「ぬきたし」のSSです。
郁子が淳之介とラジオ生配信をやるお話です。
時系列は郁子ルートから6年後を想定しています。

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郁子の雑談配信

■時刻 夜中

★場所:淳之介と郁子の家

 

【淳之介】

「――……ただいまー、帰ったぞー」

 

【郁子】

「あ、おかえりダーリン」

 

【淳之介】

「すまん。遅くなった」

 

【郁子】

「ううん。それはいいんだけど……それより、本当にご飯用意しなくてよかったの?」

 

【淳之介】

「ああ。会社の人と食事してきたから大丈夫だよ」

 

【郁子】

「…………ふーん……」

 

【淳之介】

「? な、なんだ? そんな訝しげな顔して」

 

【郁子】

「――――浮気?」

 

【淳之介】

「なんで?」

 

【郁子】

「いや、だってただの食事でこんなに帰りが遅くなるのって……なんか変だなーと思って」

 

【淳之介】

「……郁子も知ってるだろ。動画のネタについてずっと談義してたんだよ」

 

【郁子】

「あー。あたしたちが会社を興したら即入社してきた、やたらと動画投稿に詳しい人ね」

 

【淳之介】

「で、今後どんな動画を撮るのかって話で盛り上がってたんだよ」

 

【郁子】

「なるほど。ありがたいことだけど、あの人話長いんだよねー……」

 

【淳之介】

「まぁ、おかげでこうして動画投稿者として食っていけてるわけだから、文句は言えないんだけどな」

 

【郁子】

「そ、なら仕方ないかな。てっきりあたしに隠れてNLNSのだれかとホテルでえっちしてるのかと思ったよ」

 

【淳之介】

「だからなんで?」

 

【郁子】

「ほら、あたしたちって付き合って以降、何億回もセッ〇スしてるじゃん? さすがの淳之介くんも他の女の子を味わいたくなってきたかなって」

 

【淳之介】

「俺死んでない?」

 

【郁子】

「……ま、浮気じゃないならいいですケド。ミサキちゃんとかナナセちゃんが相手だったらちょっと妬いちゃうからさー……」

 

【淳之介】

「基準がよくわからんが……美岬とセッ〇スなんてするわけないだろ」

 

【郁子】

「あっ! ナナセちゃんは否定しないんだ! ほら、浮気だ浮気!!」

 

【淳之介】

「違うわ! そもそも奈々瀬とは最近会ってないし、天地がひっくり返ってもあの美岬だけはあり得ないって話だ! あんなラーメン屋の匂いがするA5級の重量女とだれがするか!!」

 

【郁子】

「それはそれでひどくない?」

 

【淳之介】

「それに……あいつは俺たちと同じンジュウウウゥチューバーで、再生数を競うライバルだ。そんな敵相手に現を抜かすわけがない」

 

【郁子】

「ミサキちゃんすごいよね。『クソ女ちゃん』とか呼ばれてる炎上系で有名だけど、ネットでは愛されてるし、合計の再生数ならわたしたちより上だし。同業者としてちょっと悔しいんだよねー……」

 

【淳之介】

「特にラジオ生配信が人気でかなりインパクトあるからな。というか、インパクトだけならどのンジュウウウゥチューバーよりもあると思うぞ。」

 

【郁子】

「ね。あたしもラジオ生配信はやってるけど、ミサキちゃんほどじゃないんだよね」

 

【淳之介】

「あぁ、郁子もたまにやってるよな」

 

【郁子】

「でも、下心ある人が多いのかな。この前なんかチャットでスリーサイズ聞いてきた人いたからね」

 

【淳之介】

「そういうやつってどこにでもいるよな……」

 

【郁子】

「たしか……『欺瞞汁』っていうユーザー名の人だったんだけど、めんどっちいから”108-130-95-80-85-102”って適当に返しといたよ」

 

【淳之介】

「どこの数字を言ってるの?」

 

【郁子】

「……あ、そうだ。そろそろ生配信やるから、淳之介くんも参加してね。ゲストとして」

 

【淳之介】

「……え? 聞いてないんだけど……」

 

【郁子】

「ふふふっ、実は内緒にしてたの。視聴者には事前に『夫婦で雑談配信やるから観に来てねー!』って告知しといたんだけど、淳之介くんにはギリギリまで黙っておいたほうが、より自然な雑談になって面白くなるかなー、と思って」

 

【淳之介】

「なるほど……考えたな。でも、ただ雑談するだけなのか? それにもう夜遅いし、長時間やるのもなぁ……」

 

【郁子】

「さすがに今回は30分くらいで終わるつもりだよ。あらかじめお便り募集してたから、今回はそれ読んで答えながら雑談って感じ。数も3つだけだから、そんなに大変じゃないよ?」

 

【淳之介】

「……そっか、わかった。俺も出るよ」

 

【郁子】

「ありがとー! よろしくね!」

 

【淳之介】

「愛するマイスイートハニーの頼みだからな。……だが、いつの間に募集なんてしてたんだ? というか、そもそもどうやって?」

 

【郁子】

「『Mangli(マングリ)んほぉ♡ム』!」

 

【淳之介】

「原型」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【郁子】

「――……えーっと……あっそうだ、チャットしとかないと。……『マイク調整中! しばし股れよ!』っと……」

 

【淳之介】

「誤字ってるぞ」

 

【郁子】

「あっ。……ま、いいや。マイクは……これで大丈夫かな」

 

【淳之介】

「じゃ、そろそろ始めるか」

 

【郁子】

「うん、……『よし、始めます!』っと」

 

【郁子】

「…………」

 

【郁子】

「…………みなさーん! こんばんはー! みんなのイクちゃんだよ~!」

 

【淳之介】

「……へぇ、思ったより視聴者多いな」

 

【郁子】

「……聞こえてますかー? 音の大きさ、BGM、あたしの声のボリューム、いかがでしょうかー?」

 

【チャットのコメント】

『聞こえてます』

『大丈夫ですー』

『いい感じです』

 

【淳之介】

「大丈夫そうだな」

 

【郁子】

「……さぁて、前回からそんなに時間は経ってないんですけど、告知どおり今夜は雑談配信しようと思いまーす! 夜遅くに観に来てくださって本当にありがとうございまーす」

 

【郁子】

「……え? スパム対策? それならもう既に手を打ってあるので大丈夫ですよー」

 

【郁子】

「……それでは早速ですけど、イクちゃんのダーリンをお呼びしたいと思いまーす♡ ……淳之介くーん!」

 

【淳之介】

「愛してるぜマイスイートハニー!! ……で、お馴染みの淳之介です」

 

【郁子】

「ネットでは馴染んでないでしょそれ」

 

【チャットのコメント】

『は?』

『は?』

『帰れ』

 

【淳之介】

「あたりキツくない?」

 

【郁子】

「そりゃそうでしょ。淳之介くんはたまにしか動画に出てないんだから……というわけで、今夜はあらかじめ募集したお便りを読んで、旦那様と一緒に答えていきたいと思いまーす」

 

【郁子】

「それと……申し訳ありませんが、もう夜中なので配信は30分程度を予定してます。なので、お便りも3つに厳選してます。どうぞよろしくお願いしまーす」

 

【淳之介】

「いやぁ、ついさっき『お願い♡ ラジオに射精(で)て♡ ダーリン♡』とか急に言われて困っちゃってますよー! もー、なに話せばいいのか全然思いつきませんねぇー!」

 

【郁子】

「嘘臭くなるから変なこと言わないで」

 

【チャットのコメント】

『ヤラセか?』

 

【淳之介】

「違うわ」

 

【郁子】

「淳之介くん出演頻度低いのに相変わらずおもちゃにされてるねぇ」

 

【淳之介】

「ぐっ……! ネットでも嫁とのセッ〇スでもおもちゃにされるとは……!」

 

【郁子】

「やぁん♡ それは言いっこなしだよダーリン♡」

 

【淳之介】

「俺がおもちゃにするときもあれば大人のおもちゃを使うときもあるしな!」

 

【郁子】

「もうっ! 配信中なんだから、そういうこと言わないでー!」

 

【淳之介・郁子】

「「あははははっ!!」」

 

【チャットのコメント】

『やる気あんの?』

 

【郁子】

「では、お便りのほうバシバシ読んでいきたいと思いまーす」

 

【淳之介】

「なんかごめん」

 

【郁子】

「えっと……まずは、ラジオネーム『イくぞ婚(エンゲ)ェ約(ジ)』さんからのお便りです」

 

【淳之介】

「なんで知ってるの?」

 

【郁子】

「『いつも配信楽しく観させてもらってます。おふたりは最近結婚されたとのことですが、付き合いたての頃はどんな感じだったのでしょうか。エピソードなどあれば是非教えてください。』……だそうです」

 

【淳之介】

「付き合い立てって……もう5、6年前の話だからなあ」

 

【郁子】

「まだ出会って間もない頃はバチバチやりあってたもんね」

 

【淳之介】

「そうだなー……あの頃の郁子はちょっと怖かったぞ」

 

【チャットのコメント】

『その頃から鬼嫁の才能があった?』

 

【郁子】

「は?」

 

【淳之介】

「そんな声出しちゃめーでしょ。……よく襲われてたんですよ。性的な意味で」

 

【郁子】

「そうそう! 淳之介くんよわよわだったからねー! 今もだけど」

 

【淳之介】

「よわよわじゃないが!?」

 

【郁子】

「いやだってあのとき道端ですぐあたしに組み伏せられてたじゃん。なすすべもなく、って感じで」

 

【淳之介】

「まぁ……で、そのまま挿入させられたんだよな」

 

【郁子】

「当時イ〇ポだったけど、あたしのキュートな声でメロメロになってすぐ勃起したんだよねー」

 

【チャットのコメント】

『青〇は草』

『そういやイ〇ポって設定あったな』

 

【淳之介】

「設定じゃないんだぞ。ガチだったんだぞ」

 

【郁子】

「そんな堂々と言うことかなぁ」

 

【淳之介】

「――……そのときはまだ対立関係にあったんだがな……そんなある日、一緒に異世界に転移することになってな」

 

【郁子】

「いきなり”異世界”とか言い出すのはどうかと思うよ?」

 

【チャットのコメント】

『そういうのいいから』

『こいついつも話盛ってんな』

 

【郁子】

「ほら、呆れられてるじゃん」

 

【淳之介】

「……いや、これがマジなんだって! 自室でオ〇ニーしてたら謎の光が発生してだな……!!」

 

【チャットのコメント】

『虚言癖の旦那持ちのイクちゃん可哀想』

『離婚しろ』

 

【淳之介】

「なんてこと言うんだお前ら」

 

【郁子】

「……異世界はともかく、学園で淳之介くんがあたしのお手伝いをしてくれるようになってね。そこから段々仲良くなっていったって感じ」

 

【淳之介】

「そうだな、俺が郁子に徐々に惹かれるようになって……気づいたら好きになってたな」

 

【郁子】

「懐かしいねえ……。あたしは元から淳之介くんのこと好きだったけど」

 

【淳之介】

「……で、俺のほうも想いをきちんと伝えようと思ってな」

 

【郁子】

「あのときなんて言ってくれたんだっけ? ねぇ、再現してほしいなー?」

 

【淳之介】

「えっ、配信で言うの? あれは俺とお前だけの大事な――」

 

【郁子】

「みなさんはどう思いますかー?」

 

【チャットのコメント】

『イクちゃんナイス!』

『ほほぅ気になりますねぇ』

『再現しろ』

『はよ言え』

 

【郁子】

「……だそうですケド?」

 

【淳之介】

「えぇ……」

 

【淳之介】

「…………」

 

【淳之介】

「『郁子が好きだ。付き合ってほしい』……って」

 

【郁子】

「きゃっ♡」

 

【チャットのコメント】

『シンプルだった』

『ひねりないな』

『見てるこっちが恥ずかしい』

『惚気よりもっと面白いの教えろ』

 

【淳之介】

「その返しはあんまりじゃない?」

 

【郁子】

「ま、でもたしかに。あんまりあたしたちがイチャイチャしてるだけじゃ観てる側としてはつまんないかもねー」

 

【淳之介】

「そうだなぁ…………あ、じゃあ、あの話をしよう」

 

【郁子】

「……なんかあったっけ?」

 

【淳之介】

「実はな……ひょんなことから、森の中でサバイバル生活をするハメになったんだが……」

 

【淳之介】

「そんな中、朝早くに郁子が水浴びしているところを目撃してしまってな」

 

【郁子】

「……っ!!」

 

【淳之介】

「そのときの郁子の髪と言ったら!! まるでアフロみたいなワカメでいったあああああああ!!!!」

 

【郁子】

「玉袋粉砕するよ?」

 

【淳之介】

「あいだだだだだだだだだだもう潰れかけがあああああああああ!!!! ごめんなさいごめんなさい!!!! やっぱこの話はなしでえええええええっっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

【チャットのコメント】

『いいぞやれやれよく分からんが』

『痛そう』

『音割れしてますよ』

 

 

 

   ◆

 

 

 

【淳之介】

「うぅ……まだ痛いよぅ……」

 

【郁子】

「ダーリンが悪いんだからね。…………えー、気を取り直して、二通目読ませていただきます」

 

【郁子】

「……ラジオネーム『ハメドリ様を称えよ』さんからのお便りです」

 

【淳之介】

「…………」

 

【郁子】

「『イクちゃん、淳之介さん。この度はご結婚おめでとうございます。付き合って長いようですが、普段は何をして過ごされているのでしょうか。教えていただけると幸いです。』……だってさ」

 

【淳之介】

「……なぁ、この人だれだか分か――」

 

【郁子】

「そういう詮索はしちゃめーでしょ。視聴者離れてっちゃうよ?」

 

【淳之介】

「……そうだな、すまん。……でも、普段と言ってもなあ」

 

【郁子】

「一番は動画のネタ探しだよね」

 

【淳之介】

「たとえば昔、ドスケベ音頭が流行っただろ? 郁子が音頭を舞ってるところに俺も居合わせてたんだが、そこで少し思いついてな」

 

【淳之介】

「――『ドスケベサンバでも踊ってみたら』ってな」

 

【郁子】

「あー! あったあった! けっこう伸びたんだよねーあの動画!」

 

【淳之介】

「意外と過去の経験が今の投稿動画を生み出してるんだ。だから投稿初期の頃はその記憶から引っ張ってきてアレンジしたのが多いんだよな」

 

【郁子】

「そうだねぇ。でもさすがにそれだけじゃやっていけないから、ネタが尽きたら二人でよく外に探検に行くもんね?」

 

【淳之介】

「あぁ。心霊スポットに行った動画を昔上げてたと思うが、本当はネタ探しのつもりで訪れただけだったんだ。でも、郁子が想像以上にビビってたから、つい面白くて撮影したってわけ」

 

【郁子】

「ビビってないが!?」

 

【チャットのコメント】

『ビビってたじゃん』

『キャーキャー言って旦那に飛びついてたような』

『音割れひどかったですよ』

 

【郁子】

「ち、違うもん……! 急に飛んできたコウモリに驚いただけだったし……!」

 

【淳之介】

「コウモリなんていたっけ?」

 

【郁子】

「……もーっ! いいでしょあたしのことは! ネタの話!」

 

【淳之介】

「あとは……たまにだけど、俺の昔の仲間に会いに行って、直接ネタをもらったりとか?」

 

【郁子】

「あーそうだったね。みんな忙しいのによく予定合わせてくれたよねぇ。……あ、もしこの配信見てくれてたらだけど、本当に感謝してます。ありがとねー」

 

【淳之介】

「ほら、青藍島で『伝説的(レジェンド)ビッチ』って呼ばれてた有名人がいただろ? そいつのおすすめむぎ茶レビューとか考えてたんだよ」

 

【郁子】

「でも結局それだとナナ……”ビッチ”ちゃんの話に特化したもので、あたしたち関係ないじゃんってことで却下になったんだけど」

 

【淳之介】

「だからちゃんと俺たち自身の舌でレビューしようって話になって、『BUKKAKEうどん』を味わってるところを撮影したことがあるんだが……」

 

【郁子】

「ンジュウウウゥチューブの規約に引っかかって削除されちゃったんだよね。今や幻の動画と化してる」

 

【淳之介】

「他には、そうだな……俺が『Sicoca』を持ってたことで、『Sicocaの決済音「んほぉ♡」で”サブリミアナルんほぉ果”は可能なのか!?』って動画を上げた事もあるんだが……」

 

【郁子】

「よくわからないけどそれも削除されちゃったんだよねー」

 

【淳之介】

「……ってことで、いくらネタを探しても削除の憂き目を見ることがあってな。最近は大丈夫そうなネタを探すようにしてる」

 

【郁子】

「この頃は削除されることもなくなったでしょ? それはその成果ってこと」

 

【淳之介】

「でも、ああいう削除されるようなネタのほうがやってて面白いよな」

 

【郁子】

「ね。もっと規約ゆるゆるになってくれればいいのに。あたしのおま〇こみたいに」

 

【淳之介】

「いっそのこと、某ンジュウウウゥチューバーのア〇ルぐらいな!」

 

【チャットのコメント】

『クソ女ちゃんか』

『クソ女ちゃんのことか』

『クソ女ちゃんだな』

『ネタもいいですけど趣味の話とか興味あります』

 

【淳之介】

「”某”付けた意味」

 

【郁子】

「趣味かー……最近だったら、カラオケよく行ってるよね? あたしたち」

 

【淳之介】

「あぁ。昔の仲間たちも誘ってよく行ってる。郁子は歌上手いよな」

 

【郁子】

「そう言ってくれると嬉しいですケド。……でも、さっき話した”ビッチ”ちゃんとかもっとすごいからね。全員聞き入ってるもん。淳之介くんのほう見ながら」

 

【淳之介】

「…………」

 

【郁子】

「……この黙りこくってる人、実は妹さんいるんだけど、その子もお上手なんだよ? たしか、ラップ調の曲とか得意だったよね?」

 

【淳之介】

「…………ん? あぁ、そうだな。あと、『クソ女ちゃん』とも一緒にカラオケ行ったことあるけど、彼女もすごいぞ? いろんな意味で」

 

【郁子】

「なんでデスメタル系ばっか歌うのか意味不明だけどね」

 

【チャットのコメント】

『デブメタボ?』

 

【淳之介】

「ただの悪口じゃん」

 

【郁子】

「いいんじゃない? あの子炎上系だしダメージないでしょ」

 

【淳之介】

「それとはまた別の話じゃない?」

 

【郁子】

「でも楽しいよね、カラオケ。リフレッシュに丁度良いし」

 

【淳之介】

「今思ったんだけど……カラオケ配信みたいな歌系も動画のネタとしてありかもな」

 

【郁子】

「あっ、だったら今からあたし歌っちゃう? BGMはないけど!」

 

【淳之介】

「膣内(なか)の人とやり方がまんま被るから駄目です」

 

【郁子】

「なに言ってるの?」

 

【淳之介】

「いろいろ怖くなってきたので次のお便り行きましょう」

 

【郁子】

「なんで淳之介くんが進行してるの? ……えっと、じゃあ最後のお便り行きます」

 

【郁子】

「えー……ラジオネーム『漫画発売おめでとうございます!』さんからです。ありがとうございまーす」

 

【淳之介】

「なんの?」

 

【郁子】

「『イクちゃんご夫婦の配信、楽しみにしておりました。おせっかいではございますが、夫婦生活とは結婚してからが本番です。二人であらゆる困難を乗り越えていくことで、より夫(・)婦(・)と(・)な(・)る(・)のです。というわけで、早速困難です。おふたりが隠している秘密を一つだけこの配信で公表してください。よろしくお願いします。』……とのことです」

 

【淳之介】

「なにが『というわけ』なの?」

 

【郁子】

「気持ちは分かるけど…………でも敢えて、このお便りを選ばせていただきました」

 

【淳之介】

「負けず嫌いが発動したか……」

 

【郁子】

「ううん、そうじゃないよ。本当に1つだけ秘密を教えようと思って」

 

【淳之介】

「……え? なんかあったか?」

 

【郁子】

「えー、じゃあ視聴者のみなさん。心して聞いてください。実はですね……――」

 

【郁子】

「――イクちゃん、お(・)腹(・)に(・)子(・)を(・)宿(・)し(・)て(・)ま(・)す(・)!!」

 

【淳之介】

「!!! ちょっ、おい!!!」

 

【郁子】

「嘘じゃありませんよー本当でーす。ダーリンの慌てっぷりがその証拠ですよー?」

 

【チャットのコメント】

『マジか!!!!』

『うっそだろおい!!』

『大ニュースじゃん!!』

『もっと詳しく!!!』

 

【淳之介】

「おいおい!! コメント大荒れだぞ!! どうすんだ郁子!!」

 

【郁子】

「――……あー、残念ながらお時間となってしまいましたー。ごめんなさーい、配信はここまでとします。妊娠の件についてはまた別の動画でお話しますので、今夜は悶々としながら寝て下さいねー。では、お休みなさーい」

 

【チャットのコメント】

『こんな半端な締め方ある?』

『おめでとうございます!』

『おやすみなさい』

『zzz……』

 

【淳之介】

「…………」

 

【郁子】

「…………」

 

【淳之介】

「……よかったのか、言っちゃって」

 

【郁子】

「…………」

 

【淳之介】

「……しかも、中途半端な終わり方だっただろ。これだと、良い意味でも悪い意味でも炎上しないか?」

 

【郁子】

「いいの。……だって、どっちにしてもこのほうがバズるでしょ?」

 

【淳之介】

「……っ! もしかして……あのお便り選んだのも、最初からこれが目的で……?」

 

【郁子】

「だってあたしンジュウウウゥチューバーだもん。再生数が命の世界で戦ってるんだから、このくらいはしないと」

 

【淳之介】

「…………」

 

【郁子】

「……こ(・)の(・)子(・)を利用したみたいで、ちょっと気が引けるけどね。でも、これも家族のためだから。収益が入らないと意味ないでしょ」

 

【淳之介】

「……郁子は郁子なりに、俺たちのこと考えてくれてたんだな」

 

【郁子】

「当然でしょ? 淳之介くんの頼れるお嫁さんなんだから。……あなたのため、生まれてくる子のため。今のあたしにとっては、それがすべてなんだよ?」

 

【淳之介】

「…………郁子と一緒になれて、本当に良かった」

 

【郁子】

「こういうときこそ『愛してるぜマイスイートハニー!!』でしょ?」

 

【淳之介】

「……ははっ、そうだな。こりゃ一本取られた」

 

【郁子】

「はいイクちゃんの勝ち~。淳之介くんの負け~」

 

【淳之介】

「負けてないが!!!!????」

 

【郁子】

「せめて声量下げて」

 

 

 

■翌朝

 

 

 

【郁子】

「……ふわぁ~あ。おはよ、ダーリン」

 

【淳之介】

「おはよ。髪はいいのか?」

 

【郁子】

「は?」

 

【淳之介】

「ごめんなさい」

 

【郁子】

「……冗談。昨日の配信の再生数がどうなってるのか、先に確認したいだけ」

 

【淳之介】

「それならすごいことになってるぞ…………ほら」

 

【郁子】

「おぉーー!! めっちゃ伸びてるじゃん!! 過去一番じゃないの、これ!?」

 

【淳之介】

「なんだったらネットニュースにも載ってるぞ」

 

【郁子】

「あはは……。ここまでバズるとは予想外だったねぇ」

 

【淳之介】

「嬉しい誤算だろ?」

 

【郁子】

「そうだけどね。…………いやぁ、でもこれでしばらくは世間の目を独り占め――」

 

【淳之介】

「――いや、それがなんとも言えない状況なんだ」

 

【郁子】

「……なんで? こんなに盛況なんだよ? 他にもっとウケてるニュースがあるの?」

 

【淳之介】

「…………これ、見てみろ」

 

【郁子】

「……えっ!? こ、これ……ミサキちゃんの動画……!?」

 

【淳之介】

「どうやら昨日、俺たちとほぼ同じタイミングで動画を投稿したらしくてな。だいぶホットな話題になってる」

 

【郁子】

「えっと……『青藍島のすべてのスーパーおよび飲食店の在庫を食い荒らし大炎上』……。う、嘘でしょ……」

 

【淳之介】

「とうとう人間をやめたようだ。そりゃウケるに決まってる」

 

【郁子】

「…………」

 

【淳之介】

「…………」

 

【郁子】

「…………やっぱり、ミサキちゃんには敵わないね。奇想天外すぎるもん」

 

【淳之介】

「そんなラブリーキチ〇イなところが美岬の良いところでもあるんだがな」

 

【郁子】

「そうだねぇ……」

 

 

 

 


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