空疎創作論破   作:あるぺす

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はじめての創作論破小説です。

▶︎当作品は、ゲームおよびアニメ“ダンガンロンパ”の
 世界観をお借りした創作論破作品です。
 本家作品の設定を元に、独自解釈を多大に加えた世界で
 物語が進行していきます。ご留意ください。


後日談02 【Out of Control】

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▶︎▶︎▶︎

 

 

 

—3年後—

 

 

 

09:18 p.m.

     ラトビア・リガ上空

 

 

 

▶︎▶︎▶︎

 

 

 

不完全洗脳による世界の機能不全は、その一因となった“希望のビデオ“の制作者である

元・“超高校級のアニメーター”の青年、及び未来機関、WHOの尽力により解消され、

希望ヶ峰学園学園長も無事に退院。学園は3年前から事業を再開し、

世界は“人類史上最大最悪の絶望的事件”以前の平穏な様相を取り戻していた。

 

そんな穏やかな街灯りの遥か上空を、大型のジェット機が雲を裂いて突き進む。

広いガレージのような機内には、先日まで駐在していたリトアニアから

隣国であるラトビアに移動し、その首都、リガでの仕事を終えた複数人の男女。

 

その中のひとりが——

 

 

「今日は流石に、少し疲れたな……」

 

 

元・“超高校級の捜索者”、鴉座諒名。

右手を添えた首をゆっくりと回しながら、大きく息を吐きつつ座席に腰を落ち着かせる。

 

2年前に高校を卒業した彼が現在所属しているのは、ハサネイン・アーリム率いる“B28”。

かつてはエジプトで反政府武装組織として猛威を振るっていたが、

ピラミデンにおける一件を経た現在は国境なき慈善活動団体へと形を変え、

今日のように“人類史上最大最悪の絶望的事件”の爪痕が未だ残る被災地に赴き、

復興支援活動などを行っている。

 

このジェット機に現在搭乗中のメンバーはリーダーであるアーリム、そして鴉座の他に4人。

 

1人目は、アフマド・サファー。ヨルダンの"元"王子。

 

数年前まで違法な武器取引などの悪どいビジネスを手広く行っていたが、

特務生であるシーナと刺国の活躍により現地の刑務所に収監される。

その後発生したピラミデンでの一件に際してはアーリム以下当時のB28の面々と共に

シリア・ダマスカスでの作戦に参加し、ウイルスの拡散を食い止めた。

その功績が認められ、減刑の後に自由の身に。

王子としての地位は失ったがかつての人脈は未だ健在で、

新体制となったB28の活動を総合的にバックアップしている。

 

そして、ノルウェー・オスロ出身の“元・絶望”が3名。

 

抜群のドライビングテクニックと戦闘スキルの持ち主、エミル・ガルバレク。

常に冷静沈着なエミルの補佐役、マティアス・クローグ。

Fimbulでの活動の中で参謀としての才能を開花させた紅一点、サラ・ランプランド。

彼らはピラミデンでの一件の後、傷橋が在籍していたアメリカ・ネバダ州の特殊療養施設で

“絶望”からの更生治療に成功。一時的にFimbulの一員として活動し研鑽を積み、

勇退の後にB28へと加入した。

 

加えて、反政府武装組織時代からの古参メンバーのうち、

慈善団体への転身後も組織に残留した計24人が脇を固める。

この24人は現在、鴉座たち主要メンバーとは別動隊として世界各地での復興支援活動、

各国政府からの依頼任務に従事している。

 

 

「そろそろ到着です。準備を」

 

 

操縦桿を握るアーリムが静かに号令を掛け、ジェット機は間も無く着陸体制に入る。

 

 

 

▶︎▶︎▶︎

 

 

 

03:29 a.m.

     ヨルダン・アンマン

 

 

 

▶︎▶︎▶︎

 

 

 

B28は現在、ヨルダン・アンマンにてかつてサファーが所有していた

兵器工場の跡地を拠点として活動している。

ジェット機から降り立ったアーリムら6人はオフィスに移動し、着替えや荷解きなど、

次の仕事へと向かうまでの準備を始めた。

 

「お疲れ諒名、今日も大活躍だったな。リガの市長も安心したろう」

 

「エミルこそ、流石のドライビングテクニックだった。

あそこでゲリラの連中を撒けていなければ、危ないところだったよ」

 

今回の仕事は、リガ郊外の廃墟を占拠していた危険な中規模ゲリラの制圧。

現地警察が手を焼いており怪我人も複数出ているということで、B28の面々に白羽の矢が立った。

 

仕事を振り返りつつ、熱いコーヒーを飲みながら談笑する2人。

オフィスの奥では、アーリムとサファーが次の仕事に関する資料の確認をしている。

 

「しかし、なぜ市長は軍や未来機関ではなく、我々に依頼を?

戦力的にも、彼らを頼った方が確実性はあるだろうに——」

 

冷蔵庫からペットボトルを取り出したマティアスが会話に参加してきた。

そして彼が提起した疑問に、丁度着替えを終えたところのサラがスマートに答える。

 

「例のゲリラは現地の警察や軍から離反した者たちによって組織されていた。

つまり警察や軍の装備、動き方、組織編成は熟知していると見ていいから、

軍を動かすのは悪手。未来機関はシンプルに力不足。そもそも治安維持、

武力制圧を主目的とした組織ではないし、仮に力があったとしても、

彼らはもう世界各地にあった拠点を引き払ってる。世界はすっかり平和になったからね。

で、地理的にも組織の規模的にも丁度良かったのが私たちだった、と」

 

「……」

 

説明を聞いて得心いった様子の鴉座とマティアスとは対照的に、

少し不安げな表情で腕を組んでいるエミルの顔を、サラが覗き込む。

 

「どうしたの?」

 

「あ~……そうして頼ってくれるのは嬉しいが、こうもハードな仕事が続くと、

どこまで保つかって考えちまうんだよ、体力とか人員とか。もっと戦力が……

それこそ、イルヴィアがいれば——」

 

喉元に未だ残る銃創を指でなぞりつつ、エミルがこぼす。

 

「よせ」

 

イルヴィア——

 

その名前が耳に入るや否や、エミルの台詞を遮ったのは鴉座だった。

 

「あいつはFimbulで、“超高校級のスナイパー”として、十分すぎるほど戦った。

今やっと、その重責から解放されて、“普通の学生”としての人生を歩んでるんだ。

巻き込むわけにはいかない」

 

「……悪い」

 

元・“超高校級のスナイパー”イルヴィア・ゲフィオンはピラミデンでの一件の後、

Fimbulを離れてオスロの高校に編入学。その後大学へと進学し、現在は教師を目指しつつ、

フィールドワーカーとして世界各地を転々とする生活を送っている。

新生B28の編成の際に鴉座から声を掛けられたが、彼女はこれを辞退。

アーリムをはじめとする一同もその意思を尊重し、イルヴィアとB28は道を分かつこととなった。

現在も時折連絡は取り合っており、イルヴィア曰く「今の生活が楽しくて仕方がない」とのこと。

 

「いいんだ。俺も時々、そう思うことはある」

 

「……そうか」

 

若干しんみりとした空気が流れそうになったところで、マティアスが口を開いた。

 

「——そういえば鴉座。あの子……そう、時雨子とは、最近どうなんだ? 会ってるのか?」

 

時雨子——

 

あの日、あの時、特務生の仲間たちを惨殺した、

ピラミデンでの一件の主犯格である九道集子の実の妹、九道時雨子。

鴉座にとっては仲間たちの仇の妹であり、また彼女にとっては、鴉座は姉の仇だ。

 

初対面の時は「一悶着あってもおかしくない。それこそ復讐目的での訪問かもしれない」

と思ったものだが、その実、彼女は復讐心など抱いておらず、

関係が希薄だったという姉の所業や思想を、鴉座から詳しく聞くために彼の家を訪ねたのだった。

 

今となっては懐かしい、3年前のことだ。

 

コーヒーカップを置き、鴉座が答える。

 

「あぁ、少し前にアメリカに引っ越してきたらしくてな。それから毎月会ってるよ」

 

「毎月……毎月? 通ってるってこと?」

 

エミルからコーヒーを受け取ったサラが思わず反復する。

 

「そうなるかな。あれから少し経って、

もう1度来たときに料理を振る舞ったら、それが気に入ったらしくて——」

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

—3年前・2度目の訪問時—

 

 

 

「美味しい……実は捜索者というのは偽りで、本当は“超高校級の料理人”だったのでは?」

 

「それはない、でも嬉しいよ。ありがとう」

 

「また伺っても?」

 

「あぁ。もちろん」

 

 

 

—そして、3年後。久しぶりの訪問時—

 

 

 

「このソース……隠し味はお醤油ですか?」

 

「残念、魚醤だ」

 

「ほぼ醤油みたいなものでは……」

 

 

 

—その翌月—

 

 

 

「ショートケーキ……初めて食べます」

 

「へぇ。珍しいな」

 

「家では基本的に独りだったので。買いに行く気も特にありませんでしたし」

 

「……悪い」

 

「いえ。ん……甘い」

 

「気に入ったか?」

 

「……はい」

 

 

 

—そのまた翌月—

 

 

 

「んげ、トマト……よりによって生……」

 

「あれ、苦手だったか……加熱すればいけるか?」

 

「そうですね、トマトソースとかスープであれば、なんとか」

 

「よし、それじゃあメニュー変更。トマトソースパスタにしよう、ちょっと待っててくれ——」

 

『またパスタかよ……』

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

「すっかり懐かれてんな……とても仇同士とは思えねぇ……」

 

「意外と言えば意外だが、ともあれ、仲が良いなら何よりだ」

 

「トマト嫌いなんだ……私と同じだ」

 

三者三様の反応に、鴉座も顔がほころぶ。

 

 

 

コーヒーもすっかり冷めてきたところで、

資料の確認を終えたアーリムとサファーが彼らの輪に合流した。

 

「盛り上がっているところ失礼、次の仕事の方針が決まりました。サファー、資料を皆に」

 

「あぁ、行き先はイギリス・エディンバラ。簡単な物資輸送の支援だが、気は抜くな。

治安こそまともにはなったが、犯罪の発生件数自体は多いままだ」

 

手元の資料をためつすがめつ、鴉座たちの表情が引き締まる。

 

「夜明けと共に出発です。時間はあまりありませんが、

しっかりと身体を休めておくように。では」

 

アーリムの号令で一同が解散し、

それぞれにあてがわれた個室に入ると、間も無く拠点の照明が落とされた。

 

 

 

夜明けまであと数時間——

 

様々な地域で仕事をこなし、身体を休め、次の仕事に臨む。

それが彼らの、鴉座諒名の生きる、“今”だ。

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

—翌年—

 

 

 

01:18 p.m.

     メキシコ・シナロア州・クリアカン

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

赤褐色の砂地を、1台のタクシーが駆け抜けていく。

乗客は、後部座席に1人。

 

日本人の、高校生の女の子——九道時雨子だ。

 

手に持っているスマートフォンには、「送信完了」の文字。

つい先刻、これから会いに行く相手、鴉座諒名へのメッセージを送ったところだった。

 

内容は——

 

『これから伺います。今日は食事ではなく、

直接会ってお話したいことが。お時間は取らせません』

 

「……」

 

緊張しているのか、時雨子はシートベルトをギュッと握りしめている。

鴉座の家まで、直線距離にしてあと約2km。

 

時雨子は隣の席に置いていたリュックサックを膝の上に乗せると、

窓の外を見据えながら小さく息を吐いた。

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——さぁて、仕事に取り掛かるとすっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

 

 

 

NITROUS 前日譚 【Out of Control】

 

燃焼開始

 

 

 

 

 

 

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