夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

2 / 20
昔のプロットが途中までだったので、勢いよく書いてみたらなんとも言えない仕上がりになったでござる!

今回、ルネスの兄妹に対する多大な(・・・)ヘイト的表現が含まれます

予めご了承の上での閲覧を推奨します

もし宜しければあとがきにてお会いしましょう


 国を想う者達

 

 

 エフラム王子率いる軍勢がリグバルド要塞を陥落させたらしい

 

なるほど、(民を顧みないもの)らしいやり方だ

確かにグラド中枢を狙うのは悪い事ではない

 

 

だが、相手は山賊の類ではない

現在の情勢はルネス・フレリア連合軍とグラド帝国軍による『戦争』なのだ

 

仮にグラド皇帝ウィガルドを討ち果たしたとして、強大なグラド帝国軍が早期に瓦解するとでも思っているのだろうか?

確かに命令系統は混乱しよう

 

グラド三騎やそれに従う者達であれば、剣を置くかも知れないな

 

だが、狂犬や狂人揃いの新たにグラド六将として加わった者達がそれで止まるはずもない

寧ろ、『穏健帝』と呼ばれていた皇帝ウィガルドの死を知ったグラド将兵の中にはルネスやフレリアに対する憎悪を燃やす者も現れよう

 

 

ルネスを奪還するのであれば、何の問題もない

 

ルネス王族であるエフラムやエイリークが旗頭である以上、祖国解放という大義はあるのだから

 

 

斬首戦術を多用するからこそ分かる

アレは戦場という限定された空間でこそ有利に働くが、それが国相手ともならばまた別の話になるだろう

 

 

国の統領が相手国の王族に殺されて、黙っていられる軍人というのは殆どいないだろう

彼等にも誇りがあり、守るべき矜持がある

そもそも、グラド侵攻により父親である勇王ファードを喪った奴等だからこそ分かるはずだ

 

王を、国を奪った者に対する怒りが

 

 

 

間違いなく、この戦争がルネスの逆転を許したとしても大陸の未来は明るくないな

 

グラド帝国を仮にうちやぶったとして、だ。その広大な領土をどう統治するというのか?

 

ルネスやフレリアの人間が統治するのは論外

ジャハナやロストン、カルチノでは治まるまい

当然長期的に見ればグラド関係者が治めるほかないだろう

 

 

 

まぁ、一介のしがない傭兵である俺には関係のない話なんだがな

 

 

 

 

アメリアの指導が終わったので、俺はいつもの拠点に戻った

生憎とルネスやフレリア、グラドにも興味はないからな

 

傭兵が義理人情で仕事し始めたら、それはもう傭兵じゃないと俺は個人的に思っている

 

傭兵が戦うのは金の為であり、友誼の為でも名誉の為でもない。ってな

 

 

ま、こんだけあちこちでドンパチしてりゃ、ロクでもない連中(魔物ども)も湧いてくるだろうさ

 

本来なら、そういうのをどうにかするのが軍や国の仕事なんだがなぁ

それが期待出来ないと思った連中は俺たち傭兵を雇う

 

個人的に言えば、本当に憐れなもんだと思うがな

 

 

魔物が出て、被害が出る

なのにお上たちは滅んだ国の復興の為じゃなく、民の為でもなく『敵を倒す為』に戦ってるときたもんだ

 

エフラム王子、エイリーク王女さんよ。アンタたちは知らねぇだろうな

 

 

今ルネス王都はオルソンとかいう元ルネスの正騎士サマが治めてる。そしてそいつは『全く民の事を見てねえ』事をよ

 

反吐が出るぜ

 

 

グラド帝国に踏み込んで敵を打倒するだぁ?

アホか。先ずはテメェらの国を取り戻して民の平穏を取り戻そうとするのが王族サマのする事だろうよ

 

今、この戦争に興味を持たない俺たちみたいな傭兵が一番行っている場所が他ならぬ旧ルネス王国領なんだがね

民の命一つ守れましねぇ、守る気もねぇ王族なんぞに着いていく民がいるとでも思ってんだか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから半月が経った

 

既に俺達『中立派』なんて呼ばれている傭兵の疲労は尋常じゃねぇ

何せ魔物どもはいくらでも湧いてきやがるし、治世が崩壊してるルネスだ。山賊どもも容赦なく奪おうとしてやがる

 

だが、一度としてルネスの関係者がルネス領内に来て戦ったって話は聞かねぇな

どうでも良い話は聞いてるが

 

 

なんでも『黒曜石』のジジイがグラドに反逆したとかで処刑されそうになったところをルネスのバカ王子に助けられた、とか

何を血迷ったのかジャハナの方に向かっているって言うエイリークとやらとか、な!!

 

バカかよ!!!

 

 

既にその話は旧ルネス領内に拡がりつつあるが、それに希望を抱いている連中なんて殆どいやしねぇ

寧ろ

 

 

エフラム様やエイリーク様は何故お戻りになられぬのじゃ?

 

とか

 

ゼト様がいるならば何故我等を見捨てられるのか!

 

とかよ?

 

 

知らねぇぜ

エフラムにせよ、エイリークにせよ俺たちの知る範囲では民衆の支持を失いつつある

 

ま、それ以上に俺達傭兵からの支持はないがな!!

 

 

仮にルネスが再興したとしても、少なくとも今のルネスで魔物退治の依頼を受けている連中はルネスに協力しないだろうな

アホらしくなる

というか、現在進行形で仲間達はやる気がなくなりつつあるわ

 

それでもルネスの民がかき集めてくれた報酬があるから護ってやるけどよ

 

 

 

 

 

当時の事を知るルネスの者は言う

 

 

エフラム王子やエイリーク王女がグラド帝国を倒すとか、そんな事(・・・・)ワシらはどうでも良かったんじゃ

ファード様が生きておられたなら、敵を倒すよりもまずワシらの事を守っていただけたじゃろうに

何でこうなったんじゃろうかのぉ

 

 

後の歴史家はこう語る

 

 

エフラム王子によるグラド帝国逆侵攻とエイリーク王女によるジャハナ解放

そのどちらかでも、ルネス解放に向かっていたのであればルネスの民は素直にルネス再興を喜べたのだろう

 

当時のルネスの民の怨嗟の対象は確かにグラド帝国にもありました。ですがそれ以上に自分達を見捨てて戦争をしていたルネス王家関係者に対するそれは遥かに強く、グラドへのそれを凌駕していたのです

 

 

ルネス王国が再建される事になっても、この時の事を民は忘れる事がなかった

民がルネス王家に向ける視線はいつも冷めきっていたのである

 

彼等の根底にあるものは『自分達は見捨てられた』という被害者意識であり、少額しか出せないのに駆けつけてくれたジャハナの傭兵達への感謝であった

 

 

当時ルネス領の民達は魔物や山賊達に無抵抗なまま殺されるしか道がなく、統治者である筈のグラド側に助けを求めても返ってくるのは冷笑のみだった

そこで死ぬ思いをしてまでジャハナの傭兵達へと依頼したのだ

 

フレリアという大陸北端の国へと要請するにはあまりにも障害が大きく、まだジャハナの方がたどり着ける可能性が高かったから

 

 

ジャハナの傭兵達は当初戸惑ったそうだ

それもそうだろう。旧ルネス王国とはいえ、現在はグラド帝国の領地である

となれば、グラド帝国がそこに住まう者達について責任を負うべきであり、他国の傭兵に頼み込むなどあってはならなかったから

 

だが、あまりにも必死であった様子から一部の傭兵は「依頼料は少ない。ならせめて食事くらいは出してもらうぜ」と領民側に条件をつける事でルネス領に行く事を決めた

彼等傭兵としても本音としては『バカバカしい』の一言であったが、彼等とて貧しい事や命の危機がある事については他人事とは思えなかったのであろう

 

傭兵とて金がなくても、食料(メシ)がなくても苦しいのだ

それでも彼等には武力(チカラ)がある

だが、民衆にはそれもない

 

グラド帝国の占領下にあって唯一政策といえるものがあるとすれば、『民衆から武器を取り上げた』事だろう

 

 

時代こそ異なれど、かの関白秀吉が石田三成に命じて行なわせた『刀狩り』と目的は同じである

民衆の武力蜂起を防ぐ為

 

 

マトモな治世であれば、それでも良かったがグラド帝国国内は知らぬが、旧ルネス領においては統治機構など存在しない

 

自分の身は自分で守らねばならない

 

だが、山賊や魔物達相手に徒手空拳で挑むのは自殺行為に他ならず、さりとて日常で使う様なモノを武器にしたとて文字通り刃が立つはずもなかったのである

 

そんな窮状を知った傭兵。しかも彼等は勝ち続けている筈のグラドや名目があるフレリア、ルネスにも手を貸さない連中

『苦しんでいる民衆の為に戦う』

などと言う綺麗事を言うわけではないが、あまりにも無慈悲なそれに反発するのはある意味では必定だったのだろうか?

 

 

彼等はルネス領に向かい、民衆の依頼を受ける事とした

 

 

そこで、暇をしていたクレムトも引っ張って行ったのである

 

 

 

 

 

ルネス王都についてはまがりなりにもグラド正規軍とは名ばかりの破落戸どもが多くいた為か、魔物の被害は少なかった

まぁ、王都から民衆はこぞって逃げ出していたのであるが

 

旧ルネス王都を支配するのは元とはいえ、ルネスの正騎士であるオルソンである事はいつの間にか王都付近で住んでいた領民達も知る事となっていた

当初はオルソンであれば、領民の事を考えた統治をしてくれると期待していた

 

少なくとも、ルネスが健在であった頃騎士オルソンは騎士ゼトと並ぶルネスの双璧であり、そうであるからこそ彼はエフラム王子の側に付けられていたのだから

そのオルソンがルネスを裏切った事など領民は知るはずもなく、『騎士オルソンは俺たちを守る為にグラドに降伏したんだ』と彼等は思っていた

 

 

だが、オルソンの目に映るは『嘗て亡くなった妻』のみであり、ソレを取り戻す為にグラド帝国側に寝返ったのだ

立場も名誉も誇りも、何もかも切り捨てて

 

そんな彼の眼に領民など映るはずもなかった事を彼等は直ぐに思い知る事となる

 

オルソンの下に付けられたグラド軍は統制もないもない唯のならず者や破落戸ばかり

領民を襲い、残り僅かな食料を奪い、気が向けば意味もなく領民を殺す

 

 

そんな地獄絵図が旧王都付近に現出した

 

 

当然、領民はそんな生活に耐えかねて逃げ出す

 

 

そして、ルネスの騎士であったオルソンがよりにもよって王都で無法を許している

 

との話はすぐさま旧ルネス領に拡がった

 

元々、エフラムやエイリークが死んでいたり行方知れずであれば何の問題もなかった

が、堅牢で知られたリグバルド要塞を少ない兵で落としてみせたエフラムの噂は大陸全土に知られる事となり、領民達の耳にも届いた

 

 

 

そう、届いてしまったのだ

 

 

 

リグバルド要塞はグラドとフレリアに国境付近にあり、ルネス領からは離れている

領民からすればエフラムの活躍は自分達を見捨てている様に見えたとして、なんの不思議があろうか?

 

この世界の殆どの人間は満足な教育を受ける事などない

その為、情動的に物事を捉えがちなのだ

 

 

 

エフラム王子の意見にも一理ある

侵攻してくる敵軍の総指揮官を討つ事により、相手の指揮系統を破壊する。更には後任となる人物、今回の場合ならウィガルドの息子であるリオン皇子だ。彼はエフラム、エイリークとも親交が深く話し合いに応じる公算は高い

そうエフラムが考えたとしても何の不思議もないだろう

 

だが、それはエフラム王子の様な視点を持つからこその意見であり、目の前に『命の危機』がある領民達からすれば到底理解出来ないものであった訳で

 

今まさに目の前で命の脅威達(魔物や山賊)に抗ってくれている傭兵達と比べると、どうしても評価する事は出来ない

 

 

 

というか、広大なグラド帝国領。その中枢であるグラド帝都にいる皇帝を打倒するなど普通に考えれば妄言の類でしかなく、かなりの時間を要するのは自明

 

『黒曜石』の様に帝国のあり様に異を唱えるなどと言うのは本来であればあり得てはならない話であり、ましてや『黒曜石』はグラド帝国軍の実質的トップとも言える立場

『蛍石』としては説得して叛意させようとしたのかも知れないが、その意思を見せた時点で通常であれば即処刑すべきなのだ

 

例え武術の師であろうとも、自国に侵攻した軍の指揮官ともいえる人物を自軍に招き入れる

それがどれだけの不信を買うのか?

 

若く政治などにあまり興味を持たないエフラムには想像出来なかった

 

 

 

 

グラド帝国軍の侵攻を挫いたのであれば、その時点で国土回復に動いて自分達を助けて欲しい。というのが塗炭の苦しみに喘ぐルネスの民達の願いであった

 

自分達の生活を守ってくれるからこそ、彼等領民は騒ぐ事なく租税を払い慎ましい生活を送っていたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、こりゃダメだな

 

??どういう事だよ、クレムト?

 

 

いつもの様に懲りもしない山賊どもを始末して村へと戻る道中、クレムトは忌々しそうに呟いた

それを仲間の傭兵の一人が疑問に思い、問う

 

 

山賊どもも恐らくそろそろ食糧がなくなりつつあるんだろう。ま、当たり前だがな

 

って事は、そういう事かよ

 

 

近頃、山賊達の襲撃回数が目に見えて増えてきている

魔物が増えた事で安全圏も少なくなり、当然行動範囲は狭くなる

騎士団ですら対応に苦慮しかねない魔物達に経験も浅く、自分達よりも弱い民衆をいたぶる事しか脳のない、しかも装備も貧弱で戦術もないもない様な連中では満足に抵抗出来るわけもなかった

 

彼等は『奪う』事で自分達のモノを確保している

生産性など皆無であるのだから、クレムトら傭兵がルネス領で活動し始めて彼等の行動を抑止すればどんどん危機的状況に追いやられる

 

 

 

魔物と一口に言っても様々な種類がいる

当然その対処法一つとっても千差万別であり、最適解を選ぶには豊富な知識と経験がいる

 

正規軍ですら魔物の種類によっては手を焼くのに、弱者を殺し強者からは徹底的に逃げる山賊風情

 

勝敗など見るまでもなかった

 

 

ルネス陥落の後、フレリアのヴェルニの塔の聖石を破壊して以降魔物の勢いは急激に強くなった

 

『魔王フォデス』の封印の要である聖石

その数が減れば当然封印の力は弱まり、その結果フォデスの尖兵たる魔物達の力が増し、急速に勢力を拡げたのである

 

 

 

故に山賊達は自らの身を守る為に魔物からは身を隠し、ジャハナの傭兵達の隙を見て、村を襲い食料を強奪せねばならない

 

加えて救いのない話だが、山賊とひと口に言ってもその集団の数は多く仲間意識などカケラもない

寧ろ油断した瞬間に襲い掛かるまであるという始末

 

 

魔物から逃げ、傭兵からも逃れ、同じ山賊同士で争い、そこまでしてやっと村を襲撃出来るという有様

 

しかも襲って食料を得たとしても無事アジト(ねぐら)に戻るまでは魔物、傭兵、山賊の襲撃を恐れねばならない

 

『遠足は帰るまでが遠足』ならぬ『略奪は無事に帰るまでが略奪』という何とも云えない話だ

それだけでもお腹いっぱいなのに、帰ったら帰ったで分配に揉める

 

 

事実、この分配のゴタゴタにより魔物や傭兵達に見つけられ、殲滅されるというケースもかなりあったりした

山賊は一応『ナワバリ』的なものがあり、その中で活動するのが一般的だ

 

・・・山賊が一般的という時点で何かおかしい気もするが

 

 

とはいえ、このナワバリとて確実なものではない

特に今みたいに魔物や傭兵達により満足な活動が出来ない場合は

 

 

 

魔物が来る、逃げる

傭兵が来る、勝てないから逃げる

 

 

そうする内に他の山賊のナワバリに知らぬまま入ってしまう事はままある

 

 

 

そうなるとさぁ大変

 

 

俺らのナワバリに入ってくんじゃねぇ!

 

うるせぇ!俺たちだって(生きる為に)大変なんだ!

 

 

 

当然どちらも引けない

アウトロー(方の外にいる連中)にとって、侮られるという事はそのまま破滅を意味する

 

 

本来ならば、そういった手合いを救済する事が統治組織の存在する大きな理由の一つなのだが、占領してるグラドは荒廃するルネス領など気にしない

 

正当な後継者であり、彼等を庇護せねばならない筈のエフラムはグラド領で戦争

エイリークもジャハナへと向かっている

 

 

常ならば、エフラムかエイリークの近衛たるオルソンなりゼトなりが進言せねばならないはずなのだが、元々後継としての教育について父ファードはもう少しエフラムが成長してからでも遅くないと考えていた節がある

 

そもそも、である

次期ルネス国王であるエフラムが最前線に立って指揮するなどあり得ないし、あってはならない事

確かにエフラムの戦に大差は嗅覚や勘は父親であるファードをしても驚くに値する

が、戦場に絶対はない

 

 

矢の一本、剣の一振り、一つの魔法で容易く人を骸に変えてしまうのが戦場

指揮官突撃は確かに自軍の士気を大いに上げる方法だろうが、間違っても勢力の長や次期後継者のするべき事ではない

 

 

まぁ、それを諌めるべきエフラム付きの近衛であるオルソンはグラドに通じていた事を考えると、案外それでエフラムが死ぬことを望んでいたのかもしれない

 

 

では双子の妹であるエイリークはといえば、武勇に優れる父と兄を持っている以上、どうしても父と兄の背中を追いかけてしまうのは避けられないといえなくもない

エイリークの近衛であるゼトは度々エイリークに対して

 

 

エイリーク様のお気持ちも分かります

しかしながら、エイリーク様はエイリーク様であって、ファード様にもエフラム様にもなれません

どうかエイリーク様ご自身の道をお進み下さい

 

と言っていた

 

その甲斐あってか、エイリークは父や兄に憧れながらも友邦フレリアのターナ王女やグラドのリオン皇子との関係を深めていっている

だが、国領の統治などについての教育は世継ぎであるエフラムが優先されるべきであった事からエフラムの後になる事も決まっていた

 

 

故にエフラム、エイリーク両名は民を思う事は出来ても、『民からどう思われるのか?』についての能力は低いと言わざるを得ない

 

次期後継者の側近となるであろうオルソンはそのあたりについても充分な知識を持っており、時期が来ればエフラムの教育係となる

 

 

その筈だったのだ

 

 

若くしてルネス屈指の騎士となったゼトであるが、それ故に政治からは距離を取るしかなく、その辺の知識についてはやはり生来の武官である事からもそこまである訳ではない

 

これは若くして高い地位にあるゼトが何かの間違いで反逆したり、エイリーク王女を担ぎ上げる可能性を懸念したルネス王国の文官からの提案であった

ファード個人としては清廉潔白ともいえるゼトがその様な事をするはずもないと断言できる

 

しかし、であるルネス王国国王であるファードとて全てを自分で出来るはずもない

どうしても数多くの人が協力しなければ国という組織は回らない

 

ファードに意見した文官とてゼトの誠実さは知っている

それでも気をつけねばならないと言わねばならない程後継者による争いら避けねばならないものなのだ

ファードに、いやルネス王国に支えている文武両官誰もがルネス王国の安定と更なる発展を望んでいる

 

であればこそ、『石橋を叩いて渡る』以上の慎重さが必要なのだ

意見した文官はこれで国王ファードやエフラム王子にエイリーク王女の不興を買ったとしても何の後悔もなかった

『全てはルネス王国の為に』

 

それだけが彼の動く理由だったのだから

 

 

 

 

今それが最悪な形となってルネス領に住む者達に襲い掛かっているのをその文官が生きていて知ったとしたら、すぐさま自裁するだろう

ルネス王都襲撃の際、国王ファードは王女エイリークをゼトの護衛の元逃した

 

その時、ルネス王国に仕えていた武官は勿論、文官達も我が身を擲ってエイリーク達が逃げる時間を稼いでいる

結果として、ルネス王国に仕えていた文武両官のうち生き残りは、エイリークの近衛騎士であるゼトにその従騎士であるフランツ

エフラムの近衛騎士だった(・・・)オルソンにエフラムに従う騎士

カイルと従騎士フランツの兄でもあるフォルデのみという有様となった

 

 

これはルネス王都襲撃の指揮官が残忍な性格で知られる『月長石のヴァルター』である事も関係していたりするが、皆エイリーク達を逃す為に最後の最後まで激しく抵抗した

 

 

 

 

 

結果としてエフラム、エイリークの周りには見事に武官のみが残ってしまったのは残されたルネス領の民にとって不幸だったといえよう

 

 

そもそもの話として、現在ルネス領内に存在する山賊。その殆どはグラドによるルネス侵攻からのルネス陥落後に山賊に身を落とした市民である

彼等は生き残る為に道を踏み外す決意をしてしまった

 

元々山賊をやっていたというのは変な話だが、ルネス王国が健在な頃から山賊として活動していたのは国内でも僅か4グループ

 

 

つまり、グラドによる治世が機能していなかったが故にルネスの民の中から山賊となる者が出てきたという訳だ

奪うのに慣れてしまうと、もう元には戻れない

 

仮に山賊でありながら農業をしている者がいるとしよう

その者は周囲から甘く見られるか、作物が出来た瞬間に殺されるだろう

 

 

一度倫理観を投げ捨てた者が倫理観を取り戻すと言うのは途方も無い努力が必要となるし、それだけの環境もまた必要なのだ

山賊に身を落とした彼等とて救いを求めていた

 

 

助けて

生きたい

 

 

 

 

ある男は家族を守る為に他人を(あや)めた

ある女は子供を守る為に他人を唆して人を殺させた

老人は子供達を生かす為に、残り少ない食料を消費しない為に自ら命を絶った

 

 

 

皆必死だったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やりきれねぇな

 

やめとけ

そういう事を考え始めたら、剣が鈍る

 

でもよ

 

俺達(傭兵)が剣を鈍らせて、それで殺されたとして、だ

俺達を頼みにしてる連中はどうなる?

 

 

山賊を退治する中で、葛藤があったのだろう

絶命する瞬間、安らかな顔をして死ぬ者がいたのだ

 

 

戦場を生きる場所と定めている傭兵でもこれは堪える

 

 

彼等はもう自分で『戻れない所』まで来ていることを知って苦しんでいたのだから

戦場で飽きるほど『死に顔』を見てきたのが傭兵達だ

 

イヤでもそのうちに『死に顔』を見ただけである程度の事を察せられる様になっていく

だから余計に堪えるのだ

 

 

 

 

斧を持つ手が震えていた男

弓を引く時に涙を流していた女

いろんな奴がいた

 

 

でも慣れてない奴に限って、死ぬ直前の顔は『微笑んでいた』

 

 

 

 

 

もう殺さなくていい

もう奪わなくていい

もう恐れなくていい

 

 

 

恐怖から解放される唯一の方法が自身の死などと救われないし、報われない話でしかない

 

 

 

 

 

 

 

クレムトよぉ

 

耐えろ

ルネスの阿呆どもが来たらさっさと離れるだけだ

 

 

弱気になる仲間にそう励ますクレムト

だが、彼自身も度重なる経験により疲弊していた

 

 

 

何故普通に生きていたであろう連中が賊にならねばならない?

何故ルネスの王族達は自国の民を助けに来ない?

 

 

何故力もなく覚悟すらない連中が賊として死なねばならぬ?

 

 

 

 

 

 

 

クレムトの中に暗い、昏い炎が生まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エフラムはグラド帝国皇帝であるウィガルドを討ち果たし、グラド残党が妹エイリークのいるジャハナ王宮へと集結しているとの知らせを受けて急いでジャハナへと向かった

 

 

歴史にIF(もしも)はないが、此処でエフラムがルネス王国領へと向かっていたのであれば後の悲劇は防げたのだろうか?

 

 

 

 

 

自分の国を創ろうとするケセルダ

グラドの為に戦おうとしたが、迷ってしまったアメリア

絶望の焔を宿したクレムト

 

 

 

三者の激突する時は、近い




FEシリーズで紋章、暗黒竜、聖戦、トラキア、封印、烈火、聖魔、覚醒をした身として非常に疑問に思ったのがこれでした


ルネスへの侵攻、からの陥落。逃亡
友好国であるフレリアに逃れ、支援を求める。分かる
グラド領内に踏み込む事で敵軍の足を止めるエフラム救援。まぁ分からなくもない

エフラム救援からのフレリアへの帰還。分かる
フレリアの聖石破壊からの他の聖石を有する国への使者。分かる
グラド国内へとさらに踏み込んでの敵国主である皇帝ウィガルドの打倒。・・・はい?

確かに策源地であるグラド帝国を攻略する必要があるのは分かる
でも、元々魔物が出没し始めてたのに聖石破壊されて更に増えそうな話が


お前なんで自分の国の救援せんのや!


まぁ、わからなくもないですよ
ルネスを解放するとなると、占領しているグラド帝国軍とルネス領にて戦うわけで更に国内が荒廃するでしょうし、シリーズお約束ともいえる山賊や盗賊(火事場泥棒)も出てくる事でしょう

でも、ルネスが滅んで一番苦しんでいるのはエフラム王子でもエイリーク王女でもゼト達でもない
ルネス王国に住んでいる国民だと思うのですよ


メタ的な話となりますが、基本FE(私がプレイしてる中ですが)って祖国とかが滅ぼされたりしてから反撃していくっていうイメージなんですよ

でも敵を倒すってよりは『国を守る』とか『大陸を守る』って勝手なイメージがありまして

勿論、聖魔においても聖石を砕こうとするグラド帝国を倒すのが最良なのでしょうが、『ルネスの民』について殆ど触れなかったのがどうにも違和感しかなくて

オルソンを倒す章『荒れ果てた王都』でようやくルネスの民について触れた訳ですが、なんというか
まぁ私がへそ曲がりであるのもあるのでしょうね

オルソンの悪政から解放されたルネスの民がエフラムとエイリークを歓迎してるシーンがありましたけど、なんだかなぁ。と


そんな当時の想いが詰まったプロットから出来たのが、コレです


まさか90人以上の方に読んでいただけるとはありがたい限りです
後3話くらいで終わらせるのでもしお付き合い頂けたなら幸いでございます

最後となりましたが、この様な小説擬きを読んでくださりありがとうございました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。