アクタージュのママの人   作:色々残念

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自称和製ジ○・キャリーにも母親だと思われる男子高校生

知名度が上がった明神阿良也によって人気が低迷していた状態から復活した劇団天球。

 

今は次の舞台に向けて稽古を始める前に、役者達の顔合わせをしている段階だ。

 

劇団天球に所属する役者である青田亀太郎は、久しぶりに舞台で共演することになる石杖綱吉に突撃していき「よう、久しぶりだな綱吉!」と元気に挨拶した。

 

「お久しぶりです青田さん」

 

笑顔で挨拶を返した石杖綱吉に青田亀太郎は、機嫌良く石杖綱吉の肩を軽く叩いて笑う。

 

「相変わらずテレビでも映画でも大人気だよな綱吉は、ちょっと前に見たドラマ凄かったぜ。デスクッキングは爆笑した」

 

「ドラマを見てくれてありがとうございます青田さん。テロップが良い味出してたって三坂さんも言ってくれましたからお2人とも見てくれたみたいですね」

 

「ああ、確かにあのテロップは良かったと思う。誰も真似しねぇよって思わずツッコんだしな。というか七生も見てたんだなデスクッキング。見てたって俺には言ってくれなかったけど」

 

「相変わらず三坂さんが青田さんに当たりが強いのは変わってないみたいですね」

 

「当たりが強いというか、ないがしろにされてるような気がするのは俺だけ?」

 

「そんなことはない、といいですね青田さん」

 

気まずそうに顔を逸らして言った石杖綱吉に対して、青田亀太郎は「何で気まずそうに顔を逸らして言うんだよ綱吉!」と言いながら石杖綱吉の両肩を掴んで揺らす。

 

「大丈夫ですよ青田さん。神様は見てます」

 

揺らされながら石杖綱吉は優しい声で青田亀太郎にそう言って微笑んだ。

 

「何かそれは駄目そうな感じがするから止めてくれ綱吉!」

 

言動が怪しくなってきた石杖綱吉を揺らすことを止めない青田亀太郎の背後に近付いた三坂七生が、青田亀太郎の後頭部を未開封の缶コーヒーで殴打する。

 

ゴスッと音を立てて叩き込まれた缶コーヒーの一撃。

 

「痛っ!何すんだ七生!」

 

「綱吉に無駄に絡んでんじゃないよ亀!」

 

「無駄じゃねぇよ。俺がないがしろに扱われてるかどうかを確認する為になあ」

 

「優しくすると調子に乗るから、亀の扱いは雑でちょうど良いって皆言ってるよ」

 

「えっ、いやそれ酷くない?」

 

「酷くないでしょ別に」

 

言い争いを始めた青田亀太郎と三坂七生から離れた石杖綱吉に劇団天球に所属する他の役者達が近寄ってきて挨拶をしていった。

 

挨拶をしていった劇団天球の面々が笑顔だったのは、以前共演した石杖綱吉という役者のことが嫌いではないからだろう。

 

最後に近付いてきた明神阿良也が石杖綱吉に対して「相変わらず石鹸の匂いがするね石杖は」と言い出す。

 

「俺は構いませんけど、女性相手に匂いのことを言うとセクハラになりますから、気を付けてくださいね明神さん」

 

「臭い相手に臭いって言って何が悪いの?」

 

「その言い方は完全に誤解されますから本当に気を付けてくださいよ明神さん。知り合いがセクハラで訴えられるのは普通に嫌ですからね俺は」

 

「じゃあ、あんまり女には言わないようにすれば良いのかな。俺がセクハラで訴えられたら劇団天球に迷惑がかかりそうだから」

 

「以前お会いした時とは、ちょっと変わりましたね明神さん」

 

「巌さんの代わりに俺が劇団天球を守らないといけないからね。低迷してた人気が回復した今は、大事な時期だし」

 

「責任重大ですが、劇団天球の人気が戻ったのは明神さんのおかげですから、皆さん明神さんに感謝しているみたいですよ」

 

「そっか、なら頑張らないと」

 

「ええ、今回の舞台も成功させましょうね」

 

会話をしていた石杖綱吉と明神阿良也に近付いた青田亀太郎と三坂七生は、ようやく言い争いを終わらせて、稽古の開始を2人に伝えに来た。

 

今回の舞台は劇団天球の面々に石杖綱吉を加えただけなので、役者達の顔合わせは明神阿良也と石杖綱吉が顔を合わせたところで終わっていたことは間違いない。

 

舞台の稽古が始まり、全員が用意された部屋に移動して台本の読み合わせを開始していく。

 

読み合わせの段階で既に別人のように見える明神阿良也は、深く役を掴んで、それを丁寧に伝えてくれる芝居をした。

 

憑依型カメレオン俳優と言われるだけはあり、役作りの幅も広く、今回の役の感情も掘り下げて、ちゃんと表現する技術を持っている明神阿良也。

 

銀河鉄道の夜の舞台で芝居をしてから更に素晴らしい役者となった明神阿良也は、もう自分を見失うことはない。

 

台本の読み合わせは続いていき、石杖綱吉の出番となると劇団天球の面々全員が石杖綱吉を注目して見る。

 

既に表情が完全に母親となっていた石杖綱吉は、優しい母親の声で台詞を言った。

 

誰が見ても優しいお母さんにしか見えない石杖綱吉の演技力は、以前劇団天球の舞台に立った時よりも向上していたようだ。

 

特にメイクもされておらず衣装もない単なる台本の読み合わせの段階で、完全に別人に見える石杖綱吉のことを母親だと思わない役者は劇団天球には居ない。

 

和製ジ○・キャリーを自称する青田亀太郎も、そんな石杖綱吉を見て、間違いなく優しい母ちゃんだと感じていた。

 

読み合わせの段階で完成度が違う明神阿良也と石杖綱吉の2人に負けてられないと奮起して気合いを入れた青田亀太郎。

 

母親の役を演じる石杖綱吉の生き生きとした顔を見ていた青田亀太郎は、綱吉が共演だからだけど劇団天球の面々のやる気も上がってるな、と周囲の変化を敏感に感じ取っていたみたいだ。

 

ムードメーカーでもある青田亀太郎は、周囲がどんな状態であるか察知する力も高い。

 

初日の読み合わせは、それからも続いていき、気合いが違う全員がしっかりと演技をしていた。

 

読み合わせが終わったところで解散となり、それぞれが帰っていくところで石杖綱吉を呼び止めた青田亀太郎は「一緒に飯食いに行こうぜ綱吉」と誘う。

 

「良いですよ、行きましょうか」と快く了承した石杖綱吉に喜んだ青田亀太郎は「良い店見つけたんだよ」と言いながら石杖綱吉を案内していく。

 

石杖綱吉と青田亀太郎が一緒に食事に行った場所は、とても手頃な値段で食べられるイタリアンの店だった。

 

手頃な値段の割りには、美味しいイタリアンの店に満足した石杖綱吉は、良い店を紹介してもらった礼として支払いは俺が受け持とうと考えていたようだ。

 

青田亀太郎がトイレに行っている間に支払いを済ませておいた石杖綱吉に「綱吉に全部払わせたって知られたら、劇団天球の連中に怒られそうな気がするんだけど!」と物凄く動揺しながら言った青田亀太郎。

 

「黙っておけば大丈夫ですよ、内緒にしておきましょうね」

 

口の前で人指し指を1本立てて、ウインクしながら言った石杖綱吉が、茶目っ気のある母親に見えた青田亀太郎は、演技してなくても綱吉は母親に見えるんだな、と思ってとても驚いていた。

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