LALE4人が避暑地でバーベキューをするお話です。
時系列はグランドルートから数年後を想定しています。
★場所:LALEオフィス
【柊一郎】
「…………」
【ノア】
「…………」
【妙花】
「…………」
【伊栖未】
「…………」
【柊一郎】
「(※↑暑すぎて項垂れてる)」
【ノア】
「(※↑暑すぎて机に突っ伏している)」
【妙花】
「(※↑暑すぎておでこに氷のうを当てている)」
【伊栖未】
「(※↑おにぎりを食べている)」
【柊一郎】
「…………クッソ、暑い」
【ノア】
「……言わないでください。もっと暑い気分になります」
【妙花】
「なんでこういうときに限ってエアコン壊れるかねぇ……」
【伊栖未】
「へんふーひはへやうい……」
【柊一郎】
「なんて?」
【妙花】
「食いもん頬張りながらしゃべんじゃねぇ。飲みこんでから言え」
【伊栖未】
「………ごくっ。……んっと、『扇風機だけじゃ無理』ってい、言った」
【柊一郎】
「さわさり」
【伊栖未】
「あっ……私のっ……!」
【ノア】
「もうツッコむ気力も……ないです……」
【妙花】
「……さっきエアコンの修理を業者に依頼してみたよ」
【柊一郎】
「どうだった?」
【妙花】
「今は予約がいっぱいで、来週にならねぇと取りかかれないんだとよ」
【ノア】
「……マジで言ってんですか」
【柊一郎】
「干からびて死ぬんじゃないオレたち」
【伊栖未】
「あ、暑すぎて……冷蔵庫ん中も、ほぼ壊滅」
【妙花】
「あっちい上に食材もほとんどねぇときた……こりゃ参ったねぇ」
【ノア】
「もう外に出た方が涼しいんじゃないですかね」
【伊栖未】
「ど、どっか行くか……?」
【柊一郎】
「どっかって」
【伊栖未】
「砂浜……ビーチ……とか」
【妙花】
「涼みに行くだけなら悪くねぇかもな」
【柊一郎】
「いっそのことビーチでBBQしたくない?」
【ノア】
「あそこってBBQ大丈夫なんでしたっけ」
【妙花】
「衛生的に問題あんじゃねぇのかって気もするが……そもそも食材ねぇだろ。どうすんだ」
【柊一郎】
「小沢から分けてもらうとか」
【伊栖未】
「そ、それはさすがに、申し訳……」
【妙花】
「あぁ、いくらなんでも図々しすぎる。却下だ」
【ノア】
「……困りましたね。あっつい上にBBQの話題のせいで空腹に拍車がかかりましたよ」
【伊栖未】
「は、腹減ったぁ」
【妙花】
「手前さっき食っただろうが」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「…………そうだ」
【妙花】
「ああ? どうした」
【柊一郎】
「……シスターってさ、お金持ちじゃん」
【妙花】
「……なんで急にあの女の話になる」
【ノア】
「でもそうですね。それがなにか?」
【柊一郎】
「別荘持ってないかなと思って」
【伊栖未】
「……かぁ、借りるってことか……?」
【柊一郎】
「そういうこと。できれば近くに河原があるとなお良し」
【ノア】
「ただの願望じゃねーか」
【伊栖未】
「で、でもそうだったら涼しいし釣りもできる……完璧」
【妙花】
「似非修道女に借りを作るのは癪だが……背に腹は代えらんねぇか。……柊一郎、一応電話で聞いてみろ」
【柊一郎】
「分かった。ちょっと出てくる。…………もしもし、内呂です。はい、ちょっとお聞きしたいことが────」
【ノア】
「本当に別荘持ってればいいですけど」
【伊栖未】
「き、希望はあると、思う……ぞ」
●5分後
【柊一郎】
「別荘持ってるし自由に使っていいって。BBQ道具も一式揃えてるらしい」
【妙花】
「マジか」
【ノア】
「都合のいい女じゃん」
【柊一郎】
「別荘のすぐ傍に河原あるから釣りもできるし、酒も食材もいろいろ保存してるから好きに食べていいって」
【妙花】
「嘘だろ……さすがに頭上がんねぇぞ……」
【伊栖未】
「お、大盤振る舞い……!」
【ノア】
「今度からあの人のことは『主』と呼びましょう」
【伊栖未】
「そ、そんで場所はどぉ、どこなんだ……?」
【柊一郎】
「本島の避暑地で有名なとこ。住所は聞いてるからオレのほうで案内できる」
【ノア】
「そうですか。……移動にちょっと時間かかりそうですけど、まぁいいんじゃないでですかね」
【妙花】
「あぁ。おかげさまで荷物ほぼゼロで行けるから楽で助かる」
【柊一郎】
「思い返せばみんなでこういうイベント事ってほとんどやったことないし丁度良いね」
【妙花】
「そうだなぁ……。今度あの女に会ったらホントに礼言わねぇとだなぁ」
【柊一郎】
「それじゃあ早速支度しよう。えっと……消臭スプレー、虫除けスプレー、日焼け止めスプレー、除菌ジェル…………」
【妙花】
「手前の優先順位どうなってんだ」
【ノア】
「女子か?」
【伊栖未】
「きゃぴきゃぴしてんねぇ」
★場所:本州 某避暑地 樹里亜の別荘 屋内
【株式会社ラーレ様御一行】
「「「「おぉーー…………!!」」」」
【柊一郎】
「……すごい」
【ノア】
「本当に別荘ですかここ」
【伊栖未】
「ただの豪邸」
【妙花】
「なんであんな馬鹿でけぇシャンデリアがあんだ?」
【伊栖未】
「し、しかも自画像、か、飾ってある……」
【ノア】
「自分大好きじゃん。自惚れがすぎませんかね」
【柊一郎】
「今度から『主』と呼ぼうとか言ってなかったっけ」
【妙花】
「リビングも広ぇし……ワインセラーまであんぞ」
【柊一郎】
「それも好きに飲んでいいって」
【ノア】
「どうせお高いんでしょう?」
【柊一郎】
「数百万程度の安物だから遠慮しなくていいって」
【ノア】
「『数百万程度の安物』ってどこの国の単語ですか?」
【伊栖未】
「……ん? ……なぁ、柊一郎」
【柊一郎】
「どしたの」
【伊栖未】
「こっちのほう、部屋い、いっぱいある」
【妙花】
「見た限り客室用の部屋だろうな」
【柊一郎】
「…………あ、ここって」
【伊栖未】
「し、シスターの部屋だ」
【ノア】
「あってもおかしくはないでしょう。でも鍵がかかって────」
●SE:ドアが開く音
【柊一郎】
「開いたけど」
【3人】
「「「…………」」」
【妙花】
「……いや、さすがにまずいだろ。勝手に入るのは」
【伊栖未】
「気が引ける」
【ノア】
「それにあの人のことです、絶対危険物ありますよ。正直めちゃ怖いです。早く閉めてください」
●SE:ドアが閉まる音
【柊一郎】
「でもなんで鍵してないんだろう」
【妙花】
「知らねぇし興味ねぇ」
【ノア】
「それよりさっさと食材と備品の確認して外に運びましょう。日が暮れちゃいますよ」
【伊栖未】
「い、急ぐか……!」
★場所:樹里亜の別荘 屋外
【柊一郎】
「……本当に一式全部揃ってた」
【伊栖未】
「グリル、着火剤、炭、トング、着火ライター…………だ、大丈夫、そうだな」
【ノア】
「問題なくBBQできそうですね」
【妙花】
「……でもよ、食材がちと足りねぇんじゃねぇか?」
【伊栖未】
「野菜は多いけど……、に、肉が少ない」
【妙花】
「おそらく相当高級なもんだろうが、4人で食うにはどうも心細い」
【妙花】
「で、だ。そこに河原がある。火起こしや調理の前にまずは魚を釣るぞ」
【ノア】
「賛成です。肉に魚もあれば十分でしょう」
【柊一郎】
「え。でも火起こしって時間かかりそうなイメージだけど」
【妙花】
「んなことはねぇ。手順通りやれば20分くれぇでできる。それよりもっと時間のかかる釣りを優先したほうが良い」
【柊一郎】
「なるほど」
【伊栖未】
「でも、釣りはやぁ、やったことないぞ」
【妙花】
「心配するな。基本的なことはアタシが教えてやるからよ。ほら、竿に餌、クーラーボックスがあるから全員持て。そこでやるぞ」
【釣り素人たち】
「「「はーい」」」
◆
【妙花】
「……とは言ったものの、そこまで教える程のこともねぇんだが」
【柊一郎】
「針に餌付けて竿振って待つだけでしょ」
【妙花】
「まぁそうだな」
【ノア】
「あのー、そもそもこの渓流ってなにが釣れるんですか?」
【柊一郎】
「シスターが言うにはイワナが多いって。ヤマメも釣れるらしいけど」
【妙花】
「へぇ、そりゃいいねぇ。釣れたら塩焼きだな」
【伊栖未】
「イワナとや、ヤマメって、どう違うんだ……?」
【妙花】
「どっちも食用魚で、白身魚ってとこが共通してる。味は……そうだな、イワナは若干クセがあんだが、ヤマメはちょっと甘めだな」
【柊一郎】
「へー」
【妙花】
「なんにせよどっちも焼けば美味ぇことには変わりねぇ。安心しろ」
【ノア】
「釣れたらこのクーラーボックスにそのまま入れればいいんですか?」
【妙花】
「いや、その前にこのビニールに入れてからだ」
【ノア】
「なんで」
【妙花】
「氷水が入れてあるだろ? 釣った魚を”氷締め”にするのが基本なんだが、イワナやヤマメはそのまま水に長時間浸けると味が落ちちまう。それを防ぐために、ビニールに入れてから氷水に浸けとくんだよ」
【ノア】
「あー、だから予めクーラーボックスに氷水を作っておいたんですね」
【妙花】
「取り出すのが、ちと面倒かもしれねぇが、これも味をキープするためだ。おぼえとけ」
【伊栖未】
「なぁ妙花、え、餌ってどれだ?」
【妙花】
「あぁ、餌ならこれだよ。イクラ」
【伊栖未】
「…………」
【妙花】
「食うなよ?」
【伊栖未】
「わ、分かってるし……!」
【柊一郎】
「
【ノア】
「でもイクラってそのまま針につけたら中の液出ちゃって
【妙花】
「そのままだとな。だが釣り餌のイクラはな、皮が固く加工されてあんだよ。釣具店や鮮魚店でも売ってるぞ」
【柊一郎】
「じゃあシスターは店で買い込んでおいて保存してたのかな」
【妙花】
「どうだかな。自分でもできねぇことはないからな」
【伊栖未】
「え、自分でも餌のい、イクラ作れるのか?」
【妙花】
「難しくはねぇ。片栗粉や塩にまぶすだけだよ」
【ノア】
「へぇ、思ったより楽ですね」
【妙花】
「イクラを釣り餌にする奴多いんだぞ? 利点が多いからな」
【柊一郎】
「たとえば」
【妙花】
「そうだな……1つは、どんな時期でも基本的に使えるってことだ」
【柊一郎】
「そうなんだ」
【妙花】
「季節によっては使えねぇ餌があるからな。その点、イクラは時期に左右されねぇんだ」
【妙花】
「あと他に利点があるとしたら……わかりやすいのは、ブドウ虫やミミズを使わなくていいってことだな」
【ノア】
「うっ」
【伊栖未】
「そ、そっか。虫を餌にするの、よく見る」
【妙花】
「一人で釣りに行く分にはいいが、他人と行く場合は虫が苦手な奴がいるかもしれねぇだろ? つまり、イクラなら気にする必要がねぇってこった」
【柊一郎】
「万能の餌だ」
【妙花】
「いいからそろそろやんぞ。時間もねぇし」
【ノア】
「あの、本当にこれ針に刺して大丈夫なんですよね」
【妙花】
「一応刺すとこには気をつけろ。色の濃い部分あるだろ? そこを避けるように刺せ」
【伊栖未】
「ひ、一粒だけで、いいのか?」
【妙花】
「それだとちと心許ねぇ。2、3粒ぐらいが妥当だな」
【柊一郎】
「よし、早速やってみよう」
●SE:竿を振る音
【柊一郎】
「…………」
【妙花】
「…………」
【伊栖未】
「…………」
【ノア】
「…………」
【柊一郎】
「……これ、思ったより時間かかりそう」
【妙花】
「釣りってのはそういうもんだ。渓流釣りなら早けりゃ数分~数十分ぐれぇで釣れることもあるが」
【柊一郎】
「気長に待つしかないか」
【伊栖未】
「…………! ……しゅ、柊一郎、釣れてるぞ!!」
【柊一郎】
「あ、本当だ……!! ……ヤバい、引き上げないと!!」
【妙花】
「気張れ柊一郎!! これけっこうでけぇぞ!!」
【ノア】
「網持ってきました!」
【柊一郎】
「…………ぐっ……!!」
【柊一郎】
「…………っ!! よっしゃ!!」
【ノア】
「確保!!」
【伊栖未】
「おぉ……! でか……!」
【妙花】
「幸先良いじゃねぇか。こんなに早く大物が釣れるとはな。案外センスあんじゃねぇのか」
【柊一郎】
「マジ!? プロアングラーになれる!?」
【妙花】
「そこまで言ってねぇ」
【ノア】
「すぐ調子に乗る子どもか?」
【伊栖未】
「い、いいから早くビニールに入れて浸けろ……! 腐るぞ……!」
●3時間後
【妙花】
「思った以上の大漁だったな」
【伊栖未】
「大収穫」
【柊一郎】
「食べきれるかな」
【ノア】
「余っても鐘さんがいるから大丈夫でしょう」
【伊栖未】
「ひ、人を残飯処理担当みたいにい、言うな……!」
【ノア】
「……からの?」
【伊栖未】
「食います!!」
●SE:ハイタッチの音
【柊一郎】
「仲いいね君たち」
【妙花】
「古くねぇか」
【ノア】
「言うほどそうか?」
【柊一郎】
「そうでしょ」
【妙花】
「……まぁそれより、さすがはノアだな。ちっとばかし教えただけでバカスカ釣りやがる」
【伊栖未】
「確かに。一番釣ってた」
【ノア】
「ビギナーズラックなだけでしょう。私が優秀ってこともありますが」
【妙花】
「主張を統一しろ」
【柊一郎】
「謙虚なのか傲慢なのかよくわからない言い方」
【妙花】
「……さてと、日も暮れてきた。食材もそろったところで、そろそろ火を起こすぞ」
【柊一郎】
「そうだね。暗くなる前にやろう」
【ノア】
「ここ来る前に火の起こし方は調べてきたので、私に任せてくれて問題ないですよ」
【妙花】
「そうかい。心強いねぇ」
【伊栖未】
「ま、まずどうすんだっけ……」
【ノア】
「まずはこの着火剤を炭床にいくつか並べます」
【柊一郎】
「ノア。切炭持ってきた」
【ノア】
「あぁ。ありがとうございます」
【妙花】
「へぇ、立派な炭じゃねぇか。あの女、よくもまぁこんなもん持ってたな」
【伊栖未】
「形綺麗」
【ノア】
「この切炭ってやつは他の炭と違って火起こしがしやすい上に匂いも少ないのでけっこう人気らしいですよ」
【妙花】
「それに全部形が整ってるからな。積み上げやすくて助かる」
【ノア】
「えぇ。並べた着火剤の周りに炭を……こう、高く積み上げて…………っと」
【伊栖未】
「なんか崩れそう」
【妙花】
「ちゃんと炭の間に空間は作ってあるか?」
【ノア】
「もちろんです。じゃないと火つけれませんし」
【柊一郎】
「じゃあオレ火つけるね。着火ライターあったから」
●SE:ライターの着火音
【伊栖未】
「おぉ……! 炭特有の臭い……!」
【柊一郎】
「一気にBBQ感出てきた」
【妙花】
「あとはこのまま20分ぐれぇ放置だ。その間に食材切るぞ」
【ノア】
「あとはなにもしなくていいんでしたっけ」
【妙花】
「炭の色が変わるまではな。変に触ると、炭に蓄積された熱が逃げちまうからな」
【伊栖未】
「あっ、野菜と肉わ、わたしが切ってくる」
【ノア】
「すみません、お願いします」
【柊一郎】
「オレも伊栖未を手伝ってくる。グリルはふたりに任せた」
【ファイアレッドグリーン】
「了解です」
「あいよ」
●20分後
【ノア】
「…………頃合いじゃないですか」
【妙花】
「ああ。そろそろ崩すか」
【柊一郎】
「…………お疲れさまふたり共」
【妙花】
「おう。そっちはどうだ?」
【柊一郎】
「野菜は全部切り終わった。あとは肉だけなんだけど、小さくするのにもう少し時間かかりそう」
【妙花】
「あいわかった。じゃあ今度はアタシが伊栖未を見てくる。柊一郎、こっちのほう頼むよ」
【柊一郎】
「了解。……で、ノア。炭はどんな感じ?」
【ノア】
「もう十分白くなったので今崩してるんですけど…………あっついんですよね……これ……」
【柊一郎】
「これなら十分美味しく焼けそう。その炭を満遍なく敷く感じ?」
【ノア】
「いえ、ここはあえて炭をグリルの片方にちょっと寄せるんです。ほら……こうやって」
【柊一郎】
「なんかそれどっかで見たことあるような。…………なんでそうするんだっけ」
【ノア】
「火力を調整するためです。寄せたところは強火になり、少ないところは弱火になります。こうすることで焼き加減の調整ができるんですよ」
【柊一郎】
「そうだ思い出した。ゆる〇ャンで観たんだった」
【ノア】
「…………」
【柊一郎】
「…………観た?」
【ノア】
「あくまでアニメとして鑑賞しただけです。参考にしたのはまた別ですので」
【柊一郎】
「嘘つくときの目になってるけど」
【ノア】
「……8期まだですかね」
【柊一郎】
「そんなに続いてたの?」
◆
【ラーレ様】
「「「「かんぱーい!!!!」」」」
【妙花】
「……~~~っ!! ビールが美味ぇ!!」
【ノア】
「いやぁいいですね!! この野外で飲む酒の特別感!! たまりませんね!!」
【伊栖未】
「ぐびぐび……してんよぉ……!!」
【柊一郎】
「いろんな酒貯蔵してくれててよかった。あの人のことだからワインだけかと思ってた」
【ノア】
「……ほら、焼けましたよ。どんどん食べてってください」
【伊栖未】
「…………うまっ!! こ、この肉すごっ……!!」
【妙花】
「さっきパッケージ見たが……確か飛騨牛って書かれてたぞ。しかもA5」
【柊一郎】
「えっ。オレが見たやつは但馬牛だったけど」
【ノア】
「どっちも最高のブランド牛じゃないですか」
【伊栖未】
「…………これ、しゃとーぶりあん、って肉じゃないか……?」
【柊一郎】
「なんでわかるの」
【伊栖未】
「ね、ネットでよく見た、から……!!」
【妙花】
「…………きめ細けぇ上にやわらかい。脂身も多いしそうかもな。組にいた頃でもなかなか食えなかったよ」
【柊一郎】
「さすが波多江組」
【ノア】
「でもこんなの食べ続けたら脂で胃もたれますよ。食べる順番考えたほういいですね」
【妙花】
「そうだなぁ……。釣った魚を先に食うか。専用のグリルで焼いてっから、ほら、食え」
【柊一郎】
「……美味い。さすが塩焼き」
【伊栖未】
「シンプルに塩だからいくらでも食える」
【ノア】
「BBQの魚と言えば串打ちですよね」
【妙花】
「あんな活きの良かった魚共が炙られていく様ってよ、ただ眺めるだけでも面白れぇよな」
【柊一郎】
「言い方が猟奇的な気もするけど、分かる」
【伊栖未】
「多分酔ってんな」
【ノア】
「全員そうでしょう」
【妙花】
「……あぁそうだ。手前ら、せっかくだからこの魚共をもっと堪能できる方法を教えてやるよ」
【伊栖未】
「…………ふぁい?」
【妙花】
「まず身だけ食って、頭と骨だけ残した状態にしろ」
【妙花】
「……で、この燗酒にした日本酒に入れんだ」
【柊一郎】
「へぇ、美味そう」
【ノア】
「なるほど。骨酒ですか」
【妙花】
「本当は焼いた魚をそのまま入れるんだけどな。でもこっちのほうが乙で、なにより美味ぇ。飲んでみろ」
【柊一郎】
「…………これはいける」
【伊栖未】
「旨味が出てんねぇ」
【ノア】
「おっさんにはたまらないでしょうねこれ」
【妙花】
「アタシがおっさんだと言いてぇのかぁ!? ア゛ア゛ァ゛!!??」
【柊一郎】
「おっさんだ」
【伊栖未】
「おっさんだな」
【妙花】
「悪絡みする中年のおっさんですね」
【妙花】
「…………はっはっはっ! やっぱテンション上がっちまうもんだなぁ! こういうイベント事ってのはよ!」
【伊栖未】
「……そ、そうだな……! い、今までBBQなんて、やったことないから……楽しい、ぞ……!」
【柊一郎】
「来てよかった」
【ノア】
「また来年あたりにBBQやりましょう。今度はお姉ちゃんも誘いましょうね」
【柊一郎】
「そういえばソフりん誘うのすっかり忘れてた」
【ノア】
「は? 素で忘れてたんですか? 川に沈めますよ」
【柊一郎】
「伊栖未助けて」
【伊栖未】
「……なんらぁ~ひゅういひろぉ~……のんれるかぁ~……?」
【柊一郎】
「たえ──」
【柊一郎】
「手前にはソフりんに対する情ってもんがねぇのか!? 筋が通らねぇんじゃねぇのかあア゛ア゛ァ゛!!??」
【柊一郎】
「駄目だこりゃ」
■同日 夜
★場所:樹里亜の別荘 屋内 リビング
【妙花】
「……ふぅー……この時間ともなれば、さすがに酔いも落ち着いてくるか」
【ノア】
「けっこう飲みましたけどね」
【伊栖未】
「せ、せっかくだし……ワイン、ちょっとだけも、もらお?」
【妙花】
「そういや飲んでいいんだったな。おい柊────柊一郎はどこだ?」
【伊栖未】
「さ、さっきシスターの部屋を、探検してくるってい、言ってた。なんか面白いものないかー、って」
【ノア】
「あいつが一番酔ってるんじゃないですか?」
【妙花】
「ちいと気が引けるが……まぁいいだろ。ここは別荘だ。たいしたもんは置いてねぇだろ」
【ノア】
「それもそうですね。じゃあ、そこのワインを開け────ん? なんですかあれ」
【伊栖未】
「ど、どうした?」
【ノア】
「ほら、窓の外です。こっちにすごい勢いで誰か走ってきてません?」
【柊一郎】
「皆、面白いもの見つけたから持ってきた」
【妙花】
「おい今それどころじゃ……って、なんだそれは」
【柊一郎】
「多分シスターのアルバ────」
●SE:玄関のドアが勢いよく開く音
【樹里亜】
「…………ぜえっ……ぜえっ……ぜえっ……」
【柊一郎】
「あっシスター」
【伊栖未】
「……なぁ、どうしたんだ? そんない、息切らして……」
【ノア】
「あの、さっき走ってきてましたよね? なにかあったんですか?」
【樹里亜】
「…………ぜえっ……ぜえっ……へ、へやっ、の……かっ……」
【妙花】
「…………部屋? 手前の部屋のことか? 鍵なら開いてたぞ」
【樹里亜】
「……でっ……ですよね……。……そ、それを思い出して……急いで、駆け付けたんですよぉ……」
【ノア】
「見られたくないものでも?」
【樹里亜】
「えぇ。誰にも見られないようここに隠し────って、柊一郎ちゃん!? なんで
【柊一郎】
「……これ?」
【樹里亜】
「返してもらいますねぇ!!!!」
【柊一郎】
「うわっ危なっ!!」
【妙花】
「…………ん? 写真が一枚飛んできたぞ」
【ノア】
「こ、これって……!」
【伊栖未】
「がぁ、学生の頃の、シスターと、んほぉ……?」
【妙花】
「見た感じそうだな。面影がある。学生時代のふたりの写真か」
【ノア】
「そういや同じ学校って話でしたね」
【樹里亜】
「……っ!!! 返しなさい!!!」
【妙花】
「おいこの似非修道女! 勝手に取り乱すんじゃねぇ! 酒がこぼれんだろうが!!」
【樹里亜】
「……それはですねぇ、他人が気安く見ていいものではないんですよぉ。返してもらえますかぁ?」
【ノア】
「……まあ一応、今回のBBQについては恩がありますので、それを仇で返すような真似をするつもりはありません」
【伊栖未】
「それはぁ、ほ、本当に感謝、してます」
【妙花】
「だが遺恨があるのも確かだ。返せと言われてそう簡単に返すのもな」
【柊一郎】
「ていうかこのくらい別にいいじゃん」
【樹里亜】
「なっ……!!!」
【妙花】
「くっくっ、それにしてもこんな写真があったなんてなぁ。その
【柊一郎】
「そういうことですねぇ。というわけで────」
【鬼畜の極みラーレ】
「「「「アルバムは酒の肴にするので諦めてください」」」」
【樹里亜】
「…………」
【樹里亜】
「もう二度とこの別荘貸しませんからねぇ?」