰してやるッ!」

「いや、キサマはもうおしまいだ……そもそも、わたしの声も聞こえていないだろうがな」

 

 宮殿を展開したなのはが、光沢のない瞳でプアー・トムがいるであろう空間をじっと見つめている。

 もし吹っ飛んだ時間を認識できる人物がいたら、なのはの瞳の中に黒い炎が揺らめいているように見えただろう。

 なのはの攻撃は既に終了していた。視線の先には誰もいないが、周囲にいるプアー・トムの幻影を見れば何をしたか一目瞭然(いちもくりょうぜん)である。

 

「──ゴボッ!?」

 

 時が再始動したことで、初めてプアー・トムは己の身に起きた事態を把握した。金魚のように口をパクパクと開くが、うまく声がでない。それは当然だ。なにせ首や顔の肉をズタズタに切り裂かれているのだから。

 

 宮殿の内部では基本的に干渉はできない。だが例外が一つだけ存在する。なのはが承太郎と戦ったときに使った血の目潰しだ。本体から流れ落ちる血は、唯一の例外で動きの軌跡となった相手にも干渉できる。

 それだけでは動きを妨害できても攻撃としては役に立たない。承太郎に敗北してから、なのはは宮殿内部でも使用可能な攻撃方法を模索していた。

 そして行き着いた答えが、血液を高速で飛ばし水圧カッターのように相手を切り裂く技だった。シチュエーションこそ違うが、本来の流れで仗助が吉影に対して行った攻撃と同じ原理である。

 

 時を飛ばしてもプアー・トムの位置までは把握できない。それなのにプアー・トムを正確に狙えたのは、士郎が鋼糸を首に巻き付けられたおかげである。

 光が湾曲して正確な位置が分からなくとも、真っ直ぐに伸びた鋼糸の方向を見ればおおよその位置は特定できる。

 限界まで時を飛ばしながら血の水圧カッターを何発も鋼糸に沿って、プアー・トムがいるであろう位置に向けて放っていたのだ。

 

「倒せた、のか……?」

「どうやら……スタンド能力は解除された、ようだね」

 

 プアー・トムの幻影が全て消えて、ずっと続いていた耳鳴りや出血も弱まったのを確認した二人は警戒を解いた。

 鋼糸を手放してぐったりしている士郎は、立ち上がれないのか横たわったまま様子をうかがっている。

 血を流しすぎて顔色の悪いなのはが動けない士郎の代わりに、床にひれ伏しているプアー・トムに近づく。そうしていると、いきなりプアー・トムの体が石化し始めた。

 突然の変化に二人が驚いていると、あっという間に風化していき最終的に砂粒サイズまで粉々になってしまった。

 

「あっという間に粉々になってしまったな……人間ではなかったのか?」

「……コイツの正体は気になるけど、いまは後回しだよ。パパはここで安静にしてて。急いで仗助を呼んでくるから」

 

 かろうじて意識こそあるものの士郎はかなりの重症である。恭也や美由希も目を覚ます気配がない。幸いにも待ち合わせ場所まで行けば仗助と合流できる。

 貧血でふらつく体を無理やり動かしながら、なのはは血で汚れた服を着替える間もなく急ぎ足で集合場所へと向かうのであった。

 

 

 

 プアー・トムとの戦闘が長引いたのに加えて、負傷による貧血で足が鈍っていたのもあってか、なのはが集合場所にたどり着いたときには8時30分を過ぎてしまっていた。

 

「……おかしい。もう全員揃っているはずの時間なのに誰もいない」

 

 雨に濡れて顔に張り付いた前髪を手ぐしで整えながら、なのはは腕時計を見ている。時刻は8時37分で予定の時間から10分も経っていない。

 集合時間に遅れたからといって、無視して先に出発するほど承太郎たちは薄情な性格ではない。何かがおかしいと思いながら、なのはは周囲を見渡した。

 目立つのは扉を開けたまま停車している赤い二人乗りの外車だ。エンジンのキーも刺さったままで、不用心を通り越して不穏な雰囲気すら感じられる。

 更に気になったのは、ランドセルと黄色い通学帽を地べたに放り投げて泣いている茶髪の小学生だ。転んだにしては膝や顔に外傷はないが、それが余計に怪しかった。

 実はなのはが角を曲がる直前、茶髪の小学生は叫び声を上げていたのだが、雨音と貧血の影響でなのはの耳には届いていなかった。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、ここで真っ白いコートを着た背の高い男の人を見なかった?」

「し……知らない! そんな人()()、ぼくは見てないッ!」

 

 うつむいたまま地面に伏していた茶髪の小学生がガバリと起き上がると、慌てたように否定の言葉を重ねた。しかし、その行動は逆効果である。

 慌てていたのか、余裕がなかったのかは分からないが、なのはが特定の個人について尋ねたのに対して、茶髪の小学生は複数形で言い返してしまった。

 口にした後で失言に気がついたのか、茶髪の小学生はアタフタしながら両手で口を覆う。

 なのははそんな挙動不審の小学生の様子を眺めているうちに何かに気がついたのか、すっと目を細めながらゆっくりと口を開いた。

 

「おまえ……川尻早人だな。ここで何があったのか、包み隠さず教えてもらおうか」

「言えないんだ……どうしても言えないんだよおおおッ!」

 

 茶髪の小学生──川尻早人は大粒の涙をこぼしながら走り去ろうとするが思ったように前に進まない。

 おかしい、どうしてだと考えていると急に服の襟を掴まれたかのような衝撃が首に走る。

 逃すまいとなのはがキング・クリムゾンで早人を捕まえたのだ。そして、そのまま尋問を開始してしまった。

 家で重症を負った家族が待っているのに加えて自身も怪我をしている状況では、さすがのなのはも普段のような洞察力は発揮できなかった。

 

「いいか、わたしの質問に答えるんだ。答えなければ首の骨をこのままへし折る。

 承太郎たちはどこに行った? おまえの父親……川尻浩作の正体は()()()()なのか!」

 

 その一言──吉良吉影の名前がスイッチだった。これこそが早人がこうまで怯えていた理由であり、承太郎たちの姿が見当たらない理由でもあった。

 拳ほどの大きさしかない猫を人の姿にしたような外見のスタンド──キラー・クイーンが条件を満たしたことで、なのはへと襲いかかる!

 

「これは吉良のスタンド、キラークイーンか! 迎え撃て、キング・クリムゾンッ!」

 

 事前に承太郎から情報を伝えられていたため、なのはは瞬時にキラークイーンが吉影のスタンドだと理解できた。

 反撃するためにキング・クリムゾンで殴りながら、なのははエピタフで5秒後の未来を見る。そこには爆破され全身から血を吹き出している自分の姿が映っていた。

 原理は分からないがこのままでは爆破される未来を知ったなのはは、迷わず時を飛ばす。

 だが、なのはの表情は険しいままだ。その時、宮殿では本来はありえない現象が起きていた。

 動きの軌跡しか残らないはずなのに、聞いたことのない男の声が響き渡ったのだ。

 

「正確には早人に仕掛けたキラークイーン第3の爆弾『バイツァ・ダスト』だよ。攻撃しても、もう遅いんだよ。

 わたしの姿を()()ということは、すでに目の中に入ったということなのだ。そして時間を飛ばそうがバイツァ・ダストは自動的に発動する!」

 

 なのはの瞳の中に入り込んだ第3の爆弾──バイツァ・ダストは非スタンド使いに取り憑く自動操縦型の能力だ。

 取り憑かれた人物が本人の意志かどうかはともかく吉影の正体をばらすか、攻撃されると自動発動する。

 なのはは川尻浩作と吉良吉影は同一人物だと早人の前で言ってしまったせいで条件を満たしてしまった。

 

「爆破されるという結果はふっ飛ばしたはず! 何が起こっているというんだッ!?」

 

 宮殿の展開時間はまだ残っているはずなのに、静止したものが消え去り夜空が広がる世界がボロボロと崩れていく。まるで時間そのものを破壊されているような光景である。

 ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力で結果を無かったことにされたときとは、また違った光景だ。

 

 これこそがバイツァ・ダストのもう1つの能力だ。バイツァ・ダストは瞳の中に入り込んだ対象を爆破した後に、自己判断で本命の能力が発動する。

 本命の能力──それは直近の1時間を爆破して無かったことにするというやり直しの能力だ。

 しかも、ただやり直すのではない。時間を巻き戻しても、運命そのものはスタンド能力を解除しなければ固定されてしまうのだ。

 承太郎たちは固定された運命により何もできないまま爆破されて、この世から消えてしまった。

 記憶を引き継げるのは早人だけである。早人は前回の記憶を頼りに承太郎たちを助けようとしたが、失敗してしまい打ちひしがれていたのだ。

 

 なのははキング・クリムゾンにより爆破と運命の固定化こそ回避できたが、時間そのものを破壊して巻き戻る能力までは回避できなかった。

 スタンドパワーで負けていたわけではない。これは相性の問題だ。時間を飛ばしても時間そのものを爆破する行動まで無かったことにはならないのだ。

 

 こうして()()()の7月16日の朝は終わりを迎えた。そして()()()の7月16日の朝が始まる。

 バイツァ・ダストを破って、承太郎たちを固定化された運命から助けられるか否かは早人の肩にかかっている。




誤字脱字、表記のぶれ、おかしな日本語、展開の矛盾を指摘していただける国語の先生をお待ちしております。

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