絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者 作:チロチロ
ed分岐1
15話の後、エルシオーネが法国の人間とモモンガを引き合わせる前に自分の生い立ちについて話した場合の分岐
私がモモンガの心が傷付くように誘導し、そしてそれを癒す事で彼が私に依存するように仕向けるというマッチポンプを無事に成立させてから暫く。
「エルシオーネさん。俺、考えた事があります」
「はい。どうしましたか?」
何やら並々ならぬ決意を秘めた様子を見せるモモンガ。
──どうしたのだろうか?
あの後、秘密を共有するという事で、私はこの世界における自らの生い立ちについての話をし、それを聞いたモモンガが早急に法国と接触。
直後にエルフ王を討伐──という事をして以来、彼は少々考え込む事が増えたとは思っていた。
私の生い立ちについての話はモモンガが法国に付く前に話す必要があった。
秘密は秘密である内に私から打ち明ける事に意味がある。
法国上層部やアンティリーネ経由だと効果が下がるのは自明の理なのだから。
それによるモモンガの早急の法国への接触や、エルフ王の討伐自体は予想の範疇ではあったのだが──
「俺は最近になってようやく色々な事を知り、理解しました。この世界には──貴女を狙う敵が多すぎます。エルフ王といい、竜王たちといい──人間たちといい」
「それは……確かにそうかもしれません。しかし、全てがそうというわけではなく、私にも良くしてくださる皆様が……」
これは……やはりそういう事か?
「それでも! ……俺は、貴女だけは無事でいて欲しいんです。親ですらも貴女には──だから──」
モモンガが何やら重大なる決断をしたかのような雰囲気を醸し出しながら。
「──エルシオーネさん。ナザリックの奥に匿われてはくれませんか?」
なんて、言い放った。
「一時だけでいいんです。せめて、竜王をこの世界から排除するまでは……」
「……モモンガさんが私を気遣ってくださるそのお気持ちは嬉しいですが、私は……」
「……心優しいエルシオーネさんならば、そう言うだろうと思っていましたよ。人々を守りたいんでしょう? けど……俺にとっては、他の何よりも貴女こそが大事なんです。──仮に、貴女に嫌われる事があったとしても」
そう言って、モモンガは何やら手を翳して──
「!? モ、モモンガさん、待っ……!」
モモンガが嵌めている指輪の1つが輝くのを目にし、
それを使う程に──
と一瞬思った後に私の意識は暗転した。
「……ここは……?」
見た事もない程に贅を尽くした家具が置かれた部屋。
法国ですら、ここまでの代物はそうそう目にできない程の。
ここはきっと──
「目覚めましたか」
「モモンガさん。ここは……ナザリック地下大墳墓、ですか?」
なんていう、どう考えてもわかりきった事実に確認を取る。
こんな部屋、今のこの世界において他にあるとしたら、かの八欲王の天空城くらいだろう。
そして、自分が今いる場所が天空城じゃない事くらいは明らかで。
「……すみません。謝って許される事ではないとわかっています。それでも……仮に俺がエルシオーネさんに嫌われたとしても──」
「嫌ったりは、しませんよ。それは保証します。けれどやはり──」
モモンガの言葉を遮ってそう言う私に対し、彼は何やら嬉しさと悲しさを混同させたような声色で。
「──本当に、貴女は人が良すぎますよ。でも──いや、だからこそ、俺は……」
そして、モモンガが部屋から去っていった。
気配はかなり薄いとはいえ、何かが──恐らく八肢刀の暗殺蟲が──潜んでいるであろう事は私には感じ取れる。
ドアの向こうには、私の世話役兼監視役のセバスが居るのもわかる。
絶対に、私を外に出す気はないのだとモモンガは徹底しているのがわかる。
……私は。
私は──
笑いを堪えるのに、必死だった。
──モモンガが、私をナザリックの奥地に招き入れ、半ば監禁のような真似をしてくる──
私としてはそれで一向に構わないのだ。
ナザリックにて一生を過ごす。
──それの一体何処に問題がある?
そもそもそれは、法国における私の状況と何が違う?
何も違わない。
100年もの間、私は既に軟禁生活は送っている。
そして、今との決定的な違いは──自分以上の強者に怯える必要の有無。
だから仮にモモンガがこういう事を強行したとしても、私はそれはそれで一向に問題ない──どころか、煩わしい諸々の事情から解放されてむしろありがたい話だとすら言える。
こうなってしまえば、少なくとも今の時代において私が頑張って作戦を考える必要は最早ないのだから。
いやむしろ、ありがたいどころか私にとっては理想的な話でしかない。
何故なら、仮にモモンガが未来のプレイヤーに敗北する事があったとして──私のこの状況は、客観的に見て可哀想な可哀想な籠の中の鳥としか見えないからだ。
日本に生まれた一般人が、そんな私に危害を加えるだろうか?
哀れみを覚えて助ける──そんな話になるはずだ。
いや、そうなるように時間をかけて状況を作ればいいだけの話だ。
そして、それはもう容易すぎる話でしかない。
重要なのは、前述した私の可哀想さは単なる事実でしかないという事。
それをこそ私が望んでいるという事など、他人からはわかりようがない話でしかない。
そして、仮にばれたとして──何か問題があるのか?
私は誰かを不幸にしているのか?
むしろ──逆だろう?
単なる副産物に過ぎないとはいえ、結果的に幸せになっている人間の方が圧倒的に多いだろう?
幸せの基準は、人によって異なる物だ。
私にとっての幸せは──私が痛みから逃れ、そして生きている事。
恐らく、今後もモモンガはあれこれと言い訳をして私をナザリックから出そうとしないだろう。
そして、そんな彼に私は逆らえない──
一体何処に何の問題がある?
一時と言わず、ナザリックに永遠に引き篭もる。
それはモモンガだけでなく私にとっても望む所なのだ。
だって、たったのこれだけで完成するのだから。
絶対的な──善良で哀れなる姫君が。
加えて言えば、この場合モモンガは私に関わらせるNPCは必要最低限にするだろう。セバスを初めとした善よりの少数精鋭に限らせる筈だ。
そうなれば、NPCの対処を考える必要すら無くなる。
理想を言うならば、その内にアルベド、ニグレド、ルベドの3名はモモンガ、或いはパンドラズ・アクター辺りにちゃんと消してもらうのが一番良い訳だが……
まあ、何にせよ焦る必要など無い。
ゆっくり。そうゆっくりとそれを成せば良いのだ。
私たちには時間はたっぷりとあるのだから。
──ああ。私は本当に──
幸せですよ、モモンガさん。
「女神……様?」
私は、目の前に現れた俄には信じ難い程あまりにも美しすぎる存在に対し、思わずそう漏らしてしまった。
──この世界に長らく君臨する、偉大なる神の住まう居城。
伝説において、
『偉業を成した英雄のみが招待される楽園がある』
と語り継がれるその土地に、私は神手ずから案内され、そして足を踏み入れる事が叶った。
世間では世迷言と言われるその伝説。
少なくとも私が生きてきた間には、それを成すものは居なかったために仕方ない話ではあるが──幼稚にも私が今に至るまでそれを信じ続けたが故の成就なのだろうか。
幼き頃より憧れたその栄誉。
遂に、自分がそれをを賜る程の存在になれたというのか……
夢現とはまさにこの事ではあるが、神の居城のあまりの素晴らしさを前に、私のそのような思考は吹き飛んでいた。
見たことの無い程の美を集めに集めたその居城。
この世の財という財を全てここに置いたと言わんばかりの佇まい。
──あまりにも、素晴らしい。叶うならば妹にも見せたいものだ──
と、思わず呟いてしまった。
私は即座にその不敬を謝罪するが、神はあっさりと許してくれたどころか、それよりも私の妹について話して欲しいと言ってきた。
私の妹は──
剣を振ることしか脳がなく、悪運でたまたま今まで生き残ってきた私とは違い、優しく聡明で、村一番の器量良し。
家事全般を完璧にこなす、私には勿体無い妹。
いつも無理をする私を叱ってくれる、かけがいの無い妹。
けれど妹はあまりにも人が良すぎて、変な男に騙されはしないか
──たとえ何をされたとしても、それが好きな男からの事ならばと許してしまうといった事にならないか──
が心配になると話したら、神は、まるでその辺の安酒場にて私に声をかけてくる駄目な男が、私から唐突に全くの図星を突かれた時にする反応と同じような反応をした気がしたが……気の所為だろう。
そうして、神と長らく雑談を交わすという栄誉を賜りながら連れられたのはとある1室。
素晴らしい佇まいの老執事がドアの横に立つそこは、私には先ほど案内された玉座の間より遥かに──
いや、私にはこの部屋こそが、ナザリック地下大墳墓という神の居城において最も大切に守られている場所なのではないか
と感じられた。
思わず立ちすくんでしまう私を横に神がドアを開き、そうして中にいる存在と私は対面し──
「女神様、ですか。ふふ。私はそのような者ではありませんよ」
呆然としてしまう私に語りかける女神。
──本人は違うと言うが、それは謙遜などに由縁する反応だろうと私は確信した。
何故なら、偉業を成せば楽園に招かれるという伝説の他に、もう一つ。
『誰も側に立つことの出来ぬ偉大なる神には、唯一自身の側に在る事を許した妻が居る』
という伝説もあったからだ。
流石に眉唾にも程がある伝説。
この私ですら、その伝説に関しては全く信じて居なかったが──今それは真実だったのだと思い知った。
「貴女の事は、このお方からお聞きしております。──素晴らしい意志の強さを持つ、清廉潔白で質実剛健。現代における最高の英雄だと」
目の前の女神──12枚の翼を背に生やし、顔の造形に関しては最早言うに及ばない。
美しく穢れ一つなき白銀と、色としては対称でありながらも同じく燻み1つない漆黒によって2つに分たれた長い髪。
それらにより近寄り難い程に高潔な美しさを持ちながらも、深いスリットの入った、美しいだけでなく強大な力を感じ取れる素晴らしい服を着る事で妖艶さすらも醸し出す……まさしく美の化身。
私が今まで見て来たどんなものよりも遥かに美しき存在が、優しげな声色と表情をしながら私にそんな事を言ってくる。
その指には、やはり見た事も無いような素晴らしい指輪──1つだけ、一般にもあるような意匠の指輪がある気もしたが、それに構う暇は私には無かった。
彼女の言葉に対し、そんな、畏れ多いです。と答える私に向かって女神は
「ふふ。御謙遜なさらず──このお方がここまで貴女をお連れになったという事は──随分とお気に入りなさったという事。加えて、貴女では決して私を害せないと確信したが故の事」
女神が何か呟いたような気がするが、それは最早小声を通り越して発言したかも怪しいくらいの声量であり、聞き取れる筈は無かった。
そうして私がかの存在に拝謁して少し経った頃。
「そうですね。では少し、昔話をしましょうか」
彼女は、何かを懐かしむようにしながら。
「それは、今から3000年程前の話。私がまだ人間の──いえ、貴女と同じく人とエルフとの間に産まれたハーフエルフだった頃の話──」
そうして語る女神の姿は、あまりに美しくて──
ed1:永遠の揺り籠
前書きでも書きましたが、あくまでIF分岐なので、これで完結ではなくエルシオーネがモモンガを落とした直後に生い立ちを語らなかった分岐の本編が続きます。
以下このedに関する後書き。
色々語るので一応注意。
同情を引くような好感度稼ぎをこんなタイミングでやり過ぎるとまあこうなる。けど本人たちは幸せだし人類も永劫の繁栄は確定してるからいいよね?というEND。
このENDではここから先、エルシオーネは永遠にナザリックから出る事はありません。
そして、大人になった後に過保護モモンガにより指輪や始原の魔法や何らかのワールドアイテムすらも使って完璧な形で寿命の無い天使になったので、時間経過で死ぬ事もない。
私には本当の永遠というのは想像する事しか出来ないのであれですが……
パンドラズ・アクターの懸念が実現したわけですが、本人それで満足しているので彼は驚愕するでしょうね。
普通、エルシオーネがここまで静かに狂っているとは思わないですから。
エルシオーネはその内()世界転移の謎を解き明かして、星ごと滅んで死ぬ事への対策とかをするんでしょうね。
ハーフエルフの英雄女剣士さんですが、彼女にとある設定を付け加えるか否かでめちゃくちゃ悩みました。何なら後書き書いてる今も悩んでますし投稿してからも悩むかもしれません。
でも、少なくとも今は付け加えない方が美しいと思ってるので彼女はこんな感じのキャラとなります。後で少し何かを加えるかもしれないですが。
どんな設定かはわかる人もいるかとは思いますが、明言はしません。
ちなみに、この後は分岐しなかった本編を書くわけですが、これ個人的にかなり美しい終わり方だと思ってるので、これを超える話を書かないといけないんだよな……書けるか……?ってなってます。