エイリークは自身が思うよりも遥かにルネス国内の状況が逼迫していると傭兵クレムトから聞き、危機感を感じる
そこでルネス国内でも声望の高い聖騎士ゼトと兄エフラム付きの騎士の1人であるカイルをフレリアのヘイデン王へと向かわせる事とした
戦力的にもアメリアとクレムトが加入した事でゼトとカイルが離脱しても戦力的にそこまでの痛手とならないだろうとの判断からのものだ
だが、ゼトはフレリアへと赴く直前エイリークへと告げる
「あの者には気をつけろ」と
エイリークはその意味を理解しながらも、信じるべきと己に言い聞かせる
そんな彼女の脳裏には、兄が長年信頼してきたとある聖騎士の姿が浮かんでいた
アメリアもそれなりに力がついてきただろうが、やはり通常の重装鎧よりも少しばかり軽めの方が良さそうに思えるが、どう思われる?ギリアム殿?
…うむ、そうですな
しかもアメリア殿はかなり身体が柔らかいと見受けました。となればそれを殺しかねないかと。我々が使う様な重装鎧よりも、クレムト殿の言う様に少し軽く手足が比較的動かしやすい物の方がよいのではないかと
…流石、本職ともなるとやはり勉強になる
という訳で店主。その様な鎧はないものか?出来れば彼女が今まで使っていた軽鎧の様に赤系の鎧だとなお良いのだが
エイリーク達の乗る連絡船は無事カルチノ共和国側の港へ到着した
現在ギリアムやフォルデ、クレムトの提案を受け、情報収集に各自あたっていた
そんな中、クレムトは愛弟子と言っても過言ではないアメリアの為に鎧を購入すべく港にある防具屋を訪れている
到着直前の話し合いの場において、改めて挨拶を交わしたクレムトとギリアム。クレムトの弟子であるアメリアの鎧を探しているという話を小耳に挟んだギリアムはクレムトに対して鎧選びの助言をしたところ、クレムトから都合がよければ手伝って欲しいと頼まれる
ギリアムとしても歴戦の傭兵であるクレムトの人物像をはかりかねていたこともあり、それを引き受ける事としたのであった
ではこちらはいかがでしょうか?
少し値ははりますが、お客人の求めるだけの性能はあるかと
店主としても、あまり売れる事のない重装用の鎧が売れる好機とあって
何せ
クレムトの様に布衣一つで戦場に出る者は殆ど居ないが、彼等とて防御力が高いとは言え重装鎧を買う様な奇矯な者はいない
店主としても売れる見込みのない重装鎧など仕入れたくもなかったが、店主が防具を仕入れている防具職人が作り上げた自慢の一品。今後も長い付き合いを考えていた店主は将来への布石としてこの鎧を仕入れる事にしたのである
勿論売れないだろうと思いながら
だが、
何せ展示しているとはいえ、ガラスケースの中に入れている訳もなく店の中に展示する形で置いているのでどうしてもスペースがいるし、掃除の手間もかかってしまうのだ
…店主、試着は出来るのか?
…本来ならば遠慮していただきたいところではありますが
…感謝する
店主とて防具を売り続けてそれなりになる
目の前の少女の体型などを見てこの鎧を着れる可能性は高いと判断。加えて重装騎士用の鎧の話をしている以上、それが着れると確信しているとも判断
自分の中のルールとしてはして欲しくないが、此処が仕掛けどころと考え目の前の人物にわかりやすく意思表示をした
…アメリア。そちらの衝立の向こう側で一度着てみろ
ならばヴァネッサを外から呼んでこよう。流石に初めて重装鎧を着るのであれば手助けもあった方がよいのでは?
重ねて感謝する,ギリアム殿
この借りは戦場にて返させてもらおう
頼りにしている
クレムトの言葉にギリアムは軽く笑って返した
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いやいやいや、お前なにやってんの!!
もしも、この場にクレムトを知る傭兵仲間がいたならば、まず間違いなくこう言うだろう
借りを戦場で返す
これはクレムトと敵対する者が聞きたくない言葉ランキングぶっちぎりのトップに君臨する言葉
なんなら殿堂入りしても良いとされる程
元々『動く虐殺者』とすら恐れられるクレムト
そのクレムトが本気になると、とにかくヤバい
いつも出す亡霊戦士の武器が鉄の斧や鋼の斧、手斧などから
銀の斧かキラーアクス、トマホークなどに代わるくらいヤバいのである
そしてヴァネッサの手伝いでアメリアは鎧を試着した
…動きはどうだ?
大丈夫です
ならこれにするとしよう。アメリア先に出ていろ
ヴァネッサ殿、ギリアム殿今回は助かった
いえ、お力になれたなら
同じ軍の仲間なのだ。気兼ねなく相談してくれて構わん
そうヴァネッサとギリアムは口にするとアメリアと共に店を出て行った
幾らだ?
6,000。…いえお客人はどうやら凄腕の傭兵の様ですな
こちらの依頼を受けてくださるならば5,000で構いません
此方としては良い買い物をさせて貰ったと満足している
依頼は受ける。…これが代金だ
クレムトはそう言うと金の入った袋を差し出す
…見るからに多そうですが?
構わんよ。相場は聞いている
それより安くては此方としても良い気分で買い物が終わらんからな
…ではありがたく。依頼なのですが
このカルチノ共和国で今政争が起きておりまして
ふむ?
カルチノ共和国には長老と呼ばれる者が数人おります
その者達による合議制を採用しているのですが、グラドのルネス侵攻などにより長老の1人であるパブロが今までのフレリアとの同盟を捨ててグラドに協力すべし、と
勝ち馬に乗りたいのだな
…ええ。ですが、カルチノは商業国家
約定を
クレムトの言葉に店主は暗い表情をする
トップであるクリムト様は現在行方不明。聞くところによるとフレリアの王子に兵を差し向けるだとか
…分かった。此方としてもそれは好ましくない事
店主の依頼、請け負った。成功は目に見える形で示すとしよう
クレムトはそう言い残し、店を後にした
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グラド軍だと!?
フレリアの王子ヒーニアスは雇った傭兵ジストからの報告に驚きの声を上げた
…ああ、ウチのテティスが遠目に見たらしい
…となるとカルチノの長老会議で何かあったか
分かった。君達には報酬を渡そう。現時刻をもって、君達との契約を破棄する
どこへなりと好きに行くと良い
ちょっと、そんな勝手に!
ヒーニアスの横柄極まる言葉にジスト傭兵団の金庫番の踊り子テティスは怒りの声をぶつけるが
…ならアンタはどうする?
それには答えられん。君達がグラドに味方しないとも限らないからな
…どうやらとんだお人好しみたいだな、アンタ
やれやれ、そういう人間は嫌いじゃない
ジストは剣を担ぐと
…テティス。俺達は王子に味方する
…はぁ、わかったわよ
テティスと共にヒーニアスに味方する事を口にする
ま、待て!
分かっているのか?どう見ても勝ち目はない!
無駄死にするだけだ。傭兵である君達はそれで良いのか!
こう言う仕事をしてるとな、王子さんよ
ジストは眼下に見えて来るグラドの大軍を睨みつけ
命を預けても良いと思える相手に味方したくなるんだよ
ヒーニアスの方を向いて楽しそうに笑った
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ヒーニアス王子が!?
らしい。南の砦の方に向かったと聞いた
エイリーク様。どうやらパブロとやらの雇った傭兵の一部が南の砦の方へと向かったと
…分かりました。ヒーニアス王子を助けます!
ギリアムには別働隊の指揮を頼みます。クレムトさんは
エイリークの言葉にクレムトは
エイリーク殿。悪いがちと先行させて貰いたい
…借りは返す主義なんでね
そう口元を吊り上げて笑った
参考ステータス
アメリア(アーマーナイト)レベル1
HP30 力14 技13 速さ14 幸運17 守備14 魔防12 移動5 体格8
槍D ほそみの槍 鉄の槍 傷薬×3 特効薬
亡霊戦士レベル13
HP1 力14 技11 速さ13 幸運0 守備0 魔防0 移動6
斧A トマホーク
クレムト
変わらず
クレムトは口元を邪悪に歪ませると
…さて、やるか
そう呟いて南の砦へと足早に向かった
なお、亡霊戦士も同行している模様
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ねぇジスト
…どうした?
砦の出入り口で敵を押さえているジストにテティスは固い口調で声をかける
何かあったのか?
ヒーニアスも何やら様子のおかしいテティスに声をかける
『闇刃』がいるわ
…マジか、それは
テティスの言葉にジストは一筋の汗を流す。そのジストにテティスは無言で頷いた
敵か?
いえ恐らく違うと思うわ。カルチノの傭兵達を蹴散らしていたのが見えたから
…助かるな、それは
どうやら王子、俺達は悪運が強いみたいだ
『闇刃』とは何だ。すまないが聞かない名前なのでな
ヒーニアスの言葉に
『
ジストは肩をすくめると出入り口の防衛に戻った
その頃
な、なんだコイツ
くそっ、攻撃があたらねぇ
誰か助けっ
南の砦へと向かう山道には死体の山が築かれつつあった
それは敵の命を喰らいながら敵を殲滅していくクレムトの戦闘スタイルを端的にあるジャハナの傭兵が表現。ジストやケセルダ、アイオスなどの一部傭兵が好んで使うクレムトのもう一つの呼び名
闇魔法は相手の精神に作用する事の多い魔法であり、相手を傷つける事なく命を奪う凶悪なもの
その為、クレムトの後には血が滴る事はない
ただ死んだと第三者から見れば全く分からない
仮にその魔手から逃れようとも
ブンッ!
ひ、ひいっ
こんなの聞いてな
クレムトが呼び出した亡霊戦士によって、その命を刈り取られるだけの事なのだから
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…フォルデ、本当に南の砦救援の援護は良いのですか?
大丈夫ですよ。あの傭兵が任せろと言ったんですから
…そう、ですか
エイリーク達は北にある今回の原因であるパブロの雇った傭兵隊を相手取るべく、簡易的な陣を構築しつつあった
エイリークとしては単独で南へと向かったクレムトが心配なのだが、ゼトに代わりエイリークの傍で補佐を勤めているフォルデは援軍を出す必要はないとエイリークを説得していた
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エイリークは自身に欠けているであろう部分を言葉を飾らずに指摘してくれたクレムトに対して少なからぬ興味があった
批判はするし、糾弾も時にはするのだろう
エイリークの周囲にいる者達は自身を支えてはくれるが、それに対して異議を唱える事はない
兄であるエフラムですら殆どないのだ
しばしば口喧嘩をするフレリアの王女ターナとヒーニアス王子
エイリークはその姿にある種の憧憬すら持っていたのである
そして何よりも、自身が最も頼りにしているゼトがあそこまで不信感を顕にするのがエイリークにとって不思議でならなかった
彼を信じて慕っているアメリアを見れば、その人柄が決して悪いものではないとエイリークは思う
フレリアの司祭であるモルダは
あの御仁は傭兵としての真摯にあろうとしておる様に私には見えます
我々とは違い、傭兵とは生死の境に生きる者達。どうしても騎士としての視点からものを見てしまうゼト殿とは合わぬのでしょう
と言っていた
エイリークは連絡船の中で彼と話をしてみたいと思って、その姿を探していた
結局見つかる事はなく、彼の教え子らしいアメリアから話を聞く事が出来たのは幸運だったといえる
エイリークの中で表現し難い感情が生まれつつあった
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フォルデ兄さん
…なんだ、フランツか
フォルデは陣の設置状況を確認する為にエイリークの元を離れて見回っていると、そこに彼の弟であるフランツが声をかけた
クレムトに対して不審を抱いているゼトやカイル、フォルデと違いフランツはエイリークが話をしてみたいと言っているのに何故兄がそれを邪魔するのか不思議でならなかった
フランツからすれば、多少毒を吐くものの基本的にエイリークやルネス、そしてアメリアの事を考えて発言している様に見える
価値観の違いはあるが、それでも仲間として受け入れているならばぞんざいに扱うべきではないとフランツは思っていた
どうして兄さん達はクレムトさんを敵視するんですか?
…アレはな、フランツ。『バケモノ』なんだ
フランツの言葉にフォルデはそう吐き捨てた
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少し前、と言っても1年ほど前の話だ
当時俺とカイルはオルソンの指揮で凶悪な山賊を討伐していた
俺達は騎兵だから、山岳地帯での戦闘は不得手
アイツ等は俺達を見るなり、そのまま山伝いに逃げようとした。どうしても安定しない山道や石や枝の茂っている獣道となると中々距離を詰められなかった
だが、そいつ等を追いかけ続けてやっと根城を見つけ踏み込んだ俺達が見たものは
一面に広がる赤
そしてその中にある黒だった
俺達も騎士として賊討伐に駆り出される事はある
だから、誰かを殺す事をどうこう言うつもりはない
だが、あそこまで残虐な場面を見た事はない
アイツはそれを平然とやった
信じられるか?
洞窟の壁面にまで血が飛び散っていたんだ
大凡マトモな方法ではないやり方でアイツは始末したんだ、山賊達を
そして呆然とする俺やカイルに見向きもする事なく洞窟を出て行こうとした
「…何者か」
「傭兵だ
何処ぞのノロマな連中のせいで近くの村に被害が新たに出たんでな
村長の娘さんが攫われて殺されたそうだ
だから殺せと言われた」
「此処までする必要があったのか?」
オルソンはアイツに言葉を浴びせた
だがアイツはつまらなそうに
「こうでもしなきゃ、また別の奴等の根城になるだけだろう
それとも何か?お優しい騎士様達はあの村を守ってやれるんで?
…出来はしないだろう?
だから見せしめをした。それだけだ」
そう言って俺達の前から姿を消した
「…戻るぞ」
俺とカイルはその時自分の無力感を嫌と言うほど味わったんだ
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「助かったわね」
「…どうやらまだ俺達にはやる事があるらしいな、王子?」
「ああ、どうやらその様だ
しかしかなりの人数いた筈。それを苦にもしないとは凄まじいものがあるな」
「…おや、見慣れた顔があるな
まぁ良いさ。フレリアの王子ってのはアンタか?」
北側から迫っていたカルチノの傭兵達はその姿を消し、テティスとジスト、そしてヒーニアスはクレムトとの合流を果たしていた
「私がフレリアの王子ヒーニアスだ。救援感謝する
もし良ければ名を伺いたいが」
「随分傭兵風情に丁寧なこった
クレムトだ。今は訳あってエイリーク王女の軍に協力している
生きてたか、ジストにテティス。…おかしいな、お前等2人がいるならあの騒がしいガキと我らが麗しの
ヒーニアスの言葉に苦笑混じりで応えると,旧知の間柄でもある2人を見て首を捻る
「ユアンは宿にいるわ
マリカは今回依頼を受けていないのよ」
「少しマリカの依頼が立て込んでいてな
お前がいたならマリカの補佐に回ってもらうつもりだったが」
「…あー、ジスト?」
「…どうした?」
「いるわ、お嬢
今この砦を目指して南面の山道から来てる」
「分かるのか?」
思わずヒーニアスが口を挟む
「一応これでもサモナーなんで
亡霊戦士を通してある程度周囲の状況を把握出来るんですわ」
「…お前絶対それ反則だろうが
お前の腕に使い捨ての駒。しかもそれが周囲の偵察まで出来るのは」
「知らんわ
出来る事は出来るし、出来ん事は出来ん。ついでにやりたくない事はやらん」
「…相変わらずねぇ
それでマリカの様子は?」
「明らかに戸惑ってるわ。多分亡霊戦士見つけたんだろ?」
ジストは呆れ、テティスは仲間の様子を訊ねる
「因みに聞くが、武器は」
「トマホーク」
「殺意しかねぇじゃねぇか」
クレムトの言葉にジストは大笑いした
マリカの無事が確定したのだから
----
その頃、砦に向かうグラド軍は混乱のさなかにあった
亡霊戦士
戦場における不幸の象徴とも呼ばれるそれが自分達に牙を剥いたのだから
「く、くそっ動きがいいぞ、コイツ!」
「て事は高練度のサマナーがいるってのか、畜生!」
(クレムト?)
グラドに雇われているマリカは亡霊戦士の向こうにやたら
ジャハナの傭兵達はこう言っている
やる気のある時のクレムトを敵にするな
と
マリカは基本あまり周囲の事に関心を持つタイプの人物ではない
が、流石に『懲罰部隊』に優先的に呼ばれている狂人を相手にしたいとは思ってもいない
マリカとて、自分が所属している傭兵団の一員という自覚はあるのだから
混乱するグラド軍を他所にマリカは周りに気付かれない様に砦へと向かっていった
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「…そうか。もしも契約が終わったら声をかけてくれると助かる
私としてはクレムト。君を雇いたいと思っている」
「お前が師匠、ねぇ」
「ユアンがまた騒ぎそうね、これは」
「なんだろうな。評価がバラつきすぎて何とも言えない気分になる」
そしてクレムト達はマリカと合流
北上し、パブロの遠距離魔法をクレムトが受け、その回数を尽きさせた。更にアメリアが囮となり、パブロのそばにあったシューターの攻撃を引き受け
その間に
亡霊戦士がシューターを強襲
シューターは沈黙
僅かに残った傭兵を蹴散らすとエイリーク達はパブロを撃破し、カルチノの長老であったクリムトを解放し一路ジャハナヘ向かうべく山へと踏み込む事となる
長い(断言)
今回は書くべき内容を詰め込みすぎた気がする
なおクレムトは明らかに『経験値ハンター』となるので実際にキャラとしていたならば、間違いなくいざという時以外使わないだろうと確信する
エイリークはクレムトと話をするか?
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する
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しない