夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

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過去のプロットを生贄にして、怪文書擬きを召喚!

という訳で続きがなぜか出来ました


何故か200人以上の方がご覧になられている様で困惑するばかり


相変わらずのとてもヘイト的な表現が含まれます
ご了承の上での閲覧を推奨します

よろしければ後書きにてお会いしましょう


 ぶつかる想いと砕ける夢

 

エフラム率いるフレリア軍がグラド帝国皇帝ウィガルドを討ち果たした頃、エイリークの軍はカルチノからポカラの里を経由して、目的地である『砂漠の国』ジャハナへと到着していた

 

 

エイリークはジャハナ女王であり聡明な事でも有名なイシュメア女王に謁見を願った

 

 

しかし、その時既にジャハナ王国にグラドの手が及んでいたのである

 

 

 

 

 

 

 

ケセルダ、貴様

 

おっと怖えな

とはいえ手を出すなよカーライル?

コイツに惚れているお前と違って俺はこの女王に何の価値も認めてねぇ。お前が妙な事をすれば女王サマの命はないからな

 

・・・・くっ、陛下

 

・・・・・・カーライル

 

 

女王の間にてグラド六将が一人『虎目石のケセルダ』がジャハナの女王であるイシュメアの背後にいた

 

近衛長でもあるカーライルは無法者を始末しようとするが、人質となったイシュメアの為に手を出せない

とはいえ、価値を認めていないというケセルダの言葉はある意味では真実だが、ある意味では嘘でもある

 

 

ケセルダの目的は『ジャハナの聖石の破壊』であり、肝心の聖石がどこにあるのか分からない為に女王イシュメアを必要としていた

 

聖石(いし)の在処さえわかればイシュメアなどケセルダにとってどうでも良い存在

その程度でしかなかったのだ

 

 

 

(ちっ、アイアスの野郎が居ないのは失敗だったか?)

 

ケセルダは内心舌打ちした

 

ケセルダの副官を務めていた傭兵アイアスであったが、彼はエイリークとロストンの協力関係構築を妨害しようと兵を率いてエイリーク達に挑んだ

 

戦況は終始手堅い指揮でアイアス優位に推移したのだが、グラド三騎が一人『日長石のグレン』の弟であるクーガーの離反や粘り強いエイリークの指揮によりエイリーク達に決定的ダメージを与える事がついぞかなわなかった

 

熟練の傭兵であり、用兵家でもあったアイアスの攻撃を凌ぎ切ったエイリーク達に対してアイアスは『敵ながら見事』との賛辞を送ったほどであった

だが、無様に敗北した挙句敵を褒めるかの様な言動をしたアイアスをケセルダは処断した

 

ケセルダがアイアスに命じたのは『ルネス王女エイリークの始末とその指輪の奪取』であり、その後に救援に駆けつけるであろうロストン軍も壊滅させる事であった

 

だが、アイアスはエイリーク達との戦闘において致命的な負け方をしていないにも関わらず、兵を退いた

故にケセルダはアイアスを処断したのである

 

役立たず(足手まとい)は消えろ

 

 

それが傭兵時代からのケセルダが定めている唯一にして絶対のルールであった

 

 

 

だが、皇帝ウィガルドから受けている命令は『ジャハナの聖石を破壊する』事であり、『エイリークの指輪の奪取』についてはケセルダの受けている命ではない

 

では何故ケセルダはアイアスにそれを命じたのか?

 

 

 

 

 

 

 

それは皇帝ウィガルドに対して優位に立つ為であった

 

 

ケセルダがグラドに仕えている理由は『国を手に入れる』為であり、今の地位(グラド六将)など通過点に過ぎなかった

元々滅んだ国の敗残兵の集まりであるルネスの生き残り。そのトップ(お飾り)などに興味など持つわけもない

 

だが、どうにも話の内容で『ルネスの兄妹の持つ指輪』とやらに我らが皇帝サマは執着しているらしいではないか

 

であれば、それを自分が奪取出来尚且つジャハナの聖石も破壊出来たとすれば比類無き大功となるのではないだろうか?

更にグラド六将などと一纏めにされているが、ケセルダがその分立場を上げる事も夢ではないだろう 

 

なので指輪奪取を試みたのだ

 

 

 

あの時アイアスを始末したのは、命令違反の罪であったが当然それだけではない

グラド軍の中で唯一ケセルダの過去を知るのがアイアスであり、ケセルダの推薦があったとはいえ副官として認められるくらいにはアイアスも有能である

 

ケセルダ配下とは言えど、いつアイアスが出世のライバルとなるか分からない以上、口実があるのであれば始末すべきとも考えていたからだった

 

 

アイアスが欠けた穴はクレムトを呼び出せば充分以上に埋まる

 

そう判断していたがゆえの判断であった

 

 

 

ところが、である

グラド六将という高い地位に就いた事を知っているだろうにも関わらず、クレムトの行方は知れず連絡も取れなかった

 

 

流石に予想外といえた

 

 

元々はそこまで金や名誉に執着しないクレムトだ

なのに、連絡がつかないとはどういう事か?

 

暇な時はいつもの酒場やジャハナのカビの生えた図書館に入り浸っているとケセルダは思っていたから余計に

 

 

 

その頃、クレムトは従軍希望の村娘(アメリア)の指導に勤しんでいた。その後は傭兵仲間に誘われて旧ルネス王国にいたのだが、そこまで酒場の者も知る訳がなかったし、知っていたとしても教える訳にはいかない。

確かにケセルダはその酒場の常連であったが、今はグラド軍の人間

 

店をジャハナに構えている店主からすると敵ではないにせよ、既にルネスを陥落させた上にフレリアの聖石を砕いたとされるグラドの要職に就くケセルダに気を許せるはずもなかった

そして何より傭兵としての誇りを捨てて、国しかも祖国であるジャハナではなくグラドに仕える決断をしたケセルダに対して店主は不快感を示していたからである

 

 

 

 

その様な事情から、主命であるジャハナの聖石破壊においてケセルダは有能で信頼できる副官を手に入れる事が出来なかった

 

なので、力押し(人質をとる)しか方法がなかったとも言える

 

 

ケセルダとて歴戦の傭兵。戦術についてはかなり高い水準だ

だが、盤面を整える意味である戦略面についてはその様な教育を受けてもない以上、行き当たりばったりとなってしまうのはある意味では仕方ない

 

グラド六将などと言われても純粋な実力では『ジャハナ一の剣士』であるカーライルと戦って勝てる保証はないのだから

 

 

イシュメアを人質にとったケセルダはカーライルに対して、これから王都に踏みこんでくるエイリーク達を倒せ

そうすれば女王は解放してやる

 

と言い残し、女王イシュメアに案内させた

 

 

そう、ジャハナの聖石の元へ

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、ジスト

 

 

 

女王であるイシュメアへの謁見の使者を出したエイリーク達

その陣の片隅で傭兵隊を率いるジストへ声をかける者がいた

 

エイリークとヒーニアスが指揮官として率いる軍勢の内訳は

エイリークに付けられたゼト達やガルシアらエイリークに個人的に協力してくれる者達

ヒーニアス、その妹姫ターナにその護衛として重装騎士ギリアム、天馬騎士ヴァネッサ、司祭モルドとその指揮下にあるフレリア軍

 

そして、ヒーニアスに雇われた『ジスト傭兵団』を中核とした傭兵隊であった

 

 

ジストに声をかけたのはそんな傭兵隊に所属する傭兵の一人である

『傭兵は戦場で死ぬ』と言われる程に場数を踏んでいる傭兵は多い

 

特に歴戦の傭兵部隊である『ジスト傭兵団』と関係の深い傭兵、その悉くもまたジスト達に勝るとも劣らない強者(つわもの)ばかりだ

 

 

だからこそ気付く

 

 

 

 

アイツらやる気だぞ

 

・・・ああ

 

 

戦場には独特の空気というものがある

張り詰めた、そしていつ弾けるか分からない緊張した雰囲気

 

 

先程までの緩い空気の残照など何処にもない

 

 

あるのは敵を殺すという明確で純粋な殺意だけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャハナ王宮に使者を出したエイリークとヒーニアスだったが、時間こそかかったものの使者に出した者は無事戻ってきた

 

 

 

どうだ?

 

・・・はっ

『貴軍らの事情は理解した。なれど此処は我らが国の。心配される事はない故、即刻立ち去られよ。半刻過ぎても立ち去らぬならば我等の敵としてジャハナ剣士達が御相手しよう』と

 

えっ

 

 

ヒーニアスの問いに軍使として出した騎士は言いづらそうに答える

つまり、ジャハナは女王との謁見を認めないというのだ

 

これにはエイリークも愕然とした

 

 

 

・・・・・・俺はジャハナに縁のある者だ

それも伝えて尚そう応えたのか?

 

はい

 

 

ジャハナに所縁のある者として今回傭兵であるヨシュアが「交渉が難しそうなら俺の名前を出しても良い」と協力する事を申し出ていた

 

その為、軍の首脳のみが集まる陣幕に一傭兵であるヨシュアも同席していたのである

 

 

だがそれでも近衛隊長であるカーライルの言葉は変わらなかった

軍使は気付かなかったが、ヨシュアの名前を出した時カーライルは明らかに眉を顰めていた

 

所縁どころか、この不良傭兵であるヨシュアは他ならぬ女王イシュメアが息子

つまりジャハナの第一王子にして、次期後継者である

 

 

 

 

だが、それがどうした(・・・・・・・)というのか?

 

国の後継者なればそれ相応の作法がある

 

 

確かに国土の殆どが砂漠であるジャハナを支える産業は傭兵業である事は間違いだろう

だが、態々次期後継者であるヨシュア王子が傭兵となり、国外へと出る必要は全く存在しない

 

国内でも傭兵の仕事はある

仮に個の力が欲しいのであれば、カーライルという稀代の剣士が最悪女王であるイシュメアに師事しても王族であるヨシュアならば許されよう

 

 

だが、ヨシュアはその何れも選ばなかった

 

一人の傭兵として自分の力を試したかったのかどうかはカーライル達には分からないし、知りたくもない

 

 

ただヨシュア王子は国を捨てた

それだけの話

 

 

 

であるにも関わらず、今更王子として話をしようなどとヨシュアが出て行ってからの女王の嘆きと哀しみを間近で見ていたカーライルからすれば許せるはずも無かった

 

というより、ジャハナの王家に使える者達は王族はイシュメア女王陛下ただ一人だと割り切っている

今後のジャハナの行く末を考えるとかなり問題があるだろうが、敬愛する女王陛下の心を乱した者を今更王子として認めるつもりは文武両官共にない

 

 

 

たとえ、その結果国が傾いたとしても最期まで女王イシュメアを支えるだけの事と心に決めていた

 

 

 

実際、今現在女王イシュメアの命の危機である

半刻と区切りこそしたものの、フレリアの連中はそれなりの規模である。全員を退去させるなど無理な話であった

 

 

 

 

 

・・・つまりジャハナは我々と事を構えるつもりか

 

恐らくは

 

 

才気溢れるヒーニアスは返答の意味を間違える事なく受け取った

騎士もそれに同意する他ない

 

 

 

そんな

 

残念だが、エイリーク。グラド軍の姿がジャハナでも確認された以上こちらも退けないだろう

グラドに聖石を破壊される事だけは何としても阻止せねばならないからな

 

 

絶句するエイリークにヒーニアスは冷酷とも言える発言をした

 

 

 

 

どうにも、ならないのか?

 

無理だろう

そもそもこの規模の軍勢だ

しかも我々は臨時とは言え陣を張ってしまった。これでは半刻での退去など不可能だ

彼方とて分かっているだろう

 

 

自分の国と戦う事になるのを何とか回避したいヨシュアにもヒーニアスは冷静に反論する

 

 

其処へ

 

 

 

も、申し上げます!ジャハナ国内のグラド軍が攻撃してきました!

 

との報告が飛び込んで来た

 

 

 

 

・・・・おのれ

 

ヒーニアスとてジャハナと事を構えたくない

大陸にある国家のうち聖石を保有するのはルネス、フレリア、ロストンにグラドと此処ジャハナの僅か5カ国に過ぎない

 

フレリアの聖石は破壊され、グラドにある聖石は分からないが、従軍しているアスレイとルーテによると魔物の出現頻度から考えるに恐らく破壊されているだろう、との事

 

 

占領されたルネスの聖石については未だ不明

それどころか、ルネスの王族である筈のエフラム、エイリークに近衛である筈のゼトすらルネスの聖石の在処を知らなかった

 

が、ルーテが言うには

 

 

聖石か伝承の通りに魔王や魔物達の封印の要となっているのであれば、グラドの聖石が破壊されてからフレリアの聖石が破壊されるまでの期間に魔物の出現頻度が急激に上がったとは私の知る限りではありません

とすれば、ルネスの聖石は無事であると私は考えますが

 

との事だった

 

エイリークとヒーニアスは素直にルーテの知識を称賛すると

 

 

私、優秀ですから

 

といつもの様に返した

 

 

 

 

だが、そうであるならばグラド、フレリアの2つの聖石が失われている事になる

 

封印という事は魔王フォデスや魔物達はそれに抗っているだろう事は間違いないはずだ

 

5個のうち2つがない

つまり5個で封じていたものを3つで封じ続けねばならないという事でもある

普通に考えると封印が保つとは思えない

 

それが数年先なのか、数十年先なのか、それとも数百先なのかは判然としない

だが、これ以上聖石を破壊されるとなると魔物達の活動は更に活発になり、出現頻度だけでなく種類も増えるだろう事は容易に想像出来る

 

 

破壊は何としても防がねばならない

ルネスの聖石とていつ見つかるとも知れないのだ

ロストンの聖石は強固な騎士団達により守られているそうだが、それとて絶対ではないだろう

 

もう1つとて欠く訳にはいかない

 

 

更にロストンとは協力関係を構築出来たが、このままではジャハナと敵対せざるを得なくなる

仮にジャハナ王宮を制圧して、ジャハナの聖石を守れたとしてもジャハナを敵に回した事だけは間違いなく知れ渡るだろう

 

この大陸にいる傭兵の半数以上がジャハナ出身かジャハナ所属の者である。当然、彼等は自分達に好意を持つ筈がない

 

 

ヒーニアスの母国であるフレリアの聖石は砕かれた

だが、フレリアという国家は健在

可能性は低いがフレリアをグラドが潰しにかかる可能性だってある

 

だが、フレリア軍の大半はヒーニアスとエイリークと共に此処ジャハナかエフラムと共にグラド帝国領内にいるはずだ

 

本国にいる軍勢も皆無ではないが、グラドに攻め寄せられれば防ぎきれるかと言われるとヒーニアスとしても危ういと言わざるを得ない

その場合の補助戦力となるのが傭兵なのだ

 

肝心の傭兵達を敵に回したとなると今後の聖石防衛などに差し障る公算は非常に高い

ジャハナ国内で戦闘行為をすれば間違いなくジャハナを敵に回すだろう

 

 

 

だが、無抵抗という訳にもいかなかった

 

 

 

 

故に

 

 

迎撃する!

全軍に伝えろ!

 

ヒーニアスは非情の判断をするしかなかったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処がそうかい?女王サマよ

 

・・・ええ、そうです

 

なるほどなぁ。気付く訳ねぇわ、こんな所にあるならな

 

 

グラド軍とエイリーク達が戦闘に入った頃、ケセルダはイシュメアに聖石の在処へと案内させていた

ケセルダは自分の祖国の徹底した聖石管理に寧ろ感心する程だった

 

 

 

・・・聖石をどうするつもりですか?

 

あ?

んなもん決まってるだろ?

 

こうするんだ、よ!

 

ヒュッ!

 

 

聖石を見つめたまま動かなかったケセルダに不穏なモノを感じたのかイシュメアは彼の真意を問う

問いかけられたケセルダはイシュメアに答えを返すべく、聖石に向かって自身の武器を振り下ろした!

 

 

当然

 

 

パキッ!

 

聖石に罅が入る

 

 

っ!

な、なんて事を

 

知らなかったのかよ?

既にこれで『ふたつ目』だぜ?

 

 

聖石破壊という正しく蛮行を目の当たりにした事で動揺するイシュメアにケセルダは楽しそうに『絶望の事実』を教えた

 

 

ジャハナに居たクレムト達傭兵が知っているフレリアの聖石破壊についてイシュメアが知らなかった理由はただ一つ

 

 

我等が女王にこれ以上の負担をかけたくない

 

というカーライル達の不器用とも言える想いだった

もう少し辛辣な言い方をすると『油断していた』とも言えるだろう

自分達ならばジャハナを、女王陛下を守れると

 

 

だが、こうしてケセルダの手によってフレリアに続き、ジャハナの聖石も無事破壊された

罅か入った以上、フレリアのそれと同じくそこまでの時間をかけずに砕け散るだろう

 

 

 

 

 

さて、女王サマよ

言った通りだ。アンタにはもう用はないから解放してや、っ!!

 

ビュッ!!

 

縦にしっかりと罅の入った事を確認したケセルダは約束通りイシュメアを解放しようとして、イシュメアの方を振り向こうとした時、ケセルダの総身に悪寒が走り、その感じるままに回避(・・)した

回避した直後、ケセルダの居た場所を鋭い剣閃が文字通り『一閃』したのである

 

 

おいおい

無事に返してやろうってのに

 

黙りなさい。貴方はこの大陸に住まう者としてしてはならない事をしたのです

ジャハナの聖石を砕かれた愚かな私ですが、貴方だけは生かしておく訳にはいきません

 

 

ケセルダがイシュメアを見ると、儀礼用の剣だと判断していた剣を抜き正眼に構え此方を見据えていた

儀礼用なんてとんでもない思い違いだとケセルダは内心舌を巻く

 

アレは業物だ

そう思わせる見事な刀身

そして何より

 

 

 

はっ、なるほどなぁ

確かにアンタはこの国の女王だ

 

歴戦の傭兵であり、グラド六将にまでのし上がったケセルダであるが、目の前の女性、いや女傑は油断ならない相手だと理解しなければならなくなった

それ故にケセルダなりの最大の賛辞をイシュメアに送った

 

 

覚悟しなさい『虎目石のケセルダ』。このジャハナに住む者として、いえこの大陸に住まう者として貴方を討ちます

 

やれるもんなら、やってみな!!

 

 

 

人知れず、『白砂の女王』と『虎目石』が激突する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイリークとヒーニアスにとって、いや彼女達にとって何の意味もない戦いが始まってしまった

 

既に手を出してきたグラド軍は後退し、国内しかも王宮付近で結果的に騒ぎを起こしたエイリーク達をジャハナの者達が見逃す筈もない

 

 

ジャハナにて剣士隊の様な歩兵職が主力の理由は幾つかある

先ずはジャハナ王国の国土の大半を占める砂漠において、馬というものは足手まとい以外の何者でもない事が挙げられる

機動力は砂漠により削がれ、人よりも水分を多く必要とする

加えて砂漠は昼夜の温暖差が非常に激しく、昼は灼熱でも夜は極寒ともいえる過酷な環境。馬のように繊細な動物が生き延びるにはかなりの準備が必要だった

 

事実、エイリーク達に同行しているソシアルナイトのフランツ、カイルにフォルデらはジャハナの砂漠に入る前、入念な準備をしている

そうでなければ、馬はとっくの前に潰れていただろう

 

 

次にジャハナ国内で戦闘する場合、砂漠若しくは考えたくもないが王宮などの建物内で行なう事が想定されていたからである

 

建物内でも騎兵の機動力は有効だが、馬単独でもかなりの重量。それが走るのであれば居所など直ぐに分かってしまおう

ジャハナの衛士、他国の言うところの騎士にあたる者達は比較的軽装であり、防御とは回避である

その為、相手に気付かれる事なく接近できるという利点があった

高い技量を持つ衛士達であれば、文字通り『一撃必殺』を繰り出すのも容易い

 

 

後は単純に予算不足という悲しい現実

前述した通り、馬とはとてもお金のかかってしまう生き物。餌の確保なども考えると到底維持できるものではなかったのも理由の一つ

 

 

 

そして、エイリークやヒーニアスにとって恐ろしいのはジャハナの衛士達は個人個人の戦闘力が高いのもさる事ながら、集団戦にも高い適性を持っていた事だった

 

エイリークに協力している者達は問題ないし、ギリアム達も問題ない。傭兵達については語るまでもない

だが、軍の大半を占めるフレリア軍についてはそうではなかった

ヒーニアスやギリアムの様に高い指揮能力を持つ人間に指揮される事に慣れきってしまっていた

 

勿論、フレリアの正規軍である

各々の実力が低い訳では決してない

 

 

だが、砂漠という過酷な環境で文字通り『命懸け』の傭兵生活を送った事のある者が殆どである衛士達に比べてしまうと、どうしてもフレリアの騎士達は劣ってしまうのだ

これはフレリアの騎士が弱いのではなく、ジャハナの衛士達が強すぎると言うべきだろう

 

更にフレリアの騎士達にとって致命的だったのはジャハナの衛士達の戦い方は今まで経験した事のないものであった事だ

 

 

グラド軍もそうだが、大抵の正規軍は自軍の居場所を隠そうともしない。いや、言い方が悪かった

隠しようがない《b》と言う方が正確だろう

 

 

先に言った様に騎兵は重装兵に比べても総重量ではあまり差がない。寧ろ馬の分だけ重い事すらある

そんな者達が隊列を組み、移動すれば途轍もない音量になろう

重装兵の場合はその堅固な防御を誇る鎧が特徴であるが、殆どの材質が金属であるが故にやはり此方も音がしてしまう

天馬騎士に至っては身を隠すなどと云うのは寝言を言うレベルであるのは言うまでもないだろう

弓兵などの軽装歩兵であればそこまでの音を立てずに行軍する事も可能だろうが、意識せずして出来る芸当ではない

 

しかも、『戦場で音の有無』など意識しないのであれば尚更だ

 

 

 

 

フレリアの正規軍がここ最近相手をしているのはグラド軍、魔物、山賊達くらいである

彼等が果たして『音を気にして行動』するだろうか?

 

 

 

山賊ならば物陰から忍び寄る程度はしたかも知れないが、それとて一部に過ぎない

 

 

 

 

 

ところがジャハナの衛士達は所属する者全てが移動する時、無音かそれに近い小さな音しか出さない

その上正々堂々(一対一)など全く考える事もなく勝つ事のみを見据えている

 

敵はトドメを確実にさす

回復役は率先して倒せ

敵の指揮官は生きて帰すな

 

が衛士達のモットーである

その為に、衛士達は戦場でアイコンタクトなどにより即席の連携を取る

 

 

どちらかといえば、傭兵の戦い方に近いといえよう

まぁ、事情を考えたなら当たり前なのだが

 

 

 

その為、ある意味では『騎士らしい』戦闘こそ経験豊富であったフレリアの騎士達はジャハナの衛士達に苦戦を強いられる事となった

 

 

 

苦戦する理由は他にもある

ルネスやフレリア、グラドなどの建築様式とジャハナのそれは少しばかり異なる点だ

 

国威の象徴ともいえる王宮はその機能も多岐にわたる為、自然と巨大なものとなる

加えて他国の使者や状況によっては王族すら招く可能性のあるのが王宮

 

天井なども一般的な建物に比べて高くとり、『狭く圧迫される』様な印象を受けない様にしているのがルネスやフレリア、グラドの様式

 

 

だが、ジャハナのそれはあくまでも『実用的』である事を第一とし、余計な虚飾や華美な装飾などについては最初から考慮されていなかった

 

というより、『砂漠のオアシス地帯に建造物を造る』のにそこまでの資材を投入する余裕がある訳もないからこそと言い換えても良い

 

 

 

その為、他の国では王宮内においても偵察で活躍する天馬騎士だったが、高度が取れない為にそこまでの活躍が出来なかった

更にジャハナの礎を作ったのは傭兵達であり、はっきり言えば建造物に関して素人の集まりである

なので、他国の王宮と比べると支柱がかなり多く、機動力の高い騎兵もその機動力を発揮できない状況に陥った

加えて、その支柱が遮蔽物となる事でジャハナの衛士達の潜む物陰としても機能するのだから困り物

 

 

 

結果、エイリーク達の軍勢の大半であるフレリアの騎士達は殆どその実力を発揮する事が出来なくなってしまった訳だ

 

 

その上、王宮内に隠し戸が数多く存在するらしく、指揮をとっているヒーニアスも何度か襲撃を受けた

 

徐々に押し込んでこそいるものの、『勝っている』などという認識は誰一人としてしていないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手間取らせやがって

 

・・・ああ。ごめんなさい、カーライル

こんな母を、ゆる、して、ヨシュ・・・・・

 

 

聖石のあった(・・・)場所ではケセルダとイシュメアの激闘がようやく終わった

 

 

所々血を滲ませているケセルダと、身体の至る所に素人が見ても深手とはっきり分かる傷を負って地に伏せているイシュメア

 

勝敗は明らかだった

 

 

 

だが、勝者であるケセルダの表情は苦いものであり

 

 

認めてやるよ、俺達の国の女王陛下は確かに強かった。ってな

ま、聞こえる訳もねぇだろうがな

 

 

 

ケセルダはイシュメアの遺体にそう告げると足早にその場を去る

 

 

イシュメアの遺体の近くにはジャハナの聖石だったカケラが散乱しており、まるでそれは《b》偉大な女王の死に捧げられた宝石の様にも見えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレリアとルネス。我等が国を侵すのみならず、女王陛下の御命まで危険に晒すか

 

 

ジャハナの衛士達は死力を尽くしてエイリーク達に抗った

本来なら剣を持つ必要のない筈の文官達も剣や弓を携え、立ち向かってきた

 

しかし、フレリアの騎士は抑えられてもエイリークに従う勇士達やヒーニアスを始めとした者達の足を止める事は叶わず、とうとう最奥である女王の間にまでの侵攻を許してしまう

 

 

近衛隊長カーライルは苦々しくエイリークとヒーニアスへと憎悪のこもった声をぶつけ、剣を構えた

 

 

いや、剣というにはあまりにもその刀身は細く、それでいて鋭い輝きをはなっている

 

 

 

 

 

最早我等に退くべきところはない

ジャハナ女王イシュメアが一の臣、カーライル参る

 

 

ジャハナ一の剣士

『剣鬼カーライル』がその刀を抜いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、グラド帝国皇帝ウィガルドがルネス王子エフラムによって倒された事が大陸全土に瞬く間に伝わっていた

 

 

 

旧ルネス領の南西部では

 

 

 

『穏健帝ウィガルド死す』か

 

いつまで国を放っておくつもりなんだよ、あのバカ王子はよ!

 

 

魔物や山賊に抗い、グラドの正規軍との衝突を可能な限り回避しているクレムトら傭兵とその保護下にあるルネスの民は旧ルネス領を移動して、ようやく一息ついたところだった

そしてウィガルド死すの報を受けたクレムトの傭兵仲間は不愉快そうに言い放つ

 

 

グラドの王都にまで踏み込む余裕があるなら、てめえたちの民衆くらい助けろってんだ

 

そうだな

 

 

ルネス領内を移動したからこそ良く分かる

既にこの国はぼろぼろであり、民心の一部は自分達を助けずにグラドなどで戦争する王家に対して憎悪の感情を抱きつつある事が

 

 

 

傭兵の男が口にした事は彼等と同道しているルネスの民の本音であった

 

 

 

彼等は善良なルネスの民であった

税を欠かさず納め、必要であれば臨時の税も何とかして支払ってきたのだ

 

不満に思う事があったとしても、それを飲み込んで従順に過ごしてきた

 

 

 

 

それなのに、この仕打ちである

 

事情は彼等に分からないが、少なくとも抵抗の激しいグラド本国に踏み込めるだけの人員がいるのであれば、その一部でも自分達を救う為に動かせなかったのか?

聞けばエフラム王子にエイリーク王女二人とも無事だというではないか

 

 

ルネスの騎士であったオルソンは王都に居ても何もせず、フレリアに逃れた王族達は自分達に見向きもしない

更に何人かルネスの騎士も生き残っているというのに、誰一人ルネスを救おうともしないのだ

 

 

傭兵を頼んだ村の長は言った

 

 

 

 

私達はエフラム様やエイリーク様が助けに来てくださると信じておりました

ですが、聞いた噂ではエフラム様はグラドに攻め込みエイリーク様がそれを助けたそうですが、それきりです

私達には力などありませぬ

 

どうか、どうかこれだけしか出せぬ私達をお救い下され

 

 

そう言って、老人は膝をついて頭を下げたという

 

 

 

無念だったろう

悔しかっただろう

 

その場に居合わせた傭兵達もボロボロになりながらギルドの者に縋り付く男の姿を見て、不平不満など言えなかった

 

 

 

 

 

騎士ゼトはエフラムとエイリークが無事である事をルネス領に伝える事で民に希望を持たせようとしたのだろう

 

それについてはエフラムも同意したので、リグバルド要塞を落とした時や皇帝ウィガルドを倒した時にも人を使い、ルネスの民にそれを知らせた

 

 

 

だが、常に命の危機に晒されていたルネスの民からすれば助けに来ず戦争をしているエフラム達は許し難い裏切り者にしか見えなかった

 

 

 

 

食料も少しずつ減りつつある

が、それとは正反対に傭兵達に守られているとの噂を聞いたルネスの民は其処へと集まり続けた

 

 

 

 

どうにもならんな

 

どうなるんだ、これは

 

 

 

クレムトや傭兵達は今後の事を考えると不安しかない中でも、足掻き続けるしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっ

 

カーライル

 

 

その頃、ジャハナ王宮の戦いも終幕の時を迎えようとしていた

 

 

多勢に無勢

正しくカーライルの置かれている状況はそうであった

 

 

風の剣と呼ばれる魔力のこもった剣と、倭刀と呼ばれるジャハナでも数少ない刀を手にカーライルはエイリークやヒーニアス、ヨシュアからの幾度もあった降伏を呼びかける声に応える事なく戦い続けた

 

とはいえ、敬愛する女王陛下が座るべきジャハナの玉座に触れさせない為に彼はその前から動く事は出来なかったが

 

 

 

フォルデとカイル、それにジストとマリカまでが重傷を負い戦線から下がり、フレリアの騎士達に至っては4名もの戦死者を出した

4名と聞けば少なく感じるかも知れないが、既にジャハナ王宮に衛士達や文官達の姿はなく残るはカーライルたった1人

であるが故に後方支援は万全であり、治療役のシスターなども近くに待機させておいてのこの被害である

 

4名の騎士は即死であり、フォルデは片腕を失いトドメをさされそうになった時、カイルが身を挺して守ったから命があった

だがその代償は大きく、カイルもまた腹部から大量の出血を伴う大怪我を負い、後送される

 

カーライルの実力を文字通り『痛い程に』理解していたジストはマリカが斬りかかっていくのを制止しようとしたのだが、少しばかり遅くマリカも肩からの大きな傷を受ける

あまりの出血量にさしものマリカも動きが鈍ってしまい、そこをカーライルは頸を落とすべく追撃をかけた

 

ジストは咄嗟に2人の間に割って入り、愛用の鋼の大剣を盾にしたがカーライルの持つ倭刀の別名は『鋼斬り』であった

ジストの大剣はほんの一瞬カーライルの太刀筋を止めただけであり、ジストが咄嗟の判断で体を投げ出していなければ、ジストの命がなかっただろう

 

だが、カーライルの剣筋はジストの肩先を鋭く斬り裂き、ジストの右肩の先端部分が切り取られてしまう

当然出血量もかなりのものであり、マリカ共々治療されている最中だった

 

 

 

そんな暴威ともいえる力を振り撒いたカーライルであったが、流石に半刻以上も単独で奮戦している為に疲労の色を隠しきれなかった

 

 

なお、ヨシュアも斬りかかろうとしたが、ヒーニアスから止められている

 

進軍中にあまりにもヨシュアに対するジャハナの衛士達や文官達からの殺意が高い事でようやくヒーニアスもヨシュアの身分について見当がついたからである

 

 

 

 

 

 

・・・最早、これまでか

 

 

カーライルは抑揚のない声で呟いた

 

 

 

 

ジャハナの剣士カーライル。貴殿の力は嫌というほどに理解した

だが、もう趨勢は定まった。降伏されよ、悪いようにはしないとフレリアの王子として約束しよう

 

ヒーニアスはカーライルに降伏を呼びかける

 

 

 

・・・カーライル頼む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はただの獣だった

傭兵として生き、戦場で強者(つわもの)の血を啜り何れ自分もまた誰かの糧となる

 

そう思って生きてきた

それが傭兵として当たり前と信じてすらいたのだ

 

 

 

だが、あのお方と出逢ったから全てが変わった

 

 

 

カーライルというのですか?ならばカーライル

貴方のその力をジャハナの為に使いなさい

 

 

 

何を馬鹿な事を

そう思った

 

 

こんな血に濡れた男の手で何を守るのか?

何が守れようか

命を奪う事でしか己の存在価値を見出せない、そんな哀れな獣に何が出来よう?

 

 

 

だから俺はあのお方の誘いを断った

 

 

 

だが、あのお方は諦めなかった

 

何度も何度もこんな男の元に来ていつも言うのだ

 

 

ジャハナの為、この国に住まう者達の為にその力が必要だ

 

 

 

 

あり得ない事だ

いや、あってはならない筈だ

 

 

私には剣を振う事以外何も出来ぬ

戦場で敵を討つこと以外何をしたら良いかすら分からぬ狂人なのだ

 

 

そう言ってあのお方に何度目か最早分からないが断りの返事をした

 

 

 

そうですか

では私も貴方と同じですね

 

 

耳を疑った

この貧しい国の事を思い、様々な試みをしている事はこの国に住む物であれば誰もが知っている

私の様な獣であっても、家主(王家)の事くらいは流石に知っていた

 

 

 

 

 

私はこの国の民の生活を豊かにしたい

何れは傭兵という命を賭けねば命を繋げない、そんな者達も明日を見られる様に。叶わぬ夢です。そしてそれを追い求める私もまた狂人でしょう

ですが、もう一度頼みます

 

カーライル。この私に力を貸してはくれませんか?

 

 

 

真剣に私を見るあのお方の眼を見て、私は生涯でただ一度だけ『勝てぬ』と思わされ、気がつけば膝をついてあのお方に応えていた

 

 

 

この身一個の獣なれど、この命尽きるその日まで貴女にお仕え致します

 

 

ありがとう

 

 

そういってあのお方はたおやかに微笑まれたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はあのお方の為に負けられない

 

 

そう誓って生きてきた

だが無様なものだ

 

あの男に陛下を奪われ、それでも御支えしていたというのに、ケセルダめに陛下を攫われてしまった

 

 

陛下が御戻りでないところを見ると、恐らく陛下も

 

 

 

獣であったこの身を拾い上げて下さった陛下を守れず、あのお方が愛したこの国すらも守れぬときた

 

 

度し難い

我ながら何とも無様で度し難い

 

 

 

なればこの身が出来るのは最早一つのみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重ねてのご厚意、忝い

が、私はジャハナの衛士達の長にして女王陛下が一の臣

 

無作法、許されよ

 

 

 

 

!?待ってください!

 

カーライルの目を見てエイリークは何かに気付き、制止の声を上げるが

 

 

 

 

・・・御免

 

 

ザシュッ!

 

 

カーライルの胸から鮮血が飛び散った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろオマエら準備は出来たな?

 

はっ!

 

 

 

カーライルとの激戦が予想外の結末を迎えていた頃、ケセルダは王都の外縁にて部下へと指示を出していた

 

(せめてもの情けだ。アンタが愛したジャハナも一緒に連れてってやるよ)

 

ジャハナの王都をケセルダは火の海にするつもりだった

それはつまり、『ジャハナ王国そのもの』を焼き尽くす事と同義ともいえる行為

 

 

だが、ケセルダとて元はジャハナの民

全く思う事がないわけではないのだが

 

 

 

くくっ、そうすればあの小娘とその騎士も炙り出される訳だ

中々思っていた以上に非情な様だな

 

 

此処にはケセルダとその配下だけではなかったのだ

 

 

 

・・・けっ、てめぇがどう思おうと勝手だがな

それよりルネスの双子から指輪は奪ったのかよ?えぇ、元グラドの竜騎士サマよ?

 

・・ふん。黒曜石の老いぼれが何を狂ったか陛下に逆らったそうだ

 

はぁ!?

あの堅物みたいな奴がかよ?

 

 

ケセルダはジャハナ方面担当であり、主力は移動力に乏しい歩兵師団。一応アイアス率いる騎兵師団もあったが、エイリーク達との戦闘後に壊滅していた

その為、グラド本土の戦線の情報など一切入ってこなかった

 

対して、目の前の男が率いる『邪竜騎士団』は機動力と戦闘力を高い水準で併せ持つグラドでも屈指の部隊

その為、別方面の情報を持っていたとしても何の不思議もない

 

 

 

 

 

あの陰険ジジイはあてにならねぇだろうし、って事は蛍石くらいか?

 

いや、奴も死んだそうだぞ?

 

おいおい、なんだそりゃ?

確か蛍石は帝都の防衛だったはずだろ?なんで死んでやがる。・・いや、そういう事かよ、くそったれが!

 

 

目の前の男、『月長石』ヴァルターと話を擦り合わせてケセルダは今のグラドの状況を朧げながらに理解する

 

 

つまりフレリアとルネスの連中は軍を二手に分けたのだ

それだけであれば予想できる

 

 

だが、まさか自国であるルネスの混乱を放置してまでグラドに殴りかかるなど予想できるはずもない

その上、六将のうち2人も置いておきながらむざむざ破れるなど予想できる方がどうかしているとすらケセルダは思った

 

 

 

(いくさ)狂いか?その王子とやらはよぉ

 

くくっ、少なくとも民を置き去りにしている事に気付いていないなら王族として話になるまい

だが知った上での事であれば言う通り狂っているだろうな

 

 

流石のケセルダも言葉の節々に嫌悪感が滲むのを止められない

 

 

国があって民がいるんじゃねぇ。そこに住む人つまりは民がいるから国は成り立つ。同時に王族がいるから国ではねぇんだ。王族だけいてもその瞬間その王族は民になるだろう。民が何人も居ればそこは村にも国にもなるってもんだ

 

 

クレムトが珍しく酔っていた時、ケセルダに言ってきた言葉である

 

 

 

 

殺した方がいいだろうよ、そんな奴は

 

それは譲ってもらうぞ?

 

 

嫌悪感丸出しのケセルダにヴァルターは愉しそうな口調で寄越せと言う

 

 

 

 

いらねぇよ、そんな奴の首なんぞ

 

そうか

 

 

 

ジャハナの王都に火が放たれる

 

 

 

 

 

やれやれ、一応俺の故郷でもあるんだがな

 

郷愁の念でも抱いたか?

 

 

ケセルダが思わず溢した言葉にヴァルターが反応する

 

 

 

そうじゃねぇよ

ただ女王サマとやり合ってな

 

ほう?

少なくない手傷を負っているから何処ぞの傭兵にでもやられたと思っていたが、まさか『白砂の女王イシュメア』中々の手練れだったとは驚きだな

 

ケセルダの答えにヴァルターは目を少しだけ見開いた

 

 

それは勿体無い事だ

あれだけの容姿を持ち、それでいて聡明。その上、それなりの使い手だったとは、本当に惜しいものだな

 

・・ああ、大した相手だったぜ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃える

 

燃えて、焼け落ちる

 

 

ケセルダが

クレムトが

ジストやマリカ達が

ヨシュアやカーライルが

女王イシュメアが愛した国が

 

 

 

 

ちっ、なんて事しやがる!

ジスト!俺達は各所の消火に回るぞ!!

 

ああ、分かった

 

 

カーライルの死を見届けたエイリーク達

そこにジャハナの1人の文官が現れ、ジャハナの聖石を安置している場所へと(いざな)った

 

 

そこで見たのは聖石の破片の中で息絶えている女王イシュメアと近くの壁に祀られていたジャハナに伝わる双聖器(そうせいき)、『氷剣アウドムラ』と『風刃エクスカリバー』であった

 

 

鎮痛な空気のまま、その場所を出ると案内したジャハナの文官の男が自らの命を絶っていた

 

 

 

そこで異変が起きた

 

 

 

煙だと?

 

まさか、グラド軍は街に火を放ったのか!?

 

 

 

そうして急いでエイリーク達は王宮の外に出た

そこでジストについて来ていた傭兵達が王都の消火活動をすると離脱する

まだ王都にはそれなりの人数が生活している筈であり、ジャハナにある傭兵ギルドにも傭兵達がいるとの判断から真っ先にギルドへと向かう

 

 

 

ところが

 

 

おい!火を消すのを手伝え!

 

 

扉を蹴破る程の勢いで飛び込んだ男達が見たものは

 

 

誰もいねぇ、だと!?

 

 

 

誰もいない傭兵ギルドの酒場だけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイリーク、このままでは煙に巻かれて犠牲が出る!

先ずは一度王都の外に出るぞ!

 

ですが、これではジャハナの人達が!!

 

エイリーク様

しかしこのまま居てもいずれ火に囲まれます。今は辛いとは思いますが

 

・・・っ!!

 

 

エイリークとてヒーニアス王子やゼトの言うことが分からない訳では無い

だが、望まぬ戦いを強いられ結果的にジャハナ王国を滅ぼした様なもの

 

その上更にジャハナの民まで犠牲になるかも知れないと云うのはエイリークの精神に多大な負荷をかける事になってしまっていた

 

 

 

 

お兄様!エイリーク!

外にグラドの大軍が!!

 

偵察の為に高高度に上がっていたターナが悲鳴の様な大声をあげる

 

 

 

 

 

惨劇はまだ終わらない

 

 

 

 




という訳で、原作でいうところの灼けた砂の直前までとなりました


これ以上長くすると2万文字超えそうなので分割します

出来については自覚があるので、弁明しません


書きたい部分は次回と最終話になるので早ければ次の水曜日までには完結するでしょう(ガバガバ希望的観測した)


アメリアが空気?
はい、すみません
アメリアファンの方がおられたなら、誠に申し訳ございませんが彼女の出番は最終話まであまりありません

タグ詐欺になるかもしれないと震えながら続きを書き上げます


では今回もお付き合いくださりありがとうございました
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