空疎創作論破   作:あるぺす

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はじめての創作論破小説です。

▶︎当作品は、ゲームおよびアニメ“ダンガンロンパ”の
 世界観をお借りした創作論破作品です。
 本家作品の設定を元に、独自解釈を多大に加えた世界で
 物語が進行していきます。ご留意ください。


第疎話 【INTO THE DEEP】

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

一年後

 

 

 

 

 

 

▶︎ AM 10:54-ノルウェー-トンスベルグ

 

 

 

犠牲となった特務生たちの遺体は、トンスベルグ郊外にある丘の上、

小さな聖堂に隣接した墓地に埋葬された。

イルヴィアの父親も眠っている、美しい場所だ。

 

彼の墓石の脇に立てられた十字架には、

イルヴィアが鴉座に渡していたドッグタグが提げられていた。

 

傷橋たちが眠る墓に手を合わせ終わった鴉座が立ち上がり振り返ると、

丁度到着したらしいイルヴィアと鉢合わせた。

 

「来てたか」

 

「あぁ。一周忌だからな。皆の」

 

眠る皆への挨拶を済ませ、ガーベラの花束を手向ける。

暫し静かな時間を過ごした後、2人は墓地を後にした。

 

 

 

 

 

 

「どこか……寄っていくか?」と鴉座。

 

「私は帰るよ。行くところがある」

 

微笑んで答えた彼女の手には、真新しい学生証。

希望ヶ峰学園——ではなく、オスロの公立高校のものだ。

 

それを見て、鴉座もまた口角を上げる。

 

「そうか」

 

しばらく歩いて辿り着いたY字路の分岐点で、改めて2人が向き合う。

 

「またいつでも連絡してくれ。じゃあ——」

 

「あぁ。元気で」

 

そう告げると、イルヴィアは踵を返して去って行った。

 

その背中を見送り、鴉座もゆっくりと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——そうして、一連の事件は幕を閉じた。

 

オスロ、東京、クリーヴランド、ダマスカスでの

ウイルス保管施設制圧作戦は無事に成功し、

“悪い奴ら”の尽力もあり、拡散の阻止にも成功した。

 

メキシコシティではウイルスの拡散を許してしまったものの、

未来機関や77期生、現地の医療機関や有志の人々の活躍、

また遅れて復興支援活動に参加した塔和シティの技術的な支援もあり、

被害は最小限に抑えられた。

 

当該区域は現在も立ち入り禁止エリアとなっているが、このまま除染作業が進めば、

2,3年後にはそれも解除されるだろう、とのことだった。

 

コンラートが仕掛けたプログラムも、

不完全洗脳の治療プログラムに新世界プログラムを応用することにより、

時間こそ掛かったものの無害化に成功。

 

治療プログラムの開発は、元・“超高校級のアニメーター”主導の元で引き続き行われる。

 

また、危惧されていた戦争の勃発については、

国連会議にてノヴォセリック王国を議長国とした平和条約が締結され、

最悪の事態は回避された。

 

この会議には退院し職務に復帰した学園長も同席し、

世界各地で起きていた暴動も、徐々に鎮静化し始めている。

 

 

 

イルヴィア・ゲフィオンはFimbul隊長の役職を自ら降り、

一介の高校生としての人生を歩み直すことを決意。

 

鴉座諒名も同様、希望ヶ峰学園の籍を返還し、

シナロア州の州立高校へと編入学した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎ ブラジル-アマゾン熱帯雨林

 

円滑な治療を行うにあたって、

大きな一助となったアロマの製作者である狗縊の家と庭園は、

ブラジル大統領の発案で国立公園となり、彼女の功績を讃える資料館も建てられた。

 

館長はメキシコシティの病院の副院長らの推薦により、

件の小学校の教員の女性が務めることとなった。

 

 

 

 

 

 

▶︎ ヨルダン-アンマン

 

アーリム以下B28の面々とサファーは刑期を終え、

中東及び北アフリカ一帯を管轄として復興支援、治安維持活動に従事していた。

慣れない力仕事で疲労困憊のサファーに、アーリムがドライフルーツを手渡す。

 

シーナも好きだった、大ぶりなデーツの実だ。

 

 

 

 

 

 

▶︎ アメリカ-マサチューセッツ州-MIT

 

MITでは現在、刺国の後輩たちが彼の開発したテクノロジーを

更に発展させるべく研究に没頭。

米陸軍及び空軍との協力関係も、より密なものになっていった。

 

先の作戦にて採用されたフライトスーツをはじめとして、

今後も様々な兵器や備品の共同開発を行っていく。

 

 

 

 

 

 

▶︎ イギリス-ロンドン-ヴォクソール

 

MI6では、この一年間の努力の甲斐あって祓戸が開発したプログラムを

局員全員が使えるようになり、

より広範囲での監視、治安維持業務が可能となっていた。

 

彼女の工作員としての才能は、

今尚世界復興の大きな一助として期待を寄せられている。

 

 

 

 

 

 

▶︎ 日本-東京-警視庁

 

この日、警視庁に蓮仰の恋人二人が訪問。彼と親交のあった職員から、

蓮仰がどのように東京の治安維持に貢献していたかを伝え聞き、

2人は彼が使用していたデスクに案内された。

その上には、額に入れて飾られている、3人が笑顔で映る写真が。

 

それを手に取った2人の目には、大粒の涙が湛えられていた。

 

 

 

 

 

 

▶︎ ノルウェー-オスロ

 

オスロ郊外にある、重犯罪者用刑務所。

先の作戦への協力を終えた後も未だ刑期が残っている残党の3人が

手持ち無沙汰にしていると、鉄格子の向こうから足音が近づいてきた。

 

気付いたひとりが立ち上がって目を凝らす。

薄暗い通路の先から現れた人物の顔を視認し、3人の表情が変わった。

 

イルヴィアが離脱したFimbulには、その穴を埋める戦力が必要だ——

 

鉄格子の鍵が、ゆっくりと解錠された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎PM 17:33-メキシコ-シナロア州-クリアカン

 

 

 

町外れの高台にある、決して綺麗とは言えない平屋のドアを開け、

元・“超高校級の捜索者”鴉座諒名が帰宅した。

 

決して軽くはない足取りで部屋に入り、ジャケットを脱いでソファに腰を落ち着かせる。

テーブルの上には、“捜索依頼書”と書かれた封筒がいくつか置かれていた。

差出人は、現地警察や未来機関など。希望ヶ峰学園を去ったものの、

彼の捜索者としての腕は依然、この世界を元の姿に戻すにあたって

必要不可欠な力として求められ続けている。

 

コップに注いだ水を飲んで落ち着いていると、彼の脳内で“彼”が語りかけてきた。

 

『おいおい、休んでる場合か?』

 

「少し座るくらいいいだろ。5分もしたら出るよ」

 

彼の過去の記憶が核となり生まれたもう別人格——カラスザだ。

この一年の間に彼らは互いと向き合い、

こうして互いの意識を共存させることに成功していた。

 

『——さっき傷橋の墓の前でなんか言ってたろ。

声が小さくて聞き取れなかったが……なぁ、なんて言ってたんだ?』

 

「……さて、そろそろ行くか」

 

軽い口調で囃し立てるカラスザを無視し、

飲み終えたコップを洗ってジャケットを手に取る。

 

『あーはぐらかしやがったコイツ~! 何恥ずかしがってんだよらしくもねぇ』

 

「うるさい喋るな。寝てろ」

 

鴉座はそう言いながらジャケットに腕を通すと、

大きいバッグに捜索や人命救助に必要な道具を詰め込んで準備を整える。

 

テーブルの上にあった依頼書、

そして一枚の紙を手に持ち、玄関のドアを開け、“彼ら”は家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紙には、こう記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月21日 傷橋綴離 記す。

——————————————————

 

今日から、諒名の治療を目的とした共同生活が始まる。

こういうのは初めてだから、結構緊張するな。

 

日々の記録として、

その日にあった出来事や思ったことを、こうして記しておくことにした。

予期せぬトラブルが起きた時に、何かの役に立つかもしれないしな。

 

ちょっと気恥ずかしいけど、挑戦は人生に潤いを与えてくれる。楽しもう。

 

——————————————————

 

彼と初めて会った最初の印象は、“か弱い”だった。怯える子犬のような目をしていた。

絶望の勢力の一員として活動していたとは、到底思えないほどに。

でもきっとあの目が、彼の本質的な部分だったんだろう。

 

か弱く、優しく、誠実な人。

 

そんな彼を無慈悲なテロリストに変えたうえ、

目を覚ました後もフラッシュバックという形で

その精神を苦しめる“絶望”は、やはり恐ろしい。

 

だが、大丈夫だ。絶対に。

 

絶対に、わたしが諒名を救う。

彼を救うことができれば、

今も不完全洗脳に苦しめられている人々を救う方法も、きっと見つかるはず。

 

人を救うということは、世界を救うということだ。

 

今日から約一年間をかけて、彼の心に巣食う絶望の残滓を、ひとつひとつ取り払っていく。

 

——————————————————

 

以上が、わたしの決意表明。

 

大丈夫だ諒名。君なら必ず、更生できる。

 

多くの人々が、多くの国が今、困ってる。

 

今の世界には、君が必要だ。

 

——————————————————

 

なんて、遺言みたいになっちゃったな……

 

とにかく、今日からよろしく、諒名。

 

 

 

 

 

 

 

——ここが、君の新しいスタート地点だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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