君がいる限り、君といる証。
「……話があるの、朔月くん」
──────降り頻る雨の中、傘もささずに二人は立っていた。
灰色だった曇り空は、日が沈んでいつの間にか闇色へとその姿を変えていた。冬の寒さが入り混じる雨水は、身体の体温を着実に奪っていく。
寒さで感覚も鈍くなり、今にも逃げ出したい感情に駆られた。
白くなる吐息。悴んだ指先。震える唇。
それでも構わない。今は、それが良い。
こんな時じゃないと言えない。
全てを隠してくれる、こんな雨じゃないと。
「────今日で最後。もう、朔月くんとは居られない」
●○●○
「
「……耳が早いですねぇ」
あれから数日後、楠木からDA本部に呼び出された千束であったが、相手にしてられるほど暇じゃないというのが正直な感想だった。
余命二ヶ月を宣告され、明確なリミットが定まった今、残りの時間でやりたいことのアイデアが湯水のように湧き出てくるのだ。平たく言うと、楠木なんぞに構ってる時間さえ勿体無い。
それに、此処に来るまでに送ってくれたミズキと話題に出たが、自分の残り時間のことをたきなが分かりやすく意識してしまっていて、態度もしおらしい。だから言いたくなかったのに、と今更過ぎる後悔をしながらここまで来た。
解決しないといけないこと、残りの時間でたきなとしたいこと、誉とやりたいことが沢山ある。本当に。本当に暇じゃないんだと、態度が言外に示していた。
「で、なんですか?」
「DAに戻れ」
「ゴホッ、ゴファッ、もう死ぬんでちょっと体調が〜」
態とらしく胸と口元を抑えて咳き込み、項垂れるように客用のソファに座り込む。上層の人間にしか座るのを許されないかのようなお誂え向きな椅子から立ち上がった楠木は、白衣を翻して千束の前まで歩いて来た。
「真島が来たそうだな」
「あ〜、二回会いましたね」
「二度、取り逃した」
「それは私の仕事じゃないんで。此処に来るのは最後だと思いますしぃ、もっと楽しい話しましょうよぉ〜」
「……」
楠木は呆れたように目を伏せると向かい合う位置に腰を落とし、ポケットから一つの固形物を無造作にテーブルへと置いた。
それは、かなり前のデジカメ。千束は目を見開き、半ば奪い取るような速度で自身の手元に引き寄せた。
「っ……え、なんで楠木さんがこれ持ってんの!?ずっと探してたのにぃ!ドロボー!」
「情報漏洩阻止の為、回収していた。近く大規模な真島討伐作戦を行う。お前も参加しろ」
「……ハハッ、冗談キツいね」
千束にとって思い入れのある、人生の転換期となる理由が写真として収められていたデジカメ。これを返したのは、その作戦報酬の前払いのつもりか。それとも、もう死ぬ人間に情報漏洩の危惧をする必要が無くなったという冷たい理由だろうか。
どちらにせよ笑えない。乾いた笑みを零し、千束は目を細める。
「多くの者がお前を優秀なリコリスにする為に尽力したというのに、ロクに役割を果たさずに死ぬんだな」
「……私の思う役割は、楠木さんのとは違うよ」
その言葉に、思うところがなかったわけではない。だが今千束が答えたことが全てだった。自分を生かしてくれた存在に恥じぬよう、その憧れへの在り方こそが自分の果たす役割だと。
分かり合えない、そう理解した。話は終わりだと千束は立ち上がる。そのまま出口の扉へと向かうその背に、楠木の淡々とした声がかかった。
「───
────千束の足が止まる。
その名が楠木の口から告げられた事実に思考が停止する。思いもよらぬタイミングでの告発にあからさまに固まる身体。心当たりがあると態度が示してしまっている。
慌てて振り返れば、楠木は此方を鋭い視線で射抜いていた。
「……はい?」
「見知らぬ男が店に入り浸っているそうだな。何者だ」
「……何って、ただのバイトの人〜」
「お前が提出した真島の似顔絵、ずっと気になっていた。お前達でなければ、描いた人間が他に居る」
「……」
存在がバレてること自体の驚きはそこまで大きくなかった。バレるのは時間の問題だし、以前クルミで前科があった時はミカが上手いこと誤魔化している。
いつもなら分かっていても慌てふためき、どう言い訳しようかその場しのぎでしかない誤魔化しを用意するのだが、この時は違った。
────何故今、彼のことを引き合いに出したのか。その理由を理解した時、自分の中で段々と意識が冷たくなっていくのを感じた。
「襲撃があった時、その男も一緒にいた。そうだな?」
「詮索はよしてよ楠木さん、彼は無関係なんだから」
「真島とも接触してるらしいな。奴の密偵の可能性も」
「ナイです、ナイナイ、いい加減なこと言わないで下さい」
「生憎、そう断定できる材料が此方にはない。監視や拷問が嫌ならお前自身が濡れ衣を晴ら────」
「ねえ楠木さん」
ピシャリと、その声が楠木の言葉を遮った。彼女も思わず言葉が途切れ、視線が彼女に吸い寄せられる。楠木を見据える千束の瞳は、本人も知らぬうちにリコリスとして全盛であった頃の雰囲気を纏い始めていた。
「私を脅す材料はホントにそれでいいの?」
「……っ」
「────ほう」
その圧に、楠木の助手の肩がビクリと大きく跳ねた。持っていたタブレットをギュッと抱き締め、その口元が震える。憎悪に近い感情を孕むその視線と存在感に、それを受けた楠木当人の口元が僅かに緩んだ。
千束は、バツが悪そうに目を伏せる。楠木には逆効果だったかもしれない。あの指揮官が求めるのは、リコリスとしての自分の“強さ“。楠木が自分に求めていた在り方にまで引き上げることのできる存在に、関心を抱かせてしまった可能性を、千束は不明瞭にも無意識に感じ取っていた。
「意外だな。そんなに大切か」
「……要件それだけなら千束サンは帰りまぁ〜す」
もう伝えることはないと、千束は再び彼女に背を向ける。口での駆け引きは千束の苦手とするところ。少なくとも楠木とは現状相性が良くない。
「話は終わっていない。座れ」
「たきなを此処に戻してあげて。そしたらさっきの話、考えなくもなくもな〜い。カメラありがとー」
「千束」
もう呼び掛けに答えるつもりはないと態度で示す。ドアまで辿り着き、もう少しで逃げられると安堵する。
その扉を開くべく左腕が上がり────
「本当に大切なら、遠ざけておくべきだったな」
「────……っ」
掴みかけたドアノブ。伸ばしていたその指先が強張る。人工の心臓の冷たさが全身に行き渡るように感じる肌寒さ。
巻き込んだのはお前だと、そう突き付けられたような。今更もう遅いと、宣告されたような。
千束は答えず、その部屋を後にした。
────今の言葉を聞く前に部屋を出ていくべきだったと、後悔するとも知らずに。
●○●○
「あの、やっぱり俺も手伝────」
「ダメです」
「いや、流石に身体動かさないと鈍っちゃいそうで」
「肩に穴空けといて何馬鹿なこと行ってるんですか。入院が当たり前の怪我なのに病院アレルギーなんてわけの分からない理由でゴネたんですから、我慢してください」
「でも」
「千束に言いますよ」
「息をするように脅迫するようになったじゃん」
それ以上は何も言えず、カウンターに座ってちびちび珈琲を啜るしかやることがない。たきなだけでなく、ミカ達にもバイトに復帰することを猛反対された誉は、渋々テーブルに齧り付いて本を開いていた。
あくまでそういった
身体を動かしてないと、肩の痛みに意識を逸らしてないと、余計なことを思い出してしまうというのに。
「……」
────“死ぬのは誰だって怖いんだよ”
────“……そもそも、遅かれ早かれだと思ってます。全ての命に約束されてるものですから”
────“そう、だから簡単には受け入れられないのよ。死と戦うことで生きてる”
「……死と、戦う」
襲撃後の夜から今日に至るまで、同じ言葉を呪詛の如く繰り返している。山岸と会話したあの時から喉に異物が詰まったような違和感が、吐き出せないまま嗚咽に苦しみ続けているような不快感と混濁していく。
どうにももどかしく、堪らない気分だった。
山岸は別に、誉が自分で決めた余生の過ごし方についてを否定したわけではなかった。何度も反芻している会話の内容も、要点のみを削ぎ落としてみればなんのことはない、死が怖くないなど有り得ないと、それだけの話だった。
────人は誰しも、その恐怖と戦うことで生きているのだと。
山岸はただ医師としての自論を述べただけに過ぎない。勝手に考え過ぎているのは他でもない自分自身。彼女の言葉が鼓膜を突き抜けた時、誉の脳裏には自身のこれまでが走馬灯のように巡り、高速に通り過ぎていったのだ。
それはまるで、その言葉が意志を持って自身に問いかけてきたように思えた。果たしてお前のこれまでは、死と戦っていたのかと。
そんな哲学染みたお題目に頭が痒くなりながらも、書籍にすれば恐らく背表紙に題名すら書けないほどに薄く、読了にも時間がかからないであろう、短くて浅い自分の人生を振り返った。
達観ではなく
確かに誉は、“生き抜く”ことに重きを置きこそすれ、“生き残る”ことはこれまで考えてこなかった。幼少期から医療の知識を脳に詰め込んだことで、齢七歳にして自身の病気の完治が現実的ではないことを悟ったからだった。
自分のそれまでの症状と記録。類似する症例やそれにまつわる論文をいくつも照合し、当時の主治医から病名を聞く前には既に自身で検討をつけていて、助からないのだと理解した。
────正確に言うと、治療法自体は存在していた。他者への道徳や倫理を無視して理屈をねじ込んだ願望、有り体にいえば「心臓移植」だ。だがこれは、実現できる可能性が極めて低い。
そもそもとして
仮にドナーの問題がクリアされたとしても、全ての病院で脳死判定や臓器提供ができるわけではない。実施可能な施設が限定されている他、医療現場での連携や技術力の不足など、体制面での課題もある。
そこが整ってなお、患者とドナーの年齢差に加えて術後の重篤な合併症などの医学的な制限もあり、完治に至るまでのリスクが高過ぎた。
────何より、そういった理屈抜きにしても、自分が生き永らえる為に他者の死を待つ在り方が、誉には受け入れ難いことだった。
無論、ただ自身を生かすことだけを目的とするなら、誉には人口臓器という手もあった。完治に拘りさえしなければ、心臓に相当する機能を機械で代替し、体外式の循環器を取り付けての延命措置を測るという手段自体は、今の技術水準で十分に可能だったのだ。
ただし、代償として今後の人生全てを病室のベッドに捧げることになる。自由と引き換えにただ死んでいない日々を過ごすその技術の限界は、当時の誉が望んだものではなかった。
決して死を望んだわけじゃない。だが縋る先も地獄だと思った。生存を叶えた先でやりたいこともない。仮にあったとしても知識と技術の応用で、なまじ新しいこともすぐに覚えて飽きてしまう。楽しいと感じるのも一瞬で、このまま続けてもその繰り返し、退屈を重ねるだけ。
助からない。だから仕方がないのだと、そう言い聞かせていた。
(……でも)
────なのに、千束の「完全置換型人工心臓」の存在を知っても、心踊らなかったのは何故だろうか。
絶望さえ超越した諦観を前に現れた、一筋の光明のはずだった。十年経過したことで目覚しく進歩した技術力に驚愕もした。他者の命を奪うでも、ベッドを棺とするでもない第三の道。かつての妄想が現実になったのだと、知った時は素直に感嘆した。
────ただ、それだけだった。まるで他人事のように眺めていた。
もう長いこと医学には触れていない。その間で新しい治療法や症例が発見された可能性があるにも関わらず、誉はそれを理由に彼女の心臓についてを改めて調べることはしなかった。その心臓の出自が「アラン機関」だと知る前から、胸の内に湧き上がってくるようなものを特に感じなかったのだ。
誉の中では生への執着、もとい自身の救命への探求は、とっくの昔に完結してしまっていた。
それに「アラン機関」を信用しているわけでもない。前提として、頼んでもないのに無償で支援してくる団体など怖過ぎる。千束の手前で言えないだけで、才能は「神からのギフト」だとか軽々しく「神」を引き合いに出しているのがもう胡散臭い。
犯罪者であっても支援を問わないそのスタンスは、危険思想の宗教団体を想起させる。自分の母親が所属していたのも黒歴史候補筆頭である。
────神の名を語り、恩恵と引き換えにその才を世界へと届けよ。
耳触りの良い言葉も、言い換えれば救命の代償として世界に隷属せよという、自由剥奪の片道切符に他ならない。生きていられるだけマシだろと、死にたくなければ使命を果たせと、選択肢のない人間に脅迫のように。
だが死と戦うというのは、つまりそういうことなのかもしれない。生きることを諦めるなというのは、何に縋っても生きろということと同義なのだろうか。
だとすれば、自分で死に場所を選べると思っている自分は幼いのかもしれない。
(でも、彼女は)
────錦木千束は、何かに縋って生きてはいない。
あれこそが、誉が羨んだもの。いつだって自分の願望を最優先に悔いなき人生を歩んでいる。そう思うのに、あの場であの言葉を否定できなかったのは何故だろう。
彼女のように生きてみたくなって、実際そうしてきたし、そう在る自分が好きだったし、楽しかった。だというのに、山岸の言葉がこんなにも刺さるのは、それが間違っているかもしれないと思うからなのだろうか。
千束が、間違っていると、そういうことなのだろうか。
そんな訳がない。死ぬまでに生きた証を残す。誰かの心にずっと住めるようにと、その在り方自体は否定されるべきものじゃないと、今でもそう思う。
だからできないことに時間をかけてる暇なんてないのだと、そう思っている。いつだって、なのに。
どこか刹那的に生きる彼女の背中を、哀れだと思う瞬間がある。
千束が自分と同じ考えかもしれないと思うと、何故かこんなもどかしい気持ちになる。
「……」
無意識に視線が本からホールへと移る。営業中ながらも店に客の姿はない。
たきなは誰も座っていないテーブルを拭きながら、何処か遠い目で窓の外を見つめていた。
カウンター向こうにはミカもいるが、ホールスタッフとの会話はない。裏にいるはずのクルミも出てこない。ただひたすらに静かだった。
千束もDA本部から呼び出しがかかったらしく、ミズキはその送迎。彼女がいないだけでこんなにもこの空間は空虚だった。普段の賑やかさと正反対の物寂しさを漂わせて、ほんのりと肌寒さを感じるほどだった。
たきなが上の空で見つめる窓の外からは、鈍色の寒空が覗いていた。朝来店したよりもその灰は濃くなっていて、いつ雨になるかもしれない雲行きを訴えてくる。
清潔さも、部屋の明るさも、普段と何も変わらない。それなのに、何故かこんなにも薄暗い。
いずれ来るであろう未来の姿を先取りしたようで、その致命的で確定的な喪失の予感が、この部屋全体に暗い影を落としていた。
しかしその瞬間、来客を告げる鈴が鳴った。
「っ、いらっしゃいま……」
慌てたような声音でたきながお客様を出迎える。
だがその挨拶が言い切られることはなかった。途切れた違和感に思わず入口へと振り返ると、そこには千束とたきなで見慣れた赤紺色、リコリスの制服が二人。
フキとサクラ────何度かこの店に情報共有の名目で顔を出す二人組。うちの一人であるセカンドリコリスのサクラは、たきなの出迎えを通り過ぎてそのままカウンターのミカへと駆け出した。
「あー、誉さんっ!ちーっす!」
「こんにちは。元気ね相変わらず……」
「店長、パフェ!パフェ!いやもう何でも良いっ、すぐ出来るやつ!!」
「はいはい、フキもいるか?」
「い、いえ……すぐ帰りますので」
相変わらずミカの前だとしおらしいフキは、そう一声挨拶するとチラリと此方に視線を向ける。黙って見ているのも失礼かと思い、なんとなしに頭を下げる。
フキは此方を一瞥した後、懐から白い何かを取り出して、それをたきなの胸へと押し付けた。
「明日までに返事しろ」
「……これは?」
よく見ればそれは、白い封筒だった。彼女が公共の郵送手段を使わずに態々手渡しで持ってきたということは、DAからの書類だろうか。
「……」
フキがチラリと視線を誉へと向ける。たきながつられるように此方を見て、何かを察したのか慌てて入口からフキと一緒に出て行った。
誉もそれだけでフキの配慮を理解した。恐らくDAの、それもトップシークレットレベルの内容なのだろう、それ故に部外者である人間の前では話せないということだ。物理郵送を選択した理由も頷ける。
なら二人を待ってる間に、今日こそサクラはパフェにありつけるのか良かった────とか考えているとすぐにまた入口が開いた。
「え、速っ……あ」
「……ほら帰るぞサクラ」
「ええっ!?先輩、あの、まだっ……」
「先生、失礼します」
思わず声を漏らした誉を横目で流し見ながら、フキはサクラの静止も聞かずに彼女の襟首を引っ掴むと、そのまま涙目の彼女を引き摺るようにして入口へと向かっていった。「また来なさい」と優しく声をかけるミカに対してペコリと小さく頭を下げると、そのまま店を後にした。
「パフェぇ……パフェぇ……」と呪いのような恨めしい声が遠くなっていくのを感じながら、各々の視線がたきなへと集まる。カウンターから顔を出したクルミが、訝しげに尋ねた。
「DAからか?何だって?」
「……恐らく復帰の辞令、とのことでした」
────“復帰”。
それを聞いて、誉は目を見開いた。
「真島のアジトが判明したそうです。突入するに当たって戦力が要ると」
「ああ、真島ね……」
真島と聞いて、誉はマリモみたいな色のパーマ髪を思い出す。ちょくちょく自宅に不法侵入してはタダ飯を平らげた挙句勝手にDVDを漁って映画見て片付けもせずに帰る変人犯罪者。これだけ聞くと脅威度ゼロなのだが。
「作戦は1週間後。そのつもりがあるなら準備をするように、と……」
そうかそうか、遂に奴もお縄につく日が来たのか……と感動しながら、そのアジトと判断された場所って俺の家じゃないですよね?と不安が拭えない。
犯人隠避で捕まらないことを震えながら切に願っていると、たきながかつて本部から異動をすることになる遠因を作ったクルミが、復帰と聞いて罪悪感が無くなったのか、晴れやかな表情でたきなを祝福した。
「やったなたきな!これでやっと……たきな?」
嬉しそうに声をかけるクルミ。だが、当のたきなはその辞令の封を開けることもせずに視線を落として黙りこくっている。
そうして何秒か経って我に返ったのか、ようやく此方を向いた彼女はさも何事もなかったかのように振る舞い始めた。
「……あ、いえ、その……驚いて」
「実感が湧かないってやつか?」
「そんな感じです。店長、休憩良いですか?」
「ああ」
ミカはそう答えると彼女に珈琲を出すべくカウンター奥へと消えていき、クルミはたきなに違和感を感じてそうな表情で首を傾げながらミカの背を追っていく。
たきなと裏へと続く扉へと向かっていく────かと思ったが、そのままカウンターに座る誉と一つ席を空けた席へとその腰を落とした。
「……」
「……」
「……何か」
「え?あ、いや。何か俺に用事かと思って」
「私が隣りだと嫌ですか。そうですか」
「いや情緒……」
何故すぐ自虐的に……と思いながら彼女の横顔を見る。望んでいた復帰の機会を手に入れた割には浮かない顔をしていた。手にしていた封筒はテーブルに置かれ、それを開くこともせずに見下ろしている。
「……あんまり嬉しくない?」
「え?」
「復帰辞令。前はあんなに戻りたがっていたのに」
「……そう、ですよね。嬉しいです。嬉しい、はずですよね」
「たきな……」
縋るように、問いかけてくる。
言い聞かせるような彼女の声音には戸惑いがあった。それは、欲しかったものを手に入れたにも関わらず、思ったほど喜んでない自分がいることへの困惑だったのかもしれない。
此処に来た時の彼女は、半ば島流し状態にあった自分の現状に納得がいかず、そもそも危険度の高い案件の少ない環境の中で、なんとか功績を上げて本部に返り咲くことだけしか考えていなかった。
彼女の中でいつその在り方が明確に変わったのかは分からないけれど、千束と過ごしていくうちに彼女に引っ張られ、次第に笑うことが増えてきたのを、誉は近くでずっと見てきた。
「……戻る、べきですよね」
「……決めるのはたきなだよ」
その答えを誉が決めるわけにはいかない。けれど、たきなのその気持ちは痛いほど理解できた。
DAに戻るか、それともこのまま残るか。彼女は最早、どちらを選ぶべきか自分でも分からなくなっている。
だが恐らく本音では、DAはもう戻りたい場所だとは思えなくなっているのかもしれない。
「相棒を置いてはいけない、か」
「……誉さん、やっぱり聞いてたんですよね。千束の余命」
返事はしなかったが、沈黙は肯定だった。たきなは目を伏せ、誉はバツの悪さを誤魔化すように珈琲へと逃げる。
苦い香りが鼻腔を突き抜け、悲哀の感情を上書きしていく。苦味とコクが感情を支配し、口に含むこの瞬間だけは、何も考えずに居られた。
「撃たれたこと、何故千束に黙ってるんですか」
「自分の所為って思われんの嫌だもん。前もそれでギスギスしたし」
「隠してたからギスギスしたんじゃないですか。真島が部屋に来た件だってそうです」
「いや、俺も通報しようかとは思ったよ?けど隙だらけ過ぎて逆に隙が無いというか、来る頻度も多いからいつでも通報できるなーとか思ってたんだけど、気付いたら二人して映画に見入っちゃって」
「聞いてないです」
「しかもアイツ貸した映画返さないし。奴こそ映画泥棒だよ」
「どうでもいいです」
ピシャリと冷たく言い放つたきなにビビりながらカップを皿の上に置く。それを横目で見てたたきなは溜め息混じりに呟いた。
「秘密にしていたことで痛い目を見たのに、懲りずにまた隠すんですか」
「……本当は、前ので結構懲りたつもりなんだ。まさか泣かれるほど心配されてたとは夢にも思ってなかったし、今回の件も彼女の余命のことがなければ話してた」
「……なら、どうして」
「全部楽しい思い出にして欲しいってだけだよ。俺のことで顔を曇らせる時間が勿体無い」
残りの時間が少ないなら、その全てが笑顔の絶えない時間であって欲しいと願っている。それにかつてあんな顔をさせたからこそ、二度とさせたくないとも思った。だから誉は、同じ轍を敢えて踏んでいるのだ。
千束が隠しているつもりになっている余命の件を誉が問い詰めないのは、自分も彼女に怪我を隠している後ろめたさもあるが、自分のことで傷付いて欲しくない気持ちが分かるからでもあった。
「……っ」
それを聞いたたきなは、何も言えずに俯いていた。彼女の余命をきいてからの自分の態度が、彼女の望むものじゃないことを理解したのかもしれない。たきなの気持ちも痛いほどに伝わる。それでも、気を遣われて優しくされるのをきっと千束は良しとしないことも分かっているのだ。
きっと、望んでいたはずの復帰の辞令にすぐ返事ができなかったのも、そんな葛藤があったから。
「……まだ、最後って決まったわけじゃないです」
「え?」
「千束の心臓のことです。アレを作った人を探せば、まだ可能性が」
「─────ヨシさんのこと、言ってるの」
彼女が最後まで言い切る前に、誉は悟った。彼女が口にしようとしている悪魔の取引を。たきなはかつて、自分に対してしたことを千束にもしようとしている。
かつて自分に拒絶された案だからだろうか。たきなは目を逸らしながら、それでもコクリと頷いた。
「たきな、それは」
「どうしてですか。死ぬよりは、ずっとマシじゃないですか」
「……っ」
────死ぬよりマシ。
誉の中で、また山岸の言葉がよみがえる。生きるのを諦めるなと、目の前の少女からも告げられてるようで、思わず唇が震えた。
「……望んで手に入るものじゃない」
「千束は前にも支援を受けてる実績があります」
それは、たきなが無知であるが故の淡い希望だった。アランは支援者への二度目の支援を禁忌としている。支援者に直接接触してはいけない原則を犯しやすいからだ。
それに、仮にそれが可能だったとしても、かつて千束が心臓を譲り受けたのはその才能を世界に届ける確約があったからだ。恩恵は、使命を果たす前提条件での前払いに過ぎない。かつてそれをミカが踏み倒している以上、現実的には有り得ない。
────ただ。ただ、だ。それはアランの教えに忠実な人間に限った話。既に接触禁忌に抵触しているアランの人間が、すぐ近くにいた。
「……アランは秘密主義だしそれに、連絡手段がない」
────付け焼き刃の、半ば逃げるような嘘だった。今なら接触はそこまで難度の高い話じゃなくなってきている。
何故なら、彼女の心臓を破壊した犯人こそがアラン機関であるからだ。もしあの時、あの看護師が自分の素性を明かさなくても誉はこの結論に至っていた。
千束の人工心臓のことを知っている人間は決して多くない。その技術仕様や欠陥を熟知し、破壊することまで可能だとするなら尚更だった。
殺すだけならあの時に可能だったはず。つまりそうしなかったのは、それを餌に生き方を強要する為だ。死にたくなければ使命を果たせと。
逆説的に言えば、それを実現させる為の果実として、彼女を救う手立てが既に用意されているということ。
つまりは代えの人工心臓。翻せばそれは、機関では禁忌とされているはずの「二度目の支援」に当たる。
そんな暴挙に出る存在に、誉は一人しか心当たりがなかった。もしそれが当たってる場合、接触は寧ろ相手の望むところである。しかしその場合、千束の在り方を捻じ曲げようとしてくるのは必至。
だがそれを、たきなに告げるのは憚られらた。
「私はまだ、受け入れられてません……」
「たきな……」
「だって、そうじゃないですか。本人はあんなに元気なのに、あと二ヶ月だなんて……」
「……」
────あと、
何故か、背筋がゾッとした。熱い珈琲を飲んでいたはずなのに、その喉の奥が次第に冷たくなっていく感覚。
一ヶ月だと自身が宣告された時にも似たようなものを感じた。知っていたはずなのに、今また突き付けられて何故か身体が強張る。戸惑う中、たきなが視線を此方に向けた。
「誉さんは、違うんですか?」
「────っ、ぇ」
────ドクンと、心臓が強く脈打つ。
まるで受けたこともない角度から球が飛んできたような衝撃に襲われ、思考が乱れる。彼女の言葉を咀嚼するのに、長い時間がかかっているような感覚。すぐに答えられず、唇が震える。
────千束の死を、誉は受け入れられるのか。たきなの言葉は、つまりはそんな問いだった。
「な……んで、そんなこと聞くの」
「……今日ずっと考え事してますよね。千束のことで思うことがあるんじゃないですか」
「っ……別に、俺はそんな……」
「どうして、隠すんですか」
「隠して、なんて……」
真っ直ぐに此方を見つめるたきなの視線が、今の誉には耐え難いものだった。
自分の中で曖昧になっていたはずの感情が、たきなの問いの所為で形になり始めているのを自覚する。それを慌てて振り払って目を逸らすも、彼女は逃がしてくれなかった。
「誉さんだって、本当は嫌なんじゃないですか」
「……関係無いよ、俺の感情なんて。決めるのは錦木なんだし」
「そんなこと聞いてないです。私は、誉さんの」
「何で聞きたがるんだ、そんなの。意味分からない」
「それはこっちのセリフです」
前のめりになるたきなの上体。彼女が近付く分だけ逃げるように身体が反れる。それでも離れぬ距離感が、答えを出せと告げている。
獣に追い詰められたかのような危機感。席を立つことも飲み切った珈琲に逃げることもできずに、彼女の言葉を待ち受けるしかなくて。
「嫌なら嫌って、どうして言わないんですか」
────それを聞いた瞬間、観念するしかないと悟った。何故そんなことを聞くんだと、態々考えさせるんだと、言い返したとてもう遅い。
相棒の状況に道を決めあぐねてもなお、透き通るような凛とした瞳が誉を貫く。揺れ動く瞳孔は、まるで正解を求めているようで。
「─────……っ、ぁ、だって……」
口吃り、目を開き、汗が滴る。動揺に困惑が重なり、心臓の音が耳元にまで響く様。
誉はきっと、彼女の言葉で自覚するのが怖かった。
彼女の死を受け入れられるのかどうかなんて、愚問過ぎる問いだったのだ。
受け入れた──割り切った──諦めた。頭の中で反芻していた。自分は今、千束の命を「仕方ない」として諦めているのか。助からないなら仕方ないとして、彼女の人生に見切りをつけているというのか。
────そんなわけがないじゃないか。
「……嫌だって、死んで欲しくないって言ったから、それが何だっていうのさ」
「え……」
そう、本当は分かってた。
彼女が自分の残り時間など知らぬ存ぜぬでいつも通り過ごすその生き方に、今までは羨望を向けてばかりだったその在り方に、不安と不満を綯い交ぜにしたどうしようもない情動を抱いていたその理由。
自分と同じ考え方をしているはずの彼女の有り様が、酷く苛立ちを感じ始めているその理由。
─────誉はただ、千束の死を受け止められてないだけだった。
千束が酷く冷静で、諦めて、努めていつも通りに振舞っていたから、自分もそうしなきゃいけないと思っていただけだった。決して自分は平気だと笑う彼女の言葉を鵜呑みにしていたからではない。気遣いを望まないであろう千束の求める在り方を意識していたからだ。
そこに誉の感情はなかった。入れてはいけないと思った。自分がどう思おうが千束が仕方ないと諦め、そのうえで「こうしたい」と望む在り方があるのなら、その意志が優先されるべきだと思ったからだった。かつて誉が辿った道を彼女が辿ることに、何の違和感も持たなかった───持つべきではないと思っていた。
でも、そんなのはただ自分を偽っていただけだ。自分があと一ヶ月の命と聞いて物怖じしてるのも、生きていたいと思い始めているから。
千束が二ヶ月と聞いてこんな気持ちになっているのは、彼女から教わったものが大き過ぎたから。
─────自分のことは「仕方ない」と割り切れていたのに、相手にはそうあって欲しくないという彼女の言葉の意味が、今になって分かる。
山岸の話を聞いてから。自分と千束の残り時間を知ったあの時から。自分の言葉と感情にずっと矛盾を孕んでいる。
けど。だけど。
「そんなの……俺が何を思ったって、何かが変わるわけじゃないのに」
自分のことを棚に上げておきながら、相手には足掻けと我儘を言っている。相手だけでもというその気持ちが、嫌というほど分かってしまったからこそ、その反抗に何の意味があるのかが分からなかった。
いつかの死が決まっているのに「死にたくない」「死んで欲しくない」と駄々をこねろというのだろうか。
千束だって死にたいわけじゃない。そんな彼女に、軽々しくも「死なないで」だなんて。酷い矛盾だ。
生存不可能という事実で納得しようとして、自身の感情を見ないようにしてた。それを自覚したことで、余計にその事実が波のように押し寄せてくる。
────千束が、死ぬ?
自分が死ぬ一ヶ月後に、自分を追うように。あの太陽のような笑顔が冷たくなって永遠の眠りにつく姿を否応なしに想像する。振り払っても振り払っても、ジワジワと広がる染みのように、誉の脳を支配する。
────死と戦うことで生きる。
誉は、その言葉を何度も何度も呼び起こしていた。
▼
(……言わなければよかった)
任務終わりにリコリコへ帰る道中で、たきなは昨日に誉にした質問を死ぬほど後悔した。
真島討伐作戦の開始まで残り五日となったその日、千束とたきなはDAからの依頼で午前から外に出ていた。
内容は逃亡中の犯罪者捕縛という千束の心臓への負担を考慮しないものだった。
断るという選択肢があるわけもないのだが、千束当人は普段通りの快活を振り撒き、珍しく気が乗らないたきなを半ば強引に引っ張るような形で店を出た。その時点で既にたきなは店の仕事に身が入っておらず、ぼーっと何も無いところを見つめていて、話しかけても反応がワンテンポ遅れたりとまるで集中できていなかった。
犯人は複数。気持ちを切り替えて、なるべく千束の心臓の負担にならぬようにと張り詰めていたたきなだったが、此処に来るまでに処理し切れずに積み重なった様々な感情の絡まりによって、その気負いは結果として空回りに終わった。
犯人の無力化自体はいつも通り滞りなく終了し、後はクリーナーの到着を待つだけの状態。普段なら任務中に上の空になっていることなど有り得なかった。
千束に呼ばれて我に返った時には犯人のうちの一人が逃亡し、その背中が小さくなっているところだった。慌てて追いかけるより先に千束が駆け出してしまい、それに追い付いた時には既に確保した後。その際、捕縛していた残りの二人を置いてきてしまう凡ミス。それさえ千束に任せてしまい、寧ろ負担を倍にしただけだった。
そうしてクリーナーに引き渡して任務自体は終了したが、寄るところがあると千束に言われ現地解散となってしまった。無茶する彼女を放って置けずに同行を申し込んだたきなだったが、体良く断られてしまったことでリコリコまで一人で帰る羽目になった。
仕事中だったのに、目の前のことに集中することさえできない。前はこんなんじゃなかったのにと、たった一人での帰路の中、話し相手も居ない現状でたきなは悶々と考えていた。
『嫌なら嫌って、どうして言わないんですか』
「……っ」
そう聞いた時の彼の顔が今でも脳に焼き付いている。あれでは無理に言わせたようなものだった。
────っ……一体、どの口が。
下唇を噛み締め、俯いた。
自分だって千束に、「死なないで」と伝えることすらできないというのに。そんな情けない自分のことを棚に上げて、私は彼に────。
自分だって、分かっていた。
悲哀の感情を抱きながら自身に気遣うことを千束が望まないであろうこと。
誉の言葉も尤もだった。誰だって我慢してる。それを彼女の前で言わないだけだ。そんなことすら忘れて自分は、まるで彼を責め立てるように。
あれでは、ただの八つ当たりだった。
────誉の言う通り、希望が薄いのに“諦めるな”と願うのは、酷なのだろうか。
覚悟した気になっていた。自分は最後の瞬間まで二人には願いのままに、悔いなき人生を過ごして欲しいだけなのだと思っていた。
違った。たきなはただ純粋に、二人に生きていて欲しいだけだった。それを願っていたのは自分のエゴだったのに、二人に押し付けようとしていた。
それを共有したくて、自分は誉に感情を強要したのだ。その問いに、あれほどまでに狼狽え、自虐的に言い訳を重ねる誉を見ることになるとは露にも思わなかったのだ。
(やっぱり誉さんは、千束が────)
千束に死んで欲しくないと、怖いのだと、ああもあからさまな感情を出すとは思わなくて────なんて、そんなのは言い訳だった。
「……っ」
─────どうして、何もかも上手くいかないんだろう。
千束のことも、誉のことも。
二人とも、こんなにも早く別れなくちゃいけなくなるなんて思いもしなかったのだ。千束は誉が好きで、きっと誉も、ようやく自分の感情を理解し始めている。なのにどうして。どうして誰も笑顔にならないのだろうか。
零れそうになる何かを必死に堪えて、早歩きで店へと向かう。
曇り空からポツポツと水滴が落ちてくる。夕方は雨の予報だった。傘は鞄の中に折り畳みがあるが、残りの距離で出すのは面倒だった。
段々と雨水が制服に染みてくる。濡れた髪が頬に張り付く。鬱陶しい、煩わしい、そんな苛立ちが今の思考を上書きしてしまえばいい。
自分の中で何も固まらない。今だけは、何も考えたくない。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
────そうやって、店に着く頃には全力で走っていた。
両の膝に手を付いて呼吸を整える。心臓がドクドクと強く鼓動を打つ。生きていることを実感する。正常な心臓が血液を回し、酸素を取り込んでいく。
「……」
少し待てば落ち着いてしまう動悸。自分は、二人の苦しみを理解することさえできないのだと絶望した。
千束にも誉にも負担が大きくて出来ない全力疾走を、自分はこんなにも簡単に出来てしまえる。それなのに、二人を救う為に何もしてあげられない皮肉。緩やかに、彼らが眠りにつくのを待つことしか────
「……っ」
裏口に周って扉をゆっくりと開ける。
制服に付いた雨水を軽く振り払ってから、力無く扉にもたれかかった時だった。
『ミカ……これは千束の為だ。千束だけじゃない、誉だって』
「……?」
裏手にまで聞こえる幼い声。
電気も付けず、空き家みたいに静寂の中、ポツポツと雨音に紛れてクルミの声が響く。あんなに声を張る彼女も珍しいが、たきなはそれよりも彼女が告げた言葉が引っかかっていた。
(千束と、誉さんの為─────?)
確かにそう言った。それを脳が理解した途端、ぼおっとしていた意識が
客席のカウンターには、ミカとクルミが何席か空けて座っていて、真正面に腰掛けるミカは物憂げな表情で、珍しく煙草を吸っていた。
一体、何の話を────そう耳を傾けた時だった。
『気付いてるんだろ?サイレント・ジンの件、千束の心臓を壊した女……黒幕が、吉松シンジである可能性に』
「─────ぇ」
────たきなの鼓膜から、全ての音が消えた。
全身の筋肉が一瞬硬直し、足先が小刻みに震える。クルミの言葉に思考が固まり、咀嚼し切るのに時間がかかった。そして、自身の耳を疑った。笑えない冗談だった。
吉松は千束の命を救った恩人だ。彼と再会することを願って、救ってくれた彼に恥じぬようにも、彼に託された使命を全うするべく、千束は今まで誰かの為のリコリスを続けてきた。
一人でも多くの人間を救うべく過ごしてきた。望まれた使命を果たしたはずだ。その指標が千束を殺す────その理解が及ばない。
「……」
ミカはすぐには答えなかった。故にそこには、沈黙が広がった。激しくなった外の雨音だけがこの場を保たせてくれていた。
そうして幾分か時間が過ぎ去り、水の音が遠のいて聞こえるほどに耳が慣れた頃、ミカは小さく息を吐き出し、天井を見上げた。
「……十年前の話だ」
────ミカは、吉松の存在を否定しなかった。
▼
────十年前。それはまだ千束が七歳の頃。
旧電波塔事件が発生するよりも少し前だが、彼女はその時点で既に歴代最強のリコリスとしてその名を馳せていた。対人格闘訓練は全戦全勝、360度オープンのフィールドでの一対多数編成での組手でさえ、彼女は一切の被弾すらなく、無類の強さで同期のリコリスと一線を画していた。
しかし天は彼女に二物は与えず、例に漏れず彼女はその才と引替えにした身体の問題があった。
────先天性心疾患。恐らくは出生時からのもので、訓練や任務などによって過剰な運動を行った際、彼女はかなりの確率で呼吸困難に陥り倒れた。詳しい病状はミカによって伏せられていたが、基本こういった
しかしこれはあくまで正規のプロセスを踏んだ場合の話に限定される。千束の出自は孤児で、どういった経緯でDAに拾われたのかは知るところではないが、早期の発見もそれに対する治療も、彼女が受けているはずもなかったのだ。
つまり千束の心臓は、爆弾を抱えたままリコリスとしての激しい研鑽を積み重ねたことで悪化の一途を辿り、日常的に生活する分には成人するまで保ったであろうそれは、最終的にはその時点で余命半年を宣告されるまでの破局に至っていたのだった。
────故にミカは、吉松シンジを頼ることになる。
その時点でミカと吉松は浅からぬ関係だったことが伺える。まだ吉松がミカに敬語を使っていた頃の話だという。
しかしミカが吉松に頼った肩書きは「アラン機関」のエージェントだった。その彼に千束の才能と価値を示すことで、彼女を救ってもらおうと考えたのだ。
結論を言えば、ミカの売り出しは効果的だった。実際、アランは才能があっても環境や身体的な問題によってその能力を発揮できない者への支援は惜しまない組織であり、千束は正にその境遇に当てはまっていた。
そこで吉松は、千束の戦闘能力を“殺しの才能”として見出したのだ。
斯くして、アランの支援によって生まれた才能の結晶が、また別の才能を救うべく形となってミカの元に現れた。
────拍動なしの「完全置換型人工心臓」。千束に与えられた、新しい命の名前だった。
問題だったのは耐久性。何世代先になるかもしれないオーバーテクノロジー唯一の欠点だった。千束が成人するまでが、人工心臓の耐久限界。保っても、十年前後。
千束が七歳の頃に心臓移植を受けたとすると、今の彼女は十八歳。そういう意味では、彼女が言った通り時間はあまり残されていなかったのだろう。
しかし、リコリスの現役期間は長くても十八歳。その期間を補って余りあるアランの人工心臓は、当時のミカにとっては十分に実用に足る代物だった。
そして、この心臓を譲る条件としてアラン機関の、ひいては吉松シンジが提示した要望が────“たとえ殺しの才能であったとしても、千束の才能を必ず世界に届けて欲しい”、ということだった。
ミカ自身、「殺しの才能」と堂々と告げられたことに多少の驚きはあったそうだが、しかしそれに関しては一、二もなく了承したのだという。千束がリコリスである以上、結果的にその約束が果たされることになると考えていたからだ。
だから、その意味を深く考えることはなかったと、ミカは言った。
「────お前も、千束を殺しの道具として見ていたのか」
クルミが告げた言葉が、真実だった。
ミカもかつては、千束の才能に魅入られた一人に過ぎなかった。治安維持を謳ってはいても、どれだけ理由を並べたところで殺しは殺しに変わりない。突きつけられたそれが反論の余地すらないことを、彼はとうに知っていた。
罰を待ち受ける罪人のような表情で俯き、僅かに煙を吐き出す彼に、クルミは重ねて問いかけた。
「いつ変わった?」
たきなにも分かっていた。過ごしてきた時間は比べるべくもないが、彼が千束にどのような心持で以て接しているのか。かつてと同じなら、彼女に人助けなどさせていない。
「……」
ミカは再び、ポツポツと口を開き始めた。
きっかけは、本当に些細なことだったという。吉松は千束の心臓移植後、DAではなくミカ個人に彼女を託した。理由は検討も付かないが、今もなお千束に接触を続けていることを考えると、当初は自分と関係の深いミカをパイプにすることで直接の接触というアランの禁忌に触れることなく千束の経過を観察できるという打算があったのかもしれない。
勿論、DAよりもミカを信頼しての可能性もあったかもしれない。その真相はミカをしても分からないと言うが、吉松は千束を「私たちの娘」として、ミカへと託し、彼もそれを受け入れた。
「殺しの道具」から「娘」へと。恐らくこれがミカにとって、彼女の見方が変化する転機だったのだろう。
そうして千束と二人過ごす日々は、平穏な日常から逸脱した生活を送っていたミカにとっては初めてのことばかりだった。幼い頃から今日に至るまでの記憶を、彼は今でも思い出せるという。
裏稼業を叩き込まれ、感情が乏しいリコリスの第一成長期。それでもなお彼女の楽しそうにはしゃぐ声や、輝く笑顔。キラキラと水面に反射する光のように煌めく瞳は眩しくて、思い出を語るミカの口元が僅かに緩んでいるのが見て取れた。
そう、ミカにとって千束はいつの間にか、本当の「娘」になってしまっていた。
そうして幾日かの時が過ぎた頃、千束の心臓移植の手術の為に赴いた病棟の中で、アラン機関の人間として手術に立ち会う予定だった吉松と、千束は出会ってしまったのだ。
出会わせてはいけない二人だった。ミカが誤魔化す前に、千束はその生来の観察眼で、自分を助けてくれる人物が目の前の吉松であることを認識してしまった。
『……人違いだよ。私はここの職員────』
『ウソ!此処にこんなカッコイイスーツの人居ないよ!』
『ハハッ、ありがとう』
『ううん、ありがとうは私の方!どうお礼すれば良い?』
幼い千束の純粋な瞳。
ミカは何も言えず、吉松の言葉を待った。
吉松は真っ直ぐに彼女と目線を合わせ、小さく微笑んで告げた。
『キミには大きな使命がある。それを果たしてくれ。その為に私は、
『────』
現実に引き戻されるような感覚。千束と過ごして浮ついていた感情が代償の糸で雁字搦めに締め付けられて、ミカは口を噤む。
そう、千束は吉松にとって、未だ世界に届ける為の『殺しの才能』。
彼を見つめる千束の表情は輝いていて、自分の信じる道を何の疑いもなく決めたようだった。
『────私もなる。救世主に』
「……皮肉だな」
苦い顔でクルミが言った。本当にそう思った。
『殺しの才能』の活かす為に救われた命が、命を奪うことを良しとせず、誰かを救うことに使命を見出している。
吉松が千束に「救世主」を名乗り、救った彼女に「使命」を託す。当時の彼女はきっと、それを言葉通りに受け取ったのだろう。一人でも多くの人を救うことが救われた自らの使命なのだと、そう考えたに違いなかった。
────千束らしい。
たきなは口を引き絞る。雨に濡れて冷えた身体のままに、それでも何故か胸が温かくなった。だが次第に、彼の話を聞いて自分の中で靄がかかったような違和感に襲われる。しかし、それも一瞬だった。
「しかし何故千束の命を狙う?」
「……使命を果たさない者を処分するつもりか……」
「それなら例の看護師が殺してる。なのに心臓だけを壊した。それに誉が来た時には狙いを完全に誉に代えてるみたいだしな。僕が一番分からないのはそこだ」
────心臓が、煩かった。
「…………っ、ぁ」
誉が血溜まりに倒れ伏せる姿が、今でもたきなの脳裏に鮮明に呼び起こされた。ミカとクルミの話を聞いてから、自分の中である予感が頭を離れない。
襲ったあの女が吉松からの刺客なのだとしたら、凶悪犯でさえ支援する機関が殺しを躊躇うとは思えない。まして千束への襲撃を目撃した人間など生かすだけ厄介なはず。
だが誉を瀕死にまで追い込んでおいてトドメを刺すことをしなかった。千束を殺さなかったことを考えても、彼を敢えて生かしたことになる。そこには明確な理由があるはずだった。
もしそれが、千束と共通するものだとするならば、恐らくそれは彼の「才能」だった。
「────」
「才能」を世界に届ける為の企みの一手なのだとしたら、つまり、巻き込んだのは。
彼の「才能」を吉松に伝えたのは、他でもなく。
─────“千束のような心臓を、誉さんに作ることはできますか?”
「……っ、たきな」
「なっ、聞いていたの、か……」
気が付けば、ふらりと自然に身体が躍り出ていた。たきなを視界に捉えたクルミは目を見開き、ミカも立ち上がる程に驚いていた。
だが、それは一瞬だった。此方の顔を見た途端に、二人はその口を噤んでいた。いつの間にか隣りで一緒になって聞いていたミズキでさえ、何も言わずに此方を見ていた。
「────私、は」
それほどまでに、自分は酷い顔をしていただろうか。でも、これ以上は聞くに耐え切れず、無意識に身体を飛び出していた。たきなもクルミ同様に吉松の思想をどうしようもなく理解してしまったから。
例え犯罪者であっても、世界に才能を届ける為の支援は惜しまない。倫理や道徳を無視しての手段さえ厭わない、狂気的なまでの才能至上主義思想。
「……私は、千束の心臓を壊した人に、千束を救ってくれと頼んでたんですね」
誉は、気付いていたのだ。彼女の心臓を終わらせた存在が彼女の恩人だと。だからその恩人にまた縋ろうとした自分の提案に、彼は難色を示していたのだと。
自分は何も知らないのに、千束を救いたいと躍起になって、誉を非難するばかりで。
そればかりか自分は、そんな人に彼を救ってくれと彼の事情を察せてしまえる情報をペラペラと口軽く話してしまった。彼が襲われた原因がそれだとするなら。
全て、自分の所為。
それを悟って、たきなは。
「っ……ぅ……」
どう、して。
どうしてこうも、上手くいかない。
「たきな……」
────限界だった。掠れた声が漏れて、震えた。
張り詰めていた気持ちが耐えず亀裂を生んでいく。決壊した感情のヒビ割れからポロポロと大粒の涙がとめどなく溢れていた。制服の裾で何度それを拭っても、自分の意思に反して零れ落ちていく。クルミが駆け寄って来てくれても、それに返事する余力すらない。
自分はなんて愚かで、浅はかだったのだろうか。自分が仕出かしてしまったことの重大さが、身体に入れる力を阻害する。後悔と罪悪感による自己嫌悪が止まらなかった。
誉には、何も知らない自分がさぞ滑稽に見えたことだろう。呆れられただけならまだ良い。最悪憎まれて、恨まれて、挙句嫌われたかもしれない。
私は、ダメだ。
自分のことしか考えていない。
悔しい。恥ずかしい。
きっと彼に、軽蔑された────
────ただ生きていて欲しいだけだった。幸せであって欲しかった。あの笑顔を、楽しそうにする彼の姿を、目に焼き付けていたかっただけだったのにと唇を震わせて涙するたきなの姿を、誰も止めはしなかった。
▼
「……すみませんでした」
泣き腫らしたたきなの目元はまだ赤く、それと同時に頬も少し紅潮していた。子どものように泣きじゃくったことが、思い出すと少しばかり恥ずかしい。
それでも、この場の誰もその醜態を最後まで笑ったりしなかった。程度はどうあれ、たきなの気持ちは全員が抱いていたものだったからだ。
分かっていたはずなのに見えていなかった。どうにも、堪らなかった。
「たきな」
落ち着くも束の間、クルミに名前を呼ばれる。俯いていた顔が自ずと上がり、視線の先には此方を見つめる三人が映っていた。
「僕を狙ったアランは多分吉松だ。武器取引の主犯である真島とも繋がってる。思想的に奴を支援する理由も理解出来た」
「……真島を辿れば、千束の心臓について分かるってことですか」
クルミは無言で頷いた。
だがそれは、たきなにとっては既に提示された光明ではある。アラン機関に縋る────結果としては、誉が良しとしない選択肢ではある。それでも、誉や千束が襲われた原因に自分が関わっているとなれば考えずにはいられなかった。
千束と誉を殺さなかった吉松の目的が二人の才能に関わるものなのだとしたら、活かす為の手段を用意している可能性だってある。
つまるところ、新しい「人工心臓」。希望的観測であるが、もしそれを有しており、奪取することができるのなら。クルミの手によって解析し、複製も可能かもしれない。そうすれば千束だけでなく、遠からずやってくる誉の余命だって────
たきなは、クルミを見て、それからミズキ、ミカへと視線を動かした。
やはり誰も、千束の死を諦め切れてるわけじゃなかった。何とか細い糸を手繰り寄せて、彼女が生きる術を模索し続けていたのだ。
周りが見えていなかったと、今になって心底痛感する。誉や相棒の心配しているのは、自分だけなのかもしれないと思い上がっていた。
「……」
たきなは、ポケットから白い封筒を取り出した。フキが寄越したDAからの通達。真島討伐の為の戦力として招集された復帰辞令。お誂え向きの誘いに、クルミは希望を見出したように表情を明るくした。
「奴の足取りが掴めない以上、動きの派手な真島から辿るのが早い。DAの作戦に参加出来るのはチャンスだ」
「……本当は、断ろうと思ってました」
「っ、どうして。望んでた復帰だろうに」
驚いたように開いた口だったが、すぐにクルミも理解した。その理由を代弁するように、ミズキが悲しげに笑った。
「……千束の、最後の二ヶ月だもんね」
助からないと諦めていた。いや、諦め切れていなかったけれど、本人の意志を尊重しないのは間違っているかもと、心を揺らしていた。
だから最後は、ただ楽しい思い出をと。誉の言っていた通りに過ごすのも悪くないのかもしれないと、割り切る努力をするところだった。
「……でも、私やっぱり戻ります」
「……たきな」
「どう思われたって構いません。二人は……周りの気持ちが見えてない。千束なんて、あんなに目が良いのに」
決意はもう定まった。その意志は固かった。
ミカ達の視線が集まる。もう、二人の意志を確認する暇も惜しかった。二人の覚悟よりも、二人に生きていて欲しいの願う人間の方が圧倒的に多いのだ。
「だから、分かって欲しいと考えるのはやめにします。怒りも謗りも、全部終わってから聞き入れます。千束が助かる可能性が、少しでもあるなら」
「……私から千束に言おう」
たきなの覚悟が、ミカに伝わった。彼の提案は、父親なりの優しさだった。使命への道を矯正せずに今日まで千束を千束で居させてくれたことは、きっと今のたきなにとっても救いだった。
たきなは首を横に振り、決意を宿した表情で告げた。
「ありがとうございます。でも、自分で言います。時間をくださ────」
────ガチャンッ
「……ぇ」
扉の開閉音と共に鈴が鳴った。
静寂を破壊する一音にたきなの言葉が途切れ、反射的に四人の視線全てが集まった。
準備中の札は付けていたはず、そう思ったのは一瞬。
明かりの点いてない今の薄暗がりの部屋でも、扉を開けて侵入したその存在は視認が容易だった。
外の雨に晒されて、ポタポタと水滴が入口に滴り落ちる。走って来たのか僅かに息が乱れ、鮮やかな赤だったであろう制服は、濡れたことで色素が落ちたように深く暗い赤へと変色していた。
「っ……千束」
────そこには、ずぶ濡れになった千束が立ち尽くしていた。
「な……なんでそんなびしょ濡れなんですかっ」
「ミズキ、タオル!」
たきなは慌てて裏から表に周り千束の元へ駆け出す。ミカはミズキにタオルを指示し、小走りで取りに行ったミズキの背中を見送っていたクルミも、たきなの後ろを追って千束へ近寄った。
「……」
「……千束?」
たきなの呼び掛けに千束は答えない。
何も言わず俯いて、どこかをぼうっと見つめていた。いつも喧しく入店して来るあの明るさを感じない。
「雨に打たれて体調崩したんじゃないか?」
「たきな、ホラタオル!パスパス!」
「ありがとうございます。ほら、千束」
ミズキから放られたタオルをキャッチして、そのまま千束の頭にかけて両手で水を拭き取る。されるがままの千束の瞳は、その前髪に隠れてよく見えない。
「……傘くらい差してください。風邪でも引いたら……」
「………………」
「……どうか、したんですか。千束」
明らかに様子がおかしい。
こんな千束をたきなは今日まで見たことがなかった。ミカやミズキさえ戸惑っていて、顔を見合せながら各々此方へと歩いてくる。
「……?」
ふと、たきなの視線が彼女の右手へと落とされた。
千束のその手には、何か紙が握られている。雨が染み込んでふやけてしまったていたそれは、よく見ると正方形に近い白い封筒だった。
たきながDAから受け取った辞令によく似ているが、千束の持っていたのはDAのロゴもない、ただ真っ白な封筒だった。
「……なんですか、それ」
「…………」
「千束」
呼びかける。今度は少し強めに。
軽く肩を揺らすと、ピクリと震えた。
タオルをかけた頭が、ゆっくりと上がる。濡れた前髪から、僅かに覗く瞳。わなわなと、震える唇。
「……ちさ、と。一体何が───」
「ねぇ、たきな……」
────顔を上げた千束の頬は、涙で濡れていた。
「……ほまれが怪我してるの、私のせい?」
●〇●〇
─────“本当に大切なら、遠ざけておくべきだったな”
千束の白い封筒に収められていたのは、たった一枚の写真。そこには、自身の余命を告げられたあの日の出来事が鮮明に映し出されていた。
薬で眠らされて、病院服で横たわる
────そして、そんな自分が眠る診察台の前で、肩を撃ち抜かれて死んだように血溜まりに伏せて倒れている、
震える指先でその写真を裏返し、そこに綴られていた言葉を読んで───千束の中で何かが崩れる音がした。
記されていたのは、英文でたった一言。
Episode.42『It's your fault he's going to die』
────“君のせいで、彼は死ぬ”
誉 「……あれ、スマホがない。昨日お店に忘れたかな……」
誉 「……」
誉 「…………」
誉「………………取りに行くか」
に、23,000文字……!?
前回、沢山感想来てるやーん!と思ってウッキウキで見に行ったら、半分近くが話に対する『感想』じゃなくて更新に対する『感謝』で、ありがとうよりすみませんが勝ちました。
久々に沢山コメント頂けて、モチベになりました。ありがとうございます。土下寝。