絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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 原作に無い魔法が登場します。
 元ネタはD&Dです。


第6話

 

「「『上位魔法武器』、『雄牛の筋力』、『信仰の力』!」」

 

 互いに粗方のバフ魔法を掛けた直後。

 ギィン! と甲高い音を立てて鎌と剣が互いに弾かれる。

 

 相対するは同じ顔をした二人の少女。

 その片方は右髪が白銀で、左は漆黒の色相。

 もう片方は、全く逆の色合いをした少女である。

 

 先程からもう何度も打ち合っているが、力は互いに互角。

 

 そのため、2人はほぼ同じ速度にて返す刃にて攻撃をしようとする。

 それは常人には、いや逸脱者と呼ばれる存在にすら決して出す事の出来ない神速の刃。高みに至りし者でなくばその凄さすら把握する事の出来ない神人の一撃。

 だが、武器の小回りの差により上段から振り下ろす事の出来る剣と、下から振り上げざるを得ない鎌とではどうしても体重の乗りによる差が出てしまう。

 

「くっ!」

 

 ガァン! と音を立ててから、鎌の担い手──右髪が白銀の少女は呻き声を上げてから、不利を悟ったか距離を離そうとする。

 

 だが、そんな行動が許される筈もなく、右髪が漆黒の少女──双子の妹の方が剣にて追撃をかけようとする。

 

「──かかった! <能力超向上>!!」

 

「!?」

 

 双子の姉であるアンティリーネは自らの誘いに妹が乗った事にほくそ笑み、自らの鎌を蹴り上げる事で奇襲をかけたのだ。

 突然の奇襲に面食らった妹のエルシオーネは、慌てて剣を防御に回す。

 蹴り上げられて勢いのある鎌は剣を弾き、エルシオーネは体勢を崩す。

 

「もらった! ……いや、こっちよ!!」

「<即応反射>! 『転移』!!」

 

 二人は同時に声を上げる。

 

 エルシオーネは不利状況を打開するために、あらかじめ仕込んでいた転移を発動してアンティリーネの背後に回り、剣を振るう。

 本来なら、対処の仕様が無い一撃だ。だがアンティリーネは、止めを刺そうと鎌を振るおうとしたが、エルシオーネの転移を読んで鎌を急転換し、背後に向けて攻撃する。それは神人の肉体に武技とバフ魔法を併用した事により成せる神業だった。

 

 その結果──

 

 

「……ふう」

 

「今日も引き分けかー。今回は行けると思ったんだけどなー」

 

 

 お互いがお互いの身体に攻撃を当てる直前で武器を止める。

 剣はアンティリーネの首筋手前に、鎌はエルシオーネの胴体にかけられる寸前で止まり、今回の手合わせは引き分けにて終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひょっとしてだけれど、私の動き、読みやすい?」

 

 

 私は先の手合わせにて気になった点をアンティリーネに質問する。

 戦闘中、終始私が優勢だったにも関わらず、終盤に私の追撃の動きを完全に読まれて形勢逆転を許し、最後の伏せ札である転移を切っても相打ちの結果に終わった。

 

 アンティリーネとの手合わせはそう頻繁にするわけではないため、長年一緒とはいえ癖や手合わせの度に新たに考えて来る戦術を全て見抜かれているかと言われたら、そんな事は無いと思う。

 

 私の動きがわかりやすいが故なのだろうか? 

 

 

「んー? いや、そんな事はないけれど……そうね、最後に剣を弾かれた時の驚く演技はちょっとわざとらしかったかしら。あれで私はエルが何かしてくるだろうってわかったから」

 

「……なるほど」

 

 

 いえ、あれはガチビビりでした。

 

 ──なんて言える筈は無く。

 

 

「それにしても、エルとの手合わせは久しぶりだけどやっぱりいいわね。こう、互角に戦う経験ってのは錆び付かせちゃいけないしね」

 

「……そうね」

 

 

 アンティリーネと私の実力は、本当に何でもありならば私が勝つだろうが、とはいえそうで無ければほぼ互角と言っていいだろう。

 

 この時点で、私たちは既に唯一無二の間柄とも言える。

 何故なら私たちは、法国に所属する数多くの英雄や、その領域を超えた者ですら到達出来ない程の力を持つのだから。

 つまるところ私たちは人間種においては飛び抜けている姉妹であるという事だ。

 

 そんな中における具体的な私たちの能力の違いについてだが、素の膂力はアンティリーネが若干優れ、魔法は私が明確に優れている。

 その2つを合計すると、私がアンティリーネを上回っていると言っていいだろう。

 

 基本的に戦士型の職に加えてクレリック職を修めるという職業ビルドであるアンティリーネだが、その際にタレントを有効活用するために盗賊職を修めるなど複数武器を扱えるようにせざるを得なかった事による非効率性がある。

 対して私は戦士系にクレリックという基本的な構成はアンティリーネと同じだが、転移を始めとする必須魔法を習得するための魔術職を修める必要があったために、若干の膂力の遅れが生じてしまう。

 とはいえ、それ以外は基本的に効率の良い鍛錬を積んできた自負はあるため、能力総量は私の方が上となるのである。

 

 とはいえ、その程度の差ならば技術や機転、立ち回り等でいくらでも変わりうる。

 だからこその先の結果だった。

 

 まあ、今回の手合わせはお互いに切り札は使わず、更にアンティリーネの小型空間を使った装備の使い回しや私の各種攻撃魔法やアイテムを制限したり、寸止めをルールとしたりしていたため、実戦性よりも訓練の意味合いが強いものではあったのだが。

 

 

「昔から思っていたけれど、やっぱり戦闘センスはアンの方がいいみたい」

 

 

 基礎能力は私が上なのに、戦績は大体五分。

 技術に違いは無い。

 そうなるとやはり、戦闘におけるセンスは私よりアンティリーネの方が良いのだろうという結論になる。

 

 私が各種補助・回復魔法の重要性など色々教えたり、双子の妹という同格の存在と訓練を重ねたりする事でアンティリーネは原作よりは大分強くなっているとは思うが……

 

 

「うーん。そんなに違いは無いと思うのだけれど……きっと、エルが優しすぎるのよ

 

 

 アンティリーネが小声で何か言ったみたいだが、いまいち聞き取れなかった。

 先のベレニスと違い、基礎的な身体能力が私とほぼ同じのアンティリーネは、私が聞き取れる音量をわかっているのだ。

 

 

「まあ、本気の実戦となると私よりエルの方が強いんだから良いじゃない。なにせ傾城傾国1発で終わりなんだから」

 

「うーん……」

 

 

 先程述べたように、何でもありの実戦となると、私が勝つだろう。

 

 実戦において、私たちレベルで同格相手となると勝敗を決するのは身体能力や技術よりも他の面が大きくなる。

 

 勝敗に直結する事、それは──私たちはお互いがお互いの最大攻撃に対する対処法を持たない──とされている事だ。

 

 アンティリーネの最大攻撃手段である、絶対即死攻撃──The goal of all life is death(あらゆる生ある者の目指すところは死である)を私は防げず、逆に私の最高の攻撃──攻撃、と言うのは少し違うかもしれないが──である、傾城傾国(ケイ・セケコゥク)による洗脳を防ぐ手段をアンティリーネは持たない。

 

 けれど、The goal of all life is deathはスキル発動後に更に死の魔法を使う必要があるという2手順が必要なため、1アクションで済む私の傾城傾国が勝つだろう。

 

 ……という事になっているが、勝敗はともかく、その中身は実は違ったりする。

 

 私はクレリック職を修める事により、信仰系第5位階魔法である死者復活を習得している。それどころか、より上位の復活魔法すらも同様に。

 ……これ自体は私に限らずアンティリーネもなのだが。

 

 だから、The goal of all life is deathを防ぐのは実は容易なわけだ。だが、その弱点をアンティリーネに知らせる事は出来ていない。

『どうやって蘇生魔法で防げると知った?』という問いに対する回答を用意する事が不可能だからだ。

 勘と言って誤魔化すのは流石に無理がある。

 

 アンティリーネのもう一つの奥の手に関しても、傾城傾国を抜けられる、あるいは先手を取れるようなものではない。

 

 だから、実戦となると仮に不意を打たれて多少私の対応が遅れようとも私の勝利は恐らく揺らがないだろう。

 

 だが──

 

 

「始原の魔法を使う竜王が相手となると、アンの方が強いから」

 

 

 そうなのだ。

 

 始原の魔法を使う竜王が相手となると、話が変わる。

 傾城傾国は召喚モンスターはともかく本体には効果が無いのだろうから。実際に試した訳ではないため絶対とは言えないが……

 

 The goal of all life is deathが竜王に効くかどうかは不明だ。

 白金の竜王相手には流石に期待すべきではないが、他の竜王相手ならば十分効果が見込めるのではないかと私は考えている。

 

 とはいえ、The goal of all life is deathはあくまで効けばいいな程度の話で、肝心なのはアンティリーネのもう一つの奥の手であるエインヘリヤルだ。

 物理的に人数を増やすエインヘリヤルは、対策できるような技では無い。広範囲殲滅魔法で纏めて攻撃するのは有効ではあるのだが、それは対策というより単なる格上で、最初から勝ち目はないというだけの話になるのだから。

 

 つまるところ、奥の手の効果があまり発揮されないであろう私と、一定の効果が見込めるアンティリーネとでは、対竜王想定ならばアンティリーネの方が強いという結論になるのだ。 

 

 膂力と魔法の合計では私が勝り、センスはアンティリーネが上。手数の多さも同じくらい。奥の手は有効な相手がそれぞれ異なる。

 

 総評として、私たちの実力は大体五分の相手次第という結論になるのである。

 

 

「エル。──私たちってやっぱり近いうちに竜王と戦うの?」

 

「どうして?」

 

 

 何故そう思ったのだろうか。確かに先程私が対竜王戦ではアンティリーネの方が強いだろうと言ったからといって、それで実際にこれから彼らと戦うぞとはならないと思うのだが。

 

 

「だって、エルから手合わせしようだなんて珍しいじゃない。それに、最近なんか色々動いているみたいだし……」

 

「…………」

 

 

 

 ……竜王と戦うわけではないが、私が痛みへの恐怖を飲み込んでまでアンティリーネと久しぶりに手合わせしたのには当然理由がある。

 

 

 ──遂に時期が、来てしまったのだ。

 

 

 今はまだ、アンティリーネに詳細は話せない。

 

 私が今からやろうとしている事は側から見たら危険そのもの。

 モモンガの性格を考慮すると安全な可能性の方が明らかに高いが、彼の人格が原作通りとは限らないのだから。

 

 言ってしまうと間違いなく姉は止めにかかって来るだろう。

 

 だが、これだけは危険だろうと私自身が動かなければならない。

 

 勿論恐ろしい。怖い。やりたくない。

 他の誰かに任せてここに引き篭もっていたい。

 

 考えただけで恐怖に身体が震えるし、シミュレートを繰り返した結果、こうするしかないと結論付けてしまった夜には思わず涙を流してしまった。

 

 いや、最近だってそうだ。

 その日が来てしまうのが怖くて怖くてたまらないし、胸が痛くてたまらない。涙ぐんでしまう夜は多い。

 

 

 けれど、本当の意味で私の身の安全を守るためには必要な事だから。

 

 

 だから、私は──





次回からようやく本編開始
なお、書き溜めの消滅
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