光姫お姉さん以外の登場人物は、ほとんどがオリジナルです。
受験時代のエピソードのため、勉強の話題が多いです。
全体的に妄想度合い高めです。
ゴロゴロしながら暇をつぶすぐらいの気持ちで読まれることをおすすめします。
時期は10月。ほんの少し寒くなってきた頃。
★場所:近所の公園
【水姫】
「おねえちゃん、みてみて」
【光姫】
「ん、なになに?」
【水姫】
「…………ほら、てつぼうぐるぐるまわれた!」
【光姫】
「お~! すごいね水姫ちゃん! さすが、私の妹!」
【水姫】
「おねえちゃんもてつぼうやってみてよ」
【光姫】
「よ~し、とっておきの見せてあげる!」
【水姫】
「たのしみ! …………え?」
【光姫】
「こう、いい感じの角度で、重心を……ほら!」
【水姫】
「??? またがってるだけじゃないの? よくわかんないよー」
【光姫】
「そんなことないのよ。こうやって跨ってると……んっ♡ こ、擦れて……あん♡」
【水姫】
「どうしたのおねえちゃん。こえ、へんだよ」
【光姫】
「ほ、ほらっ♡ アニメにっ……♡ 出てくるっ……魔法少女のっおねえちゃんも、こんな感じでっ♡ ほうきに跨って、華麗に操るでしょ? そ、それおぉぉ♡……鉄棒で、再現するっ♡ レベルの高い技なのっ!」
【水姫】
「まほうしょうじょ! たしかにほうきのってる!」
【光姫】
「なっ♡ 名付けて……『おジャま〇こカー〇バル』!!」
【水姫】
「おお! よくわかんないけど、かっこいい! さすがおねえちゃん!」
【光姫】
「ふぅ……水姫ちゃんも大人になったらこの技できるようになるからね。むしろ、大人だからこそ"できる"んだけど♡」
【水姫】
「いいなぁ。みずきもはやくおとなになって、おじゃなんとかやりたい……」
【光姫】
「今の水姫ちゃんじゃまだ早いかな。さ、お日さまも沈んだし、お家帰ろうね!」
【水姫】
「うん!」
★場所:仙波家食卓
【水姫】
「おかーさん! ハンバーグおいしい!」
【仙波ママ】
「あら、ありがとねぇ。そう言ってくれるとお母さんも嬉しいわよ、水姫ちゃん」
【光姫】
「それにしても今日は疲れましたよ。食べ終わったらYoukakuTubeで動画見て、今日はもう寝ようかしら」
【仙波ママ】
「何言ってんのあんたは。今が大事な時期なんだから、勉強しなさいよ」
【光姫】
「え~~。今日はもういいですよ~」
【仙波パパ】
「そうだよ光姫。水姫と遊ぶのもいいが、受験勉強もちゃんとやるんだぞ」
【光姫】
「いいじゃないですか! この前の夏のT大模試A判定だったんだから。ちょっとくらい息抜きさせてください」
【仙波ママ】
「ギリギリのAだったんでしょ。A判定でも落ちる人は落ちるって聞くんだから、油断はダメよ」
【光姫】
「……は~い」
【仙波パパ】
「まあ……光姫ならきっと合格でき――――ゲホッゲホッ! グゥホッ! グゥホッ!」
【仙波ママ】
「ちょっとあなた、大丈夫? 最近、ずっと咳き込んでるじゃない」
【光姫】
「病院は行かないんですか?」
【仙波パパ】
「あぁ、平気だよ。そんな不安そうな顔をするなお前たち。ただの風邪かなんかだよ、きっと」
【光姫】
「もう、心配させないでください。そういえば、お母さんもこの前、頭痛いとか言ってませんでした?」
【仙波ママ】
「薬飲んだら治まったから大丈夫よ。そんなことより、食べ終わったなら部屋戻りなさい」
【光姫】
「は~い。それじゃあ、ごちそうさまでした」
【仙波ママ】
「…………ふぅ、やれやれ。受験中のあの子に、変な心配かけさせるわけにはいかないものね」
【仙波パパ】
「…………そうだな」
【水姫】
「あっ! おかーさんテレビみてテレビ! しーな〇っぺいでてる! いつみてもかっこいい!」
【仙波ママ】
「ほんとね。水姫ちゃん、こういう人好きなの?」
【水姫】
「だいすき!」
【仙波ママ】
「あらあら。そんな小さい歳で、渋い趣味してるわねぇ」
【仙波パパ】
「水姫ちゃん。その人、お父さんに似てると思わない?」
【水姫】
「ちがう」
【仙波パパ】
「て、手厳しいなぁ……」
【仙波ママ】
「そのお腹もう少し引っ込めてからいいなさいな」
【仙波パパ】
「妻と娘が冷たい」
★場所:光姫の部屋
【光姫】
「…………」
【光姫】
「(※↑サバゲーの動画を観て興奮している)」
【光姫】
「~~~っはぁ! やっぱいいなぁ、サバゲー! 最高!」
【光姫】
「特にあのポジションの使い分けが上手かったな~! 今は難しいかもしれないけど、いつか私もできるようになりたい!」
【光姫】
「…………はぁ。大学受かるまではサバゲーとオ〇ニーはお預け、か」
【光姫】
「……ううん、オ〇ニーは無理。欠かせない」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「……遅い時間だけど、やっぱり寝る前にちょっとだけやろうかな」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「…………」
●翌日
★場所:光姫の通う学校
【光姫】
「――……はぁ、先生に昨日お母さんに言われたことと同じこと言われちゃった……」
【ちょっと気の強そうな同級生女子】
「そりゃそうでしょ。うちからT大なんてそうそういないんだから。先生たちは光姫ちゃんに期待してんのよ」
【光姫】
「長谷川さん……そりゃそうかもしれませんけどぉ」
【まともそうな同級生男子】
「そうさ。ここ最近のうちの合格実績によると、T大合格者は数年間ゼロ。仙波さんは期待の星なんだよ」
【長谷川】
「え、ゼロ? 一人もいないって高峰、マジで言ってる?」
【高峰】
「うん。ゼロ。紛うことなきゼロ」
【長谷川】
「えぇ……一応うち進学校じゃなかったっけ。そりゃあ光姫ちゃん、先生に目を付けられるわけだ。良い意味で」
【光姫】
「もー、二人共やめてくださいよ~!」
【長谷川】
「贅沢言ってんじゃないわよアンタ。その学力ちょっとはこっちにも分けてほしいってのに」
【高峰】
「まったくだ。俺なんて、基本暗記でなんとかなる『生物』科目が未だに安定しないんだ。特に動物のところで点数ボロボロ落としてて」
【光姫】
「だったら今度一緒にAV観ません? 高峰くん」
【長谷川・高峰】
「「!!!!」」
【長谷川・高峰】
「「…………」」
【長谷川・高峰】
「「(※↑周りに他にクラスメイトがいないか必死になって確認している)」」
【長谷川】
「ちょ、ちょっと光姫ちゃん。あのねぇ…」
【高峰】
「……仙波さんだからね。今更驚きはしないけど。でも今勉強の話をしてたはずなんだが。なのに一緒にAVってどういう了簡で」
【光姫】
「? アニマルビデオのことですよ?」
【長谷川・高峰】
「…………」
【光姫】
「だって教科書や資料集だけ読んでてもつまらないでしょう? ビデオで見た方が何かと分かりやすいし、記憶として定着しやすいですよ」
【長谷川】
「そんなんで点数取れんのアンタだけよ」
【高峰】
「さすが仙波さんだ。常人離れしてる」
【光姫】
「もちろん、エッチな方のAVもちゃんと見て、夜な夜な耽ってますけどね!」
【長谷川】
「はぁ、もう……。男子の前でよく言えるよホント」
【高峰】
「俺はもう慣れたからいいよ。慣れたくなかったけど」
【光姫】
「え? 『生物』にも頻出の性染色体とか、実質セッ〇スとの関連要素が多いんですから別によくありませんか?」
【高峰】
「……あぁ、うん。そうだね……」
【長谷川】
「わからない……。光姫ちゃんとは一緒にいる時間わりと長いけど、アタシはいまだに光姫ちゃんがわからないよ…」
【光姫】
「保健体育のテストにも出る話ですよ? 勉強とエッチの関連性はおま〇このように深い、ということです!」
【長谷川】
「…………光姫ちゃんのそういうとこなければ、今頃男子にモテモテだったろうに」
【高峰】
「実際、俺の周りでも仙波さんに憧れて歩み寄ろうとしてたやつは多かったよ。でも仙波さん性的な話でも人目を憚らないから、踵を返すやつらが後を絶たないんだ」
【光姫】
「昔はラブレターとかもらってたんですよ? 最初にラブレターをもらったとき、その男子に会いに屋上へ行ったんですけど、まずはどんな人なのかを知ろうと思って、毎日どのクラスの女子でオ〇ニーしてるのか聞いたら、なんか急に帰っちゃったんですよ」
【高峰】
「俺でも帰るよ」
【長谷川】
「なんかその男子にちょっと同情しちゃうな……さぞかし幻滅しただろうね」
【光姫】
「えぇ~! だって高校生ぐらいの男の子って、毎日なにかしらのおかずでオ〇ニーしているのでしょう?高校なんて女子高生がたくさんいるわけですから、一面見渡せばおかずだらけじゃないですか。男子にとっては天国じゃありません? あ、天国への逝くと絶頂くをかけたわけではありませんよ?」
【長谷川・高峰】
「「…………」」
【長谷川】
「ねぇ、高峰。男子って生き物はホントにそんな下劣なの?」
【高峰】
「やめろ。俺に聞くな。男子皆が皆盛ってるわけじゃない、と思う。とにかく、話を広げるな。仙波さんも、偏見すぎるよ」
【光姫】
「あら、そうなんですか? てっきり高峰くんも私で一回くらいはシてるものかと」
【高峰】
「……………………」
【高峰】
「そういや榊のやつ、戻るの遅いな」
【長谷川】
「話題変えたな……このむっつりドスケベが」
●SE:教室のドアが開く音
【気の弱そうな同級生男子】
「……はぁ、疲れた」
【高峰】
「榊、遅かったじゃないか。どうしたんだ」
【榊】
「あぁ、うん。委員会の活動でね。引き継ぎ資料を無くしたとか言われてさあ……。それでゴタゴタしてて、遅くなったんだよ」
【長谷川】
「大変だったわね、アンタ」
【榊】
「……あぁ、それで待っててくれたんだ。三人共」
【光姫】
「はい。高峰くんが私で絶頂ったことがあるという話で盛り上がってたところでした」
【高峰】
「何も言ってないから。嘘を言わないでくれ」
【長谷川】
「それで榊も、今日も来るでしょ?」
【榊】
「あ、うん。仙波さんいないと、勉強わからないところだらけだし」
【光姫】
「じゃあ、行きましょうか」
【高峰】
「ああ、いつものように俺の家で勉強な」
★場所:高峰の家
【長谷川】
「…………あぁ、疲れたぁ~!」
【高峰】
「俺もちょっと根詰めすぎたかな……ほら、ジュースあるから」
【長谷川】
「ん、サンキュ…………ん~! 疲れた頭に染みるねぇ!」
【榊】
「ねぇ、高峰。今日も夜までいていいの?」
【高峰】
「いいよ。どうせ今日も父さんと母さんは深夜まで帰ってこないから」
【光姫】
「高峰くんのご両親、お仕事大変なんですね。深夜って」
【高峰】
「でもその分出勤も遅いらしいから、睡眠は取れてんじゃないかな。知らないけど」
【長谷川】
「……にしても、光姫ちゃんいるとやっぱ勉強はかどるねぇ。わかんないとこ一発で解決するし」
【榊】
「はぁ……本当に仙波さんはすごいよ。おかげで今度の模試の自信はつきそうだけどさ」
【高峰】
「ところで、仙波さんは何の問題集やってんの?」
【光姫】
「『T大の数学25ヶ年』ですよ?」
【榊】
「……吐きそう」
【長谷川】
「ね」
【高峰】
「俺は存在は知ってた。そういや、さっきスラスラ解いてたのそれだったのか」
【光姫】
「難しいとは思いますけど、面白い問題も多いんですよ。T大数学って」
【長谷川】
「こういうセリフって勉強ができる人が言うと説得力あるわよね」
【榊】
「……面白い問題?」
【光姫】
「えぇ、そうですねぇ……たとえば、数年前の過去問なんですけど。なんでしたっけ……たしか、円周率が3.いくつかより大きいことを証明しろ、というのがあったと思います」
【長谷川】
「なーんか聞いたことあるような……。問題文はシンプルだけど、超難問の匂いしかしないよ。アタシにとっちゃ」
【高峰】
「一時期有名だった問題だね。俺も知ってる」
【長谷川】
「高峰もT大だっけ?」
【高峰】
「いや、俺はK大。T大志望じゃなくても知ってる人は多いはずだぞ」
【榊】
「僕も……知ってる。全然分からなかったけど」
【長谷川】
「へぇ……ま、文系のアタシからしたら、ふーんって感じだけどね」
【高峰】
「何言ってんだ。長谷川はH大なんだろ? 配点は少なめかもしれんが、数学で結構差がつくって聞くぞ。というか数学が苦手だから、仙波さんと一緒に勉強したいってことだったんじゃないのかよ」
【長谷川】
「いや、まあそうなんだけど! さすがにT大レベルは話が違うでしょ!」
【榊】
「あれ、初見で解くのは無理じゃないかな…?」
【高峰】
「まあそうかもな。俺も初見のとき一度解いて先生に見てもらったが、相当減点喰らったからな……。さすがの仙波さんといえども」
【光姫】
「私も初見で解いてみましたけど、減点なしでしたよ? 模範解答だと先生が言ってました」
【長谷川】
「うーわ」
【榊】
「神だ」
【高峰】
「仙波さんだから、百歩譲って解けるのはまあ分かる。だけど、減点なしって…」
【光姫】
「円周率って円の直径と円周の長さの比率でしょう? 問題文では3.いくつかより大きいかを聞いてるわけですから、円周率が3より大きくπより小さいそれっぽい図形を使って比較しちゃえばいいんですよ」
【榊】
「あぁ……なる、ほど?」
【光姫】
「正六角形の円周率がちょうど3なので、たとえば、正十二角形とか。半径が1/2の円に内接する正十二角形の一片の長さはsin15°になりますが、半角の公式を使えば計算できますからね」
【光姫】
「つまり、sin15°×12が、3.いくつかより大きいことを証明しちゃえば、ちょちょいのちょいです!」
【高峰】
「…………」
【長谷川】
「おぉー! よく分からなかったけど分かりやすい解説だったよ光姫ちゃん!」
【榊】
「一言で矛盾してるじゃん……でも、不思議と、僕でもまあまあ理解できたよ」
【高峰】
「……問題の本質を見抜いてる、という感があったよ。感服の一言だ」
【榊】
「でも……あれだね。sin15°って多分二重根号出てくるよね。僕、数学少し苦手だから、計算ミスらないか、ちょっと不安になる」
【長谷川】
「そ、そうね。二重根号…………って、何だっけ」
【高峰】
「おい、この時期にそれはかなりまずいだろ。ちゃんと勉強しろって」
【長谷川】
「噓噓! 頑張ればきっと多分、計算できるから!」
【榊】
「というか、高峰ってK大なんでしょ? 大丈夫なの?」
【高峰】
「正直、合格できるかできないか、本当にギリギリの境を彷徨ってる状態だ。自分のことで手一杯だよ。だから、余裕のある仙波さんが教師役として隣にいると安心する」
【光姫】
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないですか~!」
【高峰】
「……でもさ、仙波さんはここでも学校でも人に勉強教えてばかりじゃないか。俺たちが、仙波さんの勉強の邪魔になってないか心配だよ」
【光姫】
「教えることで理解がより深まるので、そういう意味ではこれも勉強ですよ?」
【長谷川】
「慈悲深すぎてアタシもう泣きそう」
【榊】
「……心の底から甘えてしまいそうで、逆に怖いよ僕」
【光姫】
「え?赤ちゃんプレイですか?いいでちゅよ~。ほら、おっぱい。ママに甘えてバブバブしてくださいね~」
【榊】
「えっ!? ちょっ!?」
【長谷川】
「光姫ちゃんってば!! 男子の前で胸出さないでよ! もうっ!」
【高峰】
「……そもそも、どういう脈絡でそうなったんだ」
【光姫】
「え? 榊くんが甘えたいって」
【榊】
「甘えてしまいそう……って言ったんだけどな。僕、一瞬なんか変なこと口にしたのかと思っちゃったよ」
【長谷川】
「はぁ…………でも、真似、けっこう上手かったわね。ずいぶんと様になってたような…」
【光姫】
「妹が生まれた時に少し勉強したんですよ。両親が家を留守にすることが多いんです。私と妹は歳が離れているので、母の代わりに面倒見て、あやして、ついでに授乳しよう、と思って。授乳はすぐに止められましたけど」
【長谷川】
「いいお姉さんだけどヤバいお姉さんね」
【榊】
「仙波さんのお家も……いろいろ大変なんだ」
【高峰】
「話はわかったから、そろそろ勉強再開しないか」
【光姫】
「あ、ごめんなさい! 脱線しすぎちゃいましたね。お詫びにまずは高峰くんの勉強見ますよ?」
【高峰】
「ありがとう。それは助かる」
【長谷川】
「そういや、さっきアタシに数学がどうこう言ってたけど、アンタはできるの?あ、でもK大だからできるわよね」
【高峰】
「仙波さん程ではないが、全科目の中では自信がある方だよ。まあ、それでもK大数学は難易度高くて苦戦してるけど」
【榊】
「R大志望の僕からしたら、T大もK大も変わらないけどね……」
【光姫】
「K大数学はユニークというか、味のある問題が多い印象ですね。個人的に少し気になる問題があったのを覚えています」
【榊】
「え、仙波さん。もしかして……K大の問題も熟知してるの?」
【光姫】
「いえ? 本屋さんにあるK大の過去問を全部サラッと流し読みした程度ですよ?」
【長谷川】
「アタシはツッコまないからね」
【高峰】
「で、その気になる問題って」
【光姫】
「ええっと……タンジェント、何度だったか覚えてませんけど、tanなんとか度は有理数か、という問題でしたね」
【榊】
「さっきの円周率より、問題文シンプルだね」
【高峰】
「あぁ、それか……」
【光姫】
「さすがに知ってました?」
【高峰】
「超有名だよ。ほとんどの受験生が解けなかったって噂の、鬼のような難問だし。もちろん、解こうとしたことはあるよ」
【長谷川】
「で、解けたの?」
【高峰】
「いや、ダメだ。背理法を使えばいいのはわかるんだが……そこから何をどうアプローチすればいいのか、どうしても分からなくて、呆気なく詰んだ」
【榊】
「まあ、ほとんどの受験生が解けなかったって話でしょ…。解けたら怖いよ」
【長谷川】
「と、ところで光姫ちゃん……。その、実はもう、どう解けばいいかわかったり……とか。ま、まさかね。この一瞬で」
【光姫】
「tanの加法定理を使えば解けそうじゃないですか?」
【高峰】
「!!」
【長谷川・榊】
「「…………」」
【光姫】
「私の中の問題文の記憶が確かなら、ですよ? 最初に、tanの倍角公式を使ってtanαが有理数なら、tan2αも有理数であることを示します。それと、tanの加法定理式の左式って有理数になりますよね」
【高峰】
「あ、あぁ…」
【光姫】
「で、左式が有理数、右式が無理数になるよう、定理式にある2つの変数に、偶数のそれっぽい値を当てはめるんです。そうすれば、有理数=無理数、というおかしなことになるので、矛盾……って感じで、証明できませんか?」
【長谷川】
「…………」
【榊】
「…………この、一瞬で、解いた?」
【高峰】
「…………」
【光姫】
「どうでしょう?」
【高峰】
「――――あぁ! おそらく合ってる!」
【光姫】
「ふぅ、ならよかったです! でもあとで確認してみてくださいね? 私の記憶の中の問題文と実際の問題文が一致してるのか、わかりませんので」
【榊】
「……ど、どうかしたの?長谷川さん?」
【長谷川】
「…………」
【榊】
「?」
【高峰】
「いや、気持ちはわかる。あんな天才的な頭脳を見せられちゃ」
【長谷川】
「…………有理数・無理数ってなに」
【高峰】
「」
【榊】
「」
【長谷川】
「…………あ、じょ、冗談よ! さすがに有理数無理数くらいわかるって! もう、場を湧かせようとして体張ったギャグだから! マジになんないでよ!」
【榊】
「……そ、そう」
【高峰】
「……本当に絶句したぞ」
【長谷川】
「ははは……」
【高峰】
「しかし仙波さん、それで夏のT大模試がギリギリのA判定だったのか。いくらT大とはいえ、誰も解けないと噂の難問を一瞬で解けるぐらいなのにギリギリのAって、なんか腑に落ちないな」
【榊】
「Aの中でも上位に行けそうだけど…」
【光姫】
「どうなんでしょう…………あ、もしかしたら模試の前日にM1ガーランドで19回オ〇ニーしちゃって疲れ果てたせいかもしれません!」
【長谷川】
「…………え?」
【榊】
「ガーラ……オナ……は?」
【高峰】
「……M1ガーランドって、ミリタリー?」
【光姫】
「はい! 高峰くん、よくご存じですね! M1ガーランドのモデルガンを持ってるんですけど、長銃なので、ローションでヌルヌルにすればおま〇こにスルっと入って、ピストンするととっても気持ちいいんですよ! 手だけでは味わえない何とも言えない快感があって、"最高"で……!」
【長谷川】
「…………」
【榊】
「…………」
【光姫】
「よく考えたら、今までも模試の前の日は何十回もオ〇ニーしてて、疲労困憊な状態で問題解いてたと思います! あはは、なんか恥ずかしいですね」
【高峰】
「…………さっきの感動の後に、唐突な驚きが来ると、情緒が迷子になるな」
【長谷川】
「ア、アタシもモデルガンでヤってみようカナー」
【榊】
「長谷川さん……疲れてる?」
【高峰】
「まあさっきから数学の話ばかりで、そこに仙波さんの恐怖エピソードだ。頭ショートもするだろ。でも、お前がそんなんじゃ誰が仙波さんを止めるんだ。ジュース飲んでいいから正気に戻ってくれ」
【光姫】
「これからは模試のときはオ〇ニーしないようにすれば、成績向上見込めるかもしれませんね! レッツ、オ〇禁!」
【榊】
「うん……そう、だね……」
【長谷川】
「…………高峰、こっちこっち」
【高峰】
「……ん? なんだ急に。どうした」
【長谷川】
「今更かもしれないけどさ、この際だし、光姫ちゃんに言っといた方がいいかな」
【高峰】
「? 何を」
【長谷川】
「こうして集まって勉強する場所をアンタの家に限定する本当の理由」
【高峰】
「…………」
【長谷川】
「光姫ちゃんは放っといたら、すぐ口からああいう爆弾出るじゃん。一緒にファミレスや図書館で勉強するの想像してみ? 一瞬で注目の的。一瞬で大恥をかくことになる!」
【高峰】
「…………そうだな」
【長谷川】
「アタシと光姫ちゃん付き合い長いけど………もう高3の10月! お願いだからいい加減自覚してほしいのよぉ! 浮きまくってるってことをさぁ!」
【高峰】
「…………まあ、な。でも」
【光姫】
「榊くんもサバゲーやりません? 楽しいですよ~!」
【榊】
「……い、いや、僕は遠慮しとくよ……」
【長谷川】
「…………」
【高峰】
「…………」
【長谷川】
「……なんかさ」
【高峰】
「…………」
【長谷川】
「……光姫ちゃんは、やっぱあのままでいいのかも……しれないわね」
【高峰】
「……ああいう奔放なところも、彼女の魅力の一つなのかもな」
【長谷川】
「…………」
【高峰】
「明るく、いつも楽しそうで、ポジティブで、天真爛漫。おまけに男なら誰もが見惚れるような美人で、たまに見せる危なっかしいところも……そういうのをすべてひっくるめて、仙波光姫さん、ってことなんだよ。きっと」
【長谷川】
「…………もしかして、アンタ」
【高峰】
「そうじゃない。勘違いするな。俺は……彼女の"自由"なところが羨ましいだけだよ」
【長谷川】
「…………そう。そういうことにしとくわ」
【高峰】
「なんだよ」
【長谷川】
「別に」
【光姫】
「おふたりで何をお話してるんですか? そろそろ勉強再開しません?」
【榊】
「……なんの鳩首凝議?」
【長谷川】
「あ、ごめんね光姫ちゃん、榊。よし、アタシも本気で頑張る。これまで以上に」
【高峰】
「なんか今日は喋るの多かったな」
【長谷川】
「たまにはいいでしょ。アンタ最近根詰めてたようだし、いい息抜きってことで」
【高峰】
「……そうだな」
【光姫】
「あ! 問題集全部終わってたので、急いで本屋で新しいの買ってきます! 次は『T大の英語25ヶ年』と『T大の英語リスニング20ヶ年』でもやります!」
【長谷川】
「…………」
【高峰】
「……やっぱちょっと怖くない?」
【長谷川】
「そうね」
【榊】
「……人の家で、どうやって……リスニングやるの?」
★場所:仙波家
【仙波ママ】
「…………」
【光姫】
「…………」
【仙波ママ】
「A判定、順位2位……――2位!!??」
【光姫】
「いかにも。これがこの前受けた模試の結果です!」
【仙波ママ】
「す、すごいわねあんた……たった数週間でこれって……」
【光姫】
「いやぁ、ほんっとに頑張りましたよ~!(※オ〇禁のことを言っている)」
【仙波ママ】
「……きっと、あんたはあんたなりで死に物狂いだったのね」
【光姫】
「もちろんです! 今までにないぐらいの努力をしたわけですから!(※オ〇禁のことを言っている)」
●SE:駆け寄ってくる足音
【水姫】
「…………んー? どりょく?」
【仙波ママ】
「あら、水姫ちゃん来ちゃったのね。そうよ。お姉ちゃん、お勉強頑張ったのよ」
【水姫】
「べんきょーがんばった! おねえちゃんすごい!」
【光姫】
「ありがと~水姫ちゃん! お姉ちゃん嬉しい!」
【仙波ママ】
「このこと、お父さんにも言っておくからね」
【光姫】
「そういえば今日は見かけませんが、どうしたんですか?」
【仙波ママ】
「具合悪くて少し寝込んでいるのよ。今はちょっと休ませてあげて」
【光姫】
「そうですか、仕方ないですね」
【仙波ママ】
「そういえば、お友達はみんなどうだったの? 長谷川ちゃんって子が心配って話だったけど」
【光姫】
「皆さん、第一志望校A判定だったです。最近長谷川さん、私に勉強のこととても聞いてきて、必死にわからないところ無くそうと頑張ってたみたいなので」
【仙波ママ】
「そう、それは喜ばしいことね。あんたもやるじゃない」
【光姫】
「人に教えることも勉強ですから」
【仙波ママ】
「へぇ、言うわね。でも、その通りよ。今後も、勉強で困ってる人いたら助けておやりなさいな」
【光姫】
「もちろんです! それより……! 結果は出したんですから、せめて動画観るぐらいは許してもらいますよ!」
【仙波ママ】
「構わないけど、それで成績が逆戻りしたらあんたの持ってるミリタリーグッズ全部売っ払うからそこはよろしく」
【光姫】
「もしそんなことしたらトンプソンM1921を家中にぶっ放しますからね!」
【仙波ママ】
「犯罪者への進路変更はシャレにならないからやめなさい」
【水姫】
「よくわかんないけど、おねえちゃんすごい!」
★場所:T大 合格発表掲示板前
【光姫】
「…………そろそろ、発表ですね」
【仙波パパ】
「受験番号なんだったっけ、光姫」
【光姫】
「『0721454585850811919』ですよ。この前教えたじゃないですか。」
【仙波パパ】
「長すぎるんだよ」
【仙波ママ】
「先頭のゼロは何なのかしら」
●SE:周囲の喧噪音
【水姫】
「あ! けーじばん!」
【光姫】
「……よしっ! 0721454585850811919、0721454585850811919、0721454585850811919…………」
【仙波ママ】
「探すの大変そうね」
【仙波パパ】
「…………大丈夫、絶対あるよ」
【仙波ママ】
「…………」
【仙波ママ】
「…………そうね。普段は天然な子だけど………やるときはやるものね。たとえどんな結果になろうと、あの子は私たちの誇りよ」
【水姫】
「がんばれー! おねえちゃん!」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「…………」
【光姫】
「…………!!!!」
【光姫】
「あ、ありました!!! ほら、あそこに!!! 合格しました!!!!」
【仙波ママ】
「本当!! 光姫、おめでとう!!」
【仙波パパ】
「やったな。本当におめでとう、光姫」
【水姫】
「おめでとー! おねえちゃん! よかったね!!」
【光姫】
「う゛ん゛っ゛!!! あ゛り゛が゛と゛う゛ね゛ぇ゛……!!!」
【水姫】
「おねえちゃんおかおぐしゃぐしゃ!」
【仙波パパ】
「ほら、せめて鼻をかめ。美人が台無しだぞ」
【仙波ママ】
「今夜は豪勢にいきましょうね。光姫の好物いっぱい揃えて」
【光姫】
「――――うんっ!!」
★場所:とある喫茶店
【長谷川】
「…………高峰ー! こっちこっち!」
【高峰】
「悪い、遅れた。俺が最後か」
【榊】
「久しぶり……高峰」
【光姫】
「お久しぶりです、高峰くん! お元気そうで何よりです」
【高峰】
「そっちこそ。みんなも変わってないな」
【長谷川】
「ま、2月に入ってからは全然会ってなかったからね。自由登校期間で」
【榊】
「さすがに本番1か月前……だったからね。高峰の家に、いつまでも厄介になるわけにもいかないし」
【高峰】
「それに、ラストスパートは一人でかけたいからな……それが普通か」
【榊】
「…………でも、よかった」
【高峰】
「ああ」
【長谷川】
「全員、第一志望合格!! マジでめでたいっ!!」
【光姫】
「本当ですよ~! これで誰か落ちてたらと思ったら辛いですもん!」
【高峰】
「仙波さんだから言えるセリフだな」
【榊】
「でも、一人も落ちてなくて…ほっとした」
【長谷川】
「これも全部、光姫ちゃんのおかげだよ! ホント感謝!!」
【光姫】
「もう、何言ってるんですか長谷川さん! ご自身の努力の賜物でしょう!」
【高峰】
「いや、仙波さんの力添えあってこそだよ。今までわからないところを聞いたら全部懇切丁寧に教えてくれたんだ。自分の力だけじゃないよ」
【榊】
「僕たちだけじゃないよ。クラスのみんなも……きっと、仙波さんに感謝してると思う」
【光姫】
「そう言われると照れちゃいますね……ありがとうございます」
【長谷川】
「…………そういやさ、気になってたんだけど」
【光姫】
「?」
【長谷川】
「親に言ったのかなって。その、ギリギリAだった…………原因。あれ」
【高峰・榊】
「「おい」」
【長谷川】
「え?もういいじゃん終わったことだし。アンタらも別に今更気にすることでもないっしょ」
【榊】
「…………」
【高峰】
「……俺たちがよくても仙波さん本人が」
【光姫】
「あぁ、オ〇禁のこと! いやぁ、親に言うわけないじゃないですか! さすがの私でもそこは空気読みますよ~!」
【高峰】
「あぁもう、周囲の目が……」
【榊】
「まさに今空気読めてないんだよね」
【光姫】
「でも今度私ひとり暮らしで家を離れるので、好き放題ヤりたい放題ですよ!」
【長谷川】
「今までもそうだったでしょアンタは」
【榊】
「大学入ったら、やっぱ……サバゲーやるの?」
【光姫】
「もちのろん! YoukakuTubeにもサバゲーのプレイ動画を投稿したり、もしサークルがあったら入るつもりですからね!」
【高峰】
「T大のサバゲーサークルか。さぞかし頭脳派が多いんだろうね」
【光姫】
「…………そこで私は考えたんです。秘策を」
【長谷川】
「秘策?」
【光姫】
「いっそのこと、全裸でプレイすればいいんですよ! 相手に狙われなければいいんですから、案外イケると思うんですよ! これ!」
【長谷川・高峰・榊】
「「「…………」」」
【長谷川】
「それ、動画に上げる気なの……?」
【高峰】
「…………どう思う?」
【長谷川】
「燃え上がる」
【榊】
「BAN」
【高峰】
「だよな」