夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

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ルネスに対する多大なアンチ表現が含まれます(今更)

それでも良ければ、どうぞ


 外伝 荒れ果てた地

「…これは」

ルネス王国の将軍であるゼトは目の前の光景に言葉を無くす

 

 

ボロボロになった家屋、ところどころに倒れている住民。逃げ惑う山賊にそれらを追いかける魔物達

そこにかつてのルネスの姿などなく、ただ虚しいまでの太古からの掟、弱肉強食のみが支配する世界だった

 

 

 

「…ゼト将軍」

 

「どうだった、カイル」

念の為に廃墟となってしまった家屋や村全体を手分けして見て回ったゼトとカイル

 

しかしながら、あるのは村人と山賊。そして先程倒した魔物の死体だけだった

 

 

「誰も」

 

「そうか」

暗い表情を隠しきれないカイルにゼトはかける言葉が見つからなかった

 

『騎士とは王家に忠を尽くすもの

しかし、だからといって民を無視するのはどうかと思うが?』

ゼトの脳裏に傭兵の言葉が浮かんでくる

 

 

 

 

ルネスが陥落した時、ゼトは国王ファードから託されたエイリークを守る事に必死だった

敵の竜騎士からの攻撃を何とか凌ぎ、山賊を打ち倒し

そして何とかフレリアにたどり着いた

 

 

エイリークの兄であり、次期ルネス国王であるエフラムを救援したのも間違いとは思っていない

 

その後、戦火を広げようとするグラド軍を止める為に動き出したエフラム。聖石破壊を防ごうとしたエイリーク

どちらも必要な事と

 

 

 

 

だが、それは荒廃し混乱するルネスの民を見捨てる選択となるとはゼトは思いもしなかったのだ

 

今思い返せば、エフラムとエイリークの決断に対してヘイデン王が驚いていたのを今更ながらに思い出す

あの時は豪胆なエフラムの決断と大陸の未来を真剣に考えるエイリークの姿に驚いていたのだと思っていたが

 

 

 

 

----

 

 

 

フレリアに戻ったゼトとカイルであったが、ヘイデン王との面会は叶わなかった

 

貴殿達ルネスの生き残り(・・・・)には支援を行なっていよう

エフラム王子によるグラド攻めに対する支援をな

 

ゼトとカイルを迎えたフレリアの文官の1人は

 

この上ルネス本国に対応する為の支援など認められん

陛下は確かに貴殿達を評価していた

 

が、自国の民を最優先にせぬ者に我等フレリアがするべき事はない

…ゼト将軍(・・)

 

我等は貴殿達に支援をしている

…では貴殿達は我等に何が出来るのかね?

そうゼトに訊ねた

 

 

ゼトはその言葉に何も言い返す事は出来なかった

 

 

 

 

 

将軍ね

亡国の集まり風情が何をほざくのやら

 

ゼト達が去った後、フレリアの文官はそう不愉快そうに吐き捨てた

 

 

ルネス王都が陥落し、王族こそエフラムとエイリークが生き残りはしたものの現在のエイリークが率いている部隊の殆どは善意の協力者に過ぎない。それらをまとめ上げている手腕は認めるべきだろうが、逆を言えばその程度

 

旧ルネス王国軍の人間と言えば、カイル、フォルデ、フランツのたった3名という有り様

にも関わらず、ルネスの騎士達はゼトの事を将軍と呼ぶ

 

実に滑稽ではないか?

最早ルネス王国軍など過去の物でしかない

その上民間人の協力一つなければ、何一つ出来ないのに

 

 

 

にも関わらず、ルネスの民を後回しにする

 

仮に彼等が何処か僻地に飛ばされていたならば理解できよう

祖国奪還の為に地道な努力を積み重ねばならぬとフレリアも協力を惜しむまい

汚名を着せられたならば、その解決に向けてフレリアも支援を考えるだろう

 

 

しかも、ルネスから逃れる時やエフラムを救援する時彼等は山賊や魔物とエイリーク達は交戦している

グラド軍だけでは決してない

 

つまりその脅威を理解しておきながら、それでも敵を倒す事や聖石を守る為に動くと言った訳である

 

 

ルネスの王族ならば

ルネスの騎士なれば

 

何故今苦しんでいるであろうルネスの民を放置するのか?

文官達には理解出来なかった

 

 

エフラムとエイリーク

確かに才気溢れる若者だった。だからこそ残念に思う

2人の目に民は映っているのだろうか?

 

エフラムとエイリークを見送ったヘイデンはそう文武両官を集めた席で沈痛そうに語った

だからこそ、ヘイデンはエイリークの力になりたいと言っていたターナの話を却下する

 

民を見ない王族についていける民はいないのだから

 

…ファード。お前の子供達はお前の事を理解しておらんのだな

 

ヘイデンは嘆く

 

 

エフラムは武を高めんと日々鍛錬に励んでいるとルネス王国でも有名だった

ゼトやカイル、フォルデを始めとした騎士達はその姿を讃え、協力を惜しまなかったという

 

 

繰り返すが、エフラムはルネスの王子であり兵士でも騎士でもない

武芸に励む必要がないとは言わないが、それと共に学ぶべき事は山とある筈

 

少なくとも他国の将軍に師事するよりもやるべき事や見るべき事はあっただろう

当時、エフラムの話を聞いたフレリア王国の者達。特に政治や軍事に深く関わる立場の者はこう思ったもの

 

何をやっているのか?

 

次期国王でありながら、兵士や騎士の真似事をして何になる?

仮に戦乱の時代であればそれも良いだろう

 

しかしその当時は各国の関係は良好であり、族討伐や偶に出てくる魔物討伐くらいしか武を必要とする場はなかった

 

将の将たる立場である王族が無意味にも思える事に多大な時間と労力を使っている

それがフレリアから見たエフラムの姿

 

----

 

ルネス国王ファード

その在り方から『勇王』と評されていた人物であった

 

国内において跋扈する山賊を数多く討伐しており、その勇猛果断な事より民からも支持されていたし、その清廉潔白なあり方は他国からも称賛されるに値する存在

 

だがどうやらエフラムはその力にしか興味を持たなかったのだろう

次期国王ともあろう者が自軍でも自前の戦力を用意するでもなく、友好国の軍を率いて敵と戦おうなどと

エイリークとて、別にそれはフレリアが主導してすれば良いだけの事

 

特にフレリアは実際にグラドによって聖石を破壊されているのだから名目は立つだろう

 

 

しかしエイリークは自身で危機を伝える(・・・・・・・・・)と口にした

つまり

 

 

フレリアは頼むに及ばず

と言ったに等しいのだと彼女は気付いただろうか?

 

 

 

----

 

 

政治の世界において優しいは美徳ではない

 

甘さであり、付け入る隙であり、欠点なのだ

 

 

 

元々王都が陥落し、ルネス王国軍は瓦解し、あまつさえ国王すら討ち取られたルネス王国

 

この状況において、王子や王女が生きていたところで何の意味があると言うのか?

騎士ゼトはフレリアへの救援を求めた

 

 

つまりその時点でルネス王国側は独力でグラドに抗する事が出来ないと認めている様なもの

仮にこれがフレリアに救援を求めながらもルネス国内で抵抗していたならば、フレリアにとってもエイリークの存在は決して無視し得ないものとなっただろう

 

しかし、実際にはフレリアを頼りルネスからフレリアへと落ち延びている

 

 

エフラムが

エイリークが

ゼトがどう言い募ろうとも

要所であるレンバールを落としたとしても

 

ルネスがフレリアの力を頼らねばどうにもならないのは明らかだ

 

----

 

であるならば、方針を定めるのはエフラムやエイリークであるべきなのか?

 

いいや、違う

それまでルネス残党を匿っていたフレリアにこそ、その選択権は委ねられるべきではなかろうか?

 

例えヘイデンが2人の意思を確認したとしても、フレリア側に最大限配慮して然るべきだった

 

 

エイリークがジャハナヘ向かうならばエフラムが

エフラムがグラドに攻め込むならばエイリークが

 

足らぬところであるルネス奪還に向けて動くべきだった

それをあの場で指摘する事すらしなかったルネスの生き残り(・・・・)に何を遠慮する事があるというのか?

 

 

 

仮にルネスを奪還できたとしても、早期に奪還せねば活力や経済力などあらゆるものがルネスから失われよう

何もないところから、ルネスを再興出来るとでもいうのか?

 

政治から目を背けた王子と何も知らぬままに必死で歩んできた王女

民の事よりも王族の意思を優先する騎士擬き(・・・・)

 

 

出来るはずがない

出来なければどうする?

 

支援を求めるしかないだろう

 

 

何処から?

 

友好関係にあるフレリアからになるのではないか?

 

 

 

冗談ではない

王女を匿い、無謀とも言えるグラド侵攻に駆り出された上に荒れ果てた国の再建にまで手を貸さねばならぬというのか?

 

対価何一つ示せない相手に

 

 

エフラムとエイリーク出立後、フレリアの文官達はこの予想があり得る未来と判断

速やかに『ルネスとの関係解消』を視野に入れた今後の方針を考えるべきとヘイデンに陳情している

 

 

仮にグラド攻めでエフラムが倒れたとしても、フレリアは一切関知しない

 

ヘイデンは文官達を集めた席でそう語る事になる

 

 

 

 

----

 

 

「ゼト将軍

流石に人手が足らぬと思います」

 

「…そう、だな」

いくつもの荒れ果てた集落を回ったカイルはこのままでは埒があかないとゼトに進言する

 

それは口にこそ出さないものの、ゼトも持つ共通の思いだった

 

 

際限なく溢れ出る魔物

どれだけ行っても現れない生存者(ルネスの民)

キリのない夜盗や山賊の襲撃

 

どれも2人の精神を疲弊させるには充分過ぎるものだった

 

「せめて王国軍の生き残りでもいたら」

思わずカイルの口からも弱音が出てしまう

 

「…一度フレリアに戻って支援を頼むしかない、か」

ゼトは情けなさを感じながらもカイルと共にフレリアへと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後には無惨に魔物に殺されたルネスの民の亡骸が転がっていた

 

 

 

 

 

 

 

 




正直紋章や暗黒竜、聖戦や封印、烈火に比べると聖魔の特にルネス王国の人間(民間人除く)の意識がヤバ過ぎると思う

聖石の危機とグラド本国への逆侵攻を同時に行なうとか何なんだろうね?

特にエイリークは指輪の為に一度民を人質にされてますよね?
魔物達に破壊された場所も見ましたよね?


それで聖石の破壊を防ぐ為に民を放置するとか少し理解に苦しむところ

なんでこっちのルートでも盛大に曇らせます(断言)

エイリークはクレムトと話をするか?

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