絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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第11話

 帝国の宿の一室にて。

 

 

 防音等の各種監視阻害手段を貼った上で、セバスに周囲の警戒をして貰いながら私たちは会話をしていた。

 

 

「色々見て回る事が出来て私も楽しかったですが、ひとまず本日はこんな所でしょうか?」

 

「そうだな。時間が遅くなってきたのもあるし──何より楽しみを一気に消化してしまうのはな。また後日としよう。……ちなみに、他にはどんな施設が?」

 

 

 ふむ……他にモモンガが興味を抱きそうな施設となると、あの辺りか。流石に善人ムーブをしている私が奴隷市場を薦めるわけにはいかないから──

 

 

「残りの目ぼしい施設といえば……大学院や帝国魔法学院、帝国美術館に闘技場辺りでしょうか。私が当たり前と見做しているだけの施設もあると思うので、希望を言ってくださればご案内致します」

 

「どれも実に魅力的だな……流石は人間種の国家で2番目に発展している国の首都といった所か。──それにしても学園、か。青春……いや、待てよ? 考えてみると……

 

 

 ……何やらモモンガがぶつぶつ言っているが、ただでさえ小声なのに加えて彼は現在全身鎧を着用しているから、私の身体性能を以ってしても全く聞き取れなかった。

 ──なんとなく、非常にくだらない事を言っていそうな気がする。単なる勘だが。

 

 

 それはともかく、周辺国家の、特に人類圏国家の情勢、勢力といった話は既にしてある。

 

 その結論として、法国に来る決心がまだ付かないならば、まずは地理的にも帝都に行ってみないかと私は主張したのだ。

 実際、誰がどう見てもその主張自体は妥当な物でしかないために、モモンガもそのようにしてくれた。

 

 勿論、フールーダやそのタレント、そもそもタレントとは何か……などといった話も既に終えている。

 

 ……正直言って、モモンガならば私の話の裏を取る為にカルマが中立或いは善に寄ったNPCに面や鎧を着せるなりしてエ・ランテル他王国主要都市に派遣する、仮にその手の人材が不足していたとしても、盗賊を捕らえるくらいはしていいかと私に聞いてくる──くらいはすると思っていたのだが……

 

 

 そんな事を考えながら、何やら挙動不審なモモンガを眺めていると、彼は私の視線に気付いたか

 

 

「ゴ、ゴホン! ……しかし、今日観光していて改めて思ったが、これからどう行動していくにせよ、やはり外貨を稼ぐのは必須のようだな」

 

「外貨……ですか」

 

「あの時彼らに貰った金額はごく僅かだからな。個人として活動するだけならば暫くは問題無いのだろうが」

 

 

 ここで私は伝言を使う。

 挙動不審な態度はともかく、彼が外貨を欲するであろう事は事前に想定していた通りだ。

 

 

(……申し訳ありません、私はこちらの世界に転生してから金銭的問題に悩んだ事は一度も無いので、あまりお役に立てないかもしれません)

 

(エルシオーネさんは私と違って転移ではなく転生なんですものね。しかも、国の中枢に産まれたとなると、そうなるのは当然か)

 

 

 私は既に、自身が転移者ではなく転生者であるという事はモモンガに伝えている。

 まあ、それを教えないとこれから先色々と齟齬が出るから伝えるのは当然の話だし、その事実だけでは何かの問題を発生させるという事は無いだろうから教えた所で問題は無い。

 

 先程の国家事情やタレントについての話を早々に説明した件についてもだが、本当に、事情を隠すつもりは基本的に無いのだ。

 

 

 原作知識と、私がユグドラシルのプレイヤーでは無いどころか違う世界から来たといった事以外は。

 

 

 それにこの二つについても、いずれは話しても構わないと考えている。一定以上の信頼や好感度稼ぎに成功した場合、それで怒られる事は無いだろうし、むしろ隠したいであろう秘密をよく話してくれた、とすらなり得るような話だから。

 

 要はタイミングや話す順番こそが肝心なのだ。

 当たり前の話だが、何を言うかより誰が言うかの方が重要なのだから。

 同じ内容だろうとそれまでの親密度の違いによって意味合いが180度変わるというのは、もはや今更言うまでも無い単なる常識でしかない。

 

 

 それに、もし私が逆の立場だとしたら、私のような行動を取る存在に怒る事はまず無い。

 この立場ならばそのような行動を取るのは仕方ないと納得出来る範囲だし、そもそも論として私はモモンガに不利益を一切齎していないどころかむしろ利益しか与えていないのだから。逆に、秘密がその程度で良かったと安堵するようなレベルだ。

 モモンガも、まともで理性ある社会人である以上は同様な感想を抱くだろう。

 

 だから、仮に今全てがバレたとしても、『多分』大丈夫だと思う。

 

 ──だが、ここが現実世界である以上、『多分』では駄目なのだ。

 私が欲するのは確実で絶対的な安全。

 

 多分、恐らく、十中八九……そうせざるを得ない状況でないのならば、そんなものに自身の命を賭けるほど私は覚悟は決まっていない。

 

 そのため、私は今この時点でその2つの秘密についてまで話しはしないのである。

 

 

(とはいえ外貨……ですか。アイデアがいくつか思い浮かばないではないですが……そのくらいのレベルでも大丈夫でしょうか?)

 

(いえいえ! むしろ何かあるならば予想レベルでも十分以上にありがたいですよ!!)

 

(そうですね……それならば──)

 

 

 私は頭を悩ませるふりをする。

 資金難を解決する手っ取り早い方法。

 モモンガに思い浮かんでいない筈がない。

 

 ……法国の、後ろ盾を得る事。

 

 とはいえ、それを決断させるにはまだ押しと、何より時間が足りないと思う。

 だから。

 

 

(1つ目。私経由で法国の何かしらの依頼を受ける。……例えば、先日言ったようにエ・ランテルにて不審な組織が活動していると情報を掴んだために現在法国の特殊部隊を派遣していますが、そういった件をモモンガさんが代わりに行って頂けるならばそれなりの報酬を出せるでしょう)

 

(なるほど……確かに、エルシオーネさん経由ならばまだ個人的依頼としてそれを成すという言い訳が付く、か。──いきなりだいぶ良さそうな案が来て正直驚いています。前から思っていましたが、エルシオーネさんって相当頭が良いですよね)

 

 

 ……モモンガには今考えたように見せかけているからそう感じるのだろうが、その内実はずーっと昔から考えていた策というだけだ。

 私の頭が本当に良いのならば、物事がもっとスマートに運んだであろう事は想像に難くないのだから。

 

 

(……本当に、先程から褒めすぎですよ。嬉しいですが少し恥ずかしいです。──では2つ目。ビーストマンに悩まされる竜王国に救援に行き、報酬を貰う)

 

(竜王国……なるほど。確か強い個体でもせいぜいレベル20〜30程度の亜人が攻め込んでいるんでしたか)

 

(はい。そのため実力的には容易かと。──ただ、この策を実行する場合は、申し訳ありませんが現状表に出る事が出来ない私が協力する事は叶いません。が、モモンガさんの実力があれば金銭は確実かつ容易に得られる上に名声にも繋がりますね。目立つ事はデメリットにもなり得ますが、その辺りはやり方次第かと)

 

(──エルシオーネさんはもう十分すぎる程助けて頂いていますし、何より事情を考えたら当たり前の話ですよ。本当に、あなたは良い人過ぎます。やり方も、それくらいは私が考えるべきでしょう)

 

 

 ……何というか……

 いや、今その違和感について考えるべきではない。

 

 

(──3つ目。人の手があまり入っていない地を冒険し、財を得る。……まあこれは希望的観測が大分入ってはいますが、成功した際のメリットも一番大きいでしょう。ナザリックの近くにはおあつらえ向きにトブの大森林やアゼルリシア山脈もありますし)

 

 

 勿論これは、様々な意味を持った伏線張りである。

 ザイトルクワエといい、モモンガが興味を持ちそうなルーンといい、レアなリザードマンといい、竜王に実際に会ってみる事といい、これによって成される出来事は多い。

 そして、モモンガが楽しみそうなイベントには私も参加し、そうではないイベントはスルーすればいい。

 王国領に入るという事はつまり、どうしても白金の竜王のリスクは付き纏う……が、恐らくこれが終われば王国領に私が行く事はほぼ無くなる事が想定される以上、ここは耐えねばならない。

 

 

 ……この辺りで察するかもしれないが、要はモモンガには私の重要性を更に実感して貰いたいのだ。

 

 そのためには、最低1度は私抜きで何らかの活動をして貰い、その際にはあまり楽しめず、逆に私がいる時は楽しく過ごせる……

 そこまで上手くはいかずとも、近い印象を持たせたいのである。

 

 

(まあ、どれをするにせよそう急ぎの話ではないですから、明日はまた帝都の観光をしませんか? ……ごめんなさい、お恥ずかしながら私自身がこの3人でする自由な観光がとても楽しくて……)

 

(ふふ、いいですよ。……エルシオーネさんも楽しんでくれていて、嬉しいです)

 

 

 私はモモンガの趣味に理解がある。

 普段我儘など言わない私がこんな事を言うくらいには楽しんでいる。

 ついでにセバスもちゃんと連れてこい。

 

 

 というメッセージだ。

 

 セバスをこちらに抱き込むのは前々から考えていた策の1つであり、言うまでもないが成功による恩恵は計り知れない。

 

 

 そんな事を考えていると

 

 

(ふ、ふふ……いや、本当に──ああ、糞。感情抑制か。……ナザリックで支配者ロールしている時はありがたいですが、観光中や今みたいに楽しい時にもこれが発生するのは……)

 

 

 ──やはり、違和感。

 

 これに限らず、私は彼と接していて覚える違和感が幾つかある。

 

 

 まず、モモンガは私の事を信頼し過ぎているように思える。

 

 信頼云々に関わらず、情報は可能な限り多角的な方向から集めなければならない。私の情報だけでは信憑性が薄いのは至極当然の話だ。

 

 だから、いくら私に対する疑り深さは無いと確認したとはいえ、モモンガは念を入れて私の言葉の裏取りや更なる情報集めに中立や善寄りのNPCを使って何らかのアクションを取るだろうと考えていた。

 

 だが、NPCが人類圏でどんなに調査をしようが、私が与えた以上の情報を掴む事など出来はしない。

 量や質だけの話ではない。

 情報はタイミングによって重要性が変わる物である以上、初動であそこまでやった私以上の貢献をする事はまず不可能だ。

 

 だからこそ、それを利用してNPCより私の方が有用なのだというアピールに使ったり、他にも色々な策を考えてはいたのだが……どうやらその必要は無い? 

 

 

 そして、先程から予想以上に彼は私に好意的なリアクションを取り、感情抑制まで頻繁に起きているという。

 いずれそうなるように誘導しようと思っていたし、その為に色々してきた訳だが、この段階でモモンガがこうなるとは思っていなかった。

 

 

 ──つまり、思っていたよりも遥かに現段階で既にモモンガからの好感度が高い? 

 

 

 いや、過信してはならない。

 ここはオーバーロードの世界であり、その残酷さ、無慈悲さは幼少期にこれ以上ない程味わったのだ。

 ここで油断して全てを崩壊させるなど最早愚者を通り越しているのだから。

 

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