グランドルート後の小沢が柊菜子宅を訪問した時の様子を描いたお話です。
★場所:柊菜子宅
【柊菜子】
「…………」
【小沢】
「…………」
【柊菜子】
「……あの、先程はすみませんでした。チンピラなんて言ってしまって……」
【小沢】
「あー、いやいいンすよ。実際そんなモンなんで。……それに、急に来た俺が悪いンで」
【柊菜子】
「えっと……それで、どちら様なんでしたっけ。シューちゃ……柊一郎と、その……どういうご関係なんでしょう」
【小沢】
「俺ァ小沢っていいます。まー、簡単に言やあ柊一郎とは友達《ダチ》ッスね。プリズンでいろいろありまして」
【柊菜子】
「お友達、ですか。あの子お友達作るの苦手……というより作らないタイプなんですけど」
【小沢】
「まあやっぱ疑わしいッスよねェ。……そう簡単に信じてもらえるとは思ってなかったけど」
【柊菜子】
「……それに、あの子はもう死んでるんです。どうしてわざわざ私の所に来るんですか」
【小沢】
「……困ったなァ。こういうときなに言やいいって柊一郎言ってたっけなァ――……そうだ! ……お姉さん!」
【柊菜子】
「……はい?」
【小沢】
「柊一郎がこう言ってました。――『セッ〇スは……いいぞ』」
【柊菜子】
「シューちゃんのお友達だぁああああ!!」
【小沢】
「なンで?」
【柊菜子】
「どうやら本当にお友達のようですね……! ……大変失礼しました!!」
【柊菜子】
「……あ、そういえばお茶がまだでした!! 今すぐお出ししますので……!!」
【小沢】
「あァ、いえ、おかまいなく……」
【小沢】
「…………」
【小沢】
「態度変わりすぎじゃねェの……?」
◆
【柊菜子】
「改めまして、柊一郎の姉、湊柊菜子です。お姉さんというのはなんかあれなので、『柊菜子』と呼んでください」
【小沢】
「……えェ、こちらこそよろしくどうもォ。俺も『小沢』でいいッスよ」
【柊菜子】
「それで……シューちゃんが、その、生きてるというのは……本当なんですか」
【小沢】
「はい。今は青藍島ってとこにいるンすよ」
【小沢】
「でも偽名を名乗って生活してます。嵐ン中脱獄して生きてるわけねェってことで、戸籍は消滅したンで」
【柊菜子】
「…………そっか、よかった。シューちゃん、無事だったんだね…………ぐすっ」
【小沢】
「えェ、ちゃんと息災なンで。今度会いにでも――」
【柊菜子】
「……おぉーいおいおい、おぉーいおいおい……!」
【小沢】
「……会いにでも行って……」
【柊菜子】
「おぉーいおいおい、おぉーいおいおい……!」
【小沢】
「……まぁ、こうなンよなァ」
【柊菜子】
「……うぅっ……すみません、失礼しました」
【小沢】
「いえいえ、俺も最初聞いたときはそんなンだったンで」
【柊菜子】
「…………」
【小沢】
「……そ、それにしてもあれッスね! 柊菜子サン、柊一郎が言うだけあって美人さんッスよねェ……!」
【柊菜子】
「えっ……シューちゃんが……?」
【小沢】
「化粧しなくても美人ってよく自慢してたンで」
【柊菜子】
「あはは……シューちゃんらしいというかなんというか……なんかお恥ずかしいですね」
【小沢】
「それとゲームのアドバイスがどうとか、そういうンも柊菜子サンから聞いたとか」
【柊菜子】
「あ、そうですね。……小沢さん、本当にシューちゃんと仲良かったんですねぇ」
【小沢】
「えェまあ。よくつるんでたモンで」
【柊菜子】
「何をきっかけに仲良くなったんですか? あの子、友達なんてぜんぜん作れないのに」
【小沢】
「まー……成りゆきみてェなモンなンすけど、柊一郎ってほら、なにかと世話が焼けるっつーか、そンで俺がちょいちょいかまってたら気づいたら、って感じで」
【柊菜子】
「そうですかぁ……姉としては感謝の念に堪えません。あの子には気心の知れる友人というものが一人としていませんでしたから」
【小沢】
「そのヘンは柊一郎本人からも軽く聞いてはいたンすけど、プリズンでは結構みんなと仲良くやれてた印象ッスけどねェ」
【柊菜子】
「それはきっと環境が良かったんだと思います」
【柊菜子】
「シューちゃんは親からネグレクトを受けていたこともあって、他人からの刺激を受けないようになってしまったんです。あの子にとっての家庭環境は……よくないものでしたから」
【柊菜子】
「だから……プリズンの皆さんは、シューちゃんにとって良い刺激だったんじゃないでしょうか。まさに小沢さんとか」
【小沢】
「……そッスかねェ。俺ァ悪いほうかもしれませンよ? 実は元ヤクザなンで」
【柊菜子】
「えっ!? ヤクザ!!??」
【小沢】
「あ、”元”ッスよ!? ”元”! いまはカタギで、料理人やってるンで!」
【柊菜子】
「……び、びっくりしたぁ……! あ、ごめんねチマちゃん、ルーちゃん……」
【チマちゃんとルーちゃん】
「「ふしゃー!」」
【柊菜子】
「あぁ……また不審者を見る目になってる……」
【小沢】
「へェ、猫ちゃん飼ってたンすねェ。そういや柊一郎のやつもンなこと言ってたよーな……」
【柊菜子】
「そういえば紹介してませんでしたね。この子がチマちゃん、で、こっちがルーちゃんです」
【小沢】
「どーもォ……ほれほれェ」
【寄って来るチマルー】
「「ふにゃーん」」
【小沢】
「お、おォ……ずいぶんと人懐っこいンすね。こんなイカツい男が相手だってェのに」
【柊菜子】
「…………」
【柊菜子】
「私より……懐いてる……」
【小沢】
「ンなわけないじゃないッスか。ほらおめェらァ、主の元にお帰りよォ~」
【異様に嫌がるチマルー】
「きしゃぁー!!」「がるるるる……!!」
【小沢】
「…………」
【小沢】
「…………え、なンで?」
【柊菜子】
「…………」
【小沢】
「いや、そんな恨みがましい目で見られても困るンすけど」
◆
【柊菜子】
「部屋に閉じ込めてきました」
【小沢】
「なんか最後まで抵抗してたッスね」
【柊菜子】
「あんなのうちの子じゃありません。知らない子です。きっと野良ですね。ええ、そうに違いありません」
【小沢】
「……なんか、すンませンした」
【柊菜子】
「まああの子たちのことはともかく……えっと、いまは料理人を?」
【小沢】
「正確には修業中の身なンすけどねェ。プリズンでよくメシ作ってたンで、そンで資格とって料理人になったンすよ。そのついでで極道から足洗ったンで」
【柊菜子】
「へぇ……任侠の世界のことはよくわからないんですけど、思い切ったというかなんというか」
【小沢】
「まあ、うちにァ嫁と子供いるンで、いつかァまともな職に就かなきゃなァって思ってたンでいい機会だったンすよ」
【柊菜子】
「あ、ご結婚されてたんですね。……はぁ、私もそろそろ考えないといけない歳なんだよなぁ……」
【小沢】
「…………」
【小沢】
「……あー……えっと、柊菜子サンはその、お仕事は声優って」
【柊菜子】
「そうなんです。シューちゃんから聞いてるかもしれませんけど、ぜんぜん売れてないので無名なんですよ。アニメはモブばかりで、最近はVRで配信とか」
【小沢】
「へェー……やっぱ芸事ってのはどこも厳しいモンなンすねぇ。柊一郎もなにかと苦労してるようなンで」
【柊菜子】
「ゲーム作ってたんですよね。でもプリズンでよくそんな――」
【小沢】
「あーいや、そうでなく、会社を興したンすよ。柊一郎のやつ」
【柊菜子】
「…………」
【柊菜子】
「…………え?」
【小沢】
「自身の手でゲーム会社を立ち上げたンすよ。プリズンでのゲーム制作をきっかけに」
【柊菜子】
「ほ、本当ですか!? あのシューちゃんが……」
【小沢】
「俺も最初聞いたときはそりゃマジかよって驚いたッスけどねェ。めっちゃイキイキしてますよ。いまのアイツ」
【柊菜子】
「……どうやって生活してるんだろうとは思いましたけど……いったい、何がシューちゃんをそこまで」
【小沢】
「プリズンでいい仲間に出会ったってことがデケェと思いますけど……やっぱ一番はあれッスかねェ」
【柊菜子】
「……あれ?」
【小沢】
「その……柊一郎って元々露出で捕まったらしいじゃないスか。その露出が趣味っつーか、自己表現みてーなもんだったとかって」
【柊菜子】
「……そう、ですね」
【小沢】
「それに代わるモンとして、”ゲーム制作”を見つけたってことッスよ」
【柊菜子】
「――――」
【小沢】
「ゲーム作ってる時の柊一郎ときたら、そりゃもう、凄まじいエネルギーに満ちてて、手前の言いてェことをゲームで世に伝えてェとか……そんな感じのこと言ってたンで」
【小沢】
「――要は、それが
【柊菜子】
「…………」
【小沢】
「俺ァ別にアイツの親とかじゃねェし、というかお姉さんを前に言うアレでもねェンすけど……」
【小沢】
「……俺ン目から見ても、成長したと思いますよ。柊一郎は」
【柊菜子】
「…………」
【柊菜子】
「…………そっかぁ、そうなんですね。なんだか姉の私よりシューちゃんのことわかってるみたいです」
【小沢】
「そんなおこがましいつもりはねェけど……まァ、全囚人のなかだったら一番の付き合いって自負はあるッスね」
【柊菜子】
「ふふっ、なんだかお友達というより父親みたいですね」
【小沢】
「ああいう息子いたらいたで面白そうッスけど俺の手には負えねェかなァ……」
【柊菜子】
「あはは……小沢さん、せっかくなのでもっとプリズンでのシューちゃんのこと、いろいろ教えてもらえますか?」
【小沢】
「よっしゃア、お任せをォ! まずはえっと……そうだなァ……あ、そういやプリズンで野球大会をやったンすけど、そン時の柊一郎が――」
◆
【柊菜子】
「……もう帰られるんですか? もっとゆっくりしていっていいんですよ?」
【小沢】
「そりゃア……女性一人のお宅に長時間居座るってぇのはよくねェでしょうから」
【柊菜子】
「ははっ、そんな小沢さんみたいな優しい人が若い女の子に手を出すわけないじゃないですか」
【小沢】
「…………」
【柊菜子】
「…………小沢さん?」
【小沢】
「い、いやなんでもないッスよ!? なんでも……なはは……」
【柊菜子】
「……?」
【小沢】
「……それよっか柊菜子サン、そのうち柊一郎に会いに行くンすよね?」
【柊菜子】
「はい! たくさんご飯や服を用意して行くつもりです! たしか青藍島ですよね?」
【小沢】
「そのことなンすけど……」
【柊菜子】
「えっちなことに開放的な島だから襲われないよう気をつけるように……って話ですか?」
【小沢】
「開放的ってレベルを優に超えてンすけど……まァ、お体弱いってことなンで、くれぐれもご注意を」
【柊菜子】
「はい、ご心配ありがとうございます。ところで……どうやって帰られるんですか? 新幹線かなにかで?」
【小沢】
「え? いや、徒歩ッスよ」
【柊菜子】
「…………」
【小沢】
「…………」
【柊菜子】
「…………え?」
【小沢】
「だから徒歩って――」
【柊菜子】
「――と、徒歩!!?? ここから島まで何百キロ、いやそれ以上ありますよ!? ……もしかして行きも徒歩で――!?」
【小沢】
「まァ、仕方ねッスよ。ていうか、時間はかかるけどそうでもしねェと柊一郎が生きてることを無事伝えに――」
【柊菜子】
「……シューちゃんったらもう! 駄賃もなしにお使いさせるなんて……!」
【小沢】
「いや、だからその、徒歩じゃねェと――」
【柊菜子】
「いいえ! こればっかりは本当に……本当に、大変申し訳ありません! 帰り、いや行きの分もお支払いしますのでこれでどうか――!!」
【小沢】
「……話聞かねェとこは柊一郎に似てンなァ……」
◆◆◆
【小沢】
「……で、お姉さんと無事再会できたンだろ? どうだったよ?」
【柊一郎】
「オレたちのゲームの宣伝してくれるって。ソフりんとも仲良くなった」
【小沢】
「へェ……ン? ソフりん? ……よくわかんねェけどよ、ゲームのほうはよかったじゃねェか。これで収益出そうだなァ」
【柊一郎】
「うん、おかげさまで」
【小沢】
「……そういやよ、お姉さんが飼ってる猫ちゃんたちにも会ったンだけどよ」
【柊一郎】
「チマちゃんとルーちゃん」
【小沢】
「なんか……すっげェ懐かれた」
【柊一郎】
「…………」
【小沢】
「なンでだと思う?」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「小沢だから?」
【小沢】
「ァンだそりゃ」