絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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第2話

「ガゼフ・ストロノーフ様。お初にお目に掛かります」

 

「これは、転移? 君は一体……」

 

 

 隊長に持たせたご先祖様由来のアイテムを目印にし──鋼を具現したような屈強な肉体を誇り、年齢は30にいくかいかないか。巌のような顔をし、髪はかなり短く刈り込み、さっぱりというより危ない感じを出している男──ガゼフの下へと転移する。

 事前に隊長には言い付けておいたが、会合場所を法国が王国内に所有する人目につかない建物を選ぶ事により、少しでも白金の竜王の目を避ける可能性を高めている。

 

 私が直接動く場合どうしてもリスクは避けられないが、ここはそれを押してでも行動すべきと何度も繰り返したシミュレーションにおいて結論付けたから。

 

 隊長のすぐ側に居たガゼフは、突然転移して来た私を見て驚きの表情をしている。

 

 まあ、当たり前の事だ。

 

 私は今傾城傾国を着用しては居ないから、ワールドアイテムの持つ圧倒的威圧感を利用は出来ない。

 とはいえ、今の私の装いも傾城傾国程の物ではないがご先祖様由来の装備──見た目は完全にコスプレ巫女服であるのだが、これがまた妙に皆からのウケが良い──だし、何よりガゼフならば私との力の差をある程度は察する事が出来るだろう。

 私は現在ナザリックの面々と違って実力を隠す指輪を嵌めている訳では無いのだし。

 そんな存在が突然転移して来たら、彼が驚くのは当然といった所。

 

 相手を驚かせる、予想外の事をする──これは、交渉を有利に進める為のカードである。

 

 それはともかく、早く会話を進めなくてはならない。

 こんな場所を彼の存在がたまたま彷徨った結果目撃するなんて事態が発生するとは思えないし、備えとして髪の色と目の色はアイテムを用いて偽装しているから大丈夫だとは思う。

 現在私が傾城傾国を着用していないのも、白金の竜王に感知される可能性を下げる為だ。装備するだけで能力を使用しなければ感知はされない筈と記憶しているが、備えていて損はないだろう。

 

 だが、ここまでしても白金の竜王に私の存在を知られる可能性が0になった訳では無い。リグリットやイビルアイに気取られるのも面倒だ。

 ──まあ、その2人の場合はガゼフに見られないようにしてから始末してしまえばいい話ではあるのだが、それはそれでリスクを避けられない行為ではある為、出来ればやりたくない。

 だから、安全性を少しでも高くするためには早急に要件を済ませなくてはならないから。

 

 

「私の名前はエルシオーネと申します」

 

「!? よ、よろしいのですか? エルシオーネ様」

 

 

 隊長が、私が名乗った事に対して驚きの声を上げる。

 存在そのものが極秘である私が名乗る事。

 それは彼にとってはまさに驚天動地の事だろうから。

 だが。

 

 

「構いません。名前だけで何かが起きはしませんし、何より──ストロノーフ様にはこちらの誠意を示さなくてはと考えておりますから」

 

「誠意、か。ならばこちらも応えねばなるまい。そちらは既にご存知の様子だが──ガゼフ・ストロノーフだ。よろしく頼む」

 

「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致します」

 

 

 そう言って、私たちは握手を交わす。

 

 目の色と髪の色を偽装していて誠意も何もあったものでは無いが──その程度の嘘、自分の身の安全の為ならば躊躇はない。

 

 

「──俺とて、君が只者でない事は見ればわかる。そんな人間が名乗るという事はきっと重大な意味を持つのだろう。──ならば、それ程の存在が一体俺に何用だ?」

 

「流石ですね、ストロノーフ様。噂通りと言った所でしょうか? 私の事を見抜くとは」

 

 

 またもや私は大嘘を吐いた。

 何故なら、ガゼフのこの口調……彼は私が特別な存在だとは思っているだろうが、その内容どころか、私が見た目通りの年齢では無い事も気付いていないようだから。

 まあ、今の私は自らの髪と目の色を変えている以上はそれも仕方がないのかもしれないが。

 

 他にも、私には秘密が腐るほどある。

 何せ姉のアンティリーネにすら話していない秘め事が物凄く沢山あるのだから。まさに歩く極秘事項と言える。

 つまり何が言いたいかと言うと、私はガゼフが私の事を見抜いているとは全く思っていない。

 単なるおべんちゃら、という奴だ。

 

 ……常日頃から気を付けては居るが、少し上から目線になっているかもしれない。

 私より強大な存在からすれば、きっと私自身もこんな風に見られるのだろう。この先私は自らより遥かに強い存在と関わるのだから、その認識を失ってはいけない。

 ガゼフとのこの交渉においては、こちらが有利と見せ掛ける事が肝心だから、今現在のスタンスが間違っている訳ではないとはいえ、それを注意しておかなくてはなるまい。

 

 

 私は自身に喝を入れてから、本題に入る。

 

 

「本日私がストロノーフ様とお会いした目的はいくつかありますが、順を追ってお話し致します」

 

「いくつか? 俺にそこまで何か出来る事があるかはわからんが……まあ、よかろう」

 

「ありがとうございます。ではまず、この指輪をお預けします」

 

 

 そう言って、私はガゼフにマジックアイテムである指輪を渡す。

 

 

「指輪? これは一体……」

 

「!? エルシオーネ様、この指輪は……」

 

 

 ガゼフと隊長がそれぞれ反応を返す。

 その反応もまた、シミュレーション通り。

 

 

「この指輪の効果は、魔法が使えなくても遠隔地において私と伝言のやり取りが可能になる、といった物です。……可能な限り、ストロノーフ様にはこれを常時嵌めて頂きたいと思っております」

 

 

 ついでに、私にとっては転移のスポットになる代物であり、それこそが重要事項だという事実があるが、そこについては言及しない。

 

 

「なるほど……素晴らしいマジックアイテムではあるが、俺にそれを渡す意図がわからんな。俺と伝言のやり取りをしたい理由もそうだし、彼の反応からしてもわかるがこれは相当希少な物だろう?」

 

 

 ガゼフが狼狽する隊長を横目で見てからそう語る。

 

 

「はい。……信じて頂けるかどうかはわかりませんが……これから、ストロノーフ様は恐らく強大な運命の流れに関わる事になります。それの一助となる為に」

 

「運命の流れ? 君はやはり巫女のような者、という事か。……正直言って俺にはよくわからんが……貰えて損は無い、か」

 

 

 私に運命なんて物が見える筈がない。

 私は巫女でも何でもない。

 

 単なる原作知識から来る行動で、ただのコスプレTSエセ巫女だ。

 

 だが、私の転移、装備、話し方……様々な要素を全て利用して信憑性を出している。

 

 私は早速伝言を使ってガゼフに話しかける。

 

 

(ありがとうございます。ひとまず受け取って頂ければ十分です。使い方は──これで大丈夫でしょうか?)

 

(ああ、わかった。これで、君の言う運命とやらが訪れた場合に連絡をするという事だな……それにしても)

 

(?)

 

 

 ガゼフが伝言を切り、直接話す。

 

 

「使ってみてより明確に感じるが……凄まじいアイテムだな、これは。もしや伝説級なのではないか?」

 

「そう、ですね。少なくとも量産出来る様な物ではありませんから」

 

「……それどころでは無いでしょう。ああ、エルシオーネ様がこれを極秘にしろと仰ったのはこういう事なのか……」

 

 

 隊長が空を仰ぐようにしながら呟く。

 まあ、これはご先祖様由来のユグドラシル産アイテムなのだから、その反応は仕方がない事なのだろうが。

 だが、話はまだ終わっていない。

 

 

「──それは兎も角、これはストロノーフ様ではなく、あくまで私の都合でお渡しする物です。受け取って頂いたストロノーフ様には相応の報酬を用意しておりますので──まずは、こちらを」

 

 

 そう言って私は、ガゼフにポーションを渡す。

 それを見た隊長の表情が再び歪んだ。

 

 

「──これは、ポーション……なのか? だが、その色は──赤?」

 

「はい。ポーションとなります。……ただ、もしこれを薬師に見せた場合は騒ぎが起きる事が想定されますので、出来ればストロノーフ様ご自身で使うのみとして頂きたいのですが……」

 

「……なるほど。見ればわかる話ではあるが、どうやら俺が思う以上に普通のポーションではない、という事か。ならば、その効能は察しろと」

 

 

 私はそれには答えない。

 交渉術の基本だが、極力相手側にこちらが大きく見えるようにするための手法だ。

 

 そもそも、このポーションの効能はあくまで通常の物に毛が生えた程度の物だ。重要なのは、モモンガにユグドラシル産を想起させるポーションだという事。

 

 それに、あくまでこのポーションに求めるのはオマケ程度の役割でしかない。

 モモンガに伝われば良し、道中でガゼフが使って消えてしまっても良し、なんなら何かのミスで薬師に伝わって騒ぎになったとしても、モモンガには伝わるかもしれないがそれで白金の竜王に私の存在が知られる事にはまずならないだろうから。

 

 だが、少なくともガゼフ視点でこのポーションがどう見えるか? を考えたら、こんな物でも重要な報酬だと錯覚させる事は出来ると考え、私はこれを渡す事にしたのだ。

 

 彼目線では、突然転移で現れてイタコ芸かます巫女っぽい奴が伝説級の指輪と一緒に渡してきた見た事もないポーションだ。

 どう見ても凄まじい代物にしか見えないだろう。

 

 

「では、指輪とポーションの方はこれにて。次の要件に入りますが、よろしいでしょうか?」

 

「……ああ。正直、一介の戦士に過ぎない俺にとってはここまでで最早手一杯なのだが、構わない。……本当に、君は一体何者なのか……」

 

 

 あなたがそういう反応を取る事を望んで私は一連の行動を取っているのだ、なんて本音を言うわけがない。

 

 そうして、私はガゼフに畳み掛けるように提案をする。

 

 

「ストロノーフ様。これから、私たちの一連のやり取りを他言無用とする事を報酬に、私と手合わせをしませんか?」

 




 エルシオーネはかなりビビりなのでとにかく畳み掛ける交渉をします。
 これからもこういうキャラという認識でお願いします。
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