絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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5000字以内に抑えたかったけど無理でした(約6500字)


第14話

 

 パンドラズ・アクター。

 

 それはモモンガが唯一作成した100レベルNPCであり、カルマ値はぎりぎり中立。頭脳はNPCトップクラスであり、アイテムマニアであり、何よりモモンガの黒歴史をこれでもかと詰め込んだ卵頭に軍服に仰々しいリアクションという、一言で簡潔に示すならば……糞ダサNPCである。

 

 私の計画における重要人(?)物であり、モモンガ至上主義であったり頭脳実力共に私より遥かに上であったりする以上、私としては是非とも取り込みたい──取り込めずとも事実上の協力関係は築き上げたい──相手ではあるのだが……

 

 

「Wenn es meines Gottes Wille(我が神の望みとあらば)」

 

「…………」

 

 

 いざ目の当たりにしてみると思っていたよりきついな、これ。

 

 

 それはともかく。

 私はモモンガに伝言を使い、

 

 

(NPCには、フレーバーテキストやカルマ値に依存する性質がとりわけ強いですが、それ以外にも創造主と似た行動を取る事が多いという特徴があります。つまり、モモンガさんには──)

 

(い、いやいや! お……私にはこんな趣味は無いですよ!! ただ、設定で! 昔若気の至りでこういう設定にしたというだけで……)

 

(ふふ、大丈夫ですよ。男の子にはこういう点があるというのは自然な事ですから。──それに、顔やドイツ語はともかく私も軍服は格好いいと思いますし)

 

(違うんです!! ……って、え? ──あ、そうですよね、軍服は確かに……いやいや、そうじゃなくて!!!!)

 

 

 隙あらばモモンガの趣味に理解があるアピールを欠かさない。

 こういった地道な努力の末に今があるのだから。

 

 

(まあ、冗談はこんな所にしておいて……)

 

 

 私は顔を引き締め、モモンガに確認を取る。

 この冗談は、モモンガではなく私の緊張を解すための物。

 

 心臓がどきどきする。

 これさえ越えてしまえば。

 逆に、失敗してしまったら──

 

 

 ──作戦、開始だ。

 

 

(幾度となく繰り返した確認ではありますが、これからの話は彼にとって非常に酷な内容となります。──構いませんか?)

 

(──そうですね。それはもう、仕方のない事ですから)

 

 

 モモンガは自らが生み出したNPCであるパンドラズ・アクターにだけは汚れ仕事を与えることへの躊躇が薄い事は把握済みだ。

 

 そして、私はパンドラズ・アクターの方に向き直し

 

 

「これより私は、法国所属のエルシオーネではなく、アインズ様──いえ、モモンガさん唯一の同胞であるエルシオーネとして会話させて頂きます」

 

「アインズ様の唯一の同胞、ですか。……どうやら嘘ではないようですね。貴女は至高の御方々というわけではないのに同胞。となると……」

 

 

 パンドラズ・アクターはモモンガの方を見た後にそう言った。

 

 ──正確に言うならば少々違うのだが、モモンガの事情を理解できる元日本人という意味ならばそれは事実となる。

 

 雰囲気を察したかオーバーリアクションを止め、答えが出る筈がない命題に対して思考を続ける彼に

 

 

「本来ならセバス様のように、私とパンドラズ・アクター様がもっと時間をかけて親交を深めてからこの話をすべきだと思います。ですが、今はその時間を掛けられない状況。なぜなら、事は既に起きてしまっているのですから」

 

「既に起きている……それはつまり、我々ナザリックに所属する者が何らかのミスを犯したという事でしょうか?」

 

 

 流石はナザリックにおける3大頭脳の1人。

 今の私とモモンガによる3者面談という状況と私の言葉からそれを導き出したか。

 やはり、彼は私などより遥かに優秀のようだ。

 

 逆の立場で考えた場合、私には即座にその答えに辿り着くという芸当はまず不可能だろうから。

 判断材料足る情報が少なすぎるし、NPCがミスをしたからこうなっているというのは少々突飛な考えのようにしか思えないだろう。

 

 しかし、彼が私より優れた頭脳を持っていた所で、既に事態には何一つ問題はないという段階にまで来ている。

 

 そう。問題は、無いんだ。

 

 

「──それより前に。モモンガさんには既に内容を()()()()()話し、その許可は得ているとはいえ、今から私は貴方にとても厳しいことを言います。──構いませんか?」

 

「アインズ様の許可を……ならば私に拒否の選択肢はありませんよ、お嬢さん」

 

 

 そうだ。

 何故なら私は、既にモモンガを私の味方に付けているのだから。

 

 そして、私は自らの心を鼓舞する。

 

 ──大丈夫。いざという時はモモンガが私を身を挺して守るという発言は既に得られている。

 だから、大丈夫。いきなり殺される事は、無いんだ。

 そしてここさえ乗り切れば、後は何とでもなるのだから──

 

 

「──まずは結論から申し上げます。あなたたちNPCは、モモンガさんの心を何一つとして理解してはいない」

 

「! ……それは一体どういった……」

 

 

 ……ふぅ、良かった。

 

 

 ──これがモモンガの許可を得た上での発言で無ければ、彼は私に襲い掛かったかもしれないが……今ここにモモンガが居て、私の全てを許している以上、それは成されなかった。

 

 私は彼が怒り狂って攻撃して来なかったという事実に内心で安堵を浮かべながら、いきなり自らの存在を否定する言葉を放たれて怪訝な様子を醸し出すパンドラズ・アクターを遮って畳み掛ける。

 

 ここを、この話を無事に乗り切った以上、もう後は消化試合だ。

 

 

「──それにより、モモンガさんが全く望んでいない世界征服をしようとし、命令に反して王国の裏社会や平野の支配をする」

 

「……アインズ様、いえモモンガ様が世界征服など望んでいない……? いえ、そんなまさか……」

 

「モモンガさんは賢い方ですが、勢いでその場の雰囲気に任せた発言をする事もあります。──モモンガさんがかつてのお仲間と、楽しみながらそのようにしていたという記憶は貴方にはありませんか?」

 

「…………」

 

 

 あるわけがない。

 私はそれをわかってて、言っている。

 だが──少なくとも私はパンドラズ・アクターなどより遥かに事情を知ったモモンガの同胞で、何より事実としてモモンガを現状最も楽しませている存在は私である──そのように認識は、した筈だ。

 

 

「それを理解せず、貴方たちはモモンガさんには間違いはなく、疑問点がある場合は自分が意図を理解しきれていないと考える──モモンガさん自身は、自らも間違う事があるのだと何度も言っているのに」

 

 私は一瞬目を閉じ、間を置いてから。

 

「報告は大事と彼は何度も繰り返しているのに──貴方たちはモモンガさんは全てを把握しているなどと考えて、間違いを犯す」

 

「…………」

 

「だから、貴方たちはモモンガさんを喜ばせようとして全くの見当違いの行動──命令されていないにも関わらず、支配領域を広げる。それが実はモモンガさんの意に反した行動だとは思いもしない」

 

 

 ここまで私がNPCにはモモンガを理解出来ないなどとボロクソにこき下ろしてはいるが、実際の所、彼らのモモンガに対する勘違いは仕方のない事だと私は思っている。

 

 仮に自分たちを創造した超越的な力を持つ神々が居るとして、その長──つまりは最高神とでも呼べる存在──が自分たちでは予想も出来ないような偉大な結果を残し、それなのに最高神自身は自らを大した事ない存在だと言ったとして、果たしてその言葉を額面通りに受け取るか? と言われたら……まあ普通に考えてそうはならないから。

 

 だが──

 

 

「つまるところ何が問題かというと……繰り返しにはなりますが、あなたたちNPCがモモンガさんの命令を曲解して勝手な行動を取り、結果としてモモンガさんの意に反した行為を成した……この点です。──ここまで言えば、事態の深刻さは理解して頂けるかと」

 

「……モモンガ様、それは……」

 

「……すまない、パンドラズ・アクター。彼女が言う事は全て、事実だ。……私の命令、監督不足が原因とはわかっている。だが……」

 

 

 モモンガが言い淀んでいるのを見て、畳み掛ける。

 

 

「モモンガさんのせいではありませんよ。それに、責任者を追及するよりも今やるべき事は──既に事が起きた以上、原因ではなく対策を考えるべきでしょう。後のことは、終わり次第でいいのですから」

 

「それは……そう、ですね」

 

 

 私はNPCが原因だと明確に言っているにも関わらず、責任者を追及すべきではないなどという冷静に考えたら意味のわからない事を言っているが……冷静になんて、なれないだろう? 

 

 それに、仮にばれたとして……最早、それがどうした? としかならないのだ。

 

 

「そもそも、それがモモンガさんにとって有意義な結果を齎すのであれば、看過しても問題ないでしょう。ですが、現状は……」

 

「つまるところ、大切なのは我々の一部がモモンガ様の意に反した行いを取り、あまつさえモモンガ様にとって望まぬ結果を出している……その対策という事ですか」

 

「あなたがモモンガさんのお役に立ちたい……そう、思っているならば」

 

「…………」

 

 

 深刻な表情──かどうかは卵顔である以上よくわからないが、内心はよくわかる。

 甚大なる問題──自分たちが過ちを犯しただけでなく、モモンガはそれを私にだけ共有し、私のみを頼っているという現状。

 それを理解出来ない彼ではあるまい。

 

 

「自らの価値というものは、自分自身で決める物ではありません。それは、他者にとって──あなたの場合、仕える存在にとって有用かどうかで決まります」

 

 

 そうだ。

 パンドラズ・アクターも結局はNPC。

 モモンガ至上主義の行動しか取れない存在だ。

 

 だから、私の内心はどうあれ、結局の所現状において最もモモンガの精神的支えとなっている私を守るという選択肢しか取れないだろう? 

 

 私の行動はモモンガの利になってしかいない。

 

 仮に私に依存したモモンガが私を守り続け、私を害そうとする相手を始末しようとしても、それは他でもなくモモンガ自身の意思でしか無い。

 

 私が彼がそうしてくれる事を望んで一連の行動をしているという思惑が仮にバレていようと、主人の幸せを第一とするならばパンドラズ・アクターのやるべき事が変わることは無いのだ。

 

 私の『モモンガ依存作戦』の肝はここにあると言っていい。

 

 要は

 

『冷静に考えてしまった場合、私自身の行動に、許容出来ない程に悪い点は一切存在しない』

 

 という事実だ。

 

 そして私は、私にとっての本題に入る。

 

 

「これから、モモンガさんの意思を勘違いして支配領域を広げようとする他にも、NPCが考えるであろう思考としては……私を指して、『あの女がアインズ様を惑わせている』や『あの女さえ始末すればアインズ様が私たちを見てくださる』……辺りでしょうか? ──そもそもの問題は、自分たちがモモンガさんの気持ちを何一つとして理解していない事だというのに」

 

「!? ち、ちょっと待ってください。彼らにはエルシオーネさんは協力者だと周知していますし、絶対に手を出すなと命令しているので、いくらなんでもそんな事……」

 

「──考えないと、思いますか? パンドラズ・アクターさん」

 

 

 私は支配者の演技を忘れて慌てるモモンガを横目にパンドラズ・アクターを正視しながら語りかける。

 

 彼はアルベドやデミウルゴスと匹敵するほど賢く、そして何よりモモンガ至上主義だ。

 

 だからアルベドという心当たりが明確にある以上、この場で嘘や誤魔化しをする事──モモンガに対する背信行為は出来ないだろう? 

 

 つまり──パンドラズ・アクターは、認めなければならない。

 

 

「……そうですね。エルシオーネ嬢の意見は正しいかと」

 

「っ!? そんな……」

 

「『アインズ様が手を出すなと言ったのは、今は伏して、隙を見て抹殺するためだ』などと考えて私を害そうとする……容易に考えられる行動です」

 

「そうでしょうね。私にはそれを成そうとする方にいくらか心当たりがあります。──そして、仮にそのような事をすれば、アインズ様……いえモモンガ様は私たちを完全に見限られるだろうという事も理解できます……しかし……」

 

 

 そう言って、パンドラズ・アクターが思考に耽る。

 

 気付いたか。

 

 今の私の発言は『おかしい』とまでは言わないが少々の疑問を抱かせる内容だと思う。

 

 

『……あまりにも、ナザリックの特定のNPCの性質を知りすぎているのではないか?』

 

 と。

 

 彼であれば、それに勘付く事もあるだろう。

 

 だが、パンドラズ・アクターがそれに気付いた所でもう何も変わりはしないのだ。

 

 

「……もし、NPCがそんな事をしようとしたならば……俺が、責任を取って処分します」

 

 

 ──既に、この考えに到達する程にモモンガが私に籠絡され、NPCに見切りを付けている現状では。

 

 再三繰り返しにはなるが、最早私の思惑に気付かれようが『だから何だ?』としかならない状況になっているから。

 

 

 

 私は頭脳戦など一切仕掛けるつもりはない。

 勝てないと最初からわかっている戦を挑むほど私は頭がイカれているつもりはない。

 

 私がNPCに対してやる事は、ただ事実を淡々と突き付けるのみであり、私が挑んでいる勝負は知恵勝負などではなく

 

 

『モモンガの心をどちらがよく理解できるか?』

 

 

 という戦い。

 

 そしてそれは、とうの昔に決着が付いている。

 

 

 私が何故この場にいるのか? 何故モモンガの代弁者のような役割をしているのか? 何故自分より先に沢山の情報をモモンガと共有しているのか? 

 

 ──何故、モモンガは自分たちより私の方を信頼しているのか? 

 

 考えれば、色々と見えてくるはずだ。

 

 私の存在が、モモンガにとってどういった意味を持つのかを。

 

 ──つまるところ、この交渉で失敗するパターンはただ1つだった。

 それは、最初に私がパンドラズ・アクターに対してモモンガの心を理解していないと言った際に、彼が怒り狂って襲い掛かってくる可能性があるというただ1点のみ。

 

 そこを無事に抜けた以上、モモンガをほぼ落としたこの状況では余程しくじらない限り交渉は問題なく進むと最初から想定しており、実際にその通りになった。

 

 繰り返しにはなるが、何事も最初が肝心なのだ。

 最初に全力を尽くして乗り越えてしまえば、大体の事はどうにかなる。そしてそれは、逆もまた然り。

 世の中は、良くも悪くもそういう風になっている。

 

 それが、私が2度の人生で得られた教訓と言っていいだろう。

 

 

 

 

 ──後は、時間の問題だ。

 

 私がこれからやる事は、パンドラズ・アクターが秘密裏にアルベドの部屋を調査するのを待つだけでいい。

 

 仮にアルベドがアインズ・ウール・ゴウンの旗を地面に捨てるなどしていなかった場合は、待つ時間が増える事になるだろうが……モモンガが既に先の発言をする程度には私に依存している以上、そこまで長くはかからないだろう。

 

 それで、モモンガ籠絡作戦はチェックメイトだ。

 

 成功次第、今の時代にて私が成すべき最後の計画に移行するのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンドラズ・アクター視点

 

 

 私は自らに与えられた場所である宝物殿に戻り、先程行われた私の常識を根底から揺らがすような衝撃的過ぎる内容について思いを馳せる。

 

 

 何よりまず思い浮かぶ事は──

 

 

 ……恐ろしいお嬢さんだ。

 

 

 我々には及びもつかない神算鬼謀をめぐらすモモンガ様に対して、思惑を予想や理解は出来るものの圧倒的な結果を叩きつける事により従う他どうしようもないという策を立てるエルシオーネ嬢……

 

 従う他どうしようもない。

 そう。彼女が現状最もモモンガ様のお心に寄り添い、他の誰よりもモモンガ様の救いとなっている今、思惑がどうであろうと私は彼女を守る方針を取る他ないのです。

 

 敵が、仮に守護者統括殿であろうとそれは例外ではなく。

 

 ……エルシオーネ嬢は、それはもう非常にわかりやすく私に守護者統括殿を排除させようとしている。

 ですが、それはモモンガ様のお心を考えればあらゆる意味に於いてまさしく正しい行いでしかないのです。

 彼女自身、私に狙いがバレている事は承知の上なのでしょうね。

 

 虫をも殺せぬような善人顔をしながらこのような過激な策を──方向性は異なるとはいえ、流石は至高の御方々と同格の存在なだけはあるといった所でしょうか。

 

 ──承りました。

 モモンガ様を裏切りさえしないのであれば、お心に寄り添い続けるというならば──エルシオーネ嬢の行いは、全てが許容範囲であり──私は貴女に従い続けると誓いましょう。

 善人であらねばならない貴女の代わりに、私が手を汚しましょう。

 

 

 ですがお嬢さん。わかっているのですか? 

 

 

 その道を行くというのであれば、貴女はいずれ……いえ、もしかするとそれすらも織り込み済みなのでしょうか? 

 ──神に仕えし可憐なる策略家の巫女よ。

 

 

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