絶死絶命の双子の妹にしてツアーにビビり散らかすTSエセ巫女転生者   作:チロチロ

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第8話

(モモンガさん。正直言ってここからの話は極秘事項もいい所なので、口に出すとかなり問題があるためにこのまま伝言でやり取りして大丈夫ですか?)

 

(あ、はい。その方が私も話し易いので大丈夫です。……傍受の可能性って大丈夫ですかね? ユグドラシルにはそういう魔法は無かったのですが、この世界にはあるかもな、と思いまして)

 

 

 離れに移動してから即座にそれを思い浮かぶ辺り、やはりモモンガは愚者では無い。

 だからこそ話が通じるのであり、だからこそやり取りには細心の注意を払う必要がある。

 

 

(そうですね……少なくとも私の知る限りでその手段はありませんし、私たちに即座に目を付け、この田舎の村のこの至近距離での伝言にそのような事をして来る存在ならば、最早何も隠せないですから)

 

(なるほど……確かにそれをして来る相手なら普通に話したら尚更聞かれるか。そうですね、わかりました。……ここってやはり辺境なのですね)

 

 

 話が早くて良い。

 というより、モモンガ目線では求めている情報に重なる内容が出てきたから食い付いたといった所か。

 

 彼が現在が求めているであろう情報は、原作知識と仮に私がモモンガの立場になったとしたら何を欲するかというシミュレーションから理解している。

 

 

(はい。おっしゃる様に、転移して来たプレイヤーはまず地理が気になるでしょうから……これを差し上げます)

 

 

 そう言って私は持ってきた地図をモモンガに渡す。

 法国謹製の地図であり、これ以上の精度を持つ地図は人類圏国家では手に入らないであろう代物。

 

 

(え、ありがとうございます! 凄くありがたいです!!)

 

(ふふ、お役に立てそうで何よりです。──この地図は、私の所属する国で作成された物なので、こうして物品として手に入る物の中で精度は恐らく一番高い物だと思います)

 

 

 モモンガが喜んでいるのを確認してから、私は結構あからさまに釣り針を放つ。

 ……正直言って、わかりやすすぎるとは思うが、わざとこんな風に言ってる事に気付かれた所で特に何が変わるという事は無い。

 そもそも論として先程、彼の疑り深さは解消されているだろうと確認したために大丈夫だとは思うが。

 

 

(エルシオーネさんは国家に所属しているんですか?)

 

(はい。この地図のここにある──スレイン法国という国です)

 

 

 彼がどんな反応をするか。

 とはいえまず大丈夫だとは思うが……それでも、内心ではやはり恐れを隠せない。

 部隊の成した非道に怒り狂い、交渉が決裂してしまうのではないか、と。

 

 

(え? 法国って……)

 

(……お察しの通り、襲撃犯の所属していた国です。……先程歩きながら話した、厄介な事が起きているとはまさにこの事です)

 

 

 私も辟易しているんだ、私は襲撃は望んでいないんだ、という風に話す。

 ここまで会話をして理解はしていたが、やはりモモンガはこれを聞いただけで突然怒り出すような性格をしてはいなかった。

 私は内心で安堵の息を漏らす。

 

 ……しかし、こうして頑張って話術を振り絞っていて改めて思うが、交渉の余地のある相手とは良いものだ。

 

 話す余地の無い相手、交渉に応じる余地の無い相手、考えがまるで理解出来ない相手──当然、全て白金の竜王を示している──と比較してしまうと、力はモモンガ率いるナザリックの方が圧倒的に上だとしても、恐ろしさという意味ではもうよっぽどマシである。

 

 それでも、完全に恐怖が無いというわけではないが……

 

 

(ああ、なるほど……まあ、国家の活動だから色々事情があるという事か。それをエルシオーネさんは止めようと?)

 

(……そうですね……止めようとしている、というのは正しいですが、それにもまた色々理由がありまして……なので他にもお話ししたい事は沢山あるのですが、ひとまず襲撃犯を放った部隊──陽光聖典の目的であるストロノーフ様の暗殺計画についてお話しします)

 

 

 本当に、話すべき内容があまりにも多すぎる。

 だからこそ、私は無理を言って陽光聖典に一時待機して貰うようにしたのだ。

 

 

(なんかガゼフも似たような事言っていましたね。自分を狙っているんだろうとか)

 

(はい。計画の詳細は……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なるほど……王国の現状があまりにも悲惨すぎるから帝国に併合させよう、そのために邪魔なガゼフを始末しよう、と)

 

 

 モモンガは私の話の内容を簡潔にまとめる。

 

 

(……しかし、せっかく立地に恵まれているにも関わらず派閥争いに裏組織に違法薬物輸出大国化ですか。王国の内情を知ってしまうと法国の判断も当然だろうとなりますね……)

 

 

 ああ、なんというか、癒されるな……

 こう。こうなんだ。

 理性的な人間──アンデッドだが──だからこそ私は彼に関わろうと思えるのだ。

 

 

(ですが、転移したばかりで何も知らないであろうプレイヤー目線ではそんな内情を知りようがない。そのため、当初私は国政という事で口を出さなかったのですが、彼らがこの付近で事を成すと知った時は焦りましたよ)

 

(……確かに、情報を持たないプレイヤーからすれば一見して単なる悪にしか見えませんものね。そして、実際に私が現れた、と。プレイヤーがこの辺りに現れるだろうというのは?)

 

(それも詳細に語ると長くなるので今は簡潔にお話ししますが──この世界には、大体100年に一度プレイヤーが転移してきます。今がその時期であり、私は今までのパターンからその場所の当たりを付けていた、という事です。場所の予測は私だから出来る事で、国は出来ていないですから)

 

 

 これは、100%嘘なわけでは無い。

 実際に、私は仮にナザリックがこの付近に現れなかった場合、探りを入れようと思っていたり、既に神官経由で工作員を仕込んでいたりする地域は幾つか存在していた。

 

 

(100年!? ……なるほど、だからさっきは──ん? いや、そうだとすると……)

 

(ふふ、私はこう見えて一応女性ですよ? ……なんて、冗談ですが。すみません。お約束かな? と思いまして)

 

 

 100年というワードを聞いた途端に私を見つめて来たモモンガに私は咎める様な口調で伝言をするも、即座に撤回する事で親しみ易さを作ろうとする。

 ……年齢ネタは普段は私ではなくアンティリーネの持ちネタなのだが。むしろ、法国でそれを私が使うと何やら本気で気まずそうな顔をされるため、やらなくなったという悲しい(?)過去がある。

 

 

(ゴ、ゴホン! いえ、そうですね……先程もおっしゃられていましたが、エルシオーネさんは自身がプレイヤーだと知らせてはいないんでしたね。その理由と気持ちはわかります。……ちなみに、他のプレイヤーは?)

 

(それも、詳細を語ると恐ろしく長くなるため結論のみ述べますが、現状確認出来る範囲内では存在していません。ただ、潜んでいる可能性はありますね)

 

(そうなんですね……)

 

 

 モモンガが少し思案に入ったようだ。

 まあ、何を考えているのかは容易に想像が付く。

 だからこそ、状況で畳み掛ける必要がある。

 

 余計な事を考えている暇はないんだぞ、と。

 

 

(──隠すつもりは全くありませんし、時間さえあればいくらでも語るのですが……すみません)

 

(ああ、いえ! 大丈夫ですよ。現在進行形で国単位での問題が起きているんですものね。むしろエルシオーネさんのお陰で助かりっぱなしなので、どうやって返そうかって感じですよ)

 

 

 モモンガが考えていたのは、私が情報を隠しているかどうかではなく、自身のギルドメンバーである事はわかっている。

 だからこそ、彼がこのような反応をするであろうことを予測した上で私は謝罪をした。

 

 

(そんな、たかが地図を渡したくらいですから……いえ、でも……一つだけ、よろしいでしょうか?)

 

(大丈夫ですよ。何でも全て聞く、とは言えませんが、エルシオーネさんには恩が沢山ありますから)

 

 

 それが、私の計画だから。

 

 

(ありがとうございます。……先程歩きながらおっしゃられていましたが、モモンガさんは拠点ごとこちらに転移しておられるんですよね?)

 

(はい。……良くも悪くも、ですけどね)

 

 

 モモンガが苦笑して答える。

 やはり、彼はまだNPCを疑っている。

 いや、仮に疑いは無かろうと、現時点では愛情より重圧の方が大きい事は間違いない。

 

 

(だとすれば……私としては、モモンガさんには是非とも私の国に来て貰いたい所ですが、拠点ごとの転移となるとすぐに立ち位置を決めるのは難しいでしょうから……一旦八百長に協力して頂けませんか?)

 

(八百長、ですか?)

 

(はい。私がストロノーフ様より遥かに強大な力を持つ存在を味方に付けようとしている。そのためには好感を損なわない必要があるから、王国民から怪しまれない様に程々にぶつかってから撤退するように命令する。──というプランです)

 

 私はモモンガが思案している様子を見ながら、引き続き語る。

 

(そうすれば、ひとまずモモンガさんがプレイヤーという事は国に隠せますし、鋭い人間に勘付かれるまではモモンガさんが色々と考える時間を作れ、更には私も余計な犠牲を避けられるのですが……)

 

(なるほど……確かにそうですね。それくらいの協力ならば、喜んで)

 

 

 そう言ってから、モモンガは私に頭を下げる。

 

 

(ありがとうございます。私の事情まで考えて頂いて)

 

(? いえ、ほとんどこちらの事情ですよ?)

 

 

 ほんと、毎度の事ながらよくもまあ我ながらしゃあしゃあと……

 

 

(そんな事ありませんよ。エルシオーネさんから見て一番楽なのは、私がもうさっさとプレイヤーと名乗った上で法国に付く事でしょう? それならもう何も考えずに堂々とその部隊に言う事を聞かせられるでしょうし)

 

(それは……確かにそうですし、私としてもそれが一番嬉しいとはいえ、流石にそれでは現状唯一の同郷であるモモンガさんに悪いですから……)

 

 

 どさくさ紛れに私がモモンガの唯一の理解者である事を強調する。

『同郷』というのを『日本』という国とするならば嘘ではないのだし。

 

 ……ここまでは、事前に考えた通りの流れ。

 だが、直後に少しだけ予想外の事を言われた。

 

 

(ふふ、そういう所ですよ。──良く、損をする性格だと言われませんか? 私の知り合いにもエルシオーネさんによく似た人が居たんですよ)

 

 

 ……誰だ? 

 

 たっち・みー辺りだろうか? 

 よくわからないが、どうやらモモンガの琴線に意図せず触れる事に成功したらしい。

 

 私がギルドメンバーの性格を把握していたならば意図的にそれを成すことも出来たのだろうが、原作でほとんど描写されていないから、これは完全に偶然である。

 モモンガの憧れの人物であり、善人であるたっち・みーの性格がちゃんとわかっていれば、話は物凄く楽だっただろうとは前から考えていたが。

 

 ──意図せずして思ったより信頼を得られているようで驚くが、それで悪い事は一切無いし、むしろ良い事しか無い。

 

 

 こうして、私とモモンガは一旦話を陽光聖典への対応へと切り替える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、一次面接は120点の結果と言える。

 

 法国はともかく、私個人は既にモモンガからの信頼を勝ち取ったと言い切る事が出来るだろう。

 ──当たり前だが、いきなり依存させに掛かるなんて不可能。そこは地道にやっていくしか無い。

 

 第一関門は突破したからといって、それに安心など出来る筈は無い。

 弱者に出来る事はひたすら畳み掛け、勢いで誤魔化す事だけ。

 

 ──1年。

 それが私の想定する計画達成までの期間だ。

 

 1年、私が胃を痛めて頑張れば半永久的な安全が獲得出来る。

 

 だからこそ、私はこの恐怖を必要な物として乗り切るのだ。

 

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