夢見た者、夢を捨てた者   作:鞍馬エル

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 何故か過去最長となった上、戦闘が終わらなかったけど投稿します

あと1話で終わるか?
と不安です

相変わらずルネス兄妹に対するヘイトととある者達に対するヘイトも『多分』に含まれます

それでもよろしければ、どうぞ

当然のように独自解釈てんこ盛りです


 それぞれの道

 グラド帝国

 

マギ・ヴァル大陸南方に位置する国であり、地震による災害の絶えない国

 

突如隣接するルネス王国に侵攻しルネス王国王都を攻略。更に大陸北西部のフレリア王国へと侵攻

フレリア攻略こそならなかったが、大陸を守護すると伝わる聖石を破壊する事には成功

その後、大陸東部にある砂漠地方のジャハナ王国にてグラド六将が1人『虎目石のケセルダ』はジャハナの聖石を破壊。並びに女王イシュメアを殺害する

 

同日、フレリア・ルネス連合がジャハナ王国軍と交戦。これによりジャハナ王国は女王であるイシュメアと行政官である文官衆に王国軍である衛士隊が相次いで壊滅

事実上、ジャハナ王国は滅亡したといえるだろう

 

 

 

だが、その一方で初期に侵攻、占領したルネス王国の王族であるエフラム王子が友好国であるフレリア王国の協力を受けグラド帝国領内へと侵攻。グラド六将『黒曜石のデュッセル』を救出し帝都防衛の任に就いていた『蛍石のセライナ』とその部隊を撃破

セライナ将軍はそこで戦死する

 

更に快進撃は続き、グラド帝国帝都における戦闘にてグラド帝国皇帝ウィガルドを打倒する事に成功されてしまう

 

 

 

ジャハナ王都郊外にて激突したグラド帝国軍とフレリア・ルネス連合であったが、実のところ既にグラド帝国という統治機構は瓦解していたといえたのである

 

 

 

 

 

 

 

この頃になると噂レベルではあるが、兵士達にも皇帝であるウィガルドが帝都にて討ち取られている事が知れ渡る様になっていた

 

 

だが、誰一人として軍を抜けようとはしなかった

 

彼等にも彼等なりの誇りや意地がある

例え皇帝が死んだとしても自分達はまだ戦える

 

そう彼等は思っているのだった

 

 

 

 

 

 

ふむ、思っていたほどの数はないな

 

 

戦場を見渡しながら、ヴァルターはつまらなさそうに呟いた

 

それもそうだろう

既に鎮火しつつあるとはいえ、まだジャハナ王都の火は完全に消えてはいない

ヴァルターがエイリーク達の軍勢を確認したのは彼女達がロストン軍と合流する前の事である

 

 

その時は軍として加わっていた傭兵隊のうち現在も残っているのは『ジスト傭兵団』のみであったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーニアス王子、エイリーク王女

悪いが俺達はもうアンタたちに協力出来ない

 

・・・そうか

 

・・・そうですね

すいません

 

 

ある程度火の手がおさまりつつあった時、傭兵隊に所属している者がエイリーク達への面会を求めてきた

本来であれば、敵を目の前にして話し合いなどするべきではないのだが、不思議な事にグラド軍はジャハナの王都からかなりの距離を置いて布陣している

 

その為、時間はあまり取れないが時間を取った

 

そこで傭兵隊に所属している『ジスト傭兵団』以外の傭兵達の連合からの離脱の話が出たのである

 

 

 

元々俺らの仕事はアンタ達をジャハナに連れてくる事だった

これ以上は付き合えねぇよ

 

・・・・・

 

エイリークもヒーニアスもゼトやジスト達も口を開く事が出来ない

 

 

確かに俺達は依頼を請け負った

ジャハナまでの『護衛』をな?

 

なのによ何でジャハナで生まれ育った俺達がその故郷を滅ぼす手伝いをしなきゃならなかったんだ!!

 

 

誰も言葉を発せられなかった

 

 

身を守る為だけに故郷の顔見知りに剣をむけなきゃならなかった!!

何処かで剣を引けた筈だ!!

何でカーライルの奴まで死なせやがった!!!

 

男とてこれがみっともない八つ当たりである事は理解している

あの時抵抗しなければ、衛士達は迷う事も躊躇う事もなく自分達の命を奪った事くらい分かっている

 

でも認めたくないのだ

彼等は確かに傭兵

望んで戦場に生きている

 

だが誰1人として自分達の故郷を滅ぼしたいなどとは考えてもなかったし、考えた事もない

貧しい国であり、作物が育つ場所などごく一部

 

 

『ジャハナ王国は傭兵の血によって生き永らえている』

 

 

そう蔑まれる事もあるくらい、ジャハナという国には何も無かった

それでも何とかしようと必死に1日1日を生きていたのがジャハナの民であり、それは敬愛すべき女王イシュメアでも同じであった事を知らぬ傭兵は居ないだろう

 

近年になってようやく武器を作成するだけの資源が見込める鉱脈が王都近くで発見され、彼等の様な傭兵達にとっての商売道具といえる武器の調達や修理が自前で出来る様になったのである

 

 

傭兵達と共に戦場へと赴く鍛治師

現在のジャハナでは未だ数が少ないものの、女王イシュメアは鍛治師の育成を積極的に推し進める事により、収入が少ない傭兵達の懐と命を守ろうとしていた

 

 

少しずつ、歩く速度よりもはるかに遅い

だが、それでも確かにジャハナという国は良くなろうとしていたのである

 

そんな国を護るどころか滅ぼしてしまう事に加担した彼等の心情は恐らく誰にも理解できないだろう

 

 

 

 

俺達はこれからも傭兵を続ける

これ以外の生き方なんて知らねえからな

だが、二度とお前ら(フレリア、ルネス)には雇われる気はない

・・・世話になったな

 

 

そう言い捨てて、傭兵の男はエイリーク達の元から去っていった

 

 

 

最後までジャハナの王子であるヨシュアに対して言葉を紡ぐ事はなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傭兵達の離脱

 

それは今までたてていた作戦が使えなくなるという事であり、更に踏み込んだ考え方としては

 

フレリアの騎士達への負担が増える事と騎士達の中から犠牲者が出るという事に他ならない

 

 

 

グラド側にはケセルダが用意したジャハナの傭兵達がいる

既に傭兵ではなくグラド軍の一員となっており、正確には『元』傭兵だが

 

 

 

この大陸において傭兵の有無は非常に大きな意味を持っている

 

 

 

 

 

 

今から50年ほど前の事

 

 

とある地域で諸侯を巻き込んだ戦闘があった

 

 

 

男はとある事情より、動かせる兵力が相手よりも少なかった

そこで少ない兵力を傭兵達を雇い入れる事で補おうとしたのだ

 

ところが、雇われる側の傭兵の大多数は『勝ち目が薄い』との判断からその依頼を拒否する

彼等とてむざむざ死にに行く様な奇矯な趣味はないのだから、この判断は寧ろ当然とすらいえる

 

 

そこで男は傭兵達を束ねる人物に頼み込んだ

 

 

 

 

私の味方をしてくれとは言わない

頼みがある

 

相手方も間違いなく君達を頼るだろうが、参陣を遅らせてほしいのだ

 

 

 

当時傭兵を纏めていた人物はその頼みを敢えて(・・・)引き受ける

 

 

今回の戦闘に参加する者へ

傭兵を束ねる者として気掛かりな点がある為、調査をしたい

調査が終わり次第参戦する様に

 

 

そう傭兵達へと連絡した

 

 

 

 

 

 

男と対立する人物は暫くのちに『最早一戦して決着をつける』という一点においてのみ同意する事となる

 

 

対立している者はせせら笑っていた

自分を支持する者の方が多いのだ

相手は自分達に比べ半数より少し多い程度、負ける筈はない

 

しかも、参戦が遅れるとはいえ大量の傭兵達も加わる予定だ

 

 

 

勝ちは揺らがないと確信していた

 

 

 

 

 

戦闘をする前には軍議がある

 

そこで相手は自分達より少数であり、傭兵達も後から参加するから普通に戦えば必ず勝てると断言した

 

常であれば、勝ち戦なら先陣を我先にと功を求めて発言してくるもの。勝ちが見えているのであればあとはどれだけ自分の利益とするのか?が重要なのだから

 

 

ところが、である

 

誰一人先陣を申し出ないどころか、誰しも周りに視線を送るばかりであり、発言一つすらない

 

 

怪訝に思うそんな人物にとある諸侯の1人が発言を求めた

 

 

 

真に傭兵達が来るのですか?

戦ともなれば、如何に下賎な身であるあやつらとてこの場に居らぬというのは些か以上におかしいではありませぬか?

 

 

何を言われるか

 

 

発言した諸侯の1人は軍議という戦において一番肝心な時にも姿を見せない傭兵達に疑問を持っていると言うのだ

 

 

私は奴等と契約を結んだ!

これがその書面であるぞ!

 

傭兵契約とて口頭で済ませる事もなくはないが、あくまでその場合は『信用出来る相手』に限り、大抵は傭兵仲間からの紹介だ

その為、余程の事情がない限りは書面を取り交わすのが一般的

 

 

疑問を払拭しようと書面を出して、それを強調する

 

 

 

しかし疑問をぶつけてきた諸侯は

 

 

なるほど。確かにその様ですな

しかし、それならば尚更おかしくはありませぬか?

戦場でいきなり合流したとして、マトモな連携はとれますまい

その程度の事すら分からない連中ではないと思いますが?

 

ぐ、む

 

 

これだけの証拠を示しても一切疑いを捨てない諸侯の頑迷さに思わず口籠る

 

 

我等は事前に通達のあった場所に布陣致す

どうやら此処にいてもマトモな議論も出来そうにありませんからな

 

言い合いを静観していたとある人物はそう言って陣幕を後にした

 

 

わ、私も

 

私もだ!

 

 

我先に自陣へと戻って行く諸侯達。呆然とそれを見送るしか出来ない人物だけが陣幕に残された

 

 

 

 

決戦の火蓋が落とされる

 

 

敵方には少数ながらに傭兵がおり、彼等は自軍の本陣目掛けて突き進んでくる

更にこちらよりも小勢である筈なのに、敵軍は傭兵達に負けぬとばかり兵を差し向けてきた

 

 

だが、諸侯は誰1人として動かない

理由は一つ

傭兵(肉盾)が居ないからだ

 

そもそもの話として、先陣の栄誉に拘るのはあくまでも戦後の『発言権』の強化の為だ

彼等諸侯からすれば、目の前の戦も重要だがそれ以上に戦後どれだけ自分の利益が確保出来るか?こそが重要な訳で、そうなれば直接的な力である『軍事力』即ち『兵数』を無駄に損ねるのは彼等からすればあり得ない

『勝ち馬に乗りたいが、被害は受けたくない』

それこそが彼等の偽らざる本音

いっそ清々しくなる程にふざけた話であるが、彼等は本気

 

だから誰も動かない

 

 

何度も何度も軍使を派遣して動く様に命じたが、誰1人動こうとしなかった

敵軍はそんな此方の状況を理解したのか、諸侯達には牽制程度の兵を置くと残りの全軍で本陣へと雪崩かかってくる

敵方からすれば、明らかに劣勢であり少数派に属している時点で勝ち目は薄い

ならば文字通り『死力を尽くして』勝利を奪い取る以外に生き残る道はないと思い定めていた

この時点で両軍の間に決して埋まる事の出来ない『覚悟の差』が生まれてしまう

 

 

確かに兵力において勝っている

が、それは総兵数においてであり、彼が率いている手勢だけでは攻め寄せてくる敵勢に及ばない

 

 

そして、勢いに押されて兵を少し下げる(・・・・・)と諸侯達はあっさり兵を退き始めた

 

 

何が起こったのか彼は理解する暇もなく、本陣へと突入してきた傭兵達によって首を落とされる

 

 

 

 

 

圧倒的不利な状況にありながら、傭兵と諸侯の力を上手く活用して勝利へと導いた男はこの戦いによりグラド帝国の次期後継者として周囲から認められる事となる

 

男の名はウィガルド

グラド帝国皇帝と後になる人物であった

 

 

 

この戦いにより『傭兵を自軍に用意したものが勝つ』との認識が一部で生まれる事になる

今までは勝ち馬にのる(ハイエナ)と嫌悪の視線ばかり向けられていた傭兵達であったが、この戦いをきっかけとして『戦場の勝敗を左右する』とまで言われる事になり、自然傭兵達の地位も向上する事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな傭兵達が大量に抜けたのがエイリーク達の今の状況

しかも敵はグラド帝国皇帝を討ち取られた事により覚悟を決めたグラドの精鋭達

 

不利である事は明白だった

 

 

 

ましてや敵グラド軍の編成が厳しい

 

『月長石ヴァルター』指揮する邪竜騎士団は指揮官ヴァルターは高位職であるワイバーンナイト。小隊指揮官はドラゴンマスターで一般兵はドラゴンナイト

 

機動力と高火力を持ち、しかも砂漠という悪条件を無視できる

 

 

『虎目石のケセルダ』配下の軍団は指揮官ケセルダは勇者でありまたジャハナ出身。その他の兵はソードマスターやスナイパーなどを含む歩行職のみで編成されており、これまた砂漠の影響を受けにくい編成

しかもケセルダは敢えて砂漠地帯の中央部に兵を置いている

 

 

ヴァルターはヴァルターで王都南部にあるこの地域では数少ない平野部にアーヴより借り受けた長距離魔法の使い手やロングアーチなどの射程の長い部隊を配置

護衛にグラド本国から逃れてきた騎士達も此処に配していた

 

全軍総じて士気が高いグラド軍。いや、正確には『元』グラド軍であろうか?

その中でも皇帝ウィガルド敗死の報を聞き、生き残っているグラド六将であるヴァルターの所へと身を寄せた騎士達の士気は尋常ならざるものであるのは想像するまでもないだろう

大陸のグラド帝国以外の国家からすれば『大陸に混乱と悲劇を招いた重罪人』だが、グラド帝国の大多数の人間からすれば『建国史上最大の版図を築いた皇帝』であるのだから

 

故に彼等はそれこそ刺し違えてもフレリア軍やエイリーク達ルネスの生き残りを始末しようとしている

 

 

 

対してエイリーク達の数的主力のフレリア軍は少数の聖騎士(パラディン)とその配下はソシアルナイトにより構成されており、遊撃や偵察などで大活躍していたフレリアのペガサスナイトの殆どは激戦であったジャハナ王宮内の戦闘にて愛馬であるペガサスを失っている

現在、エイリーク達の中にいるペガサスナイトなどの飛行が出来る者はペガサスナイトのターナ、ファルコンナイトのヴァネッサ、ドラゴンナイトのクーガーのみであった

 

更に言うと、エイリーク達の仲間でもカイル、フォルデ、ジストにマリカが未だ戦闘に耐え得る体調ではない

かと言って、他のメンバーも体調が万全とは言い難く、非常に危険な状況と言えた

 

だが、目の前にいるグラド軍はフレリアに続き恐らくはジャハナの聖石をも砕いたであろう者達

つい今しがたエイリークの兄であるエフラムがグラド帝国帝都にてグラド皇帝ウィガルドを討ち果たしたとの報せも入ってきている

 

聖石を守るためには見逃せない相手

そして、相手も自分達を見逃しはしないだろう事は確実

 

 

たとえ形勢不利だとしても、もう戦う他に道は残されていなかった

 

 

 

とにかく急いで方針を決めなくてはならない

敵は完全に指揮系統が別の軍団の様だ

 

恐らくは双方同時に相手となるだろう

 

 

 

取り急ぎだが、作戦を考えた

我がフレリア軍は直ちに南下、南方の平原地帯にてグラド軍と戦う他ないだろうな

 

確かに

我等にとって砂漠地帯での戦闘など誰も警戒しておりませぬ

フレリアの人間としては言いたくありませぬが、今回同道している者達の技量で砂漠に足を取られぬ様馬を操りながらの戦闘は無謀と言うほかありますまい

 

 

ヒーニアスの言葉にフレリア騎士達の実力をよく理解しているギリアムが苦々しい表情で同意した

 

 

となれば、私もそちらに加わるべきか?

 

そうして下さると助かります、サレフ殿

 

では私とアスレイも南の戦線ですね?エイリーク

 

え、ええ。お願いできますか?ルーテにアスレイ

 

分かりました。どこまでお力になれるか分かりませんが精一杯努めます

 

 

ヒーニアスとギリアムの発言を受けてポカラの里の賢者サレフが名乗りをあげ、エイリークが兄エフラムを助けにレンバールへ向かっていた時からの仲間であるルーテとアスレイもまた遠距離魔法を使う魔道士のいる南部戦線に加わる事を確認した

 

ルーテは既に上位クラスの賢者へとクラスチェンジしており、その魔力による攻撃と回復双方はかなり有効にはたらくと思われたからだ

更にアスレイもそうだが、この3人は皆魔力に対する耐性が高い為、魔法戦が予想される南部に必要といえた

 

 

ネイミー、お前は南に行け。俺は北の連中をかき回してやるさ

 

う、うん

コーマ、気をつけてね?

 

任せろって

て訳でネイミーは南で俺は北。それでいいんだろ?王子さん

 

そうだな。南には飛行系の部隊が非常に多い

私だけでは間違いなく手が足りん。ネイミーの力量はよく知っているから頼らせてもらおう

 

は、はいっ!

が、頑張りますっ!

 

コーマ。君のその役割はかなりの危険がともなう

それでもいいのか?

 

俺とネイミーは姫さんに借りがあるんだ

任せとけよ

 

では、頼む

 

コーマ。気持ちは嬉しく思いますがくれぐれも気をつけて

 

 

山賊のアジトに忍び込んでいたところをエイリークに助けられた盗賊のコーマ。そのコーマを助けようとした彼の幼馴染の弓使いネイミー

2人はそれぞれ敵を見て、自分達の役割を考えた上で各々の戦場を選んだ

 

 

親父っ、俺達は北だよな?

 

焦るな、ロス

戦士とは焦る事なく泰然と構えるものだ

エイリーク様、ヒーニアス王子。我々2人は北の部隊にあたりましょう

 

お願いします

 

今は悲しんでる場合でもない、か

王子、姫さん。俺も北にまわるぞ

 

では北の回復役が居ませんので、私とナターシャ殿もそちらへ

 

はい。モルダ様の言われる通り、北の回復役はお任せください

 

 

グラドとの国境の街で出会ったジャハナの王子ヨシュアとグラドの在り方に疑問を持ち、味方となってくれたグラドのシスター、ナターシャ

 

フレリアに逃れて以降エイリーク達に力を貸し続けてくれる神父モルダ

 

彼等は北の戦場を選ぶ

 

 

エイリーク様。私とフランツは南にて戦います

どうか御身第一にお考え下さい

 

エイリーク様ご無事で

 

ありがとうございます。ゼト、フランツ

ヒーニアス王子。私は北の敵に

 

そうならざるを得ないか

 

あ、あのっ!

エイリーク様は私が御守りしますっ!

 

アメリア。ありがとうございます

 

そうだな

堅い守備の君がエイリークを守ってくれるなら安心して南の指揮をとれる。頼めるか?

 

はいっ!

 

では私はヒーニアス様を御守りしましょう

 

となると俺とターナ王女は伝達係と遊撃役だな

 

ああ。恐らくは一番きついと思うが任せるぞ?

 

 

ゼトとフランツにヒーニアス、ギリアムは南

エイリークはアメリアに護衛されながら北の指揮をとる

 

クーガーとターナは敵状確認と各地の伝令などを担当

 

 

テティスとユアンは王都内で負傷者の看護に回ってもらっている

苦しい戦いだが、何とか勝ちきるぞ!!

 

 

 

ヒーニアスの檄を合図に全員が各々の戦場へと向かう

 

 

 

血戦が、始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

くくっ、なるほどなるほど

そう動くか

 

戦場を見渡す事が出来るヴァルターはフレリアの王子の狙いを直ぐに理解した

そもそもヴァルターはただの戦狂いでも狂人でもない

 

 

常人であれば抵抗する事すら敵わない程の狂気をうちに宿してなお、冷静に冷酷に、冷徹に物事を見定められる傑物なのだ

 

 

 

 

 

 

ヴァルターの評価をするとするならば、必ずそこに加えねばならない事がある

 

水城レンバールにてエフラムに敗れ戦死した彼の副官ティラードの事だ

 

 

まず周知の事であるが『この大陸において死者をどの様な形であれ蘇らせるのは不可能』である事を念頭に置かねばならない

 

その上でティラードがエフラムを助ける為にレンバールへと突入して来たエイリーク達の目の前で彼はエイリーク達を案内したオルソンに何と言ったか?

 

ルネスにいる奥方の元は戻られよ」だ

勿論オルソンはある程度正気を失っていたからおぞましいナニカを妻と認識している

 

だが、重要なのはそこではない

 

 

 

何故、グラド軍を追放されたヴァルターの副官である彼がオルソンの内通を知っていたのか?

 

という点である

 

ヴァルターという男は確かに力量がある者ならば一定の評価をするだろう

ヴァルターがグラド軍に帰参して、グラド六将に任じられてから付けられた副官である可能性もあるかも知れない

しかし、エフラム達への対応策をレンバールにてヴァルターに話していた時、彼はレンバールの城主が座るべき所をヴァルターに譲っている

 

そしてヴァルター自身は才のある者を好む一方で自身を追放した『日長石のグレン』を密かに殺害するなどの執念深さやそれが露見しない様に策を巡らすなど、かなり頭もキレる

そんなヴァルターが僅かな間部下として動いていたティラードを素直に信用するだろうか?

可能性はなくもないが低いと言わざるを得ない

 

だが、ある意味では秘中の秘ともいえる敵国の近衛騎士の内通について知っているのであればティラード自身もそれなりの立場になければ知りようもないはずだ

加えて、仮にも近衛騎士であるオルソンを裏切らすなら、当然オルソンの事情についても調べる必要はあるだろう

相手のことを知らずして相手が望んでいる事が分かるはずもないのだから

となれば、オルソンの妻が亡くなっていることも知っていただろう。その上での策となれば『オルソンの妻の代わり』となるモノを用意する手段がなくてはならない

勿論、ティラードが直接用意しなくとも他の者に用意させても問題ないが

 

 

 

更に一拠点であるレンバールの守備を担当していた事も気にかかる

皇帝ウィガルドによるグラド六将へのヴァルター任命の際、グレンはそれを知らなかった様である

 

事実名乗りを挙げたヴァルターに対して

 

ヴァルター、貴様!

 

と発言している事から少なくともグラド三騎の1人であるグレンからのヴァルターへの評価は悪い事がうかがえる

というより、ヴァルターの非道な行為を見咎めてグラドから追放させるきっかけを作ったのがグレンなのだ

仮にヴァルターが引き連れていた部下であるならば如何に皇帝の力があったとしてもティラードがレンバール城の守備の責任者となる事は考えにくいだろう

 

何せグラド三騎のデュッセル、セライナ、グレンは騎士としての誇りを持っている人物だと思える

デュッセルは皇帝の非道な行為に耐えかねてグラドを裏切った

つまりそれだけグラドの無法とも言える行動に疑問を持っていた訳で、そんな人物のモラルが低い訳もないだろう

セライナはその出自から皇帝ウィガルドに絶対の忠誠を誓っていたが、だからとて好んで非道な行為を見逃すとも思えない

グレンについては言うまでもない

 

 

更にレンバール城周辺の守備にあたっていたものは最期に

 

ティラードの野郎、まさか俺たちを囮に

 

と言い残している

 

 

つまり、ティラードという男が自分達を囮にしかねない人物である事を彼は知っていたということ

 

レンバール一帯をヴァルターが任されていたというなら話は変わるが、先に挙げた理由からその可能性はかなり低い

 

 

 

となれば可能性として高いのは

 

 

ティラードはヴァルターがグラドに仕えていた時からの部下であり、ヴァルターがグラドを追われてからもグラドに仕え続けていた

と言う事になりはしないだろうか?

 

何せヴァルターからすれば強者と命をかけて戦えるグラド軍というのは都合が良かった立場の筈

それをつまらない事(ヴァルター的には)で軍を追放されたとなると何れお礼参りしなければ気が済まない筈

 

だが、その為にはグラド軍内にもそれなりの立場がある協力者は必要と思うだろう

それが自身の認める才があるティラードであるならヴァルターとて安心したのではないか?

 

上役であるヴァルターが追放されてもグラドに仕え続けたからこそレンバールという拠点を預かる事が出来、そこの守備を担当している者もティラードという男がどの様な人物であるか理解できたのではないだろうか

 

 

真偽の程は定かではないが、少なくともエフラムの近衛であるオルソンの内通を知っていた事は確かであり、その様な人物を部下にしていたというだけでもヴァルターの指揮官としてのカリスマの様なものは推し測れよう

ティラードとて野心もあっただろう。元上司がグラドに返り咲くと言ったところで、グラド三騎という要職についているグレンからよく思われていない以上復帰の見込みはかなり薄かった筈

それでもティラードという男はヴァルターの部下としてあり続けたならば、そこにどんな感情があったのかは第三者である私達には想像すら出来ない

 

 

 

 

ただ一つ言える事があるとすれば、ヴァルターという男にとってグラド軍などはどうでも良かったが、命を捨てて戦いに挑む者が多いこの戦場はヴァルターにとって最高の舞台であったと言うことだろう

 

 

 

 

 

 

 

死ねぇっ!

 

我等グラドは滅びてなどいないっ!

 

陛下の仇っ!

 

将軍の無念を晴らすっ!

 

 

ぐっ、なんという戦意の高さだ

フランツッ、気をつけろ!

 

はい!将軍

 

 

既に祖国がエフラムにより、攻略されている上に守るべき皇帝や敬愛する将軍セライナを喪ったグラドの騎士達は元より生還する事など望んでもいない

自分の命と引き換えにフレリアのルネスの者達の命を奪う

 

それだけしか頭になかった

 

 

故に

 

 

 

こ、こいつら!?

 

くそっ、死ぬ気か?

 

マズイッ!

 

ぐわあっ!

 

 

ジャハナ王宮での激戦で疲弊し、慣れない砂漠の地での戦闘はフレリア騎士達の集中力を奪い去り、それをグラド本国から逃れてきたグラド騎士が命を捨てて狙いに来る

 

加えて

 

 

こ、こいつら自分達が巻き添えになっても構わないとでもいうのか!

 

 

 

元より生還など望んでいないグラド騎士達は長距離魔法を使う魔道士達やロングアーチ部隊に対して

 

 

我等の安全など最早無用

ただ敵を討つことのみに専心してもらいたい

 

 

との要請を事前に出している

 

 

その為、観測役のドラゴンナイトにも『最も敵が集中しているところ』を座標として送る様に要請している

そして、グラド騎士達は『敵が集中する様に圧力をかけて』いる

 

命を捨てて敵の数的主力であるフレリア騎士達を『一ヶ所』にまとめようとするグラド騎士達

 

 

だが、慣れない砂漠に苦戦し、連戦で疲弊しているフレリア騎士達は気付かない

 

更にグラド騎士の一部はこの戦線の指揮官であるヒーニアスへ向けて数を頼みに突撃した

守るはフレリア重装兵ギリアム

 

残念だが、グラド騎士達ではギリアムの鉄壁の守りは崩せないだろう

しかし、そんな事は彼等グラド騎士も理解している

目的はヒーニアスの撃破ではない

 

 

 

くっ、敵の勢いが想像以上です。ヒーニアス様一度お下がり下さい!

 

ダメだ!今下がってしまうと直ぐそこまで迫っている飛竜隊に対応できなくなる!

 

 

空を駆ける飛竜隊。つまりヴァルター麾下のドラゴンマスター達が統べる部隊は砂漠に慣れないヒーニアス達にとって死神にも等しい

 

相性的には魔法が最も効率良いが、その場合竜騎兵に接近されると物理的防御の弱い魔道士達では致命傷にもなりかねない

被害は出るが、まだヒーニアスの様な弓を使う者の方がマシと言えた

 

一応指揮下の弓兵隊もいるが、ほとんどの兵の技量は高くない

 

 

そもそもグラド軍との戦闘は想定されていたが、あくまでもそれは遭遇戦程度の規模を想定していた

ジャハナやロストンへのグラドに対する警告(・・)が主目的だった事が理由だ

 

流石にフレリア主力の精鋭を連れてロストンやジャハナの首都に入るのは要らぬ軋轢を生みかねないとの判断もあったからである

 

 

それでも王族であるヒーニアスやルネスの王族エイリークの護りとなるからある程度の数は揃えたのだが

 

その程度でグラド軍、しかも血に飢えた獣といえるヴァルター麾下の部隊と満足に戦えるはずもなかった

 

 

故に数少ない有効な弓使いであり指揮官でもあるヒーニアスは迂闊に下がれない

 

前線にはゼトやフランツ達(ルネスの者達)もいるのだから

 

 

 

 

だが、これにより南部戦線指揮官であるヒーニアスの意識は襲いかかってくるグラド騎士と迫り来る竜騎兵達に向けられる

 

 

 

そうなれば自然、玉砕(全滅)覚悟のグラド騎士を相手取るフレリア騎士達は不利となる

何せフレリア騎士達はヒーニアス指揮の元で戦う事に慣れすぎていたのだから

 

 

 

 

グラド帝国万歳っっ!!

 

我等が祖国よ、永遠なれっ!!

 

 

グラド騎士達は味方の遠距離魔法とロングアーチ群からの射撃の雨の中にフレリア騎士達と共に、消えた

 

 

 

 

そ、そんな

 

狂っています

 

・・・

 

 

そんな凄惨な事態を直ぐそばで見ていたアスレイとルーテは我が目を疑った

サレフは一瞬だが目を伏せる

 

 

3人は迫り来るグラド竜騎兵たちの相手で手一杯であり、ゼトとフランツはこの3人を護るので精一杯

 

何せ数的主力であるフレリアの弓兵隊はその技量から竜騎兵達に懐へ入られたが最後となる事はゼトの目にも明らかだ

弓兵とはいえ、敵の攻撃は回避するのが基本なのだが、彼等の身のこなしはお世辞にも俊敏とは言い難い

 

 

となれば、頭上の敵対応はヒーニアスとロストンの狂戦士ドズラとローグのレナックに守られているネイミーとギリアムに護衛されているヒーニアス

そして此処にいる3人が主力となる他になかったのである

 

 

 

 

 

 

申し上げます!

 

言え

 

はっ!

フレリア騎士団はグラド本国から逃れてきた騎士達の奮闘によりほぼ壊滅との事!

 

そうか

 

なお、グラド騎士隊も全滅したそうですが

 

ふ、敗残兵など使い物にならんと思っていたが、中々どうしてやるものだ

報告ご苦労

 

 

 

フレリア騎士団壊滅とグラド騎士隊の壊滅は即座にヴァルターの元へと伝わった

 

 

(これで奴等の数的主力は役にも立たん弓兵隊のみ)

 

さぁ、どうする?フレリア王子にルネスの王女

 

 

ヴァルターは愉しそうに顔を歪めた

 

 

 

 

 

 

 

 

アレは遠距離魔法とシューターか?

 

 

グラドの遠距離攻撃隊より更に南方より戦場へと迫る軍勢があった

 

 

デュッセル、突っ込むぞ!

 

・・・承知した

 

 

その軍勢は大陸に混乱を齎したグラド帝国本土を攻略したエフラム王子指揮下のフレリア軍

 

彼等はグラドの聖石が既に無いことを皇子リオンに従って聖石を研究していた魔道士ノールより聞き、残存するグラド軍がジャハナを目標としている事を知り急いで駆けつけたのだ

 

 

 

フレリア軍でありながら、総指揮官はルネス王子であるエフラムであり、その補佐はグラド六将筆頭『黒曜石のデュッセル』という異例尽くしの陣容

 

 

デュッセルとしては元味方に剣を向ける事になる為、心情としては複雑だったがグラドの未来を考えエフラムに従っている

 

 

 

しかもグラド本国に攻め入る為、ヒーニアスとエイリークが率いているフレリア軍に比べても技量の高い者ばかりである精鋭集団

 

それが無警戒であったグラド軍の柔らかい脇腹に突き刺さったのだ

 

 

 

 

 

グラド本国を制圧したエフラム指揮下のフレリア軍参陣

 

くくっ、そうかそうか。あの小僧が来たか!

ヴァルターはその光景を遠望すると

 

 

全軍続け!ルネスの生き残りとフレリアの連中の首を獲る!

 

 

待機していた配下の『邪竜騎士団』全軍に突撃命令を下した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南方で激戦が繰り広げられていた頃、北方戦線でもケセルダ率いるグラド軍とエイリーク率いる部隊が激突していた

 

 

はあっ!

 

やあっ!

 

エイリークとその護衛であるアメリアも数で劣っている為、前線で剣と斧を振るっていた

 

アメリアは度重なる経験を経てジェネラルへとクラスチェンジしている。本来ならば移動力に難のあるジェネラルは砂漠戦に不向きである。が、彼女を教えたクレムトはその砂漠の国の傭兵

その為、砂漠における戦闘法や砂漠に適応する為の履き物、つまりブーツをアメリアがグラドに志願するにあたり贈っていた

 

その結果、アメリアはエイリークと足並みを揃えることが出来たのである

 

 

うおおっ!

 

はっ!

・・・ロスあまり攻め急ぐな

 

分かってるよ父ちゃん!

 

 

元ルネスの戦士長ガルシアとその息子の駆け出し戦士だったロス

2人は相性不利なはずの剣を装備した傭兵達相手に一歩も引く事なく奮戦していた

 

 

 

 

っと、危ねぇなぁ

 

気をつけろよ、コーマ

 

はっ、アンタこそ気落ちしてるからって油断すんなよ!

 

コーマ殿、回復します!、

 

モルダ様、ロスさんの治療をして来ます

 

 

 

盗賊としての身のこなしを活かして傭兵やグラド兵の攻撃をかわし、いなすコーマ

そのコーマから少しだけ離れた所でジャハナの名剣『シャムシール』片手に敵を次々と斬り伏せるヨシュアに傷が増えつつあるコーマにリブロー(中距離回復)を使うモルダと傷を負ったロスの救護に向かうナターシャ

 

 

どうしても南方の敵の方が多い為、兵力をそちらに多く振り分けねばならない関係上、エイリーク達は誰一人として倒れる訳にはいかない

 

そんなギリギリの戦いを強いられていた

 

 

 

 

一方

 

 

裏切り者め!覚悟!

 

ぐっ

 

 

 

 

グラドの竜騎士であるクーガーは当然ながらグラドに所属する竜騎士や竜騎兵達にとって憎悪の的だ。何せグラド三騎が一人『日長石のグレン』の弟でもあるクーガーの裏切りはグレンを尊敬している者達にとって忌むべきものでしかなく、真っ先に始末すべき存在といえた

ファルコンナイトのヴァネッサはエイリーク達の支援担当であり、フレリアの王女でありペガサスナイトでもあるターナはヒーニアスの支援を担当している

 

何せターナは勿論、上位クラスのヴァネッサですら卓越した技量を持つヴァルター配下『邪竜騎士団』に対して有効打を与えるには純粋に攻撃能力が不足しているからだ

 

その為、クーガーは地上からの援護付きとはいえ『邪竜騎士団』の攻撃を何とか凌がねばならない

 

 

何せクーガーが落ちてしまえば、ほぼ空はグラドのモノとなってしまい如何にヒーニアスやネイミーが射手として有能であろうが、サレフとルーテにアスレイの魔道士としての力量が優れていようとも間違いなく押し切られる事は自明

 

 

だからこそ、クーガーはどれだけ自身が追い詰められようとも退けないのだ

 

逆に言えば、クーガーが粘っているからこそヒーニアスの南方戦線とエイリークの北部戦線が崩壊しないとも言えるのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

くそっ!

 

く、これしきの傷でっ!

 

貴方達落ち着きなさい!

焦る気持ちは分かりますが、だからと言って今無理をすればそれこそ命の保証はありませんのよ!

 

 

ジャハナ王都内では先の王宮内での戦闘で重傷を負い、戦線離脱せざるを得なかったフォルデとカイルの2人が何とか戦場に出ようとしていた

 

無理もあるまい。直接の上司であり、主君でもあるエフラムから妹である「エイリークの力になってくれ」と頼まれて戦っていたのに一番兵力が必要な時にこのザマだ

 

たとえ怪我をおしてでも戦場に行こうとするのは理解できなくもないが、治療しているラーチェルからすれば無謀極まりない

とはいえ、ラーチェルもまたその立場から騎士が何を最も重んずるかもよく理解している

が何よりもそんな身体で戦場に出ても無駄死ににしかならないだろうから止めている

 

 

 

 

 

良い加減にしときな

そんなボロボロの身体で戦場に出て、いったいアンタ達は何が出来るというのさ?

 

それは

 

盾になる事くらいは出来る!

 

 

いつまでも続いている押し問答に傭兵団として戦場に立つ事が多いテティスが遂に口を出した

 

まぁ、それでもカイルとフォルデは納得していない様だが

 

 

仮に満足に戦えないアンタらが戦場に出たとする

当然弱っているアンタらを敵は見逃しちゃくれないだろうね。そうなれば誰かがアンタらの支援に入らなきゃならなくなる

 

そんな事をする必要はない!

 

私たちは囮にしかならないのだから気にするなど

 

アンタらが知っているエイリーク王女はそんなに薄情だって言うつもり!?

 

っ!それは

 

っ!

 

あの優しい、いや甘いお姫様は王宮内で亡くなったフレリアの騎士の死にも悲しんでいた

ましてや、尊敬する兄の側近ともいえるアンタらが亡くなって悲しまない筈がないだろう?

 

テティスはそう言って二人の元を離れる

 

 

負傷者はまだまだ居るのだ

この2人にだけ構っている余裕などないのだから

 

 

 

 

 

 

 

情けねぇな

 

ごめんなさい、隊長

 

同じく王宮内での戦闘で重傷を負ったジストとマリカもまた、戦場に出ることは出来なかった

 

それよりも顔見知りの多いジャハナの衛士達を倒し、結果として故郷を滅ぼしたのであるから、ジストの精神的な疲労はいくばかりか

 

 

今までで1番の傷を負い、それが他ならぬ故郷の人間達から受けた数ともなれば、流石に傭兵として経験豊富なジストとて堪えるのは無理もない

マリカはあくまでも『そういうもの』と割り切ろうとしているが、やはりそれでも簡単に割り切れるはずもなかった

 

 

 

マリカはその整った容姿から傭兵仲間に人気であり、その上確たる実力を持つ

 

些か以上に人付き合いが苦手ではあるが、だからとてそんな細かい事を気にする傭兵達ではなかった

強引に酒を進められることや、ジストやテティス、はてはテティスの弟であるユアンまで巻き込んでの宴会などいつもの事

 

戸惑いこそしたものの、仲間達と騒ぐその場所がマリカは不思議と嫌いではなかった

 

 

普通ならば重傷を負って拠点(ジャハナ)に戻ってきた傭兵でも傭兵達や王都の者達は温かく迎えるものだ

 

 

まぁ、傭兵達の場合だとヘマやらかしたな!(大丈夫かよ?)とへそ曲がりが多い彼等でしか理解できない様な慰め方しかしないのであったのだが

 

 

だが、負傷を国内でしたジスト、マリカの元に既に半日以上経っていても誰一人として見舞おうとする者は現れなかった

 

 

 

人がいない訳ではない

 

事実ジャハナ王都各所に放たれていた火は迅速とまではいかないものの、決定的な被害を受ける前に消し止められている

ジスト達と共にエイリークの元で活躍していた傭兵達だけでは到底手が足りないのは明らかなので、少なくないジャハナの民がいる事も間違いない

 

ユアンがジスト達の怪我の止血の為に必要な包帯などを家々を回って集めてきている事からも住人は皆無ではないのは確実

 

だが誰一人としてジスト達を見舞おうとする気配は、ない

 

 

 

つまりはそういう事なのだろう

 

 

彼等ジャハナに住んでいる者達からすれば、グラドが聖石を破壊している事など知っていたとしても、ジャハナ王都は周囲を砂漠に囲まれたある意味では天然の要害に守られているともいえる

 

更に王都内には凄腕のソードマスターであるカーライルを筆頭に歴戦の猛者揃いの衛士達

 

結局のところ、フレリアの聖石が破壊されようがルネス王都が陥落しようが他人事だったのだ

 

 

ケセルダ配下のグラド軍の大半は王都より離れた所に陣を構えており、ジャハナ王都からは視認出来ないところであり、尚且つケセルダがジャハナ王都内に同行させた人員もジャハナに火を放つ為に必要な最低限の数のみ

 

更に彼等はジャハナを拠点にしていないが殆どが傭兵であった事も王都内の住人が問題としなかった点だろう

 

 

 

逆にエイリーク達はジャハナ王都内へと正規の手段で入国し、大掛かりな陣を張ってしまった

 

発端はグラド側に属する傭兵からの攻撃だとしても、それを目撃した住人がいない以上、ジャハナ王宮内で衛士達や文官達と戦ったエイリークやヒーニアス、それに加わっていたジスト達がどれだけ言おうとも信用されるはずもない、という訳である

 

 

当然、グラド側が火を放った事についても下手をすればエイリーク達に原因があったのではないか?

とすら疑われかねない状況

 

 

更に今現在、エイリーク達はジャハナ王都付近で戦闘をしている

 

ここで問題なのは、下手人であろうケセルダ配下のグラド軍もジャハナ王都に向かって進軍(・・)している事である

正確には近郊に布陣しているエイリーク達を狙っているのだが、兎にも角にもジャハナ王都方面へと兵を進めつつあるという事

 

 

態々火を付けた筈の所に向かう筈もない

 

ジャハナ王都内の住人達がそう思ってしまったならば、その時点でエイリーク達はグラド軍とジャハナの住人達に挟まれる事になる

一応、エイリーク達に協力していた傭兵仲間が止めてくれるとは思うが、それとて絶対とは言い切れない

 

 

住人達に直接会ったユアンの表情を見たテティス達は決して自分達に対して好意的でない事を嫌でも理解せざるを得なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケセルダはエイリーク達の手堅い守りと連携について、素直に感心していた

 

(なるほどなぁ。確かに王宮の連中とやり合って勝てるだけの事はありやがる。しかし、あのガキの戦い方は何処かで見たような気が)

 

 

ケセルダは直接の戦闘については数少ないグラド正規兵と傭兵達に任せており、エイリーク達の奮闘を離れた場所から見つめていた

 

その中で一際目につくのが、赤い鎧を纏った金髪の女

どうやらルネス王女であるエイリークの護衛らしく、敵にしておくには勿体無いと歴戦の傭兵であるケセルダに思わせる闘いぶりを見せている

 

 

 

それもその筈

 

アメリアの槍や斧による戦闘法はケセルダの数少ない親しい友人であるクレムトが彼女に教え込んだモノが基礎となっていた

当然、アメリアとクレムトでは力や技術に戦闘の駆け引きなどの要素が全く異なる為にアメリアなりに工夫した結果だ

 

だが、その基礎基本は間違いなくクレムトのものであり、クレムトと戦場を幾つも共に駆け抜けたケセルダに見覚えがない訳がなかった

しかしクレムトの本領は魔法による戦闘であり、斧については亡霊戦士が振るうものの、槍による戦闘などそれこそ年単位で見ていない

 

その為、ケセルダとしてもクレムトと目の前のアメリアの戦闘法を比較しても直ぐにそれへと思い至る事はなかったのである

 

 

というよりも、自身の適性についてクレムトが悩んでいたのはそれこそ五年以上も前の事であり、その頃のクレムトの槍の扱い方を覚えている方が不自然まであるといえよう

何せ、槍なんて使わないケセルダから見ても

 

 

お前大丈夫かよ?

 

と心配する程に未熟(へっぽこ)だったのだから

 

 

勿論、その後ケセルダに見えない様注意しながらクレムトは槍の腕前を上げたのだが

 

 

 

 

とはいえ、戦を好むのが傭兵という生き物である

 

 

 

 

面白えじゃねぇか

 

 

ケセルダは目の前の邪魔者(部下だった者達)に目をくれる事なく、アメリアへと迫った

 

 

 

 

 

 

 

っ!

 

それに気付いたのはアメリアがエイリークの護りをキチンと果たそうとしていたからだろう

 

 

 

オラァッ!!

 

 

ただ力任せの技術など無い一撃

 

 

だが、その一撃を受けたアメリアは今まで相手をしていたグラド軍の誰よりも危険だと本能で察知した

 

 

 

へっ、この一撃もあっさり凌ぎやがるか

やるじゃねぇか、滅んだ国の王女を守るだけの事はあるな

 

あ、貴方は

 

・・・

 

 

一撃を防がれた筈のケセルダはアメリアの腕前を褒める

 

それに対してエイリークは目の前の男が危険な人物だと認識し、アメリアは油断なくエイリークをその身の後ろに庇う

 

 

 

死ねやぁ!

 

膠着状態を好機と見たのか、ケセルダの近くにいた傭兵がアメリアへと襲いかかる

 

 

っ!

 

アメリアは迎撃するか一瞬迷ったが、その心配はなかった(・・・・・・・・・)

 

 

何故ならば

 

 

 

うるせぇよ

 

ドシュッ!

 

 

ケ、ケセルダ

て、てめぇ

 

 

人の獲物取ろうとしてんじゃねぇよ

 

 

ケセルダがその傭兵の胴を薙ぎ払ったのだから

 

 

 

せっかく愉しめそうな相手だってのに、邪魔すんじゃねえよ

 

 

 

 

絶句するエイリークとアメリアに

 

 

 

さて、名乗らせてもらうかね。俺はケセルダ。グラド六将が一人『虎目石』のケセルダだ

 

 

 

そう名乗った

 

 

 

 

 

 

 

 

死闘はまだ、終わらない

 

 




という訳でグラド軍(本国失陥)vsルネス(本国陥落)、フレリア軍(ヒーニアス指揮下騎士団壊滅)、フレリア軍(ルネスのエフラム王子指揮)となりました

書ききれなかったので次回に回します
勢いだけで書いているので、プロットは数年前に書いた下書きと脳内構想のみという

この際申し上げますと、この話はハッピーエンドにするつもりは『一切』ございません

予めご了承下さい

ではよろしければ次回もお付き合い下さると望外の幸せです
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