「ヘンタイ・プリズン」のSSです。
グランドルートで釈放された千咲都・ノア・妙花が青藍島で会社を立ち上げる様子を描いたお話です。
『あのとき3人はこんな感じで作業してたのかな』といった妄想を込めた内容です。

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株式会社ラーレ、設立

■青藍島到着 一日目

★場所:青藍島 港

 

【ノア】

「――……着きましたね」

 

【妙花】

「あぁ。ここが噂に名高い"幻の島"、青藍島か。思ったより立派な島じゃねぇか」

 

【伊栖未】

「あ、暑い……。まだ、早朝なのに……」

 

【妙花】

「常夏の島だからなぁ。当然っちゃ当然だろ」

 

【ノア】

「もう汗で蒸れてきましたよ」

 

【妙花】

「それより島に着いてすぐピル渡されたことのほうが驚きなんだが」

 

【ノア】

「セッ〇スし放題の島ですからね。常に妊娠のリスクを負った環境下にいますから常備必須というわけです」

 

【一般的な青藍島の男性】

「孕めオラァ!!」

 

【3人】

「「「…………」」」

 

【妙花】

「……アタシらは今後この光景に慣れなきゃいけねぇのか」

 

【伊栖未】

「さ、先が思いやられる、ぞ……」

 

【ノア】

「住めば都と言いますから。次第に馴染むでしょう」

 

【伊栖未】

「しゅ、柊一郎といつか、あんな感じで、外で、シてみたいな…………えへっ、えへっ……」

 

【ノア】

「…………えぇ。なんだったら4Pも悪くないですね」

 

【妙花】

「そうだねぇ……」

 

【妙花】

「…………」

 

【妙花】

「――……柊一郎のことは心配いらねぇ。夕顔先生がなんとかしてくれるだろうさ」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「……あのかんぴょう女、信じて大丈夫なんですよね」

 

【妙花】

「……むしろあの女以外で信用できるやつがいるか? かんぴょう女だけがアタシら湊一派に属さない唯一の人間だぞ」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「多分かんぴょうは、本気。し、信じていい、と思う」

 

【妙花】

「あぁ。あのババアの鼻を明かしたいだけとか抜かしてたが、だったらわざわざアタシらに声をかける必要はねぇはずだ」

 

【伊栖未】

「だ、だから信じよう。柊一郎のこと……」

 

【妙花】

「作戦の指揮、連絡周りも全部やってくれる。釈放済みのアタシらにできることはねぇ。つまり、後は信じる他ねぇってこった。違うか?」

 

【ノア】

「……ふたりの言うとおりですね。私たちにできるのは迎える準備をするくらいですもんね」

 

【妙花】

「そういうこった。いい加減腹括れよノア」

 

【伊栖未】

「ところでノ、ノア。船で話してた、建物って」

 

【ノア】

「あぁ、それなら既に購入済みです。熱中症になる前に行きましょうか」

 

【妙花】

「だな。そこいらの男共に捕まりたくねぇからな」

 

【ノア】

「いまはゾーン分けがきちんと整備されて、セッ〇スしたくない場合は断れるらしいですよ」

 

【妙花】

「……へぇ。HENTAIたちのユートピアと呼ばれるわけだ」

 

【伊栖未】

「と、とにかくい、行こ……!」

 

 

 

★場所:購入ビル屋内

 

 

 

【ノア】

「ここです」

 

【妙花】

「へぇ……ずいぶんと広いじゃねぇか」

 

【ノア】

「今は柊一郎含め4人だけですが、今後どうなるかわかりませんからね。広いに越したことはないでしょう」

 

【ノア】

「それと、既に回線は引いてありますのでネットは使えますよ」

 

【妙花】

「そうかい。それは助かるよ」

 

【伊栖未】

「キッチン、トイレ、浴室……へ、部屋もいっぱい、だ……」

 

【ノア】

「これからはここが私たちの居住スペース…………みんなが帰ってくる家になりますので」

 

【妙花】

「アタシらはもう家族同然だ。助け合って生きてこうじゃねぇか」

 

【伊栖未】

「わ、わたしが長女…………ふすぅー……!」

 

【ノア】

「私が次女です」

 

【妙花】

「それで言えばアタシが三女になるのか……? どうも解せねぇな……」

 

【ノア】

「……で、柊一郎が長男ですね」

 

【伊栖未】

「ちょ長男で、末っ子……」

 

【妙花】

「くっくっ、愛らしくていいじゃねぇか」

 

【ノア】

「……ここは私たちの家でもあり、職場でもあります」

 

【妙花】

「……あぁ。こっからがアタシらの人生、再スタートってこったな」

 

【伊栖未】

「共同生活……が、頑張ろうな……!」

 

【ノア】

「えぇ。改めて、今後ともよろしくお願いします」

 

【妙花】

「こちらこそ何卒頼むよ」

 

【伊栖未】

「う、うん……! わ、わたしたちは……運命共同体だから、な……!」

 

【妙花】

「で。共同生活もいいが、その前にやらなきゃいけねぇことが山ほどある」

 

【ノア】

「ですね。柊一郎が帰ってくる前にできるだけ片づけないといけませんね」

 

【伊栖未】

「ま、まずは、何すりゃいいんだ……?」

 

【妙花】

「最優先は起業の手続きだな。ここにいるのは新進気鋭のゲームクリエイター集団だ。そんなアタシら専用の会社を設立する」

 

【ノア】

「ですね。できるだけ早く登記申請を済ませて収益が入る環境を整えなければいけません。生活に差支えが出ますからね」

 

【伊栖未】

「そ、そうなると……ゲーム作るための、PCとか、機材も……だな」

 

【ノア】

「あとは生活に必要な家具とかですね。冷蔵庫、キッチン道具、食材、掃除道具などなど」

 

【妙花】

「枚挙に暇(いとま)がねぇよ。だからよ、こっからは3人で作業分担するぞ」

 

【ノア】

「そうしましょう。じゃないといつまで経っても終わりません」

 

【伊栖未】

「ぐ、具体的には……?」

 

【妙花】

「会社の設立手続きはアタシに任せろ。これは手順が多いから慣れてるやつがやったほうがいい」

 

【ノア】

「妙花はヤクザですからそういうの慣れてるんですよね」

 

【妙花】

「あぁ。"元"ヤクザだからな」

 

【伊栖未】

「じゃ、じゃあ会社起こすのは……任せた、ぞ……」

 

【ノア】

「私と鐘さんは備品の搬入準備をしましょう。今日すべて購入して、明日届くよう手配します」

 

【伊栖未】

「りょ、了解」

 

【妙花】

「資本金はどうする? ノアの口座にまだ余ってるだろ?」

 

【ノア】

「えぇ。会社の口座を作ってそこにいくらか振り込んどいていいですよ」

 

【妙花】

「いや、そうじゃねぇ。振り込む金額をどうするかって話だ」

 

【伊栖未】

「……ど、どういうこと?」

 

【妙花】

「起業の際にな、資本金が1000万を超えると会社設立初年度から消費税が課税されんだよ」

 

【ノア】

「へぇ、そうなんですか。知りませんでした」

 

【妙花】

「ビルも買って、これから機材も食材も購入する。底が尽きるのは目に見えてるだろ。だからそこんとこ考慮して資本金額を設定しなきゃいけねぇ」

 

【伊栖未】

「ビ、ビル買ったときさ、結構お金持ってかれたんだろ、ノア?」

 

【ノア】

「はい。なので、残りの予算を考えると…………そうですね。500万でどうでしょう」

 

【妙花】

「妥当っちゃ妥当かもしんねぇが、大丈夫か。手元不如意にならねぇか?」

 

【ノア】

「それでもまだ500万以上あります。そのお金で備品を購入するつもりです。仕事用の機材をすべて高スペックなもので揃えても、おそらく生活できる分は余るでしょう」

 

【妙花】

「……そうか。見当ついてんならいい。んじゃありがたく使わせてもらうぞ」

 

【ノア】

「えぇ。起業手続きの方はお願いします」

 

【伊栖未】

「じゃノア。さっそく、つ、通販サイトで選ぶぞ」

 

【ノア】

「ですね。画面小さくてやりにくいですが私のスマホでやりましょう」

 

【妙花】

「えぇっと……まずは商号だな。おい手前ら、会社名は"あれ"でいいんだな?」

 

【のあっち】

「「もちろん」」

 

【妙花】

「あいよ。んで、印鑑は……後で店行くしかねぇなこりゃ。役員報酬は低めにしねぇとあっという間に倒産だからなぁ。あとは……」

 

【伊栖未】

「ノア。PCは、何買うんだ?」

 

【ノア】

「当然iM〇cProです。作業能率が全然違いますので」

 

【伊栖未】

「ぜ、全然わからん……。あ、ノートじゃ、ないんだな」

 

【ノア】

「デスクトップです。重い負荷のかかる作業に耐えられますから。メモリは足りるでしょうけどストレージが少し心配なので、そこは外付けHDDで補いましょう」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【伊栖未】

「そ、そうだな……! そうしよ、な……!」

 

【ノア】

「わからないならわからないって言った方いいですよ。これからはちゃんと仕事するわけですから、不明点は聞いてくださいね」

 

【伊栖未】

「あ、はい……すみません……」

 

【妙花】

「定款か……面倒くせぇな。事業目的と商号、あと所在地はすぐ書けるが……いや、発起人もアタシの名前にすりゃいい。発行可能株式総数をどうすっかだなぁ……」

 

【ノア】

「これらを10台以上は買いましょう。デュアルディスプレイ用にモニターもいくつか買っといたほうがいいですね」

 

【伊栖未】

「デュアル……が、画面ふたつ、ってことか?」

 

【ノア】

「えぇ。画面が複数あればブラウザやアプリを多く立てられるので、作業効率が良くなります」

 

【伊栖未】

「い、いいな……それ。片っぽでプロット開いて、それ見ながらもう片っぽで書ける…………えへっ、えへっ……」

 

【ノア】

「要るか分かりませんが……柊一郎はトリプルにしますか」

 

【伊栖未】

「み、みっつ……? お、多いな?」

 

【妙花】

「認証はたしか……法務局だったな。ったく、こんな暑い中歩き回らねぇといけねぇのか」

 

【ノア】

「企画だけでなく事務もこなすのであった方がいいと思います。それに――」

 

【伊栖未】

「……それに?」

 

【ノア】

「――私たちの社長ですから。いっぱい仕事してもらうために。ね」

 

【伊栖未】

「…………そだな……!」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【伊栖未】

「…………つ、疲れたな……」

 

【ノア】

「手を動かしたの私ですけどね」

 

【伊栖未】

「……こ、これで明日、届くんだよな?」

 

【ノア】

「はい。明日の私たちの仕事は購入備品の運び入れ、つまり肉体労働100%です。今日以上に気合入れないとへばりますよ」

 

【伊栖未】

「そっか……そうだよな……」

 

●SE:玄関が開く音

 

【妙花】

「帰ったぞ。メシも買ってきた」

 

【ノア】

「妙花。お帰りなさい。どうでしたか?」

 

【妙花】

「問題ねぇ。会社の口座作ってノアの金振り込んだよ。法人名義にもなってるから、資本金はこれで大丈夫だ」

 

【ノア】

「早いですね。印鑑もできたんですか?」

 

【妙花】

「あぁ。この島の人間は仕事が早くて助かるよ」

 

【伊栖未】

「い、いい加減じゃないかし、心配だな……」

 

【妙花】

「んなことねぇ。ほらよ」

 

【ノア】

「……おっと。印鑑投げないでくださいよ」

 

【妙花】

「どうよ、立派だろ?」

 

【ノア】

「へぇ……いいですね。見たことあるやつですね、このデザイン」

 

【妙花】

「法人印鑑ってのはどこもそんなもんだ」

 

【伊栖未】

「な、なんか……会社になってきた、って感じだな……!」

 

【ノア】

「ですよね鐘さん! なんかそれっぽくてテンション上がりますね!」

 

【妙花】

「はしゃぐんじゃねぇガキか手前ら。工程はまだ半分以上ある。会社立てるってのは本来もっと時間かかんだよ」

 

【ノア】

「でもこの分なら柊一郎が帰ってくるまでに間に合いそうじゃありませんか?」

 

【妙花】

「どうだかねぇ…………保険の手続きとかギリ間に合うかどうかって感じだな」

 

【伊栖未】

「ろ、労災は忘れず、お願いします」

 

【妙花】

「手前の口から聞くとなんか切実だなぁ……」

 

【ノア】

「と言うか妙花の仕事早すぎませんか? 定款認証に資本金振り込みまでって、普通1日じゃ終わらなくないですか?」

 

【妙花】

「このアタシを誰だと──」

 

【黒赤】

「「極道の組長(波多江組の元ヤクザ)」」

 

【妙花】

「せめて合わせろ」

 

【ノア】

「……まあ、それはいいとして。こっちもひと通り終わりましたよ。私と鐘さんは明日筋肉痛になるのでよろしくお願いします」

 

【伊栖未】

「明日も、妙花ごはん用意して、ね」

 

【妙花】

「あいよ。アタシも明日は登記書類書いて提出するだけだからな。終わったら手伝うよ」

 

【ノア】

「ありがとうございます。…………あの、妙花」

 

【妙花】

「どうした?」

 

【ノア】

「登記申請って代表取締役じゃないとできなかったと思いますけど、どうするんですか?」

 

【妙花】

「……柊一郎の名前を使いたいとこだがとりあえずアタシの名前でやる」

 

【妙花】

「――……柊一郎の戸籍は消滅ってことになんだからよ」

 

【伊栖未】

「そ、そっか……帰ってくるときは、だ、脱獄の身だから……」

 

【妙花】

「あぁ。『湊柊一郎』は死んだことになる。ここに帰ってきた時の柊一郎は『柊一郎』じゃねぇ」

 

【ノア】

「……忘れてました。そうなるんでしたね」

 

【妙花】

「あとで変更もできるからな。たいした問題じゃねぇよ」

 

【伊栖未】

「……は、腹減ったぞ。妙花が買ってきたの、食べよ」

 

【ノア】

「……ですね。それで、何買ってきたんですか?」

 

【妙花】

「ヌキ家の姉妹丼マ〇汁セット」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「……とりあえず食べますか」

 

【妙花】

「だな」

 

 

 

■青藍島到着 二日目

 

 

 

【ノア】

「……えっ、登記に要る書類ってこんなにあるんですか」

 

【妙花】

「会社によってはもっと多いはずだぞ。うちの場合は10種類もいかねぇ程度で済むが」

 

【伊栖未】

「き、起業ってこんな大変なんだな……。いんし、ってのも高かったし」

 

【妙花】

「登記申請書に貼らねぇといけねぇからな。必要出費だよ」

 

【ノア】

「……そろそろ行くんですか?」

 

【妙花】

「あぁ、法務局で手続きしてくる。アタシが返ってきた時はめでたく会社設立完了だ」

 

【伊栖未】

「たった、ふ、2日で……」

 

【ノア】

「いま業者の人が購入した物品運び込んでるので、気をつけて行ってくださいね」

 

【妙花】

「あいよ。設置作業は頼んだぞ。帰ったらアタシも手伝うからよ」

 

【伊栖未】

「い、行ってらっさい」

 

【ノア】

「…………さてと、私たちも仕事しますか」

 

【伊栖未】

「が、頑張るぞ……!」

 

●SE:トラックが遠ざかる音

 

【ノア】

「……さて。分かりきってましたけど」

 

【伊栖未】

「量が尋常じゃない」

 

【ノア】

「まあ、今日一日あれば多分終わるでしょう。体も終わると思いますが」

 

【伊栖未】

「明日は、間違いなく満身創痍」

 

【ノア】

「じゃあPC周りは私に任せてください。鐘さんは家具やら生活道具の設置、衣類やら食材の整理とお願いします」

 

【伊栖未】

「う、うい」

 

【ノア】

「…………これ、デスクを全部組み立ててからじゃないとPC設置は無理ですね」

 

【ノア】

「…………んっと、まず足の部分をパーツAに挿して……」

 

【伊栖未】

「…………あ、あれ? 冷蔵庫、電気通ってる、か?」

 

【伊栖未】

「…………ど、どうすりゃいんだ? ……あ、このコンセント、かも」

 

【ノア】

「…………これで……大丈夫かなっと」

 

【ノア】

「あ、そっか……椅子も組み立てないとか……くっ、腰が……」

 

【伊栖未】

「…………ま、まだこんなにあるな。冷蔵庫、デカくてよかった」

 

【伊栖未】

「……あ、ヤバい! 生ものが、い、傷んできた……! 早くしないと……!」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【疲労困憊】

「「やっぱ無理!!!!」」

 

【ノア】

「こ、これ…………ぜっ絶対……今日中は……無理、だって」

 

【伊栖未】

「…………し、死ぬ……」

 

【ノア】

「……鐘さん、そっち……どう、ですか?」

 

【伊栖未】

「…………しょ、食材と、みんなの衣類は……全部、仕分けできた」

 

【伊栖未】

「でも……まだ家具、触れてない…………おえっ……」

 

【伊栖未】

「…………ノ、ノアは」

 

【ノア】

「……デ、デスクと、キャビネット、オフィスチェアは……全部できましたけど、PCは箱開いてもいないです……」

 

●SE:玄関が開く音

 

【妙花】

「ただ――」

 

【藁にも縋る思い】

「「助けて妙花!!!」」

 

【妙花】

「……藪から棒になんなんだ手前ら。……って、けっこう形になってきたじゃねぇか」

 

【ノア】

「……す、すみません。もう、私たち二人だけでは……」

 

【伊栖未】

「!! ご飯の臭い!」

 

【妙花】

「すぐに食えるようにと思って買ってきた。……メシにするか」

 

【食欲】

「「わーい!!」」

 

 

 

   ◆

 

 

 

【ノア】

「……というわけで、私のほうはあとPC設置して動かせるようにするだけです」

 

【伊栖未】

「わ、わたしは……あとは、家具。本棚、ソファー、テーブル、食器棚、レンジ台……」

 

【妙花】

「…………」

 

【妙花】

「……まず伊栖未を手伝う。ノアは先にPCを組み立てろ。液タブのほうはどうだ?」

 

【ノア】

「スタートアップは済ませてありますので使えますよ」

 

【妙花】

「わかった。タブの方はいいとして、PCはケーブルも引かねぇとだろう。伊栖未のほうがある程度済んだらそっちに加勢する。いいな?」

 

【ノア】

「了解です。めちゃ助かったと言っても過言じゃないですね」

 

【伊栖未】

「そ、そんで、申請はお、終わったのか、妙花?」

 

【妙花】

「……あぁ。本日付で『株式会社ラーレ』登録完了だ」

 

【ノア】

「……ついに、ですか」

 

【伊栖未】

「わ、わたしたちだけの、会社だ……!」

 

【妙花】

「正真正銘、アタシらだけの聖域だ。他人が立ち入る隙なんざねぇ」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「……柊一郎、早く帰ってくるといいですね」

 

【妙花】

「まったくだ」

 

【伊栖未】

「…………気長にま、待ちましょう……」

 

【妙花】

「……さてと。手前ら、そろそろ作業再開だ。日が暮れる前に終わらせるぞ」

 

【伊栖未】

「う、うん。もう一息、だ……!」

 

【ノア】

「もうちょっとですもんね。気合入れましょう」

 

 

 

■同日 夜

 

 

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「…………終わりましたね」

 

【妙花】

「…………あぁ。さすがのアタシも参ったよ」

 

【伊栖未】

「…………ほ、本当に、一日で終わったな……」

 

【ノア】

「……もう一日が終わろうとしてますけどね」

 

【妙花】

「……気づいたら沈んでたな。お天道様」

 

【伊栖未】

「……外、真っ暗だ」

 

【ノア】

「…………」

 

【ノア】

「……今日は本当にお疲れ様でした」

 

【伊栖未】

「お、お疲れさんした」

 

【妙花】

「明日も早く起きろよ。まだやることあんだからよ。なぁ、ノア?」

 

【ノア】

「はい。本当に、あのときサーバーに送っといて正解でしたよ」

 

【伊栖未】

「……あぁ、あれ、か」

 

【ノア】

「えぇ。明日は私たちのゲ(・)ー(・)ム(・)デ(・)ー(・)タ(・)を復旧させます」

 

 

 

■青藍島到着 三日目

 

 

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【ノア】

「…………復旧、完了です」

 

【伊栖未】

「な、懐かしいな……あのときのデータまんまだ……!」

 

【妙花】

「イラスト、シート、プロットデータ……どうやら、全部無事なようだな」

 

【ノア】

「保存期間は3ヶ月でしたからね。もしこれで一部でも飛んでたら絶望でしたよ」

 

【伊栖未】

「で、でも……データは全部あるし、PCも液タブも全部動かせる……ばっちし……!」

 

【ノア】

「表計算ソフトも無事導入できて経営管理体制も問題なし」

 

【妙花】

「表札もエントランスに貼り付けたから最低限の外観も整った」

 

【伊栖未】

「お金もまだあるし」

 

【ノア】

「食べものもあるし」

 

【妙花】

「生活に不自由ねぇ環境が完成した」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………残りの手続きも済ませたんでしたっけ」

 

【妙花】

「税務署に届出は出した。印鑑カードの交付も受けた。各保険の手続きも完了した」

 

【ノア】

「そうですか。残りは営業資料やチラシ作ったり、ラーレのホームページ作るくらいですかね」

 

【伊栖未】

「あ、あとはみんなの、名刺、つくるぐらいか……?」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「……よく3日でこんなに作業できましたね。私たち」

 

【伊栖未】

「数週間分の進捗」

 

【妙花】

「いや、ひと月分以上じゃねぇか」

 

【ノア】

「一週間は休んでもバチ当たらないと思います」

 

【妙花】

「間違いねえ」

 

【伊栖未】

「もう何もしたくない」

 

【ノア】

「…………」

 

【ノア】

「……残りの作業はさすがに明日以降にしましょう」

 

【緑黒】

「「そうしよう」」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「いつ帰ってくるんですかね。うちの末っ子は」

 

【伊栖未】

「な」

 

【妙花】

「……まだあれから数日しか経ってねぇ。もう数日、下手したらもっとかかるだろうよ」

 

【ノア】

「……気が遠くなりますね」

 

【妙花】

「このままばあさんになるまで待つことになるかもな」

 

【伊栖未】

「そ、それは……ちと、勘弁……」

 

●SE:腹の虫が鳴る音

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【妙花】

「……夕飯にすっか」

 

【ノア】

「今の妙花ですか」

 

【伊栖未】

「ノアでしょ」

 

【妙花】

「伊栖未じゃねぇのか」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ラーレの面々】

「「「あはははははははは!!(えへっ、えへっ、えへっ、えへっ!)」」」

 

 

 

■同日 夜

 

 

 

●SE:部屋のドアが閉まる音

 

【ノア】

「……鐘さん、もう寝ちゃいましたよ」

 

【妙花】

「だいぶ疲れてたようだからな。10時間ぐらい寝かせてやれ」

 

【ノア】

「……ところで妙花は何をしてたんですか?」

 

【妙花】

「…………別に。つまんねぇことだよ」

 

【ノア】

「…………っ、それは……!」

 

【妙花】

「……見えちまったか」

 

【ノア】

「……『絶縁状』ってやつですか」

 

【妙花】

「如何にも。まだ撒いてなかったからな」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「本当はもっと早くやるべきことだったんだけどな。組には全然連絡してねぇから、今頃大慌てだろうさ。『姐さん帰ってこねぇじゃねぇか!』ってよ」

 

【ノア】

「……すみません。こっちの作業ばかりに時間をとらせてしまって」

 

【妙花】

「気にすんじゃねぇよ。アタシらの家であり職場だ。アタシ一人サボるのは筋が通らねぇだろ」

 

【ノア】

「……本当に辞めるんですね。ヤクザ」

 

【妙花】

「何度も口にしてただろうが。いまさら何言ってんだ」

 

【ノア】

「いえ。こうして目の前で辞表書いてるの見ると、より実感が湧くというか」

 

【妙花】

「辞表……」

 

【妙花】

「…………」

 

【妙花】

「……別にすぐに縁を切るってわけじゃねぇ。組の方針やらはまだアタシが指示を出さなきゃいけねぇからな」

 

【ノア】

「引き継ぎですか?」

 

【妙花】

「あぁ。うちの従姉妹に継いでもらおうと思ってな。事項がいろいろあんだよ」

 

【ノア】

「……そうですか」

 

【ノア】

「…………」

 

【ノア】

「妙花は後悔しませんか。ヤクザを辞することを」

 

【妙花】

「……さっきから何が言いてぇんだ」

 

【ノア】

「少し気になっただけです。波多江組だって妙花にとっては家族でしょう。縁を切って私たちと一緒にいることを選択してくれた。それはとても嬉しく思ってます」

 

【ノア】

「でも、もう一方の家族とは繋がりがなくなります。…………寂しくないんですか」

 

【妙花】

「……寂しくないと言えば噓になる」

 

【妙花】

「だがな、ノア。これはアタシが選択したことだ。腹はとうに括ってんだよ」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「アタシは絵を描くのが好きだしずっとやりたいことだった。手前らと一緒に居ればそれが叶う。これほどの無上の喜びはねぇ」

 

【妙花】

「だが人生はトレードオフ。何かを成すには何かを犠牲にしなきゃいけねぇって話だ」

 

【ノア】

「清濁併せ呑む器量が必要ってことですね」

 

【妙花】

「くっくっ、ノアに言われるとは思ってなかったよ」

 

【妙花】

「……それに、二度と会えねぇわけじゃねぇしな。その気になりゃ方法はいくらでもある」

 

【妙花】

「一番大事なのは手前らがいまの家族であるという事実だ。過去より今ってことだよ、ノア」

 

【ノア】

「……やっぱり、私は妙花ほどの度量は持ち合わせていないようです」

 

【妙花】

「アタシは元極道だからな。カタギとは生き方が違うのさ」

 

【ノア】

「100回は聞きましたよ。それ」

 

【妙花】

「だな」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【ノア】

「もう一人の家族はクソ生意気ですよ」

 

【妙花】

「でもそこがいいんだろ?」

 

【ノア】

「そうですね」

 

 

 

■数週間後

 

 

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【妙花】

「――……今日で間違いねぇんだな?」

 

【ノア】

「えぇ。早朝に連絡が来たのでとっくに"あの人たち"に依頼を出してます。今頃迎えに行ってると思いますよ」

 

【伊栖未】

「さ、さすがにもう、も、戻ってきてんじゃないか……?」

 

【ノア】

「……それもそうですね。あの運転手の人めちゃかっ飛ばすので」

 

【妙花】

「途中で事故ってねぇだろうな……ったく」

 

【伊栖未】

「…………」

 

【ノア】

「…………」

 

【妙花】

「…………」

 

【伊栖未】

「帰ってき、きたら、よ、呼ぶんだよな……?」

 

【妙花】

「たりめぇだろ。アタシらで作ったんだからよ」

 

【ノア】

「もちろんです。今後は"あの名前"で過ごしてもらうことになってますから」

 

【伊栖未】

「ほ、本人のいないとこで、勝手にな……――っ!!!」

 

【伊栖未】

「――あ、あれ!!」

 

【ノアと妙花】

「――――っ!!!!」

 

【ノア】

「――……本当に帰ってきましたね。あいつ」

 

【妙花】

「くっくっ、にしてもなんだあのダっせぇシャツは」

 

【ノア】

「……ちょっと妙花。感動の再会で笑わせないでくださいよ。ダサいですけど」

 

【伊栖未】

「み、水差すな。ダサいけど」

 

●SE:窓の外から誰かが駆け足で近づいてくる音

 

【妙花】

「……さてと、そろそろ出るか」

 

【ノア】

「ですね。いろいろ堪(こら)えて、笑って出迎えますかね」

 

【伊栖未】

「わ、わたしは、へ、平気だった……けど、な……」

 

【ノア】

「……それで、中に入れたらまずどうします? みんなで抱きしめ合ってキスでもしますか?」

 

【妙花】

「その前に風呂だろ」

 

【伊栖未】

「さわさり」

 

●SE:玄関を開ける音

 

 

 

 


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