199X年世界は核の炎に包まれた!

海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。

だが、転生者は死滅していなかった!

* * * * *

北斗の拳世界に転生した主人公『ナノル』は、その力と技を活かし、野盗どもから物資を奪って生き抜く、という生活を送っていた。
彼の武器は、闘気を込めたダガーナイフ。

そんなある日、ある野盗どものアジトを壊滅させた彼は、その奥の牢屋で一人の少女と出会う。

彼は記憶を失っていたその少女にフラニーと名前をつけ、共に旅することになるが……?

* * * * *

これは、すもさんの書かれた『世紀末転生掲示板』のスピンオフとなります。
なお、これを書くに当たり、すもさんの許可を得て、設定を若干改変させていただきました。

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北斗の拳世界に転生した転生者だけど、アイリを拾ったら心ならずも原作と関わることになっちゃいました(プレビュー版)

「はぁ、そりゃ、とりゃあ!!」

 

 オレは両手のダガーナイフを華麗に振るい、最後の男を切り刻んでいく。

 オレたちの周辺には、既にオレのダガーの餌食となった奴らがごろごろ転がっている。

 

「とどめだぜっ!」

 

 そして最後に、男の脳天にダガーナイフを投げつけ、仕留める。

 額にダガーが刺さった男は、そのままあおむけに倒れこんで、動かなくなった。

 

「ふぅ……」

 

 そいつを見下ろしてため息をつく。

 それにしても、この世紀末に降り立って、もう二年。このダガーナイフの扱いにもだいぶ慣れてきたな。

 

 さて……と。

 

* * * * *

 

 オレの名前は『ナノル』。もちろん本名ではなく偽名だ。現世の、だが。

 そう、オレはただの人ではない。転生者なのだ。(チートつき)

 

 ブラック企業で使いつぶされて使いつぶされて、もう燃えカスしか残っていないようなところまで追い詰められたオレは、ある日意識が途切れると、白い空間にいた。

 

 そこで神様のような人から、『残念だが、転生先が北斗の拳の世界しかなくてのう』、『そのまま放り出したんじゃ哀れじゃから、何かチートをやろう』と、転生もののテンプレのようなことを言われ、この世界に放り出されたのだ。

 

 なんでも、この次元には、北斗の拳の世界のパラレルワールドがいくつもあり、オレが転生したのも、そのうちの一つらしい。

 

 そして、各パラレルワールドに散らばった連中と、色々と話してみて知ったことなのだが、この世界に転生した者たちには、もれなく何等かのチートが与えられるらしい。屈強な体はデフォルト。そのほかにも、ある者は北斗神拳の技と知識……くぅ、オレもそれが欲しかった……、ある者はものを確実に壊せる線が見える能力、またある者は死んでもすぐに生き返る身体……と、色々らしい。

 

 オレがもらったのは、そいつらと比べれば若干控えめだ。鮮やかかつ鋭いダガーナイフの技と、闘気を操る能力……なんでも、北斗神拳のそれより優れているらしい……、そしてなぜか北斗神拳の奥義、水影心……相手の技をひと目見ただけで、己のものにできる技だ。

 

 オレはこれを活用し、技を磨き、この世紀末を生き抜いてきた。ダガーナイフは屈強なモヒカンどもには威力不足かもしれないが、そこはそれ。闘気を刃にこめることで威力を強化することで解決した。今ならいわゆるモヒカン程度なら苦戦することはないと自負している。

 

 とはいえ、転生したばかりのころは大変だった。最初のうちは勝てず、数度渡り合ってすぐに逃げ出したり、ボコボコにされたりと。でも、そういった戦いをなんとか生き抜き、繰り返して、ここまで強くなってきたのだ。

 

* * * * *

 

 さて、そんなオレがここに何をしに来たかというと……。

 

「ヒャッハー! 食料だぜー! 水もあるぞ!!」

 

 オレは洞窟の奥に並べられたものを見て、歓声を上げた。なぜかオレにまでヒャッハー!がうつってしまっている気がするが、気にしないでおこう。

 

 そう、これが目的だったのだ。野盗が人々から略奪しているのを見かけたオレは……彼らがため込んでいるものを奪うべく、その後を追いかけ、そしてアジトを見つけて襲撃したのだ。

 

 野盗どもから奪わないと死んじゃうもんね、奪ってるんなら、奪われても仕方ないよね、うんうん。

 

 見ると、奥のほうには、人々がたくさん囚われた牢屋があった。多分、野盗どもがあちらこちらから連れてきた奴隷候補たちだろう。

 だけど、オレは一人旅のほうが気楽なんだよなー。いや、パートナーの一人ぐらいいたほうが嬉しいけど、残念なことにここには、俺の好みの女の子も、気の合いそうな野郎もいない。

 

 まぁいいや。とりあえず助け出してやろう。

 鉄格子には、しっかりと鍵がかけられているが、こんなもの、闘気を込めたダガーナイフの前では、木の枝同然。すっぱりと真っ二つにしてやった。

 

「ほら、あんたたちを捕まえてた野盗どもはやっつけておいたぜ。気を付けて行けよ」

 

 俺がそう声をかけると、中にいた人たちは少し希望を秘めた表情を浮かべ、もれなくオレにお礼を言って頭を下げて出て行った。良いことをするのは、やっぱりいいもんだよな。この身体と技に感謝だ。

 

 そして、彼らが出て行ったところで、またふと牢屋を見ると、まだそこに一人の少女がうずくまっていた。年頃は10台後半……18か19くらいだろうか? 美しいピンク色のロングヘア―の少女だ。思わずときめいてしまいそうな、そんな魅力を持った少女だった。

 ……ん? ピンク色? 奴隷……? はは、まさかな……。

 

 でも、そんな子がこんなところでどうしたんだろう? オレは彼女のところに駆け寄るとひざまずいて声をかけた。

 

「おい、どうしたんだ? どこか苦しいのか?」

「え、あなたは……? あなたが新しいご主人様なのですか?」

 

 ご主人様と来たか。なんの抵抗もなくそう言う様子からは、彼女がこれまでに何度か奴隷として転売されていたことを感じさせる。

 

「いや、オレはただ、あんたたちを捕らえていた奴らをぶちのめしに来ただけだよ」

「そうですか……ありがとうございます。私は……お好きなようにお呼びください」

 

 お好きなようにお呼びくださいだって? なんか違和感があるな。

 

「あんた、名前あるんじゃないのか?」

「それが……一年前に何かあったらしく、それ以前のことを思い出せなくなってしまいまして……。自分の名前も……」

 

 うわー……そりゃ……。

 

「悪い。そいつは嫌なことを聞いてしまったな」

「いえ……。ご主人様のおっしゃったことですから……」

 

 ご主人様ってわけじゃないんだけどな……。助けに来ただけだし、ご主人様ってガラじゃないし。

 とはいえ、こんな荒野の中、一人で放つわけにもいかないしな……。

 

「こんな世界で女一人というのも危険だからな……。流れ流れの旅になるが、一緒に来るか?」

「はい……。どこまでもお供します。ご主人様……」

 

 ……どうやら、オレが彼女の前に現れた時点で、彼女にとってはご主人様認定らしい。まぁ、仕方ないか。

 

「お、おう。よろしく頼むぜ。そうだ、名前をつけてやらないとな……。うーん……そうだ。フラニーなんてどうだ?」

「素敵な響きです……ありがとうございます。ご主人様……」

「お、おう。そうだ、オレの名前はナノルだ。そう呼んでくれよ」

「はい、かしこまりました。ナノル様……」

 

 様はつけなくていいんだけどな……まぁいいや。

 

* * * * *

 

 そしてオレは、野盗どものアジトで助けだした謎の女の子、フラニーと共に、旅を再開した。

 

 ローブをかぶせて姿を隠していたこともあり、オレのバギーと食料を狙ってくることはあっても、フラニーを狙って襲われることはほとんどなかった。

 本当に、「顔晒したままだと絶対ちょっかいを出されるから、ローブか何かで顔を隠せ」と言ってくれた掲示板の常連には感謝の言葉しかない。

 

 フラニーはさすがそれまで奴隷として仕込まれてきただけあり、良く気が付き、家事も得意だ。彼女と旅をはじめてから、とても助かっている。おまけにべっぴんさん(死語)ときてる。

 掲示板の常連からは、「下心あるだろ?」といじられてるが。まぁ、それは否定しない。けど、やはり彼女を家族と会わせてあげたい、というのが一番だ。それにやっぱり誰かと一緒に旅すると癒されるしな。今はそれだけで十分だ。無理やりする気は今のところない。

 

 ともあれ、だ。オレは野盗の集団がいないか注意を配りながら車を走らせた。さすがにこちらにはフラニーという同行者がいる。今までのように敵の真っただ中に突っ込んで無双する、というわけにはいかない。かなり不利な戦いを強いられることになるだろう。

 

 なのでオレは、野盗団との戦いを避けながら進んでいった。一人か二人相手だったら、フラニーを守りながらでもどうにかなるし、なった。フラニーが周囲の警戒を手伝ってくれたこともあり、大きな危機にぶつからずに済んだ。

 

 だがそこで、一つ新たな問題が持ち上がったのだ。

 

「これが最後の食糧か……」

「ナノル様、本当にそれだけで構わないのですか? 私のものを少しとっても……」

「いや、大丈夫だよ。女の子は大切にしなくちゃだからな。心配してくれてサンキュ」

 

 そう、食料が底を突いたのだ。やはり二人旅になったのが響いたのだろうか。幸い、オレの身体はチートがあるから、ある程度飯を抜いても耐えられる。でも、フラニーはそうもいかないしな……。

 なんとか街を見つけるか、食料を手に入れるかしないと、明日からは飯抜きということになりそうだ。途中にトカゲやら鼠やらが出ればいいのだが。

 

 そう思いながら、オレは地図を広げた。

 

「確か旅人の話だと、この方向に町があると言ってたな……。方角と途中の看板からすると、現実でいう舞鶴市の跡地だと思うんだが……。っと、フラニー、周囲のほうはどうだ?」

「はい……今のところ、賊の姿は見えません」

「ありがとな、引き続き、警戒を続けてくれ」

「はい」

 

 フラニーが清らかな美しい声で、そう返してくれた。

 本当に助かる。オレが今までやっていたことの何割かを彼女が分担してやってくれるおかげで、かなり楽になった。

 

 さて、明日には町までたどり着けるといいんだが……。

 

 だがなんでだろう? オレはこの先に、何かある予感を感じたのだった。

 

 まぁ、明日のことは明日悩めばいいか。オレは、フラニーと見張りを交代して、受け取った双眼鏡をのぞきこんだ。

 

* * * * *

 

 よかった、本当によかった!

 

 翌日、オレたちはなんとか舞鶴市の廃墟に作られた村にたどり着くことができた。地図と、この村のことを教えてくれた旅人に感謝だな。

 この村は水がかなり潤沢にあり、それを利用して農業も盛んにおこなわれ、さらに花畑もある。まさにこの世紀末の中で、楽園ともいえるところだった。

 

 本当にこんな村にたどり着けたなんてラッキーだぜ。

 ……あれ? そんな村、確か北斗の拳の話の中で……はは、まさかな……。

 

 そう思いながらオレは、崩れかけたビルの入り口に作られた店にバギーを止めた。

 

「いらっしゃい、兄ちゃん。女の子とは一緒とはうらやましいね。何の用だい?」

「あぁ。燃料と食料がほしい。ちょうど食料が尽きて、燃料も心もとなくてね。それとこの子を……」

 

 と、そこでフラニーに袖をつかまれた。どうやら、オレと別れたくはないらしい。

 それほど彼女に気に入られたのだろうか? ため息をつきながら返す。

 

「この子を預かってもらおうと思ってたんだがいいや。とりあえず燃料と食料を……って、あ」

 

 そこでオレはあることに気が付いた。顔が青ざめてしまう。

 

「しまった、物々交換で交換するものがねぇや……。しかし、このまま出発しても野垂れ死にだし……」

 

 そう悩むオレに、店主は苦笑しながら助け船を出してくれた。

 

「そんならこの町で用心棒してみたらどうだい? ちょうどこの村は牙一族とかいう奴らに狙われててな。戦える奴を募集してるんだ。手柄を立てたら、きっと食料や燃料もくれると思うぜ」

「へぇ、そいつはいいな。やってみるのも……え?」

 

 牙一族? なんか原作で見たようなワードが出てきたぞ。そしてそこに。

 

「牙一族だー! 牙一族が攻めてきたぞー!!」

 

 また例のワードが! いや、今はそのことは忘れよう。せっかく見つけた村、壊滅されたらたまったものじゃない。

 オレはフラニーに、他の人たちと避難しているようにと言うと、声のしたほうへと駆け出して行った。

 

* * * * *

 

 するとそこには……やっぱり漫画やアニメで見たような光景と見たような奴らが!

 やっぱりこの世界にもいたのね、牙一族! そして……なんてこった! 舞鶴市はマミヤの村だった!!

 

 城壁に上ってくる牙一族の奴らを、村人が弓矢とか熱湯などで迎撃している。その様はまさに、大昔、戦国時代あたりの城攻め!!

 激しく抵抗する村人たち。だがついに、牙一族の一人が壁を乗り越えることに成功した! そいつは猛スピードで村の奥に侵入していった! いけない、村の中にはフラニーが!!

 

 急いでそいつを追いかける。そしてなんとか追いついたが、そこはなんということか、村人たちとともに、フラニーが避難しているビルだった!

 よだれを垂らした侵入者は、彼女もにらみつけ、そして今にもフラニーを襲おうとしている!

 

 そうはさせるかよ! オレはダガーナイフの一本を奴に投げつけた! 焦りからかそのナイフは、奴の腕に突き刺さっただけだった! 痛みの悲鳴があがる。

 倒すことはできなかったが、奴は注意をこちらに向けた! それだけで十分! オレはもう一本のダガーを手に、奴に突進!

 

「フラニーを襲う奴は、消えてもらうぜ!!」

 

 鋭い斬撃が炸裂! なんとか奴を倒すことに成功した。よかった、なんとかフラニーを守れたか……。

 だが、そこで気を抜いたのがいけなかった! 背中に強烈な衝撃を感じ、オレは倒れてしまう。その手からダガーがこぼれ落ちてしまう。そして、なぜかその様子を見て……。

 

「いやああああ、兄さああぁぁぁん!!」

 

 そう、フラニーが錯乱する。何かトラウマに触れたのだろうか? しかしその考えは、背後から感じる殺気の前に霧消した。

 なんとか痛みをこらえて、あおむけになって入口を見ると、そこには二人の牙一族がこん棒を構えて立っていたのだ。

 

「よくも兄弟をやりやがったなぁ! 嬲り殺しにしてやる!」

「待てよ兄弟。まずは、あの娘からやることにしようぜ。どうやらこいつにとって大切みたいだからな」

「そ、そうだな。げへへへ……!」

 

 い、いけない、フラニーが……! しかし、助けようにも、痛みで思うように立ち上がれず、しかもダガーは手から離れている。万事休すか……!

 

 そして二人がフラニーに飛び掛かったその時!

 

* * * * *

 

 突然、入口から別の人影が現れ、牙一族の一人に飛び掛かり、鋭いパンチを放った! それを喰らった牙一族は醜く膨れ上がり……!

 

「う~……う~……うおるばっ!!」

 

 ものの見事にひでぶした。もしかして!? なんとか立ち上がれるようになったオレが、その人影のほうを見ると……。

 

 あ、あれは! 原作の主人公、世紀末救世主ことケンシロウだ! 生ケンシロウを見れるなんて、なんとも感激!!

 

 だけど、感激に浸っている場合ではないな。もう一人の奴を倒さないとオレの気が済まない!

 

「き、兄弟ぃぃぃ!」

 

 仲間の死にもう一人が気をそらした今が勝機! オレはとっさにダガーを拾い上げて……。

 

「だったらお前も兄弟に会いに行ってこいっ!!」

「ぶがるはっ!!」

 

 その顔面にダガーナイフを突き刺してやった。ふぅ、なんとかなったな……。ちなみにフラニーは、まだ動揺して泣いていたが、村人たちに声をかけられてなんとか落ち着いてきているようだ。

 でも、兄さんという言葉……今のショックで、何かを思い出したのか?

 

 そこにケンがオレに手を差し出し、声をかけてくれた。

 

「大丈夫だったか?」

「あぁ……ありがとよ」

 

 その時、何か地響きが! そうだ、確か原作では!!

 

「ケン、この地響き、もしかしたら奴らは装甲車で壁をぶち破ろうとしてるのかもしれない。どうにかしないと!」

「……わかった」

 

 そして城壁のほうに駆け出し……。

 

「ヒョオオオウッッ!!」

「とりゃー!!」

 

 二人で城壁を飛び越える。そして着地すると、やはりそこには十数名の牙一族に守られた、装甲車の姿が!

 

「やはりいやがったか……!」

「俺は装甲車をやる。雑魚を頼めるか?」

「OK! しっかりやってくれよ!」

 

 そして二人で駆けだす。なんかこうしてみると、オレがケンの相棒みたいだな。ううぅ、ごめんよレイ。お前の妹をパートナーにしただけでなく、ケンの相棒の席まで奪っちまって。

 

 ともあれ、オレは両手に構えたダガーを武器に、牙一族の取り巻きと激しいバトルを繰り広げた。刺し、切り裂く! 守る対象がいなければ、雑魚相手であればいくらでも無双できる! おーりゃおりゃおりゃ!!

 

 そしてケンは、装甲車の天井をぶち破って内部に突入すると、運転手の奴に北斗百裂拳を炸裂!!

 

 フロントガラスをぶちやぶったそいつは、オレが戦ってる連中の近くに落下すると、ものの見事にひでぶした! それを見て恐慌に陥った奴らは大慌てで逃げだしていく。

 

 復讐戦を挑んでくるのを防止するのに、全員を倒してやりたかったが、逃げ足が速すぎて、一人を倒しただけに過ぎなかった。やれやれだな……。

 

* * * * *

 

 そして村に戻ってくると、オレたちは村の人たちから大歓声で出迎えられた。ケンの強さもさることながら、オレの強さも認められたらしい。

 そして村人の中から一人の女性が歩み出てきた。彼女を見て、ケンは硬直した。まぁ、かつての恋人と瓜二つだからそうもなるだろう。そう、この村のリーダー、マミヤさんだ。

 

「あなたたち、かなりの使い手みたいね。どう? この村に用心棒として雇われてみない?」

 

 もちろん、オレの答えは決まっている。ケンは乗り気ではないみたいだったが。

 

「あぁ、いいぜ。食料と燃料が切れちまって、困っていたところだったんだ。それがもらえるんだったら、喜んでさせてもらうぜ」

「俺は……」

 

 そう言うケンに、マミヤさんはからかうような笑みを浮かべて言った。

 

「一度関わってしまった以上、あなたに断る権利はないのよ」

 

 この言葉で、ケンの就職が決まったのだった。

 

* * * * *

 

 一方そのころ、マミヤの村にほど近い荒れ地。

 

 そこに、食料の干し肉を貪り食う男がいた。彼の足元には、彼の拳の餌食となった男たちが倒れ伏している。

 口に入れた干し肉の一切れを飲み込んだ男がつぶやく。憎悪と怒りに満ちた声で。

 

「待っていろ、七つの傷の男。親父とお袋を殺したお前を倒し、妹を見つけ出すまで……俺は例え泥水をすすってでも生き延びる!!」

 

 



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