夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

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ルネス国内で魔物から街を助けたアメリアとクレムト
彼女達はフレリアとカルチノを結ぶ連絡船の出る港町に到着した

そして、彼女は知る事になる
彼女が思うよりも遥かに多くの思惑が戦争の中にある事を


 交わる道 戻れぬ旅路

私達はフレリア国王であるヘイデン様とヒーニアス王子の提案で聖石を持つジャハナへとグラドの脅威について知らせるべく港町へと来ています

 

私がルネス王都から逃れて以降常に支えてくれているゼト

フレリアへと走ってくれたフランツ

ヘイデン様の指示で引き続き私達に協力してくれる事になったギリアム、ヴァネッサ、モルダ

元ルネス戦士隊長であったガルシアさんとその息子のロス

家族を支える為に盗賊となったコーマとその幼馴染のネイミー

魔物や伝承に詳しいルーテに魔物退治の為に協力を申し出てくれたアスレイ

グラドを止めようとしているナターシャに傭兵ヨシュア

そして兄上から託されたカイルにフォルデ

フレリアから密かに出てきて私に協力してくれる事になったターナ

 

これだけの人達が協力してくれるのは本当にありがたいと思います

 

 

この港町から船に乗ってカルチノ共和国へと渡る予定と聞きました

…ですが、どうやらグラドの侵攻によりフレリアも混乱しているらしく港町に賊が出没。港付近を占拠していると

 

私達は進む為に戦う事を選びました

 

 

 

----

 

 

 

 

やってんねぇ

 

あれってルネスと

…何処の国旗でしょうか?

 

ルネスとフレリアだな

となると噂に聞くエフラム王子かエイリーク王女どちらかの率いる軍勢かね

クレムトさんはそう私に教えてくれますが、明らかに呆れた物言いです

 

 

此処から船に乗るならほぼカルチノ方面に行くんだろうが

混乱する母国を放って良くやるもんだ

 

…大丈夫なんでしょうか?

 

大丈夫な訳ないだろうが

立ち寄った街はまだ良い方。あそこには人手もいたし、武器もそれなりの蓄えがあった。が、これが村となると守り切れると思うか?

 

…無理、ですよね

分かってる。私だってグラドの田舎にある村で育ったから

普通に生活している人達にとっては動きの緩慢なゾンビですら危険な相手なんだ

武器を操るスケルトンや魔力で攻撃して、しかも空を飛んでいるビグル。攻撃力の高いバールやマミーを相手にして満足な抵抗が出来るとも思えない

 

 

それに、だ

ルネスが荒廃し、民が困窮すればする程賊も増える。ルネスは治安が良いと言われていたが、それは別に国内に賊がいなかった訳じゃない

正規軍に挑むという無謀をする連中がいなかっただけの事。ルネス軍が崩壊し、グラドが真っ当な統治体制を敷かないとなればそいつらは嬉々として略奪に動き出すだろう

 

そんな

 

綺麗なものばかり見ていたんだろうが、この様な状況にあってもそんな悠長な事をしてたら王都を開放する頃にはルネスの大半が取り返しのつかない事になっていてもおかしくないんだがねぇ

クレムトさんは頭を左右に振っている

 

 

で、どうする?

 

…合流します

 

…そうか

クレムトさんは私の言葉に言葉少なく応えると

 

 

ま、目の前にいるのは民を虐げる連中だからな

精々見せてやるとしますか

 

私にはそれが賊の事を言っているのか

どちらの事を言っているのか分かりませんでした

 

 

 

 

 

----

 

 

エイリーク様、南の方で戦闘が起きています

 

…どういう事でしょうか?

 

 

ゼトの言葉で南に目を向けてみると確かに賊達が誰かと戦っている様に見えました

 

 

エイリーク様、ならば私が偵察してきます

 

お願いできますか、ヴァネッサ

 

お任せください

そう言ってヴァネッサは戦闘している南へと飛んで行きます

 

 

 

 

 

 

そして少し後、ヴァネッサが2人の人物を連れてきてくれました

 

1人は黒いローブを纏った人物です。珍しい黒髪の男性の様ですね

もう1人は金髪の赤い軽鎧を纏った少女でした

なんというかチグハグな印象を受けますが

 

 

私はルネスのエイリークと申します

私達の援護をして下さりありがとうございました

 

2人の動きにより民家へと進入しようとしていた賊を阻止する事が出来ました。私達だけでは間に合わない可能性が高く、ゼト達を強引に向かわせないといけないかもしれないと考えていただけに正直助かったと思います

 

わ、私はアメリアと言います

 

…俺はクレムトだ。アメリアに雇われている傭兵

それだけだ

 

 

アメリアさんとクレムトさんはそれぞれ言葉少なく自己紹介をしてくれました

 

 

クレムト?

一つお伺いしたい事があるのですが?

もしや貴方は『闇刃』では?

ゼトはクレムトさんの言葉に質問します

『闇刃』?何というか物騒な名前にも思えますが

 

 

そうだが?

別に傭兵である以上、依頼主の意向に従うのは不自然か?

寧ろ俺からすれば、あんな状況にあるルネスの民を放っておいて良くまぁ他所の事に手を出せるもんだと感心しているが

クレムトさんはゼトと問いかけに答えると同時に私達にとって聞き逃さない事を口にされました

 

 

どういう事でしょうか?

 

騎士とは王家に忠を尽くすもの

しかし、だからといって民を無視するのはどうかと思うが?

道中魔物により襲われていた街に立ち寄った。気まぐれで殲滅しておいたが、ルネス全土ではああいった事が幾らでも起きていようさ

…まさか此処に来るまで一度として魔物に遭遇していない訳でもないだろうに

 

…そんな

私は頭を殴られた様な衝撃を受けました。お兄様を助ける為、レンバールへと向かう道中、魔物に私達も遭遇しています

それがルネスの民にも牙を剥いているとなると

 

 

魔王とやらの封印が綻んでいるのだろう。昔読んだ書物には魔王の封印が緩むに連れて強力な魔物が跋扈する事になると書いてあったが

 

…失礼します。それは本当ですか?

 

クレムトさんの言葉にルーテが反応しました

 

 

どちらさん?

 

…ああ、つい

重ねて失礼しました。私はルーテと言います

見たところ貴方は高位の闇魔法の使い手と見えますが、その書物は何処で?

 

これでもそれなりにジャハナでは重用されていたもんでね

それでジャハナの書庫に立ち入らせてもらった事がある

 

…そうですか

ルーテとしてはその書物を読んでみたかったのでしょうか?かなり沈んだ表情をしています

 

 

悪い事は言わん。数人だけでもルネス奪還に動いた方が良い

そうせんと最悪民の不信感を拭い去れないものとなると思うがな、俺は

 

ありがとうございます

…ですが、ジャハナの聖石に危険が迫っていると一刻も早く知らせなければならないのです

 

…何?

私の言葉にクレムトさんは怪訝な顔をすると

 

 

もし良ければ詳しく話を伺いたい

力になれるやも知れんからな

 

そう真剣な表情で私に提案したのです

 

 

 

 

 

 

----

 

…聖石の破壊ねぇ

しかもそれをやったど阿呆がケセルダの馬鹿とは

 

…知り合いなのですか?

私の問いに

 

ええ、アレは実力は高いものの他の面で問題の多い奴だったもんで一時的にアレの監視役をギルドから依頼されていたんですよ

 

…ジャハナの傭兵ギルドと言えば『血の制裁』があるところでしたか?

 

良く知っているもんだ

…ああ、確かに余りにも素行不良な奴や傭兵として相応しくないと判断された奴は傭兵ギルドが臨時編成する『懲罰部隊』による制裁が下される事になるな

俺も何度かそれに参加した事がある

ゼトの言葉にクレムトさんは目を細めて薄く笑った

 

 

ジャハナにおいて傭兵業は外貨を稼ぐ数少ない手段だ

故にその傭兵業の信頼を損ねる奴に容赦する理由はないからな

その笑みは思わずゾッと背筋が凍ったのではないかと錯覚してしまう程冷ややかで、私が生きてきた中で最も恐ろしいものに映りました

 

 

 

 

 

…ではエイリーク様

私とカイルは一度フレリアに戻り、ヘイデン様にエイリーク様からの話を伝えたいと思います

 

はい、私の代理としてお願い出来るのはゼト。貴方だけだと思いますので宜しくお願いします

 

はっ

…ただエイリーク様。あの『闇刃』には決して気を許されません様に

どうやらゼトはクレムトさんの傭兵としての実力は評価しても信用すべきでないと思っているみたいでした

…アメリアから聞いた話だと、彼女が死なない様に鍛えてくれた師と聞いているので決して悪い人とは思わないのですが

 

 

分かりました。気をつけます

港町の賊を倒したので私達はカルチノ方面の船に乗ってカルチノ共和国へと向かいます。ゼトとカイルにはヘイデン様の元へと走ってもらう事にしました

そんなゼトを心配させない為にも此処はゼトの言葉を受け入れた方が良いと私は思い、からの言葉に頷きます

 

 

カイルも道中気をつけて下さいね

 

はっ、ありがとうございますエイリーク様

エイリーク様もどうかお気をつけて

 

 

そう言ってゼトとカイルはフレリア城への道を引き返していったのです

 

 

 

 

 

 

 

----

 

 

カルチノ共和国へと向かう船の中では

 

 

「…クレムト」

 

「おや?誰かと思えば放蕩王子ではありませんか」

 

ヨシュアとクレムトが久しぶりの再会を果たしていた

 

 

 

「…俺は」

 

「聞きたくもありませんよ、貴方の愚にもつかない言い訳なぞ

イシュメア様とて確かに昔は傭兵だったと聞きます。今は亡き国王陛下の幾たびものアタックの末結ばれたと

その国王陛下も亡くなり、あの方はそれでも夫の守ろうとした、そして自分にとっても愛すべき祖国を守ろうと必死になっておられる

その背中を見て育ちながら、それでも自身の考えでジャハナを離れた。ならば私も含めたジャハナの民が言う事はありますまい」

ヨシュアの言葉をクレムトは遮ると彼を責める

 

「…そう、だな」

 

「本来ならば、ジャハナに危機が及ぶ可能性が高いと聞いた時点で自分の素性を明かすべきだった

そうすればエイリーク殿も自国を放ってまでこの様な事をする事もなかったかも知れん

結局お前は逃げているのだよ。責任からな

そんな人間と話す程俺は暇でもない」

そう言い捨てるとクレムトはその場を後にする

 

「…母上」

ヨシュアの呟きだけが、虚しく残った

 

 

 

 

----

 

 

クレムトさん、でしたか?

 

…そういうアンタはアスレイだったか?

何か用か?

 

ええ。ルネス国内で魔物の群れと戦ったとルーテさんから聞きまして

 

…ああ、なる程な

私見にはなるが、昨年の頭くらいに魔物の数が増えたと傭兵仲間達が言っていた憶えがある。そして明確にこの半月程の間で魔物は増えた印象を強く受けるな

 

…やはり聖石の数と魔物の活動の活性化は

クレムトの話を聞いてアスレイは顔を少し青褪めさせる

 

関係性がないとは言い切れんだろうな

が、気になるのはルネスへグラドが侵攻したのはもうひと月以上も前の話だ。にも関わらず、伝え聞く限りだが魔物の活動が活発になったという話は聞かない

 

…となると、ルネスの聖石はまだ無事と考える訳ですね?

 

そう思う方が自然だとは思うが?

フレリアの聖石が破壊されたのが半月程前なのだろう?

 

そうなりますとこれ以上の聖石破壊は阻止しないと

 

それには同意する

書物によるとガーゴイルやモーサドゥークにゴルゴンやタルヴォスなんてのも魔王がこの大陸を支配していた頃いたらしい

それに加えて各種魔物の上位種とも言うものもいたとな

今ならば各国の正規軍や俺たちの様な傭兵でも対処出来るレベルに留まっているが、これ以上となると対処出来る者が一気に減る。そうなればもうどうしようもないだろう

 

かなり危機感をお持ちなのですね

 

自分独りで生きていけると思い上がる程に何も知らない訳ではないからな。身の丈を弁えるってのは自分を守る為にも必要な物だと思うがな?

 

色々ご存じの様ですし、もし良ければルーテさんとも情報と認識を共有したいと思うのですが?

アスレイの提案に

 

別に構わんさ。今は一介の傭兵だが、それなりに危機感はあるつもりだ

クレムトも頷いた

 

 

 

 

 

 

----

 

 

クレムトさん

 

どうした、アメリア

 

実は少し悩んでまして

船の中でクレムトを探していたアメリアは漸くその姿を見つけると声をかけた

 

…そう言えばお前も随分経験を積んだからな。そろそろ見習いレベルから卒業しても良いかも知れん

 

そうですか?

…でもどっちに進んだら良いんでしょうか?

 

…ふむ

アメリアが馬に慣れ親しんでいるならばソシアルナイトの方が良いと勧めるんだが、そんな話は無かったよな?

 

そうですね。馬は乗れなくもないとは思いますが

 

ならアーマーナイトの方が良い気がする

何せソシアルナイトとなると、どうしても馬に乗ったままの戦闘をしなければならなくなる

…まぁ最悪敵に接近して馬から降りて戦うやり方もない訳では無いが、それだとせっかくの機動性を殺してしまう

 

馬の維持管理も大変ですよね

 

だな。どうしてもソシアルナイトとなると軍や組織に属している者が多い。偶に傭兵にもいたりするが、やはりアメリアが言う様に維持管理費も馬鹿にならんと聞く

私の言葉にクレムトさんも軽く笑いながら頷いた

やっぱり傭兵であるクレムトさんも大変なんだと改めて実感する

 

…分かりました

ならアーマーナイトを目指して頑張ります!

 

…言っておいて何だが、お前それで良いのか?

私の言葉にクレムトさんは目を丸くして疑問を口にした。その姿はいつもの少し怖い姿なんて全く思わせない、少し可愛いものでした

…そんな事を口走れば間違いなく訓練が待っているでしょうけど

 

…本来なら新人兵士とでもいうべきだったんだが、何せ当時のお前は軍に属してすら居なかったからな。見習い兵士と便宜上扱っていたが、まさかアーマーナイトを目指すとは

中々に感慨深いものがあるな。…良し、カルチノの港に着いたらお前に合う鎧を探すのを手伝ってやるとしよう

 

…良いんですか?

 

仮にもお前は俺にとっての教え子だ

今までこうやって親身になって教えた事は終ぞ無かったが、中々どうして悪くない。お前の成長祝いと思って素直にうけとっておけ

そう楽しそうにクレムトさんは笑います

もうクレムトさんに師事してからひと月くらい経ちますが、案外クレムトさんは自分の認めた人には甘い気がします。しかも過保護ですし

でも実際今の私の手持ちなんかじゃ、今私が身に纏っている軽鎧すら買えないのも事実。クレムトさんへの依頼料も追加で支払わないといけないのに

 

私は内心余りにも甘く考えていた昔の自分を責めたくなりました

もしも、クレムトさんに出会う事なくグラド軍に志願していたらどうなっていたのでしょうか?

あまり一般兵の給料は良くないと聞きますし

 

 

そう思いながらも私の気持ちは明るかった

頼りになる、そして私を見守ってくれるクレムトさんが側にいるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして船はカルチノへと到着する

そこで彼女は人というものの身勝手さを知る事となる

 

次回『カルチノの攻防』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で次回アメリアちゃんクラスチェンジとなります

ステータスはその時に
実はこの時点でのアメリアでもエイリーク達の部隊の中では結構良いところまでいけます

クレムト?
あれは完全なお助けキャラなので

エイリークはクレムトと話をするか?

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