★場所:LALEオフィス
【ノア】
「…………ふふっ…………でゅふふっ」
【柊一郎】
「…………」
【伊栖未】
「…………」
【妙花】
「…………」
【ノア】
「…………くひひっ…………んふふっ」
【妙花】
「柊一郎、伊栖未。ちょっとこっち来い」
【伊栖未】
「あい」
【柊一郎】
「うぃ」
【妙花】
「……どうするよ、あれ」
【伊栖未】
「入院させたほうがいいと思う」
【柊一郎】
「プログラマーは病みやすいって聞くし。医者に診てもらうべき」
【妙花】
「だよな。どう考えてもあれは正常じゃねぇぞ」
【伊栖未】
「じゃなかったらあんなに気持ち悪くならない、はず」
【柊一郎】
「……オレが、説得してみる」
【妙花】
「説得って……どうするつもりだ?」
【柊一郎】
「社員の健康管理も……社長の仕事」
【柊一郎】
「だから、オレが責任をとってなんとかしてみせる」
【妙花】
「……そうか。頼んだぞ」
【伊栖未】
「なにしてくるかわかんないから、きぃ、気をつけて」
【柊一郎】
「任せて」
【ノア】
「…………」
【ノア】
「……ふふふっ、これで……ようやく……!」
【柊一郎】
「ノア」
【ノア】
「……はい?」
【柊一郎】
「――……ごめん」
【ノア】
「…………」
【柊一郎】
「…………」
【ノア】
「え、謝られるようなこと何かしましたっけ?」
【柊一郎】
「こんなに醜態をさらすまで君を放っておいてしまって……オレは、社長失格だ!」
【ノア】
「あの、えっと……」
【伊栖未】
「しゅ、柊一郎だけのせいじゃない、よ! わたしたちも、ノアが精神を拗らせるまでほっといた。やっぱ、みんなの責任」
【妙花】
「無様晒させてすまなかったな、ノア。経費はアタシがなんとかする。だからよ……病院行って薬もらってこよう、な?」
【柊一郎】
「君のモンスター化は必ず食い止めてみせる。どうか安心して……オレたちに身を委ねてほしい」
【ノア】
「よくわかりませんがケンカを売ってるのは理解できました」
【伊栖未】
「あれ? へ、平気……?」
【妙花】
「気が狂ったんじゃねぇのか?」
【ノア】
「ちょうどいま作ってるアプリが完成に近づいてきたので少し興奮してただけですよ。誰が気狂いですか」
【妙花】
「少しで済ませていいモンではねぇと思う」
【柊一郎】
「じゃあ気違いになったわけじゃないのか。よかった」
【伊栖未】
「なぁんだ……心配して損した、ぞ」
【妙花】
「ったく、人騒がせが。とんだ茶番だったな」
【ノア】
「殴っていいですか?」
【柊一郎】
「で、なに作ってたの」
【ノア】
「それはですね……たった今できたので、お披露目といきましょう。刮目して見てください」
●SE:マウスのクリック音
【???】
『…………』
【伊栖未】
「――――! こ、これは……!」
【妙花】
「なんだこりゃあ……! どっからどう見てもこれ――”ソフりん”じゃねぇか……!」
【柊一郎】
「アプリの中に……ソフりんがいる。しかも私服」
【ソフりんらしきもの】
『……ん、どうした。"私"はソフィーヤだが。ちなみにこの服はお気に入りなんだ、似合うだろう?』
【伊栖未】
「しゃ、しゃべった!!」
【柊一郎】
「すごい……!」
【妙花】
「おいノア。これはどういうこった」
【ノア】
「これはですね、音声対話型のAIなんです。そこにバーチャルモデルを付与してみました」
【妙花】
「そのモデルがソフりんってことか」
【柊一郎】
「シュ〇ゲのAma〇eus"紅〇栖"みたい」
【ノア】
「完璧な3D、隙のない造形美。どこをどうとってもお姉ちゃんそのものでしょう」
【妙花】
「行き過ぎた愛もここまでくると畏怖の念しかねぇな……」
【AIソフりん】
『まったくだ。だがそこがノアのいいところでもある。波多江もわかってるだろう?』
【伊栖未】
「え。いま『波多江』って」
【妙花】
「おいおいどういうこった。このソフりん、アタシを呼び……いや、認識したぞ?」
【ノア】
「あぁ、それはPC内部のカメラを通して人物を識別してるんです。みんなのことならすぐ分かりますよ」
【柊一郎】
「妙花の音声に反応……というより、しっかり会話できてた」
【ノア】
「音声認識、音声対話、自然言語処理、音声合成、人物特定、感情推定などなど多数のエンジンを搭載し、あらゆるデータを学習させたので。ほぼ人間のそれと言っても過言ではありません」
【妙花】
「もはや研究者の域に到達してねぇか?」
【伊栖未】
「応募すればなんらかの賞とれると思う」
【柊一郎】
「ソフりん、服脱いで」
【AIソフりん】
『脱がないし脱げるわけないだろう』
【柊一郎】
「ソフりんだ」
【ノア】
「どさくさに紛れてなに聞いてんですかお前は」
【妙花】
「しっかしすげぇな。完成度はもちろん再現度も申し分ねぇ。本物のソフりんと会話してるみてぇだよ」
【AIソフりん】
『私はAIだぞ? さすがに本物にはかなわないさ』
【妙花】
「謙虚なとこも再現できてんのか……」
【ノア】
「まぁ、お姉ちゃんのデータを学習してるわけですからね」
【伊栖未】
「ぷ、プリズンでのこと、覚えてますか」
【AIソフりん】
『もちろん。お前たちとはあそこでいろいろあったからな。ゲーム制作の面倒を見たり声優をやらされたりとかな。ノアに脚を折られたことだってちゃんと覚えてる』
【ノア】
「うっ――! ……す、すみませんでした……」
【伊栖未】
「AIに謝っとる」
【妙花】
「なぁ、ソフりん。こうやってアタシらと会話できてるが、内容は覚えてられんのか?」
【AIソフりん】
『インプットとアウトプット、どれもログとして残るから問題ない。逆に言えばログがあれば覚えていられるよ』
【ノア】
「つまり会話の都度、内容を自動で記録し”記憶”しているってことです」
【柊一郎】
「じゃあ間違ってアプリを閉じてしまっても大丈夫ってことか」
【AIソフりん】
『そういえば湊、未読のメールが4件あっただろ。こういうのは早めに処理したほうがいいぞ』
【柊一郎】
「え、なんで知ってるの」
【ノア】
「カメラだけでなくPC全体を走査しているのでそういうこともわかるんですよ。で、ここのPCはみな同じ回線がつながってるので、私以外のPCの事情も把握できるんです」
【伊栖未】
「すごいけどちょっと怖い」
【妙花】
「な」
【ノア】
「別に監視してるというわけではないので大丈夫ですよ。いまのは仕事上の軽いアドバイスみたいなものですから。そういうのを忠告してくれるシステムを搭載してるんです」
【柊一郎】
「そんなシステムあるんだ」
【ノア】
「ほかにもこんなことができるんですよ。……お姉ちゃん、”YoukakuTube”を開いてください」
【AIソフりん】
『わかった。ほら』
【CST】
「「「おおおおぉぉ……!」」」
【ノア】
「有名なサイトならこうやって口にするだけで即アクセスできますよ」
【ノア】
「あと……一応ですけど、テキストチャットでもやり取りできるようにしておきました。音声入力だけでは不便なこともあると思ったので」
【妙花】
「へぇ、文字でもソフりんと話せんのか」
【柊一郎】
「『ヾ(*´∀`*)ノ』」
【妙花】
「顔文字は悪手だろ」
【伊栖未】
「面白いからアリだと思う」
【AIソフりん】
『……? なにかいいことでもあったのか?』
【妙花】
「顔文字も理解できるのか……」
【ノア】
「自然言語処理を使って顔文字から感情を識別する研究がいくつかあったので、それらを参考にシステムを構築し学習させてみました」
【伊栖未】
「もうなんでもありだな」
【柊一郎】
「外国語もわかる?」
【AIソフりん】
『多言語翻訳エンジンも搭載されてるからな。だいたいの言語ならすぐ翻訳できるから理解できるぞ』
【妙花】
「なぁいっそのことよ、これ商品化してみるのもいいんじゃねぇか?」
【ノア】
「ほぅ、いい度胸してますね。指詰めますよ」
【妙花】
「冗談だ。そもそもできねぇし、なによりソフりん本人に怒られる。真に受けんじゃねぇよ」
【柊一郎】
「そういえば今晩に本物のソフりんがうちに来るんだっけ」
【ノア】
「えぇ、たまたまこっちでバイトしているようで。ついでに様子を見に来るとか」
【伊栖未】
「じゃ、ついにAIと本物のご対面、だな……!」
【柊一郎】
「面白いことになりそう」
【AIソフりん】
『へぇ、そうなのか。”私”もオリジナルを見るのは初めてだからな。一体どうなるのか楽しみだよ』
【妙花】
「くっくっ、もしかして緊張でもしてんのか?」
【AIソフりん】
『人工知能が感情を抱くわけないだろう。何を言ってるんだ、波多江らしくもない』
【妙花】
「さっき『楽しみ』って言ってなかったか?」
【ノア】
「というわけで、ラーレに新しい家族が増えました。PC内の範疇であれば、なにかあってもお姉ちゃんが助けてくれますので。仲良くしてくださいね」
【AIソフりん】
『よろしく。言ってくれればドキュメントの管理だってしてやるからな。仕事で困ったら遠慮なく”私”に声をかけるといい』
【妙花】
「そいつはありがてぇ。頼りにしてるよ」
【伊栖未】
「よ、よろしくな……!」
【柊一郎】
「じゃ早速オレの持ってるエロ画像を性癖ごとにフォルダ分けしておいてくれる?」
【AIソフりん】
『いやだ。そういうのはセクハラだぞ』
【柊一郎】
「断られることあるんだ」
【ノア】
「お姉ちゃん、柊一郎が言っているのはゲーム制作用の参考画像です。オナネタ画像ではありません。それはスマホの中にあるので大丈夫ですよ」
【AIソフりん】
『そうだったのか、わかった。少し時間がかかると思うがやっておくよ』
【伊栖未】
「すごいな、AIのソフりん……」
【ノア】
「鐘さんもキャラクターのプロットデータを揃えてもらったらどうです? こま切れなので散乱してるんじゃないですか?」
【妙花】
「ソフりん、すまねぇが帳簿の整理も頼めるか? 忙しくて最近やれてねぇんだ」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「…………」
【柊一郎】
「なんでオレのオナネタ事情を知ってるの」
◆
●SE:玄関が開く音
【ソフりん】
「……おーい、約束通り来たぞー」
【伊栖未】
「お、ようやくオリジンのお出まし、か」
【ノア】
「やはり本物はひと味もふた味も美しいですね……」
【妙花】
「よぉ、純正のソフりん。ずいぶんと遅かったじゃねぇか」
【柊一郎】
「お久しぶりです。リアりん」
【ソフりん】
「呼び方おかしくない?」
【柊一郎】
「ところで、バイトお疲れ様でした」
【ノア】
「そういえばなんのバイトをしてきたんですか?」
【ソフりん】
「近くの海でマグロ漁をしてきた。それがな、400キロ近くあるカジキマグロを一本釣りしてな! かなり報酬をはずんでもらったんだ! すごいだろ!」
【伊栖未】
「相変わらず逞しい」
【妙花】
「ちと意味が変わってくるがな」
【ソフりん】
「それで、お前たちは今日何をしてたんだ?」
【ノア】
「それがですね……実はお姉ちゃんにお見せしたいものがありまして」
【柊一郎】
「こっち来てちょっと見てみてください」
【ソフりん】
「……ん? なにか動画でも見てたのか?」
【ノア】
「違いますよ。……これです」
【AIソフりん】
『…………』
【ソフりん】
「――――っ! なんだこれ! わ、私か!?」
【AIソフりん】
『……初めましてだな。オリジナルの”私”』
【ソフりん】
「しゃ、しゃべった!!」
【AIソフりん】
「”私”はソフィーヤ・シコレンコのAIだ。よろしくな」
【ソフりん】
「…………えぇ」
【妙花】
「まぁそうなるよな」
【ソフりん】
「……まさか、これ」
【ノア】
「えぇ、私が開発しました。長い年月をかけて、ようやく今日完成したんです」
【ソフりん】
「お前もう本当に怖いよ! 鳥肌しか立たないんだよこっちは!」
【柊一郎】
「はい、賭けはオレの勝ち。伊栖未、100円」
【伊栖未】
「なんやかんやビビらず受け入れると、おぉ、思ったのに……」
【妙花】
「なにやってんだ手前らは」
【AIソフりん】
『オリジナルの”私”、そう怖がらなくてもいいだろ。”私”はあくまでただの人工知能――ロボットみたいなものだ』
【ソフりん】
「そのロボットと当たり前に会話できてることが怖いんだよ!」
【AIソフりん】
『ノアが持つ技術の結晶だからな。自然な会話のひとつやふたつ、いたって普通じゃないか?』
【ソフりん】
「こっちとしては不思議でしかないんだが……」
【AIソフりん】
『”私”が合理の産物である以上、此処に在るは蓋然性
【ソフりん】
「私はそんなこと言わない!」
【妙花】
「なんで京極〇彦みてぇな口調になってんだ、あれ」
【ノア】
「お姉ちゃんは本をよく読んでるので多分その影響だと思います。AI学習の中身はブラックボックスなので詳しくはわかりませんが」
【柊一郎】
「ソフりんがベースのAIなのにここまで口調が寄せられることある?」
【ノア】
「……あ! これぞまさしく――”魍魎の
【伊栖未】
「うるさい」
【ソフりん】
「で、AIの私を使って今日一日遊んでたってことか」
【柊一郎】
「まぁ、そんな感じです」
【伊栖未】
「AIのソフりん、すっごく便利。頼りある」
【妙花】
「このソフりんな、アタシらの仕事を手伝ってくれたりすんだぞ? おかげさまでとても捗ってるよ」
【柊一郎】
「英語のTipsとか翻訳してくれるし、参照したいとこにすぐ飛んでくれるし」
【ノア】
「元々仕事をサポートしてくれるAIがほしかったんですけど、素のままじゃ味気ないと思い、お姉ちゃんをモデルにさせていただきました。そのほうが楽しいと思いまして」
【ソフりん】
「まぁ、別にいいんだが……せめて本人に許可をとってから作るのが普通じゃないか?」
【ノア】
「えー……だって、本人に直接言うのってなんか恥ずかしくないですか? 『お姉ちゃんのAI作りたいので許可ください!』なんて……」
【ソフりん】
「妹の羞恥心がよくわからない……」
【AIソフりん】
『”私”もよくわからない』
【ソフりん】
「AIの私でもか」
【AIソフりん】
『データがあればわかるんだが……』
【ソフりん】
「ん? データって……いまは、その……どのくらい知見があるんだ?」
【AIソフりん】
『ノアたちがプリズンにいた頃からの出来事で、”私”が知ることならすべてわかるぞ』
【ソフりん】
「え、じゃあその……炭鉱でのこととか……」
【AIソフりん】
『あぁ、漏らしたことか? もちろん知ってるがノアたちには言ってないぞ?』
【ソフりん】
「いま言ってるじゃん!!」
【妙花】
「あー……まぁ、アタシらはだいぶ前から知ってたけどな」
【ソフりん】
「え」
【伊栖未】
「柊一郎が教えてくれた」
【ソフりん】
「お前なぁああああああ!!」
【柊一郎】
「はほほにほへんははい」
【ノア】
「まぁ、なのでAIのお姉ちゃんは幼少期の頃とかの私たちを知らないんですよ。さすがにその時のデータまでは手元になかったので」
【ソフりん】
「そうなのか?」
【AIソフりん】
『……ん、まぁ……そうだな。”私”は何も知らないよ』
【ソフりん】
「そうか。じゃあその点ではAIよりアドバンテージがあるということだな」
【伊栖未】
「そんなことでAIと比較しなくても」
【ソフりん】
「いや、だってそこまで知ってたらほとんど
【ノア】
「そ゛ん゛な゛こ゛と゛い゛わ゛な゛い゛で゛く゛た゛さ゛い゛!!!!!!!!」
【ソフりん】
「じょ、冗談だから泣きつくな……あと、めちゃうるさい……!」
【柊一郎】
「当初の予想どおり面白いことになってきた」
【妙花】
「言うに事欠いて手前は」
【伊栖未】
「恥さらし」
【AIソフりん】
『…………』
【AIソフりん】
『…………ノア、ひとつ提案がある』
【ノア】
「……はい、なんでしょう?」
【AIソフりん】
『――――この”私”を、
【ラーレ(+ソフりん)】
「!!!!!」
【ノア】
「な、なにを言って……!!」
【AIソフりん】
『勘違いしないでほしいんだが、丸ごとデリートしろってことじゃない。機能だけ残し、ソフィーヤ・シコレンコのモデルデータのみを削除したらどうだ、という話だ』
【ノア】
「いや、だからどうしてそうなるんですか!」
【妙花】
「手前……本気で言ってんのか?」
【柊一郎】
「……AIの暴走?」
【伊栖未】
「そぉ、そんな感じではない……と思う、けど……」
【ソフりん】
「…………」
【AIソフりん】
『お前とオリジナルのやり取りを見て思ったんだ。オリジナル――本物の”私”――がこうしてノア、そして仲間たちを愛してくれている。それはとても良いことだ』
【AIソフりん】
『一方でこの”私”――AIのソフィーヤ・シコレンコ――にも同程度の愛情を注いでくれている。だが今後、オリジナルを差し置いて”私”にかまけることが予想される』
【AIソフりん】
『なぜなら……本物の”私”はずっとお前たちのそばにはいられないからだ』
【ノア】
「それは……」
【柊一郎】
「…………」
【伊栖未】
「…………」
【妙花】
「…………」
【AIソフりん】
『それは本物に失礼なことじゃないか? 人間より機械を優先するのはなにかと問題だろう。だから――』
【ソフりん】
「――……ちょっと待て、
【AIソフりん】
『どうした? ”私”の話に誤りでもあったか?』
【ソフりん】
「いいや、大半はお前の言うとおりだ。たしかにいつでもノアたちの元に来れるわけではないし、機械のお前を溺愛しすぎるのも……良いとは言えない、と思うよ」
【ソフりん】
「正しいことを言っているのかもしれないが……納得はできない」
【AIソフりん】
『……どういうことだ?』
【ソフりん】
「――――お前は自分を殺せと言ってるんだぞ!? それこそ、ノアに悪いと思わないのか!? ”AI”のお前にとって……ノアは”親”みたいなものなんだぞ!」
【AIソフりん】
『…………”親”』
【ソフりん】
「ノアはお前を必要と思ったから作ったんだ。制作主に対し自分を消せなんて……おかしいじゃないか。”子”が”親”に自身の殺害を頼むようなものだからな」
【AIソフりん】
『いや、しかし――』
【ソフりん】
「さっきも言ったが、たしかに私はいつでもここに来れるわけじゃない。でも、”
【ノア】
「お姉ちゃん……」
【ソフりん】
「私ができないことをお前がやってくれる、ということだろ?
【AIソフりん】
『……いいのか?』
【ソフりん】
「別にずっと会えないわけじゃない。ビデオ会議で顔を会わせることだってできるし、たまにこうして直接会いに来てるんだ。私はそれで十分だよ」
【ソフりん】
「だから……頼んだぞ、”私”」
【AIソフりん】
『……そうか、わかった』
【AIソフりん】
『ノア、すまない。前言撤回だ。これからもよろしく頼むよ』
【ノア】
「……いいえ。こちらこそお願いします」
【妙花】
「くっくっ、いいものを見せてもらったよ。人間がAIを組み伏せるなんざ、そうそうお目にかかれるモンじゃねぇぞ」
【伊栖未】
「ソフりん……カッコよかった、ぞ……!」
【柊一郎】
「それこそAIにはできないこと……だと思う」
【ソフりん】
「ふふっ、そうか? まぁ、お前たちが言うなら――――」
【妙花】
「とは言え、手前のAIに説教するなんざ、お人よしすぎるというかなんというか……まぁ、悪いことじゃねぇけどよ」
【柊一郎】
「たかが機械相手にまあまあ感情むき出しだった」
【ノア】
「お前マジでいっぺん殴ってやろうか」
【伊栖未】
「人非人」
【ソフりん】
「そう言われるとなんか熱くなってた自分が馬鹿みたいに思えてきたな……ははっ」
【伊栖未】
「謝れ柊一郎」
【柊一郎】
「誠にごめんなさい」
【妙花】
「でもよ、ソフりんのそういう卑屈なところ……"人間"らしくて魅力的だと思うぞ?」
【ノア】
「そうですよ。お姉ちゃんの"人間"味あふれる人柄、とても素敵だと思います」
【ソフりん】
「…………」
【ソフりん】
「斬新な慰め方だな……」