絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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ありがとうございます。


第4話

 

「他言無用とは言え、カバーストーリーは必要でしょうから──そうですね、指輪やポーションについて聞かれたら、旅の巫女に貰ったとでも言って頂けるとありがたいです」

 

 

 原作におけるセバスの真似事をした手合わせを終えて。

 さも、今考えついたかの風を装って私はガゼフに言う。

 自分で自分を巫女扱いするのは昔はかなり抵抗があった──私は巫女でも何でも無いため当然の事だ──が、今ではもうだいぶ慣れた物だ。

 

 

「──ああ。わかった。巫女程の実力者が俺に一体何を望んでいるのかはわからないが……先程の手合わせは俺にとって非常に大きな物だったから、承ろう」

 

「ありがとうございます。基本的にはこちらから連絡する事になるのでしょうが、ストロノーフ様から何かございましたらいつでも承りますので、伝言をお願い致します」

 

 

 そうして、私が締めに入ろうとすると。

 

 

「最後に1つだけ、構わないか?」

 

「はい。私に答えられる事ならば」

 

 

 ガゼフが私の目を真っ直ぐ見つめて、質問をして来た。

 ……内容は、大体想像が付くが。

 

 

「感謝する。──巫女程の存在がこうして動くという事は、その運命とやらが大事である事は理解した。……王国に、陛下に──いや、世界に危機が訪れるのか?」

 

「……申し訳ありません。それは現時点ではお答え出来ない情報です。それもまた、いずれ話す時もあるでしょう。──今はこれでいいでしょうか」

 

「……わかった。感謝する──」

 

 

 私は答えになってないようで、実はなっている回答をする。

 まあ、分かりきった話だ。

 何もないならば、私という歩く極秘事項がこうして動く訳がないのだから。

 

 ……もしかしたら、彼らがこの世界を訪れない可能性もあるが──

 

 

「……では、またお会いしましょう。『隊長』さんも、行きましょうか。ここまでありがとうございました」

 

「エルシオーネ様のご命令とあらばこの程度。──ではストロノーフ殿、これにて」

 

「ああ、また会おう。他言無用とはいえ、貴殿らと出会えた幸運に感謝するとしよう」

 

 

 そうして、私は隊長を連れて転移にて帰還する。

 一度行った事のある場所、あるいは何かの目印がある場所ならば私は他者を転移する事も出来るのだ。

 

 これで、ひとまずの仕込みは出来た。

 

 勿論、私が居る事や、私の行動による原作からの乖離──ナザリックの転移時期のズレや、場所のズレ等も考えられるが、少なくともガゼフを手中に収める事の利は計り知れないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? ストロノーフと会った甲斐はあった?」

 

 

 法都に帰還して、私が聞いた第一声がアンティリーネによる質問だった。

 

 

「ええ。望む成果は十分に得られたわ」

 

「……そう。私はエルがわざわざ秘密裏に出向いた理由が未だによくわからないけれど……満足したならまあ、いいか」

 

 

 アンティリーネがこのような疑問を抱くのは至極当然の事。

 ガゼフはこの世界における人間としては強者だが、私たちからすれば1撃で簡単に粉砕出来る程度の力しか無いのだから。

 

 もし私が逆の立場になったとしたら、何故危険を冒してまでお前がわざわざ出張る? となるのは当然の話だ。

 漆黒聖典には私たち姉妹と隊長の3人以外にもガゼフより強い者は沢山居るのだし。

 

 ──その理由は原作知識を考慮した結果、ガゼフはモモンガと関わる可能性が非常に高いからだなんて言える筈も無いから。

 

 

「ストロノーフ殿は素晴らしい方でしたよ。エルシオーネ様が気にいるのも納得だと私は感じました」

 

 隊長がアンティリーネにそう語る。

 

「ふうん……そう」

 

 姉は全く興味なさげだ。

 

 ガゼフの性格は、私が調べた限りだと原作のそれと変わらなかった。

 予想通り……いや、予想以上の好漢だった。

 

 確かに、ガゼフには悪い面もある。

 政治やら策略を練るやらの観点だとそれが顕著に出る。

 まず、他者を第一印象と、自らの凝り固まった偏見で判断する事が多い。それを素直に認めて謝罪する度量はあるとはいえ、政の面からすれば損害を成す事が多々ある。

 例えば、有能な文官を見抜けない……等。

 

 他にも、戦士長として人を率いる立場にも関わらず、長として貴族と関わり、自らや部下の立場を上げる努力をしない。

 

 王への忠言も無い。

 

 総評は、政治、謀略面においてガゼフは落第も良い所となる。

 

 

 ……ここまで政治面でこき下ろしはしたが、私は彼に悪印象を持っているわけではない。

 

 むしろ、その逆だ。

 

 1人物としてのガゼフはそれら欠点を補って余りある程とても好ましく、光り輝く男である。

 誠実で実直。

 剣の実力が人間種ではかなり高い。

 

 何より……己の意志にて死の恐怖すら乗り越えるその精神力。

 

 私には決して出来ないそれを成す彼は、力しか取り柄が無い上に、その力すら頂点ではない私と違ってまさしく英雄に他ならない。

 

 仮に私が異なった過去を歩み、そして単なる1兵卒であったならば、彼に惚れ込んで、共に剣を掲げる人生もあっただろう。

 

 だが、そうはならなかった。

 

 

「それにしても……どうせ王国ならバレアレとかいう奴の方がエルにとっては興味深いと思っていたのだけれど」

 

「私もそう思っていました。ンフィーレア・バレアレ……彼はエルシオーネ様と()()()()()()を持つという話ですから」

 

「そうね……けれど、恐らく彼にはそこまでの役割は無いから」

 

 

 同じタレント。

 そう。私はンフィーレア・バレアレと同じく「ありとあらゆるマジックアイテムを使用可能」というタレントを持っている。

 

 アンティリーネやイビルアイ程では無いとはいえ、極めて希少で強力なタレントであり、これを持つから傾城傾国を始めとした多数のアイテムを使う策を取れているので私にとってはまさしく生命線とも言えるタレントだ。

 

 だが、いくらタレントが同じだからといってンフィーレアに何が出来るかと言われたら、特に何も出来ないだろうという回答になる。

 あくまで私たちのタレントは、強力なマジックアイテムを所有して初めて意味を成す物である。

 一般人である彼がそんな物を持っている道理は無いのだから。

 

 ポーション作成能力にしても、法国は既に赤いポーションを実現出来ている。

 

 だから、彼個人の能力に必要性は無い。

 

 他の重要項目としては、ナザリック勢との関わりだが……これも、彼でなければならないという理由は無いのだ。

 

 具体的にどういう事かというと、私は既にエ・ランテルとその冒険者ギルドには工作員を仕込んでいるのである。

 だから、定期連絡にてモモンガ関連の情報を手に入れる、あるいは連絡自体になんらかの違和感が生じた場合、即座に転移して対応すれば良いと考えた。

 念を押して、エ・ランテルには転移スポットを複数作成しているし、他にも色々と仕込みがあるのだから。

 

 仮に、ナザリックの面々が工作員を何らかの手段で操り、引き続き連絡を彼らの都合の良い風に仕向けようとした場合、それはそれで工作員の記憶を見る事によって彼らは私に接触したがるだろうから、構わない。

 傾城傾国でシャルティア或いは他の守護者などを操りさえしなければ、友好的に振る舞う事は可能だろう。

 

 その理由もあり、私は苦労して傾城傾国を半ば私物化したのだから。

 まあ、他にも傾城傾国を手に入れた理由は多々あるのだが。

 ──例えば、白金の竜王による始原の魔法対策とか。

 

 加えて、予測されるナザリック転移時期が来たにも関わらず、ガゼフ経由でモモンガの捕捉が叶わなかった場合は、神殿の巫女を使ってエ・ランテルを定期的に覗き見ればいい。

 モモンガたちはきっとギルドに関わろうとするだろうから──やりようは幾らでもあるのだ。

 覗けなかった場合もまた、それは彼らの出現を意味している。

 

 

「役割……ね。バレアレには無く、ストロノーフにはあると。──またいつもの勘?」

 

「ええ。これからストロノーフ様は高い確率で無二の役割を担う事になる。──いつも曖昧でごめんなさい」

 

 

 アンティリーネと隊長に私は謝罪する。

 原作知識を話すわけにはいかない以上、身近であり、策に何度も付き合ってもらうこの2人には上手く言い訳を続けられないため、このような言い方になってしまう。

 

 

「いいわよ、もう。流石に慣れたし、エルの勘は大体当たるのはわかっているから」

 

「エルシオーネ様のこれは、勘というより神のお告げと私は考えています。ですから、疑う事はありません」

 

「2人とも、ありがとう」

 

 

 このやり方には当然限界がある。

 信憑性を高める為にこれまで色々な事をして来たからこの2人には信じて貰えているみたいだが、人数が増えたら通用しないやり方だろう。

 ゴリ押しは、基本的に身内限定と考えるべきだ。

 

 

「改めて言うけれど、私がこんな事をしたというのは誰にも言わないでね。『隊長』さんも、お願いします」

 

「わかっているわよ。私はこれまでエルのお願いを破った事無いでしょう?」

 

「私も了解しております。他ならぬエルシオーネ様のご命令とあらば、それはきっと必要な事なのでしょうから」

 

 

 そして、それに加えて私はどうしても外せない事を再度念押しする。

 

 

「それと、これも念押しだけれど──これから神官様方がストロノーフ様に何らかの行動──たとえ抹殺する計画等を立てたとしても、アンたちからは何もアクションを起こさないように」

 

 

 勿論これは、ガゼフがカルネ村へと救援に向かう為の措置だ。

 ……この選択をすると、大量の死傷者が発生する事は理解している。

 

 だが、考えられる限り最善のパターンは、未だ足元が覚束無いカルネ村時点でモモンガを捕捉し、私が直接ユグドラシルの話を持ち出して関心と庇護を得る事。

 

 エ・ランテルにも仕込みはしたとはいえ、あの場所に彼らが行くのはある程度落ち着いた時だから、交渉の難易度は向上するだろう。

 

 更に言うと、冒険者モモンとしてエ・ランテルに出向くのが本人であればいいが、WEB版準拠のナーベラルあるいは他の誰かである可能性を考慮したら、やはりカルネ村でモモンガを直接補足したい。

 

 私の手札はモモンガにこそ十全に発揮されるのであって、部下だと支障が出かねない。把握しきれていない存在、あるいは原作に居なかった存在も多々居ると想定出来るから。

 まあ、そうせざるを得ない状況も想定はしているが、可能な限りは避けたい。

 

 それに、私は可能ならばNPCには極力関わりたく無いのだ。モモンガ越しならばともかく、何が地雷かわからない自分より強い存在など、関与しないに越した事は無いのだから。

 法国にもNPCは存在しては居るのだが、あれらはやはりNPC。物事の価値基準が人間のそれとは違いすぎて相互理解など不可能だという経験則もある。

 

 このようにカルネ村襲撃を逃した場合、悪い状況が容易に思い浮かぶのだ。

 勿論、陽光聖典──襲撃に選ばれるのが彼らかどうかはわからないが──の行動によって幾らでもズレが生じ得る話ではあるのだが、だからこそガゼフとの繋がりを事前に確保したのである。

 

 転移スポット確保の為にカルネ村に隊長を派遣するなど流石に不自然が過ぎるし、ガゼフと違い義理堅いわけでもない村長から他の誰かに情報が漏れる可能性、何より襲撃場所がカルネ村でない場合を想定出来ていない下策だと言わざるを得ないから。

 

 慎重を期するならば、ガゼフとカルネ村、そして付近の村々を網羅しておきたい所だが、そうすると状況把握の為の伝言の指輪が足りないし、何よりもやはり白金の竜王がネックとなる。

 

 それに、そもそもの話だが長い目で見れば私がナザリック勢と早期に関わる事はより犠牲を減らす行動でもある。

 

 更に言うと、これから王国は帝国に併合されるべきと判断されるのは私のせいでは無く王国自身の問題でしか無い。

 

 

 

 ──色々言い訳はしたが、私自身もうわかっている。

 止められる犠牲を無視する私はまさしく悪そのものだろう。

 

 だが、私は自身がより安全な道を歩めるのならば、他者の犠牲は顧みない。

 

 

 

 ──これで、現時点で出来るガゼフ関連の策は完了した。

 次にやるべき事は……

 

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