夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

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明日が欲しい

国を守りたい
敵を倒したい

人の欲は限りなく
だからこそ、一度立ち止まる事は必要なのだ


 遠き空

エフラムとデュッセル、そしてノールはジャハナへの道を急いでいた

 

 

我等はこれ以上ルネスの

…いえ貴方の我儘に付き合うつもりはない。そう申し上げたのですよエフラム王子

 

…それはヘイデン殿のご意志か?

 

エフラムの言葉にフレリアの将軍は答える

 

 

その答えを知って、あなたに何が出来ますか?

遂に念願叶ってグラド帝国皇帝を倒されましたな?おめでとうございます。貴方の作戦の為に死んでいった者達も報われましょうな

…それで?どんな気分ですかなエフラム王子と裏切り者のデュッセル殿

 

…そんな気持ちで戦った訳ではない

 

……

 

 

ではどの様なお考えの元でグラド帝国打倒を考えられましたか?

しかし余りにも惨めですな、デュッセル殿。国を正そうとしてその祖国は滅びましたぞ?

私には寧ろ皇帝の意に背いてでもグラド帝都の市民を守る決断をしたグラドの文官達の決断こそ真に褒めるべきものだと思いますが

…まぁもうどうでも良い事ですな

 

 

…ああ、そうそう

グラド残党がジャハナ方面へと向かっていると噂で聞きました

…無事であると宜しいですな?

 

そう言い放つとフレリア軍はそのまま離脱していった

 

 

----

 

 

 

ゼト将軍、もうすぐジャハナです!

 

急ぐぞ、カイル!

 

 

ゼトとカイルはその頃漸くジャハナ付近へと到着していた

実は道中ヒーニアス達フレリア勢と会える機会はあったのだが、ヒーニアスは2人の姿を認めると即座に身を隠している

 

…既にフレリアにとってルネスは友好国ではなく仮想敵国となっていたのだから

 

 

----

 

フレリア国王ヘイデンとしては旧知の間柄である今は亡きルネスのファードとの友誼から叶うならばルネスの奪還までは協力したいと思っていた

が、エフラム主導のグラド帝国侵攻戦の中でフレリア騎士が数名落命した事や本来ならば見捨てねばならぬ筈の黒曜石デュッセルを救出した事が内務卿、軍務卿双方から問題とされた

何せグラド帝国皇帝を倒すのならば、旧グラド軍関係者。特にグラド六将については全てその首を並べねばならない

そうでなければ、いつまでもグラド帝国臣民達は皇帝の影を見る事になるのだから

 

戦後の事を考えるならば、徹底的に現在のグラド帝国体制を貶めねばならない。それこそ、グラド帝国臣民達が二度とその時代に戻りたくない。そう言わせるまでには

ルネスの者達はどう考えているのか、などこの際どうでも良い

 

エフラムは自国を奇襲されて国を失ったのだ

…そして対決を選んだ

 

 

恩師であろうが、敵国の重臣であろうが全て斬り捨てねばならなかった。…他ならぬルネスの為に

 

デュッセルという裏切り者を擁してグラドを滅ぼしたルネスに対してグラド臣民や立場のある者がどう思うのか?

そして、その感情面の対立がどれだけ危険なものとなるのか?

 

その意識が欠如している事がデュッセルの救出によって明らかとなった。…だから、ヘイデンはエフラムやエイリーク達をこれ以上庇えなくなったのである

 

 

 

デュッセルとノール

彼等2人に行く場所などありはしない

 

デュッセルは友好国であったルネスを奇襲して、国王ファードを始めとした者達を殺した卑劣なグラド帝国の将軍。また、グラド側からしても大恩ある皇帝や仕えるべきグラド帝国に刃を向け、そして滅ぼした唾棄すべき裏切り者

…ノールの場合は更に重い十字架を背負う事になる

 

何せグラドの聖石を魔石とした挙句、大陸全土を巻き込んだ戦乱のきっかけを作り出した人間の1人なのだから

ルネスやグラドのみならず、仮にこの事実が明るみになればこのマギ・ヴァル大陸の何処にも生きて行ける場所はないだろう

 

 

 

そんな特大な爆弾を好んで手元に置いているのがエフラムなのだ

…彼の考えがどれだけ危険なものか分かろうというもの

 

 

 

更にフレリアの怒りを買ったのがゼトの行動だった

 

若くして将軍となった

などとルネス国内では言われていたが、他国からすればこうなってしまう

 

若輩者が将軍となった

…さて、どれほどのものなのか?

 

ゼトは繰り返す事になるが、ルネス唯一の将軍。たった部下となる騎士が3人しかいない

滑稽にも程があるだろう

 

それに加えて、軍事的な才覚があるとフレリア側は思えなかった

何せ、窮地にあるエフラムを助ける為に動員した戦力がルネス側でたった3人だったのだから

 

余りにも無謀との事などの理由でフレリア側から3人をつける事となったが、それでもたった6人

それ以外の戦力は民間人であり、善意の協力者に過ぎない

 

エフラムと合流しても、ルネス王国軍は王族含めて6人だ

 

 

 

これで2つの目的を同時に果たす事に異議を唱えない時点でゼトに対するフレリアの軍務卿と内務卿の評価は地に落ちた

 

とどめに一度ジャハナに向かうとしながらも戻ってきてルネス国内に向かう為の協力を求めてきた訳で

 

 

あの程度の見識で将軍か

…あてに出来んだろうし、肉壁にもなるまい

 

何せ民を平気で見捨てておける王族とそれに異論を唱える事も民の事すら頭にない騎士擬きなのだ

窮地に陥ればまた逃げるだけだろう。…民を見捨てて

 

 

敵を倒すと言いながらも将来の禍根は平気で残し、守るべき民の事は都合の良い時しか見えない亡国の王子と王女と騎士達

 

これがフレリアにおけるルネス勢の評価だった

 

 

…そしてエフラム達と別れたフレリアの将軍は確信している

アレは間違いなく自分の妹を優先する、と

 

もし仮に此処でアレがルネス解放に向かうならば、どうしようも無いがまた救いはある

 

妹が死ぬ?

それがどうしたと言うのか

 

 

ルネス国内ではそんな事は幾らでも起きていると言うのに

 

 

----

 

 

 

ジャハナ近郊でヴァルター率いる邪竜騎士団やケセルダの軍団との戦闘に突入しているエイリーク達

 

だが、砂漠という慣れない地形によって殆どの者達は普段通りの戦闘が行えない

が、その分

 

 

…やれやれ戦狂いの相手はつまらんのだがなぁ

 

闇が全てを薙ぎ払うべく、その猛威を振るっていた

 

 

エイリークからの申し出に対してはっきりと断りの言葉を口にしたクレムトであったが、仮にもケセルダ(あの馬鹿)が属していた組織の残滓だ

 

ならばいっその事全員あの世に送ってやるのがアイツに対する供養だろうよ

 

という何とも怖気の走る様な理屈によって、クレムトはエイリーク達と合流してから初めてその真価を見せる事となった

 

 

強者を食いたいのだろう?

なら弱者であるお前は俺に喰われても文句は言えんよなぁ?

 

とヴァルターにルナ(闇の月)を叩きつけ、僅か一撃でその命を奪っている

 

砂漠方面に展開していたケセルダ配下の軍団はクレムト式訓練を受講したアメリアとジスト達が圧倒していたが

 

 

 

----

 

 

エイリーク、無事か!

 

…お兄様

 

戦闘が終結に向かいつつある時、エフラムはデュッセルとノールを連れて戦場に到着。加えて

 

エイリーク様、エフラム様

ご無事でしたか

 

ゼトとカイルも合流する事となった

 

 

 

----

 

 

 

…生き恥を晒すくらいならいっそ死んでれば良かっただろうに

……今更命が惜しくなりでもしたか?黒曜石さんよ

 

…貴殿は

 

アンタはマトモな人間だと思っていたんだが、どうやら俺の勘違いだった様だ。蛍石や日長石に虎目石、月長石は死んだってのに

 

クレムトはデュッセルに皮肉を込めて話しかけていた

デュッセルとクレムトは以前グラド軍のある作戦で面識があった

皇帝に叛逆した地方領主の討伐戦に従事していた頃の話

 

事情はどうあれ、アンタが生きているせいで苦しむ者達がいる

…それがわからん訳もあるまいに

 

…その通りだ

 

俺達傭兵からすれば到底理解出来ない感情だがな

己の名誉とやらの為に命を賭ける碌でなし。それが騎士なんだろ?

守るべき民よりも国よりも、仕えるべき主君の命に忠実たるのが立派な騎士の在り方なんだろう?

 

クレムトは珍しく感情を露わにして続けた

 

ならいっその事その忠義とやらと共に死ねば良かったんだ

…少なくとも、あの時アンタ達と共に討ち果たした奴等はそうやって死んでいっただろうに

 

そう言い捨てるとクレムトはデュッセルの元を離れた

 

 

 

----

 

 

 

お前が身の丈を弁えず、大陸を混乱に陥れた阿呆の1人か

…随分シケた面してやがるな。良かったじゃねぇか?単なる人には出来ない偉業だと思うぜ?

魔王の封印を解き放ったんだからな?

 

…そうですね

 

俺達闇魔法の使い手は高い自制心を常に求められる

…そうでなければ闇側に引き摺られる事になるからだ。何を願った

人の手に余る事を自ら成そうとでも思い上がったか?

神は誰1人として救いやしない。救うとしても無辜の民ではなく、己が信徒だろうよ?

 

あなたは思わないのですか?

誰かを助けたいと

 

馬鹿か、お前は

助けたかったらそれだけのものを身につけろよ。武力でも名声でも人脈でも良い

テメェの力不足を知りながら何かに縋ろうなんざ、何も救えねえよ

 

クレムトは同じ闇魔道に身を置くからこそ、ノールの在り方を認めない。自分の力が無いからと自分の力よりも大きなものを頼ったとして

…それが何になる?

その力に振り回されて、周囲に破壊や絶望を振り撒く事になるのが関の山だろう

世界が甘くも優しくも無い事すら分からない連中の妄言

 

それに今の大陸は振り回されているだけなのだから

 

 

----

 

 

クレムトはエフラムと話をする必要も価値も微塵も感じない

仮に模擬戦などを挑んでくるなら、その心ごとへし折ってやるつもりだ

 

 

…理想で飯が食えるかよ

ファード王のしている事の一部でも見えていりゃあマシだったろうに

どうにもゼトやカイル、フォルデはエフラムの人間性を高く評価しているらしいが、クレムトにはさっぱり理解できない

 

テメェの側近が敵に通じているなんて事を許す時点でそいつは君主としての能力はねぇよ

 

 

…まぁ、それなりにキツイ物言いをした以上ルネス王都奪還までは付き合ってやるさ

そこで何も分からないならいっそあの姫さんはルネスから離れた方が良いだろう

 

まだあの姫さんなら多少望みはある

が、ルネスから離れないならまず間違いなく破滅する事だろうから

 

 

ま、どうでも良い事だがな

 

 

----

 

 

 

よう、アメリア

 

あ、クレムトさん

 

クレムトはアメリアの元を訪ねていた

彼女は元々グラドの人間なのだ。暴走するグラドを止めたくはあっても、国を滅ぼされては心穏やかな筈がない

事実彼女の表情はとても暗い

 

…どうするんだ?国を滅ぼした連中に着いて行くのは精神的にも辛いだろうよ?

ルネスのエフラム

馬鹿で救いのない阿呆とは思っていたが、まさかここまで愚かとは正直なところクレムトも思っていなかった

 

これでルネスは復興の為に頼るべき寄る辺を全て失った様なもの

フレリアはグラド侵攻において被害を受けた筈。にも関わらず、明らかにそれを労っているとは思えない

たかが亡国の王子風情が他国の軍勢を指揮して闘う

 

もしクレムトがそれに従えと言われたらまず間違いなく反発する

 

ルネス(他国)の為に俺達に死ねと言うのか!

 

 

誰だって死ぬのは怖いし恐ろしい

それでも戦うのは守るべき者があるからなのだ

 

既にルネスは滅んでいる

エフラムやエイリークにゼト達がどれだけ異論を唱えたとしても

 

 

その意味を余りにも軽く考え過ぎているのだ、誰も彼も

 

 

こんな戦馬鹿なら、まだ殴ってでも止める事の出来るあの馬鹿の方が余程マシだろうよ

 

更に言えば、エイリークに協力しているナターシャ

彼女はグラドの人間であり、数少ないシスター(回復役)

グラドを止める為に戦う事を決意してエイリークに力を貸してくれている彼女

その心情を果たしてエフラム達は慮っているのだろうか?

 

 

自分達がグラドに対して抱いた事を

今度は自分達に向けられる事に思いを馳せたのだろうか?

 

ルネス王都を奪還したとしても、その全土を回復するのは難しく、魔物の存在やグラドの残党の存在がそれを阻む

魔王復活阻止という目標があったとしても、ルネス平定とそれを並行して行なえる訳もない

 

 

 

…辛いなら抜けた方が良いだろうよ?

 

そうかも知れません。…クレムトさん

 

…あん?

 

どうして止まらないのでしょうか?

 

 

アメリアの小さな声での問い掛けにクレムトは大きなため息をついて

 

 

終わらせるつもりがないのか?

それともその先の事すら見ていないのか?だな

 

クレムトはそう言って涙を浮かべている弟子(アメリア)の背中をゆっくりと叩きながら遠くを見つめた

 

 

 

 




現在のエイリーク達

エイリーク、ゼト、フランツ、ギリアム(離脱)、ヴァネッサ(離脱)、モルダ(離脱)、ガルシア、ロス、ネイミー、コーマ、アスレイ、ルーテ、ナターシャ(士気半減)、ヨシュア、エフラム、カイル、フォルデ、ターナ(離脱)、アメリア(士気崩壊寸前)、クレムト、ヒーニアス(離脱)、ジスト(離脱予定)、テティス(離脱予定)、マリカ(離脱予定)、ラーチェル、ドズラ、サレフ、ユアン(離脱予定)、クーガー、デュッセル(士気半減)、ノール(士気半減)

士気半減などのユニットは戦闘能力が低下するデバフが付与される
勿論崩壊寸前のアメリアはそのデバフが大幅に強化される


…地獄かな?(白目)

エイリークはクレムトと話をするか?

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