特別に作られる劇場版のウルトラ仮面にも、喫茶店の母親役で出演することになった石杖綱吉は、久しぶりに共演することになる星アキラの元に挨拶に行く。
今回のウルトラ仮面は、生身の状態で戦うことになるシーンが幾つかあるので、星アキラ本人のアクションにも期待されているようであり、少し緊張している様子だった星アキラ。
そんな星アキラの首もとに、自販機で買ったばかりの冷たいミネラルウォーターを軽く押し当てる石杖綱吉。
「うわっ!何するんだ綱吉!びっくりするじゃないか」
冷たいミネラルウォーターに突然首もとを冷やされて驚いた星アキラは振り返って、自分の首にミネラルウォーターを押し当てた犯人の名前を呼んだ。
「緊張がほぐれるかと思って」
悪びれることなく笑みを浮かべる石杖綱吉は、星アキラの首もとに押し当てていたミネラルウォーターを星アキラに渡す。
星アキラは感謝してミネラルウォーターを受け取り、封を開けてミネラルウォーターを少し飲んで口を開いた。
「そんなに緊張しているみたいに見えたのかな僕は」
「ガチガチって程じゃないけど、少し緊張してるなって感じには見えたかな」
「まあ、緊張していないって言われたら嘘になるよ」
「劇場版のウルトラ仮面の主演でアクションシーンも幾つかあるみたいだから、緊張するのも仕方ないと思うけど、動きが固くならないように気を付けないとね。ちょっと一緒に軽くストレッチでもしようか」
「そうだね、身体をほぐしておいた方が良いかもしれないから軽いストレッチをやろう」
星アキラを誘って一緒にストレッチをやり始めた石杖綱吉は、真剣にストレッチをやりながらも「どうだ、ここにストレッチパワーが溜まってきただろう」と良い声で言い出して星アキラを笑わせる。
軽いストレッチと思いきり笑ったことで緊張が完全にほぐれていた星アキラは、緊張を吹っ飛ばしてくれた大切な友人である石杖綱吉に感謝をしたようだ。
それから挨拶回りをしていく石杖綱吉に着いていって一緒に挨拶をしていった星アキラ。
しっかりと挨拶をする石杖綱吉と星アキラに好印象を持った他の役者達。
今回の劇場版ウルトラ仮面で重要な敵役を演じる堂上竜吾も緊張していたが、挨拶に来た石杖綱吉と星アキラと少し話して緊張がほぐれたみたいだ。
童心が忘れられない堂上竜吾にとってウルトラ仮面という特撮作品に出演できることは嬉しいことだったらしい。
石杖綱吉と星アキラの挨拶回りも終わり、劇場版のウルトラ仮面の撮影が始まっていく。
ウルトラ仮面に変身する前のアクションシーンをスタント無しで星アキラ本人が演じていき、見事な身体能力を見せつけると監督は、とても喜んでいた。
それから様々な場面が撮影されていくと、敵役のアナザーウルトラ仮面というもう1人のウルトラ仮面に堂上竜吾が変身して、星アキラが変身するウルトラ仮面を圧倒する場面も撮影された。
敗北とウルトラ仮面に変身不能という状況に追い込まれて何とか逃げ延びるが、ボロボロになって倒れ込んだウルトラ仮面を演じる星アキラ。
そんなウルトラ仮面を喫茶店を営む母親を演じる石杖綱吉が助けて介抱する。
アナザーウルトラ仮面との戦いに敗北し、変身不能の状態にされてしまったウルトラ仮面を演じる星アキラは、折れてしまいそうになるウルトラ仮面の弱さをしっかりと演じた。
そんなウルトラ仮面を演じる星アキラに、石杖綱吉が演じている喫茶店の母親は、ヒーローを奮起させる言葉を言って、折れそうなウルトラ仮面を立ち直らせていく。
石杖綱吉のその演技を見ていた堂上竜吾には、確かに石杖綱吉が道を示す母親に見えていたようだ。
ヒーローを立ち上がらせるのはヒロインの役割のような気がするんだけどな、と思いながらも石杖綱吉が演じる喫茶店の母親から目が離せない堂上竜吾。
今の堂上竜吾が見ている石杖綱吉は朝に挨拶に来た石杖綱吉とは完全に別人であり、本当に女性の母親にしか見えない石杖綱吉を実際に見てみて、凄い役者だと理解した堂上竜吾は石杖綱吉を役者として尊敬していた。
再び立ち上がったウルトラ仮面を演じる星アキラが生身での戦いの末に手にしたのは、試作タイプの変身アイテム。
それを使って劇場版だけの特別なウルトラ仮面であるウルトラ仮面ゼロに変身した星アキラは、堂上竜吾が変身するアナザーウルトラ仮面との激しい戦いを今度は声で演じる。
戦っている最中の声を入れていく星アキラと堂上竜吾は、とても真剣だった。
ウルトラ仮面ゼロによってアナザーウルトラ仮面が倒されて戦いが終わりとなり、星アキラが演じるウルトラ仮面は、ウルトラ仮面に変身する力を取り戻す。
戻ってきた穏やかな日常を過ごしていくウルトラ仮面を演じた星アキラ。
しかし穏やかな日常を脅かす新たな敵が現れ、襲われる人々を助ける為にウルトラ仮面を演じる星アキラは戦い続ける。
新たな敵と対峙した星アキラが再びウルトラ仮面に変身したところで終わりとなった劇場版。
ウルトラ仮面関係の人から、劇場版が放映される時辺りにはウルトラ仮面のテレビシリーズのシーズン2が開始されることも知らされていた石杖綱吉と星アキラ。
劇場版のウルトラ仮面の撮影が終わってからも、石杖綱吉と星アキラは、しばらくシーズン2のウルトラ仮面で共演することが続く。
ウルトラ仮面で石杖綱吉が演じる喫茶店の母親を見る度に、星アキラは石杖綱吉という友人の凄さを見ることになる。
まるで本当にそんな母親が存在しているかのように思える程、完全に母親にしか見えない石杖綱吉の演技。
それを見ても役者として折れることのない星アキラは、心がとても強くなっていた。
友人である石杖綱吉が星アキラに言った言葉が、星アキラの支えになっていたことは間違いない。
本当の母親である星アリサにも感じたことのない母性を感じた石杖綱吉の言葉に、星アキラは役者として吹っ切れることができたのだろう。
星アキラは石杖綱吉を大切な友人だと思っている。
石杖綱吉も星アキラを大切な友人だと思っていることは確かだ。
互いを大切な友人だと思っているからこそ、遠慮するようなことはない友人関係を築けている2人。
年齢相応の友人関係を築けている2人は、悪い関係ではない。
かけがえのない友人である石杖綱吉に、言っていないことがある星アキラ。
それは、いずれ石杖綱吉が主演を務める作品に脇役として出演したいという夢だった。
ダサかろうが泥臭かろうが、影から他人を輝かせることができる脇役として、石杖綱吉という大切な友人を、そして石杖綱吉という役者を輝かせてみたいと思っていた星アキラの夢。
本物の役者になりたいと思っていた自分に、脇役という役者の道を示してくれた石杖綱吉へ、星アキラは感謝をしているからこそ、自分にできる全力で応えたいと考えていた。
たとえ自分が輝く星になれないとしても、星を輝かせる夜空になれればいいと考えられるようになったのは、友人である石杖綱吉のおかげだと星アキラは思っている。
だからこそ星アキラは、自分にとって1番の星を輝かせたいと願って夢を見るのだろう。
自分が登場するウルトラ仮面の劇場版が放映される時を楽しみにしている堂上竜吾は、童心を忘れることはなかった。
流石にスターズの役者である堂上竜吾が普通に映画館に行くのは難しいので、変装して映画館に向かうつもりであるようだ。
ウルトラ仮面の劇場版を観に来た子ども連れの人達に混じって、やたらとテンションが高くて顔を隠している怪しい人がいたら、堂上竜吾だったりするかもしれない。