淫靡で美麗な光姫お姉さん   作:黒桐饅頭

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※時系列は文乃アフターの『黄金乃秋』より少し前の時間を想定しています。



EP2. 光姫カフェへようこそ

★場所:光姫お姉さんが経営する”隠れ家的カフェ”

 

【光姫】

「――……お待たせしました。こちら、ご注文のブラックコーヒーです」

 

【仁浦】

「あぁ、ありがとう。…………うん、やはり美味いな」

 

【光姫】

「ふふっ、いつもありがとうございます。水姫ちゃんも何か飲む?」

 

【水姫】

「私は大丈夫です。でも……どうせなら水を一杯もらえますか」

 

【光姫】

「うぅ~……ケチなんだから……! せっかくなんだから何か注文してよ~!」

 

【水姫】

「あくまで仁浦様の付き添いなので。また今度の機会に」

 

【仁浦】

「では私の奢りとしよう。ブラックをもう一杯頼めるかな?」

 

【水姫】

「えっ……! そ、そんな――」

 

【仁浦】

「構わないさ。君にはいつも世話になっているからね。このくらいはさせてくれ」

 

【水姫】

「仁浦様……」

 

【光姫】

「相変わらずお熱いふたりですねぇ…………はい、水姫ちゃん」

 

【水姫】

「……ありがとうございます」

 

【仁浦】

「それで、経営のほうは順調かな? 正直、こんな人里離れたところでは安定しないだろう?」

 

【光姫】

「まぁ、隠れ家がコンセプトのカフェですからね。経常利益率10%なんて夢のまた夢ですよ!」

 

【仁浦】

「そこを明るく言えるのは君の強みでもあるんだが……ポジティブすぎるのも考えものだな」

 

【水姫】

「内装はシックで洒落てるとは思いますけど、そもそも席数が少ないですからね。値段も安いですし、利益などほとんど皆無でしょう」

 

【光姫】

「これでもお金には困っていませんから。正直、利益は度外視してるようなもんです」

 

【仁浦】

「とてもカフェを営むマスターの発言とは思えないのだが……」

 

【光姫】

「ですけどメニューの豊富さと味にはこだわってるんですよ? コーヒーについてもイチから勉強しましたからね!」

 

【水姫】

「たしかにメニューを見るとナポリタンにカレー、ピザにケーキ、サンドイッチにパフェまでたくさんありますね」

 

【仁浦】

「なるほど、そこで勝負している……というわけか」

 

【光姫】

「常連のお客さんには人気なんですよ? コーヒーよりこっちの注文のほうが多いときもありますね」

 

【仁浦】

「……ん? この店にも常連がいたのか? とんだ好事家がいたものだな」

 

【光姫】

「もうっ! 仁浦様ったら!」

 

【仁浦】

「ははっ、すまんすまん。少し意地悪な発言だったかな」

 

【水姫】

「とはいえ、こんな辺境の地にあるカフェにわざわざ……たしかに酔狂ではあると思いますけど」

 

【光姫】

「水姫ちゃんまで! たしかに立地はちょっとアレかもしれないけど……」

 

【仁浦】

「まあまあ、そういうのを好む人間もいる――――私のようなね」

 

【光姫】

「しかしここまでお越しになるのも大変じゃありませんか? ご年齢的にも苦労されるんじゃないかと……」

 

【仁浦】

「ははっ、何を言う。たしかにもう年寄りかもしれんが、肉体のほうはまだまだ若い。いい運動と思えばどうってことはないさ」

 

【水姫】

「未だ現役バリバリの社長ですからね。普通の若者より活力があるぐらいです」

 

【光姫】

「県知事の頃と変わらないぐらい精力的にお仕事されて……ふふっ、素敵だと思います」

 

【仁浦】

「生涯現役でいたいものだがね。果たしてこの体がいつまでいうことを聞いてくれるやら……」

 

【光姫】

「そうですねぇ、私もいつまでこうして働いていられるのやら……」

 

【水姫】

「お姉ちゃんの場合は意味が変わってきますね」

 

【光姫】

「そりゃ私ももう若いとは言えない歳だけど……」

 

【水姫】

「お店のことを言ってるんです」

 

【仁浦】

「まぁ、地盤はまだまだ緩いかもしれないが、ここ何年としっかり経営が続いている。君ならなんとかなるだろう。だが、よくひとりで回せるものだ」

 

【光姫】

「……あ、よく考えたらバイトを募集するという手もありましたね……! まったく念頭にありませんでした!」

 

【仁浦】

「本当によくひとりで店を回せているな……」

 

【水姫】

「バイトもいいですけど、そもそも店の広告……というより宣伝は?」

 

【光姫】

「そういえばぜんぜんやってませんでした! さすが水姫ちゃん!」

 

【水姫】

「元SHOの広報担当が聞いて呆れますね……」

 

【光姫】

「これでもそこそこお客さん来てくれるので、それなりに認知度があるものと思ってたのよ。ほら、元観光大使で顔も知られてるから、とかなんかそんな理由で!」

 

【仁浦】

「……君のお姉さんは相変わらず(たくま)しいな」

 

【水姫】

「大変お恥ずかしながら……」

 

【光姫】

「……あ、よろしければコーヒーのお代わりはいかがですか? 二杯目からは半額になりますよ?」

 

【仁浦】

「そうだな……ではもう一杯のついでに、おすすめのケーキをもらえるかな? もちろん、水姫くんの分もな」

 

【光姫】

「……あら! ありがとうございます! では、少々お待ちください!」

 

【水姫】

「た、度々申し訳ありません……ご馳走になります。……しかし、仁浦様もケーキを食することがあるんですね」

 

【仁浦】

「普段はあまり口にしないんだがね。それにせっかくの機会だ、たまにはいいかなと思っただけだよ」

 

【水姫】

「仁浦様……」

 

【水姫】

「…………」

 

【水姫】

「若い女の子の好みや流行りを熟知しておきたいから、といった理由ではありませんよね」

 

【仁浦】

「…………」

 

【仁浦】

「……経営者たるもの、トレンドを常に把握するのは大切なことだ。そのような下心は決して――」

 

【水姫】

「……もしかして、会社に狙い目の子でも……」

 

【仁浦】

「な、なにを言うんだ……!? そんなわけないだろう! 君を差し置いて――」

 

【光姫】

「――……お待たせしました! こちら、ブラックと特製ブルーベリーレアチーズケーキを――……? どうかなされましたか?」

 

【仁浦】

「! ……い、いやなんでもない! さぁ、いただこうじゃないか。ほら、水姫くんも」

 

【水姫】

「…………はい」

 

【光姫】

「…………?」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【仁浦】

「……ご馳走様。とても美味だったよ」

 

【光姫】

「お粗末様です。またいらしてください」

 

【仁浦】

「君の淹れるコーヒーは絶品だからね。店が潰れないことを祈るよ」

 

【水姫】

「……姉のコーヒーが好みでしたら、今度からはお茶を出すようにしますので」

 

【仁浦】

「それとこれとは別さ。君が淹れてくれるコーヒーだってとても美味い。いつもありがとう」

 

【水姫】

「仁浦様……♡」

 

【光姫】

「まぁ、本職の私に味で勝てるとは思えませんけどね!」

 

【仁浦】

「…………」

 

【水姫】

「…………」

 

【光姫】

「…………おや? この空気は一体……?」

 

【仁浦】

「…………とにかく、また利用させてもらうよ。では、達者で――」

 

【光姫】

「あ、仁浦様――――!」

 

【仁浦】

「……ん? なにかな?」

 

【光姫】

「――……()()()()()()()()()()()()()

 

【仁浦】

「…………あぁ」

 

 

 

   ◆

 

 

 

●SE:玄関ドアのベルが鳴る音

 

【光姫】

「いらっしゃいませー! お好きな席に――……あら!」

 

【桐香】

「……こんにちは。ご無沙汰しています」

 

【礼】

「お久しぶりです、仙波さん。お元気そうでなによりです」

 

【郁子】

「やっほーコーキちゃん。いつ来ても閑古鳥が鳴いてるね。廃業寸前?」

 

【礼】

「なんてこと言うんだお前は」

 

【光姫】

「おやまぁ! 元SSのお三方じゃないですか! どうぞどうぞ、座ってください!」

 

【桐香】

「……えっと、私は紅茶で」

 

【郁子】

「あたしはオレンジジュースとカレーで」

 

【礼】

「おい、さっき軽く食べてきただろう。まだ食うのか」

 

【郁子】

「軽いから小腹が空いてるの。……あ、ちょっと辛めにお願いねー!」

 

【礼】

「ったく……私はカフェオレで」

 

【光姫】

「はーい、注文を承りました! 少々お待ちくださーい!」

 

【桐香】

「……しかし、なぜこんなところでカフェを営んでいるのか、冷静になってみるとやはり不思議極まりないわね」

 

【礼】

「元々隠れ家的なカフェにしたいという話で、そこで淳之介が紹介した物件がここ、という話だったと思います」

 

【郁子】

「ダーリンもダーリンだけど、受け入れるコーキちゃんも大概だよね。いくらなんでも隠れすぎだと思うんですケド」

 

【桐香】

「まぁ、人目につかないわけだから集客は厳しいでしょうね」

 

【礼】

「たしか居抜き物件としては優良だったそうだから、開業資金も比較的安めで済んだとかなんだとか」

 

【郁子】

「コーキちゃん、なんやかんやお金持ちなのにねぇ……」

 

【桐香】

「副理事であったのはもちろん、長年観光大使を務めた実績もあって、退職金が相当な額だったらしいわよ」

 

【礼】

「あ、そっか。桐香様は代表なのでそのあたり知ってるんですね」

 

【光姫】

「――……お待たせしましたー! ……おや? 私の話ですか?」

 

【郁子】

「え? 聞いてたの?」

 

【光姫】

「途中からですけど、私が岡持ちだとかなんだとか」

 

【郁子】

「言ってておかしいと思わない?」

 

【桐香】

「お金持ちです」

 

【光姫】

「まぁ、今のところはそれなりに余裕がありますけど、そのうち消えてなくなると思いますよ?」

 

【桐香】

「……それはなぜですか?」

 

【光姫】

「新メニューの開発をしたいのでその分だったり、あとはライフルやハンドガンのカスタマイズ費で飛ぶんじゃないかなーと」

 

【礼】

「せめて後者は抑えたほうがよろしいかと……」

 

【光姫】

「なーに言ってんですか! 若く体力があるうちにセッ〇スしまくったほうがいいように、お金はあるうちに使って楽しむべきですよ!」

 

【光姫】

「つまり、快楽と享楽が同義であるように――人生とセッ〇スも同義、というわけです!」

 

【郁子】

「――――」

 

【礼】

「店内で刀を抜くな」

 

【桐香】

「なるほど、年季を重ねたおば……光姫さんだからこその人生哲学、ということですね? さすがは年長者」

 

【礼】

「人の心以前に問題発言です」

 

【光姫】

「あっ、ひっど~い! これでも年齢のわりには見た目若くて綺麗って言われるんですから~!」

 

【郁子】

「自分で綺麗とか言い出すのすっごいムカつくけどたしかにそうだね。コーキちゃん見た目はいいもんね、見た目は」

 

【礼】

「そもそも年齢を言い出したら私たちだってだいぶいい歳でしょう。世間的にはもはやアラ――」

 

【桐香】

「この話はここまでにしておきましょう」

 

【郁子】

「賛成」

 

【光姫】

「それで、お味のほうはどうですか? 今日のカレーは自信作なんですよ?」

 

【郁子】

「あ、うん。これすっごく美味しいよ? 鶏肉もすっごく柔らかいし、クオリティ高いなって思った」

 

【光姫】

「よかった~! ありがとうございます!」

 

【礼】

「え、そんなに美味いのか?」

 

【郁子】

「うん。ひと口食べてみる?」

 

【桐香】

「あ、ずるい私も私も♪」

 

【郁子】

「あーはいはい。それじゃ……ふたりとも、あーん♡」

 

【桐香】

「きゃっきゃ」

 

【光姫】

「いい歳して何してるんですかあなたたちは」

 

【郁子】

「コーキちゃんに言われたくないし冷めるようなこと言わないで」

 

【礼】

「…………んっ、本当だ。たしかに美味しい」

 

【桐香】

「隠し味にコーヒーを使っているのはわかりますけど、フルーツのような酸味もありますね」

 

【礼】

「言われてみればたしかにそうですね。こう……パイナップルみたいな――」

 

【光姫】

「あ、正解です! よくわかりましたね!」

 

【郁子】

「え、でもどこにもパイナップル入ってないよ、このカレー?」

 

【光姫】

「実はですね、パイナップルまるまるひとつを縦に半分に切って、中身をくり抜いたところにカレーを入れてオーブンで温めたものなんです」

 

【礼】

「パイナップルの中にカレーを……?」

 

【光姫】

「そうするとパイナップルの酵素が鶏肉を柔らかくしてくれるんです。それとフルーツの旨味がカレーと相まって、より美味になる――つまり、一石二鳥なんですよ!」

 

【郁子】

「へぇ……コーキちゃんにそんな料理センスがあったなんて……」

 

【桐香】

「まるでレストラン級の創意工夫ね」

 

【礼】

「これ、仙波さんが考えたんですか?」

 

【光姫】

「いいえ? ミスター〇っ子を参考にしただけですよ?」

 

【SSビッグスリー】

「…………」

 

【郁子】

「(ねぇ、なんのことかわかる?)」

 

【礼】

「(たしか何十年も前の料理マンガだったような……)」

 

【桐香】

「(そうなの? さすがにジェネレーションギャップね)」

 

【礼】

「(それ本人に言うのはやめてくださいね……泣かれでもしたら困るので。ちなみに私は美味〇んぼ派です)」

 

【郁子】

「(聞いてないんですケド)」

 

【光姫】

「? どうかしましたか?」

 

【郁子】

「ううん、なんでもない。一応聞くけど、他の料理は?」

 

【光姫】

「料理マンガを参考に作ったのがほとんどですね」

 

【郁子】

「飲食業なめてる?」

 

【桐香】

「それで経営が成り立ってるのはある意味奇跡ね」

 

【光姫】

「え? でもお客さんは美味しいって言ってくれてるので結果的によくないですか?」

 

【郁子】

「目にタバスコかけていい?」

 

【礼】

「それはパスタ用だからやめておけ」

 

【桐香】

「ふふっ……でも楽しそうですね、光姫さん?」

 

【光姫】

「えぇ、念願叶ったわけですからね。お客さんが来たり来なかったりいろいろありますけど、毎日楽しいですよ?」

 

【桐香】

「……そうですか。それはよかったです」

 

【光姫】

「いま思ったんですけど……SHO辞めるのがもっと遅かったら、私冷泉院さんの部下になっていたんですかね?」

 

【桐香】

「はい、そうなりますね」

 

【郁子】

「それは残念だったね~。トーカちゃんにコキ使われてるところ見たかったなぁー……」

 

【光姫】

「え、もしかしていま私の名前にかけてコキ使うとか言ったんですか? さすがにどうかと思いますよ? 疲れてます?」

 

【郁子】

「〇す。元々気に入らなかったしどうせなら今ここで――」

 

【礼】

「やめろ郁子! 悪気はないんだからよせ――!」

 

【光姫】

「ところで、いまのSHOはどうですか? 退職してからはあまりよくわかってないんですよねぇ」

 

【礼】

「まぁ、なにかと苦労はありますけど……組織としてはかなり健全になったと思います」

 

【光姫】

「と言いますと?」

 

【郁子】

「……トーカちゃんが追い払ったの。あの、役に立たない上層部の人たちを」

 

【桐香】

「経営にとても無駄が多い――それどころか汚職が目立っていたので退職していただきました♡」

 

【礼】

「それとあわせて働き方改革も導入したので、一部の人間に負担が集中するような問題は改善されています」

 

【光姫】

「あら、そうだったの……。ごめんなさいね、本来なら私たちがしっかりしなきゃいけないのに……さすがは元カリスマ生徒会長ですね」

 

【桐香】

「いいえ、ここの三人で力を合わせた結果です」

 

【礼】

「桐香様は現SHO代表、私は”代表付き補佐”、郁子はストライクフォース隊長。体制としては万全です」

 

【郁子】

「コーキちゃんがいた頃とは比べ物にならないぐらいね」

 

【礼】

「おい、またそんなこと言って……」

 

【光姫】

「ふふっ、そうですか。どうやら私は頼もしい後輩に恵まれたようです。はぁ~……やれやれ、いろんな意味で肩の荷が下りましたよ」

 

【桐香】

「あら、まるでおばさんみたいなことを言いますね? せっかく若々しい容姿なのにもったいない」

 

【光姫】

「う~、おばさんじゃないもん! 心とま〇この締まりはピチピチの10代だもん!」

 

【郁子】

「うわっきっつ」

 

【礼】

「……さてと、そろそろお(いとま)させていただきます。まだ仕事が残っていますので」

 

【桐香】

「そうね。そろそろ戻りましょうか」

 

【光姫】

「あら、そうですか。……お仕事頑張ってくださいね」

 

【郁子】

「……はい、お代ちょうど。じゃあねコーキちゃん。精々つぶれないよう頑張ってねー」

 

【光姫】

「え、精巣をつぶすなんて真似はしませんよ?」

 

【郁子】

「あーはいはい、さようならー」

 

【桐香】

「……では、また」

 

【光姫】

「ありがとうございましたー! またのお越しをお待ちしてまーす!」

 

 

 

   ◆

 

 

 

●SE:玄関ドアのベルが鳴る音

 

【光姫】

「いらっしゃいませー!」

 

【淳之介】

「――……こんにちは。お久しぶりです、仙波さん」

 

【麻沙音】

「ど、どうもー……」

 

【文乃】

「……大変ご無沙汰しております」

 

【光姫】

「あら、橘家の皆さんじゃないですか! お久しぶりですね!」

 

【淳之介】

「えぇ。……そちらも景気が良さそうでなによりです」

 

【光姫】

「ほらほら、座ってください! いまお客さん誰もいませんし、楽にしてくれて構いませんから!」

 

【淳之介】

「ではお言葉に甘えて……俺はブラックで」

 

【麻沙音】

「私はエナドリで」

 

【淳之介】

「エナドリ置いてるカフェある?」

 

【光姫】

「ありますよ? M〇nsterとZ〇Neの二種類だけですけど」

 

【淳之介】

「あるんだ……」

 

【麻沙音】

「Mon〇terで」

 

【文乃】

「わたくしも……ぶらっくで」

 

【淳之介】

「え、ブラック飲めたか?」

 

【文乃】

「わたくしも大人の女……飲めて当然にございます」

 

【麻沙音】

「この前文佳の前だからって無理して飲んで吐きかけただろ。無理すんなって」

 

【文乃】

「……砂糖とみるくもお願いします」

 

【淳之介】

「折れるのが早い」

 

【光姫】

「はーい! …………こちら、ブラック2杯とMonste〇です」

 

【淳之介】

「ありがとうございます。…………うん、美味い。これは……”エメラルドマウンテン”――ですね?」

 

【光姫】

「え? 普通のキリマンジャロですよ?」

 

【淳之介】

「…………」

 

【麻沙音】

「こういうイキリと同席するのどう思う文乃」

 

【文乃】

「一児の父になってまでみっともない真似はおやめください」

 

【淳之介】

「そこまで言う?」

 

【光姫】

「そういえば文佳ちゃん……でしたっけ? 今日はどうしたんですか? お連れになってないようですけど」

 

【淳之介】

「家で仲間たちに面倒を見てもらってます。文佳にこういうところはまだ早いと思ったので」

 

【光姫】

「あら、お子様向けのコーヒー牛乳も置いてあるんですよ? 今度またいらっしゃる時は連れてきてくださいね?」

 

【淳之介】

「そうですか? それなら文佳も――」

 

【文乃】

「こーひー牛乳……」

 

【麻沙音】

「兄、一杯だけ頼んでいい?」

 

【淳之介】

「大人組が興味を示すな」

 

【光姫】

「それで橘くん、会社の経営は順調ですか? たしか六人でお仕事されてるんですよね?」

 

【淳之介】

「えぇ、まぁ。順調……とは言い難いですけど、なんとかやれてますよ」

 

【麻沙音】

「うちはSHOと癒着関係みたいなもんですからね……仕事に困ることはないし、問題が起こってもすぐ対処してくれるし、心の安寧を保ちながら働けてますよ」

 

【淳之介】

「内事情をあっさりバラすな」

 

【文乃】

「しかしいただく依頼はいずれも危険なもの……命に関わることもございます」

 

【光姫】

「え? 橘くんたちの事業ってアダルトグッズ開発ですよね?」

 

【淳之介】

「まぁ、そうなんですけど……」

 

【麻沙音】

「表向きはそうですけど実態は()()()()()なので、そういうこともあるんです……」

 

【光姫】

「へぇ……あっ! じゃあ依頼したらうちのお店のお手伝いとかしてくれるんですか!?」

 

【文乃】

「依頼とあればお引き受けいたしますが……」

 

【淳之介】

「素直に求人を出したほうがいいと思います」

 

【光姫】

「えぇ~……? せっかくなら顔見知りと一緒に働きたいなってなりません?」

 

【淳之介】

「そんな甘ちゃんみたいなこと言わないでください。俺らにとって仙波さんは社会人の先輩なんですから」

 

【麻沙音】

「私らが言えることではなくない……?」

 

【文乃】

「えぬえるえぬえすの皆さんと仕事したいという話から始まり起業した身ですので……」

 

【光姫】

「仁浦様も『レッドチブ』を立ち上げてもう何年にもなりますからねぇ。先輩と言うならそちらのほうが頼りになると思いますよ? というか今や家族じゃありませんか」

 

【淳之介】

「それはそうなんですけど……」

 

【文乃】

「…………」

 

【淳之介】

「このように妻の機嫌が悪くなるので……」

 

【光姫】

「もー、そんな顔しちゃって! 私、覚えてるんですからね!」

 

【文乃】

「……? 何を……」

 

【淳之介】

「ほら、おふたりの結婚式ですよ! 仁浦様がスピーチで泣きだした時、つられて大泣きしてたじゃないですか! あれは感動ものでしたねぇ……!」

 

【文乃】

「――――!! わ、忘れてください……!! あれは、その……!!」

 

【麻沙音】

「そうだぞ文乃。もういい歳なんだから素直になれって」

 

【淳之介】

「どの口が言ってんの?」

 

【文乃】

「~~~~っ!! ……つーん!!」

 

【麻沙音】

「――兄! 文乃がつーんした! カメラカメラ!」

 

【淳之介】

「レフ版ここでいいか――!?」

 

【光姫】

「あのー、店内での迷惑行為は控えてほしいんですけど……」

 

【淳之介】

「いいじゃないですか! お客さんいませんし、楽にしてくれて構わないって言ったじゃありませんか――――!」

 

【光姫】

「性交辞令という言葉を知らないんですかね?」

 

【淳之介】

「ボケをボケでつぶさないでください」

 

【光姫】

「まぁ、仲睦まじいようでなによりですけど……ちょっと羨ましいですねぇ」

 

【文乃】

「あの、失礼とは存じますが……」

 

【光姫】

「いないんですよ、それが。マッチングアプリ”Oppai”でいろんな男性と体の相性を確認してるんですけど、どうも私の膣に合う『これだ!』って人がいなくて……」

 

【麻沙音】

「そりゃ青藍島の元観光大使ですし、いろんな男性とドスケベしてきてますからね……」

 

【淳之介】

「アプリ名ひどくない?」

 

【光姫】

「年齢もあってそれなりに焦ってはいるので、もし近年中に相手が見つからなかったら仁浦様に男性を紹介してもらおうかなー……とは考えているんです。豊富な人脈をお持ちなので」

 

【淳之介】

「切実だなぁ……」

 

【光姫】

「一番焦ってる理由は妹に先を越されそうだからなんですけどね……あははっ」

 

【淳之介】

「こんなネガティブな仙波さん初めて見た……!」

 

【麻沙音】

「そもそも兄の代でも結婚してる人ってそうそういないよね」

 

【文乃】

「もしかして……わたしたちぐらいでしょうか……?」

 

【淳之介】

「そうかもな。今の時代は晩婚化がどうこうって話だし、俺たちが早いだけなのかもしれない」

 

【光姫】

「少子化でもありますし、橘くんたち若い世代にはお子さんをボコスカ産んでほしいものですけどね!」

 

【淳之介】

「そんなハッキリ言わんといてください」

 

【文乃】

「……じゅ、淳之介さん――――!」

 

【淳之介】

「……ふ、文乃――――!」

 

【麻沙音】

「まーたイチャつきやがって色ボケ夫婦がどーせアサちゃんは未婚のまま生涯を終えますよーだ」

 

【淳之介】

「何を言う妹よ! お前のためなら仁浦元県知事のコネを利用して政治家になり法改正だって厭わない所存だ――――!」

 

【麻沙音】

「100%無理だと思うけど子を授かっても妹への愛の熱量がまったく変わらない兄……好き! 抱いて!」

 

【橘兄妹】

「「(抱擁)」」

 

【光姫】

「大人になっても仲良しですねぇ橘兄妹さんは」

 

【文乃】

「淳之介さん……わたくしも……!」

 

【淳之介】

「おぉ! 文乃も飛び込んで来い!」

 

【橘家】

「「「(抱擁)」」」

 

【光姫】

「あれ? 私の店なのに私だけアウェー……?」

 

【淳之介】

「あ、そうだ。仙波さんにお伝えすべきことがあってここに来たんでした」

 

【光姫】

「切り替え早いですね」

 

【淳之介】

「実は……もうすぐで、俺と文乃の結婚5周年なんです」

 

【文乃】

「近日中に橘家にてパーティーをおこなうので、そのお誘いにと思いまして……」

 

【光姫】

「……なるほど、そうでしたか。もうそんなになるんですね」

 

【淳之介】

「えぇ。よかったら仙波さんもうちに来ませんか? 仁浦元県知事やいろんな人を招く予定ですので――!」

 

【光姫】

「そうですねぇ……せっかくなのでお邪魔し――」

 

●SE:玄関ドアのベルが鳴る音

 

【光姫】

「あら、お客さん。ちょっとごめんなさいね。……――いらっしゃいませー!」

 

【赤髪ツインテールの女性】

「――……どうも、いつも通り四名です」

 

【黒髪で片目が隠れた女性】

「ひぃ、久しぶりに来たな。このカフェ」

 

【緑髪の豪気な女性】

「ここ最近はパスタにしょうゆかけて食ってたからなぁ、もう腹ペコだよ」

 

【女装している青年】

「ここまで来るの……疲れた」

 

【淳之介】

「…………」

 

【麻沙音】

「…………」

 

【文乃】

「…………」

 

【光姫】

「……いつもご利用いただきありがとうございます。ご注文はいかがいたしますか?」

 

【緑髪の豪気な女性】

「アタシはブラックコーヒーにナポリタンで」

 

【赤髪ツインテールの女性】

「私もそれで」

 

【女装している青年】

「オレも」

 

【黒髪で片目が隠れた女性】

「わたしはそれにカレーも、プラスで」

 

【緑髪の豪気な女性】

「相変わらず手前はよく食うなぁ……」

 

【女装している青年】

「そんなにお金ないから……我慢してほしい」

 

【黒髪で片目が隠れた女性】

「えぇ……じゃあチョコケーキで、お願い!」

 

【女装している青年】

「それならまぁ」

 

【赤・緑】

「じゃあ私(アタシ)も」

 

【女装している青年】

「…………」

 

【光姫】

「……かしこまりました、少々お待ちください――」

 

【淳之介】

「…………あの、仙波さん」

 

【光姫】

「……はい?」

 

【淳之介】

「……さっき、”いつもご利用”って」

 

【光姫】

「あぁ、あちらのお客さんはうちの常連さんなんですよ。いつも四人そろって来てくださって、皆さんのようにとても仲良しなんです」

 

【麻沙音】

「…………へぇ」

 

【文乃】

「…………ふふっ」

 

【淳之介】

「…………そうですか」

 

【光姫】

「あ、橘くん。さっきのお誘いですけど……ごめんなさい、ちょっと遅くなるかもしれません」

 

【淳之介】

「構いませんけど……なにかあるんですか?」

 

【光姫】

「ほら、カフェのお仕事がありますから」

 

【淳之介】

「まぁ、それなら仕方ありませんけど……」

 

【麻沙音】

「あの、いっそのこと休業には……?」

 

【光姫】

「あははっ、そんな簡単にはできませんよ。……だって――」

 

【女装している青年】

「――――すみません! さっきの注文にカレーも追加で!」

 

【光姫】

「――……私の店を楽しみにしているお客さんが、”いっぱい”いますから!」

 

 

 

 

 

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