気軽にトークしましょう(ヘンプリ編)   作:黒桐饅頭

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EP3. 千咲都×ノア

【柊一郎】

「今回は伊栖未とノアにトークをしてもらう。司会はオレ。ずっとすごい司会です」

 

【伊栖未】

「お、おぉ……?」

 

【ノア】

「…………はぁ」

 

【柊一郎】

「反応薄いね」

 

【ノア】

「いえ。少し思うところがありまして」

 

【柊一郎】

「思うところ」

 

【伊栖未】

「ノアとふ、ふたりでトーク。それは、嬉しい」

 

【ノア】

「はい。相手がかんぴょう女とかだったら即帰ってましたので」

 

【柊一郎】

「みんなすごい嫌うじゃん」

 

【ノア】

「前回と前々回の企画について聞きましたけど、いずれも交流が少ない者同士によるものでしたよね?」

 

【柊一郎】

「まぁそうだね」

 

【ノア】

「私と鐘さんはよく話してますし、仲は良いほうと自負してますけど」

 

【伊栖未】

「そ、そういうこと。なんであ、改めて、わたしたちふたりなんだ?」

 

【柊一郎】

「そこは目的があって、あえて伊栖未とノアにした」

 

【伊栖未】

「も、目的……?」

 

【柊一郎】

「伊栖未ってトークあまり得意じゃないでしょ」

 

【伊栖未】

「そ、そうだな……むしろに、苦手なほう……」

 

【柊一郎】

「身内ならともかく、伊栖未をいきなり他の人とトークさせるのはちょっと大変かなと思って」

 

【ノア】

「そこで普段からよく一緒にいて仲の良い私を相手に添えて、少しでもトークに慣れさせようという腹積もり、ということでしょう?」

 

【柊一郎】

「理解が早い」

 

【ノア】

「それに、私たちも社会人なわけですから、必要最低限のトークスキルは身につけるべきです。いい機会だと思いますよ」

 

【柊一郎】

「そういうわけなので、伊栖未。今回はノアを使ってトークの練習をしよう、ってことで」

 

【伊栖未】

「そ、そういうことか……。柊一郎……ありがと、な」

 

【ノア】

「じゃあ鐘さん。対戦よろしくお願いします」

 

【伊栖未】

「う、うい……!」

 

【ノア】

「あ、柊一郎。一応確認しておきたいことがあります」

 

【柊一郎】

「確認しておきたいこと」

 

【ノア】

「トークの流れと内容についてなんですけど──」

 

【柊一郎】

「これまでと同様、トークテーマは3つ、内容はその都度発表という形」

 

【ノア】

「いえ、それは知っています。そうでなく、もっと大事なことです」

 

【柊一郎】

「大事なこと」

 

【ノア】

「────いやらしいテーマはないんですよね」

 

【柊一郎】

「何言ってんの」

 

【伊栖未】

「どうしたノア」

 

【ノア】

「前々回、妙花とお姉ちゃんがふたりだけでトークしてたんでしょう」

 

【柊一郎】

「うん。あのときオフィスに帰ったらノアが速攻で妙花の首絞めにいった」

 

【伊栖未】

「何事かと思った」

 

【ノア】

「妙花は『普通のトークだっつってんだろうが!! さっさと離せゴラァ!!』と叫んでましたけど、本当にエッチな話はしてないんでしょうね? 性癖の話とか」

 

【柊一郎】

「してない」

 

【伊栖未】

「も、もししてたら……何するつもりだ、だったんだ……?」

 

【ノア】

「拷問にかけるか今生の別れとなるところでした」

 

【柊一郎】

「どっちにしても救われない妙花」

 

【伊栖未】

「悪鬼羅刹」

 

【ノア】

「まあ、でもないというのなら安心です。今度ちゃんと妙花にあやま──」

 

【柊一郎】

「あ、でも確か恋愛や結婚の話はした」

 

【ノア】

「ヤクザなのでエンコ詰めのほうがいいですね」

 

【柊一郎】

「”元”だから今は駄目でしょ」

 

【伊栖未】

「そ、そういうも、問題じゃなくないか……?」

 

■テーマ1:『普段ふたりで何してるの?』

 

【ノア】

「何してるのと言われましても、いろいろですね」

 

【伊栖未】

「いろいろだな」

 

【柊一郎】

「それを話してもらうのがこの企画の主旨なんだけど」

 

【ノア】

「そうですね……たとえば、柊一郎も知ってると思いますが、鐘さん学校に通ってるでしょう?」

 

【柊一郎】

「そうだね」

 

【ノア】

「私も付き添ってるんですよ。鐘さん、たまにお弁当忘れるので」

 

【伊栖未】

「そ、それは……いつも、すまぬ」

 

【柊一郎】

「送り迎えってことか」

 

【ノア】

「基本はそうですけど、たまに教室の隅で見学させてもらってるんですよ。授業」

 

【伊栖未】

「ノ、ノアも参加すればいいのに」

 

【ノア】

「それはなにかと面倒なので結構です。後ろから鐘さんが頑張ってる姿を見てるだけで十分ですので」

 

【伊栖未】

「そ、そうか……。でも、英語の授業とか、答えてなかったか……?」

 

【ノア】

「あー……そんなこともありましたね」

 

【柊一郎】

「英語? お作法や生け花とかじゃなかったっけ?」

 

【伊栖未】

「最近は……その、ぐろーばる化? が進んでるから、英語もできるように……って、先生が」

 

【ノア】

「あの先生なんでもできますよね」

 

【伊栖未】

「ノアは、先生と会ったことあ、あるんだっけ……?」

 

【ノア】

「面識は一応ありますけど、深い交流があるわけではありません。ただの顔見知り程度です」

 

【伊栖未】

「へ、へぇ……」

 

【柊一郎】

「でも英語って」

 

【ノア】

「最初は中学範囲の英語を授業してましたね。最近になって3年分が終わりました」

 

【伊栖未】

「き、基礎はおぼえたから……あの授業とか、面白かったな」

 

【ノア】

「あぁ。『英語ことわざ』ですか」

 

【柊一郎】

「なにそれ」

 

【ノア】

「四字熟語や慣用句というものがあるでしょう? それの英訳から元の言葉を考える授業です」

 

【伊栖未】

「た、単語帳や教科書だけ読んでもつ、つまらないから。こうやって慣れた言葉を使って、クイズ形式にした方がお、面白いし、英語に親しみやすいでしょう……ってことで」

 

【ノア】

「先生としても本当に優秀だなって思いましたよ。一授業として素晴らしい工夫です」

 

【柊一郎】

「ことわざって……いろいろあるけど」

 

【伊栖未】

「じゃ、じゃあ例題。"Luxury life and indulge in poems." これの四字熟語を、答えなさい」

 

【ノア】

「それってどこかの誰かが訳したものらしいですけど、意味が見事に適合してますよね。良い英訳だと思います」

 

【柊一郎】

「……なにがなんだかまったくわからない」

 

【ノア】

「"Luxury life"は『贅沢な生活』、"indulge in poems"は『芸術にうつつを抜かす』。…………聞きおぼえありませんか?」

 

【柊一郎】

「…………そういえば、昔妙花がそんなこと言ってたような……あ、確か、伊栖未が口にした言葉を解説してくれたんだった」

 

【伊栖未】

「……つまり、そこからみ、導き出される、答えは?」

 

【柊一郎】

「答えは……!」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【柊一郎】

「……わかんない」

 

【ノア】

「今の知ってる流れでしたよね」

 

【伊栖未】

「思わせぶりがひどい」

 

【柊一郎】

「学のないオレにはそもそも厳しいです」

 

【ノア】

「小卒には酷でしたかね」

 

【伊栖未】

「い、一応……答えを言うと、『奢侈文弱(しゃしぶんじゃく)』」

 

【柊一郎】

「あっそれだ。前に伊栖未、そんなこと言ってた」

 

【ノア】

「つまり、今の私たちの状態ってことですね」

 

【伊栖未】

「ちなみに、ノアは一発で……答えられてた」

 

【ノア】

「一つ一つの単語の意味を考えれば、自ずと分かりますよ」

 

【柊一郎】

「さすがすぎる」

 

【ノア】

「私もたまにオフィスで鐘さんに教えてますよ? 英語とか数学とか」

 

【伊栖未】

「う、うん……いつも、ありがとな。ノア」

 

【ノア】

「鐘さん筋が良いので非常に教えがいがあります。私が作ったテストもほぼ満点ですし」

 

【柊一郎】

「学校の先生じゃん」

 

【ノア】

「時間割も作ってます」

 

【柊一郎】

「本業を疎かにしてないか心配なんだけど」

 

【ノア】

「問題ありません。支障の出ない範囲でスケジュールを組んでいますので」

 

【伊栖未】

「そ、そんで。早めに終わったら、一緒に動画観たり、アニメ見たり、ネット麻雀したり」

 

【ノア】

「鐘さんも魂(・)の良さを理解(わか)ってくれて何よりです。仲間ができてめちゃ嬉しいと言っても過言じゃないです」

 

【伊栖未】

「アニメは、『チンベル何回鳴らす?』とか……すっごく、面白かった……!」

 

【ノア】

「『チ鳴ら』いいですよね。膣肉のお姉さんとかすごい膣筋ですし」

 

【伊栖未】

「ネット麻雀も、楽しいけど……たまにクソみたいなチャット送ってくる奴、いる」

 

【ノア】

「『裏筋も読めねぇのかよこいつ金玉ねぇのか? 裏筋だけにwww』とか言ってきた奴は即通報してやりましたね」

 

【伊栖未】

「あ、あれは結局、悪質で有名なユーザーだったらしい、な」

 

【ノア】

「どこにでもいますよね、そういうの。端から見たら無様なのが理解できないのでしょう。自分を客観視することもできないとは、哀れなものです」

 

【伊栖未】

「ノアも、一歩間違えたらそうなりかねない」

 

【ノア】

「え」

 

【伊栖未】

「この前YoukakuTubeでラ、ラジオの生配信聞いてたとき……チャットの内容に、揚げ足をとるようなコ、コメントしてただろ」

 

【ノア】

「うっ」

 

【伊栖未】

「確かに、たまに変な奴いるのはわかるけど……むやみに構わず、放っとけ」

 

【ノア】

「……すみませんでした」

 

【柊一郎】

「伊栖未」

 

【伊栖未】

「お、どうした?」

 

【柊一郎】

「引き続きノアのそういうとこ監視し続けてほしい」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【伊栖未】

「……これは、ラーレの沽券にか、関わる問題。柊一郎、お前も注視しろ。わたしだけに……お、押し付けるな」

 

【柊一郎】

「たしかに。誠にごめんなさい」

 

【ノア】

「そこまで言います?」

 

【伊栖未】

「そ、そういう、ちょっとした危うい発言が、組織の崩壊に……繋がることだって、ある」

 

【ノア】

「珍しく年長者らしいこと言いますね」

 

【伊栖未】

「みんなの、お姉さんだから……! ふすぅ……!」

 

【ノア】

「まあうちは妙花が実質トップみたいなところあるので、あまり貫禄ありませんけどね」

 

【伊栖未】

「や、やんのかこらぁ……!」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「すごくいい雰囲気になってきたし、そろそろ次のテーマ行こう」

 

【ノア】

「どこ見てどう思ったんですか?」

 

■テーマ2:『お互いの仕事をどう思う?』

 

【伊栖未】

「し、仕事って……」

 

【ノア】

「急に真面目な話になりましたね」

 

【柊一郎】

「こういう話してなかったなと思って」

 

【ノア】

「そう言われましても……私は自分の作業に集中してるので、鐘さんに限らず、3人がどんな感じで仕事してるのかってそんなにわかりませんよ」

 

【伊栖未】

「でも、確かにノアって、ずっと画面に張り付いてる感じ、する」

 

【ノア】

「ソースコード組むときって頭使いますからね。論理的にものを考えながら、 保守性の高いコードを組まなきゃいけません。周りに気を配る余裕があまりないんですよ」

 

【伊栖未】

「な、なんか大変そう……」

 

【ノア】

「ただシステムが動けばいいというわけではありません。新作のゲームを開発するときに既存のコードを使い回すことがあるので、簡単に修正できるような書き方をしなければいけないんです。要は、かなり神経を使ってコードを組んでいるんです」

 

【伊栖未】

「た、たしかに……保守開発できないと、機能の追加とかバグ対応とか、できないもんな」

 

【ノア】

「鐘さんもたまにデバッグしてくれるでしょう? あれも、デバッグが簡単にできるように私の方で上手く組んでるんですよ」

 

【伊栖未】

「へ、へぇ……そうだったのか」

 

【柊一郎】

「使ってるソフトの環境って、時代によって変わっていくから……保守性は大事」

 

【ノア】

「品質維持のためにも重要度高いですからね」

 

【伊栖未】

「で、でもノアはよ、よくひとりでスクリプト作れるよな……。作業量が、膨大」

 

【ノア】

「個人的にはこれでもマシだと思ってますよ。正直、ひとりの方が精神的には楽です」

 

【伊栖未】

「な、なんで……? 人いたほうが良くないか……?」

 

【ノア】

「たしかに普通は複数人でプロジェクトチームを組んで開発に取り組むものです。しかし情報の共有やらなにかとコミュニケーションを取らないといけないので、めちゃ面倒と言っても過言じゃありません」

 

【伊栖未】

「あー……で、伝達に齟齬が生じると、かえって仕事が増える……ってことか」

 

【ノア】

「はい、そういう問題があるんですよ。複数人での開発って」

 

【伊栖未】

「し、仕方ない気もす、するけどな……」

 

【ノア】

「もちろん仕事してるのは人間ですからそういうこともあります。ですけど、多少大変でもひとりの方がヒューマンエラーが少なくて済むんです」

 

【伊栖未】

「そ、それはノアだから……じゃないのか」

 

【ノア】

「まあ私優秀ですので。たまにコードがスパゲティになることもありますが、ひと通り完成したときにはもうほとんどバグがなくなってるはずです」

 

【伊栖未】

「たしかに、デバッグしててもあ、あまりないけど……。そもそも、エラーメッセージとか、意味がようわからんから……いつも、苦労してる」

 

【ノア】

「プログラミングをやっていないとなかなか慣れないでしょうね。特有の言い回しとかあるので」

 

【伊栖未】

「あれこそ……英語ができないと、理解不能」

 

【ノア】

「仕方ないですよ。経験が要ります。特に私たちが使ってるゲームエンジンもC++という難易度の高いプログラミング言語なので、初心者には無謀な話です」

 

【伊栖未】

「わ、わたしはやっぱ、大人しくライターやってるのがちょうどいいな……。適材適所、ってことで……」

 

【柊一郎】

「伊栖未だってシナリオ考えるとき、かなり膨大なプロット作ってるじゃない」

 

【ノア】

「そうですよ。あれこそ大変じゃないですか。超緻密な設計になってて、私には真似できませんよ」

 

【伊栖未】

「き、基本的にはて、テンプレに沿って、当てはめて書いてくだけだから……ノアほど、難しいことしてるわけじゃない」

 

【ノア】

「テンプレ?」

 

【伊栖未】

「す、ストーリー構成の基本。起承転結、序破急……などなど」

 

【柊一郎】

「エ○ァ?」

 

【伊栖未】

「言うと思った」

 

【ノア】

「変な横やり入れるくらいなら黙っててください。お前司会でしょう」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【伊栖未】

「そ、そういうわけだから。あらかじめ大枠を決めといて、そこに世界観・キャラクターを組み込んでく。大雑把に言えば、そんな感じ」

 

【ノア】

「こっちと少し似てますね。ゲーム作るときもまずは基本設計から始まって徐々に詳細設計に落とし込んで、全体像が明確になってから実装に取りかかります」

 

【伊栖未】

「せ、設計書があると……ものを作るとき、とても楽」

 

【ノア】

「でも鐘さんレベルならそこまでがっつり作らなくてもシナリオ書けそうですけどね」

 

【伊栖未】

「そ、それは無理だ。結局行き当たりばったりの展開になって、あっという間に、破綻」

 

【ノア】

「さすがに書き起こさないと要素要素で矛盾が生じますか」

 

【伊栖未】

「と、当然。短いストーリーならともかくう、うちみたいなゲームとなると長編執筆に、なる。頭の中だけで管理できるわけ、ない」

 

【ノア】

「昔花丸にも言われましたけど、全体の進捗をシートにまとめたほうが分かりやすい、というのと同じ要領ですね。目で見て確認できるものがないと分かりにくい。仕事してるとそういうの大事だなって実感します」

 

【伊栖未】

「う、うん。それに、やってることを見える化しないと、情報の共有が、できない。プロット作らないと、柊一郎に確認取れないし、妙花に描いてほしいキャラのイメージを、伝えられない」

 

【柊一郎】

「たしかにプロットなしでこういうシナリオどうって言われても困る。よく分からなくなると思うし」

 

【ノア】

「まだプリズンでゲーム作ってた頃、鐘さんよく妙花に怒られてましたよね。勝手にシナリオ変えるなって」

 

【伊栖未】

「あ、あんときは、ちょいちょい伏線忘れたり、後から見返したらお、面白くないなって思うこと、いっぱいあったから」

 

【ノア】

「そりゃ事情はあるでしょうけど。妙花も妙花で大変だったと思いますよ? まだ液タブに慣れてなかったんですから、尚更かと」

 

【伊栖未】

「うっ……でも、そうだな……。まだ使い方がおぼつかなかった頃、だよな」

 

【ノア】

「そんな苦悩の真っただ中でもイラストを何枚も仕上げてくれました。自分の仕事に慣れてる私たちと違って不慣れだったはずなのに。頭が上がりませんね」

 

【伊栖未】

「それに、今はイラストレーター兼経理。経営のこと、ようわからんから、とても助かってる」

 

【ノア】

「やはり元組長ですね。会社の経営は得意って言ってましたから。ついつい甘えちゃいますね」

 

【柊一郎】

「冒頭でエンコ詰めとか言ってたのに、なんか手のひら返すようにべた褒めしてる」

 

【ノア】

「なんか言いましたか?」

 

【柊一郎】

「なんでもありません」

 

【伊栖未】

「……みんな、仕事大変だとは、思うけど…………でも、楽しい」

 

【ノア】

「…………」

 

「柊一郎」

「…………」

 

【ノア】

「……そうですね。ひとりだけだったら楽しくありませんが。4人だったらいつでも楽しいですよ」

 

【伊栖未】

「納期ギリギリのときとか、死にそうだけど……みんなと一緒なら、辛くない」

 

【ノア】

「そこは他の企業にはない私たち、いや『ラーレ』の強みかもしれませんね」

 

【伊栖未】

「う、運命共同体だから、な……!」

 

【ノア】

「一蓮托生な私たちです。団結力からして違いますからね」

 

【柊一郎】

「ハーレムでもあるしな」

 

【ノア】

「こいつマジで空気読みませんね」

 

【伊栖未】

「恥の上塗り」

 

【柊一郎】

「間違ったことは言ってないと思うけど」

 

【ノア】

「それ以上言うようなら鐘さんとふたり掛かりでぶち犯してやりましょう。なんたってハーレムなんですからね」

 

【伊栖未】

「か、覚悟しろ……! えへっ、えへっ、えへっ……!」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「なんか怖いので次行きます」

 

■テーマ3:『今後のラーレについてどう思う?』

 

【ノア】

「……会社としての将来の展望ってことですか?」

 

【伊栖未】

「し、仕事の話なら、さっきしただろ……」

 

【柊一郎】

「いや、仕事に限らず。オレたち4人のこれからについて何か思うところあるかなって意味」

 

【ノア】

「あぁ。私たちの未来についてなんでもいいから語ろうってことですか」

 

【柊一郎】

「簡単に言えばそういうこと」

 

【伊栖未】

「は、話は分かったけど……」

 

【柊一郎】

「どうしたの」

 

【ノア】

「これ、妙花も交えてやるべきじゃありません?」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【柊一郎】

「……妙花はこの中で一番聡いから、きっと既に未来を見据えているはず。それに比べてオレたちは目の前のことで精一杯。そんなオレたちだけで一回トークしよう。そういう魂胆」

 

【伊栖未】

「ぜ、絶対今考えたな」

 

【ノア】

「それと私たちを変なカテゴリに入れないでもらえますか」

 

【柊一郎】

「でもそこまで将来のこと考えてるわけじゃないでしょ」

 

【伊栖未】

「そ、それはそう、だけど……」

 

【ノア】

「まぁ。このまま4人でやっていければいいな、ぐらいしか思ってませんでしたね」

 

【伊栖未】

「でもど、どうなんだろうな……。売上良くなって、会社が大きくなったら……人雇うことだってあ、あるかもしれないだろ?」

 

【ノア】

「それは……可能性は大いに考えられますね。仕事が今以上に増えたら4人だけじゃ手が足りなくなるかもしれません」

 

【伊栖未】

「嫌ってわけじゃないけど……4人のヤリ部屋でもあるし。一応」

 

【ノア】

「……たしかに。聖域を汚される感ありますね。くっ……あちらが立てばこちらが立たずってやつか……」

 

【柊一郎】

「言うほどそうか?」

 

【ノア】

「私の盗らないでください」

 

【伊栖未】

「あ、あと……年取っても、ゲーム制作続けるか、とかな」

 

【柊一郎】

「……どういうこと。オレはずっと続けるつもりだけど」

 

【ノア】

「もちろん私もそう思ってますし、鐘さんも妙花もそう思っているでしょう。…………でも。歳を重ねると、襲い掛かってくるんですよ」

 

【柊一郎】

「……なにが?」

 

【気にするよね】

「「老化現象」」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「……なるほど」

 

【ノア】

「制作バーサーカーのお前でも、寄る年波には勝てないでしょう」

 

【伊栖未】

「ぷ、プリズンのときは、一週間近く飲まず食わずでや、やれてたお前だけど……」

 

【ノア】

「40過ぎになって同じことやってみてください。確実に一日でガタが来ますよ」

 

【伊栖未】

「で、翌日動けなくなる。休暇、待った無し」

 

【柊一郎】

「そうかな。夕顔さんとかすっごい元気じゃん」

 

【ノア】

「そういやあの人何歳なんでしょうね」

 

【伊栖未】

「し、知らないし……そんなこと、どうでもいい。わたしたちの話」

 

【ノア】

「でも実際年取ったらどうなるんでしょう。目が見えなくなっていくって聞きますからね」

 

【伊栖未】

「さ、さすがにそうなったらプログラム書くの、キツいんじゃないか……?」

 

【ノア】

「一昔前はプログラマー35歳定年説って言葉があったくらいですからね。割と由々しき問題です」

 

【伊栖未】

「そ、そうなると……いずれ、ゲーム作れなくなるな……」

 

【ノア】

「いえ。コンタクトや眼鏡で対処できると思うので。生涯現役を目標に頑張りますよ」

 

【柊一郎】

「ノアの……眼鏡姿、か」

 

【伊栖未】

「!!」

 

【ノア】

「おっ食いつきましたね。興味あります? あとで買ってきてお披露目しましょうか?」

 

【伊栖未】

「わ、わたしだって……似合うと思うぞ……! 伊達眼鏡でも買ってきて────」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「いや、やっぱいい」

 

【ノア】

「は? なんですか急に」

 

【伊栖未】

「わ、わたしたちじゃ不満か?」

 

【柊一郎】

「そうじゃなく。老後に……取っておこうと思って」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「……なるほど。そのときまでのお楽しみってことですか。理解(わか)ってるじゃないですか、お前」

 

【伊栖未】

「そ、そんときにはもっとい、色っぽくなって、眼鏡の似合うきゃりあうーまんにな、なってるからな……!」

 

【ノア】

「そのおっぱいじゃ厳しそうですけどね」

 

【伊栖未】

「や、やんのかこらぁ……!」

 

【柊一郎】

「なんか既視感」

 

【ノア】

「まぁ、でも……私たちより眼鏡の似合う人がひとりいるじゃないですか」

 

【伊栖未】

「た、多分今かけても似合う」

 

【柊一郎】

「……妙花か」

 

【ノア】

「あれでスーツも着て眼鏡もしてるとこ想像してみてくださいよ。完全に敏腕秘書じゃないですか」

 

【柊一郎】

「……なんかエロそう」

 

【伊栖未】

「さ、さすがに眼鏡で妙花には……勝てん」

 

【ノア】

「様になってるのが容易に想像できますからね」

 

【柊一郎】

「だったらラーレでスーツ導入してみる?」

 

【ノア】

「ほぅ……柊一郎はスーツフェチですか」

 

【柊一郎】

「誰もそんな話してないけど」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「……でも、3人のOL姿は……純粋に見てみたい、かも」

 

【興味津々】

「「!!」」

 

【ノア】

「であればこのトーク終わったあと買いに行きましょう! 全員で!」

 

【伊栖未】

「しゅ、柊一郎もスーツ着るんだぞ……!」

 

【ノア】

「!! テンション上がりますね! 男性のスーツ姿はかっこいいと聞きますし、柊一郎は"良"いし…………かけ合わせたら"最高"ですね!!」

 

【伊栖未】

「そ、それに、みんなでスーツ着てオフィスでヤれば……!」

 

【ノア】

「完全にAV!! 美人社員が上司に迫られ……!! なるほど!! OLってオフィスラブのことだったんですね!! さすがは柊一郎、社員の方のOLと掛けるとは……粋ですね!」

 

【柊一郎】

「君たちは何を言っているの」

 

【ノア】

「違うんですか?」

 

【柊一郎】

「まさかの本気」

 

【伊栖未】

「え、エッチ目的以外で、スーツ着ること……あるか?」

 

【ノア】

「そうですよ! スーツ着てみんなでエッチしましょうよ!」

 

【柊一郎】

「これ何の話だったっけ」

 

【伊栖未】

「ラーレの未来がどうとか」

 

【ノア】

「だったらスーツの導入の理由はなんなんですか?」

 

【柊一郎】

「いや、オレたち社会人だし。取引先の人たちと挨拶することだってあるだろうから、一着くらいは持っておいた方がいいかなと思って」

 

【伊栖未】

「ふ、普段着にするってわけじゃ、ないんだな」

 

【柊一郎】

「それも考えたけど、やっぱそこはいつも通りでいいと思う。私服の方が心地いいでしょ」

 

【ノア】

「ですね。スーツはあくまで外勤用、内勤中はいつも通り私服でいいでしょう」

 

【伊栖未】

「あとエッチ用」

 

【ノア】

「おっと。そうでした」

 

【柊一郎】

「スーツにめっちゃこだわりあるじゃん」

 

【ノア】

「いずれにしろ、スーツの話は妙花にも確認を取ったほうがいいですね。私たちだけで決めるのもよくありませんし」

 

【柊一郎】

「各自一着購入くらいなら多分大丈夫だと思うけど」

 

【伊栖未】

「す、スーツ買ったらさ、みんなで、写真撮らないか……? 会社のせ、宣材写真として使えるかも……!」

 

【ノア】

「なるほど。それいいですね。ホームページにでも載せますか」

 

【伊栖未】

「そ、そいで社員募集かけたら、まあまあ人来るかもな……」

 

【ノア】

「こんな零細に人集まりますかね」

 

【柊一郎】

「…………」

 

【柊一郎】

「実は、ひとりラーレに来てもらうことになってる」

 

【伊栖未】

「……え」

 

【ノア】

「いつの間に。募集かけてたんですか」

 

【柊一郎】

「そうではなく。……正確に言えば、来てくれると信じてる」

 

【伊栖未】

「……ど、どういうこと?」

 

【ノア】

「あの……よくわからないんですけど。来るのか来ないのか、どっちなんですか」

 

【柊一郎】

「なんとも言えない。来てくれる可能性に賭けてるってだけ」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「……柊一郎。ちゃんと説明してください」

 

【柊一郎】

「――――――――」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【柊一郎】

「……いずれ、このことは妙花にも話すつもり。きっと分かってくれるだろうから」

 

【ノア】

「大丈夫でしょう。私も鐘さんも、歓迎ですから」

 

【伊栖未】

「い、異議なし」

 

【柊一郎】

「あ(・)の(・)人(・)なら……絶対気づいてくれるはず。そんな確信がある」

 

【ノア】

「……もっと早く言ってくれれば、このテーマの結論すぐに出てたじゃないですか」

 

【伊栖未】

「な」

 

【柊一郎】

「……最後に、一応聞かせてほしい」

 

【ノア】

「ラーレの未来は明るい、ということですよ」

 

【伊栖未】

「さもありなん」

 

 

 

 

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