【仮題】RTA操作受付中の飛龍ちゃん(くん) 作:棚町薫の妻
麦わらの一味が夜の森へ向かった頃、すれ違うように森から出てくる影があった
「おう帰ったか...って、おまえさんがサウスバードを捕まえてきちまったか」
子どものような体躯に、似合わないほど大きなバックを背負い、片手にはジョ~と不思議な鳴き声をあげるサウスバードを捕まえた少女が現れた
「誰か他に居るのか?」
「麦わら帽子を被ったやつらだよ。短い付き合いだが、おまえさんが人を紹介するとは思わなかったぜ。よっぽど気に入ったのか?あのバカ共が」
「...そのほうが速いと思っただけだ」
「そうかい...」
モンブランは仕方のないものを見るように少女を見る
どうやらこういった会話は初めてではないようだ
「ところでどうだったんだ?
「...やはり
「そうか。流石のおまえさんでも無理だったか」
「無理ではないが、何もないところで力尽きる可能性を考えないバカではないというだけだ」
心なしかむっつりした顔で反論する少女
「へっ、そうかよ」
「あぁ。では少し仮眠を取る、奴らが帰ってきたら話をする」
捕まえてきたサウスバードを手渡しながら仮眠を取ろうとする少女
「おう、船の改造でうるせぇだろうがしっかり休めよ」
「問題ない」
大きなバックから寝袋を取り出し中へ入り、ウッホウッホと作業音が聞こえる中、数秒も立たずに寝息を立て始めた
いつもながらの寝入りの速さにもう慣れながら、彼は少女との出会いを思い出していた
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一週間前...
いつものように海底へ潜り、少しばかりの成果を得たり得なかったりする日々の中、一瞬だけ頭上が曇ったかのような暗さになった
だがすぐに元に戻り、上を見上げたときには何も残っていなかった
雲によるものではなく、鳥が通ったにしては大きすぎるその現象が何か空島に繋がるものなのではないかと
何か手がかりになるのではないかと必死に見上げすぎて、すぐ近くにいる少女に声をかけられるまで気が付かなかった
惜しがりながらも少女からの話を聞いてみると、空島へ行きたいと言うではないか
最初は近所のガキンチョがからかいに来たのかと疑ったが、話を聞けばどうやらそうでもなさそうだった
生まれつきなのか物事に興味を持ちにくい性格の自分が、何故かあるかわからない場所に胸騒ぎがするほど行きたくなるのだと
速く、一刻一秒でも速く行けと聞こえるのだと少女は話した
何より、その目が本気なのだと伝えてきた。まるで猛禽類の、いや、爬虫類のヘビやトカゲを想像させるようなその目に、こいつはおれと同じバカなのだと理解した
しかし空島の事と行き方を教えたとしても、その身一つでどうするのかと、そう聞くと少女は問題ないと言いその姿を変えた...
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「お〜〜〜〜い!ひし形のおっさ〜〜ん!!」
思い出しながらタバコをふかしていると、森の方から戻ってくる一味の姿が見えた
「変な鳥見つけたぞ!あとアトラスも!」
「随分走り回されたぜ。せっかくの酔いが醒めちまった」
「もうあんな虫だらけの所二度とゴメン!!まだ鳥肌が立ってるわ...」
「ナミさんに同感だぜ。気味悪い虫があんなにウジャウジャと...」
「普通の虫なら歓迎なんだが、あの大きさだと命の危機を感じるからな...」
「興味深い森だったわ」
各々それぞれの感想を言いながら、大体はくたびれながらの帰還を果たした
「けど、なんであいつらあんなに怯えてたんだろう。もしかして例のドラゴンが...?」
動物の声が聞こえるタヌ...トナカイのチョッパーが顎に手を当て考える
「もしそうだとしたら、私達食べられていたかもしれないわね」
「真顔で恐ろしいことを言うなよロビン!」
「それで、例の子は帰ってきたの?」
「あぁ、今は仮眠を取ってるがな。起こしてこよう」
「わざわざ起こさなくてもいいわよ!」
「いや、どっちにしろそろそろ起きるはずだ」
そうモンブランが言うやいなや、丁度家から少女が寝袋を抱え出てきた
月明かりを反射するほど黒い艶をもつミドルボブの髪に、150cmがあるかないかほどの少女。間違いなくあの酒場で見た少女だ
「起きた」
「まだ目が眠そうだが」
「仮眠は十分だ」
そう言いながら目を擦り、正常な目に戻そうとする
「起こしちゃってごめんね。それで、話があるんだよ、ね?」
「そうだ。
「おう、いいぞ」
「あんたはちょっと黙ってなさい!!」
ゴツン!と、なぜかゴム人間にたんこぶを作りながらまた少女に向き合う
「...あのね、私達が言うことじゃないかもしれないけど、あなたが行こうとしてるところはとても危険な場所なのよ!?命がいくつあっても足りないくらい!!
...もし死んだら親御さんだって悲しむんじゃない?だから...」
「...亡き父が、空島の話をしてくれたんだ」
「な、亡きって」
「もう何年も前に聞いた話なのに、どうしてと頭から消えさらないんだ」
亡き父の話をする少女だが、その目はなにかに縋るようにも悲しみにも満ちていなかった
「無いけば無いでいいんだ。だが、もし存在するのならば...」
少女の目は、前だけを向いていた
「この目で確かめたい」
少女の目が、一瞬だけ瞳孔が縦に開いたように見えた
(今、一瞬目が...!?)
「とにかく、行くのを辞めるつもりはない。おまえたちの船に乗ったほうが、何メートルかは近いというだけだ。返答は朝までに決めてくれ」
そう言いながら、耳を触り森へと向かっていった
そんな少女を、麦わらの一味は目で追っていた
一人、冷や汗を流していた人物を除いては
「まず最初に言っておくと、おまえと出会ったのは完全な偶然だ。見張りでも何か用事があるわけでもない」
少女が森の奥、めったに人が来ない場所に入り暫くすると独り言のように行った
「だから、ここでの行動の報告義務はなく、速いわけでもないから俺が報告することは一切ない」
「安心しろというのも無理だろうが、こちらから干渉はしないことを約束する。おまえも非常時以外はそうしろ。以上だ」
それだけをぶっきらぼうに言い、もとの道をたどる少女
その言葉を、木から生えた目と耳だけが見聞きしていた