読んでくれる人が1人でもいる限り、止まらないぞぉ!!
相変わらず独自設定などが無双乱舞してますが、それでも宜しけれはどうぞ
場所は変わり、此処はグラド帝都
負けたな
ああ、負けたか
グラド王宮の一室に集まるのはグラド帝国を支え、皇帝ウィガルドに忠誠を捧げていた者達
つまり旧グラド帝国の文官達であった
グラド帝国皇帝ウィガルドを討ち果たしたエフラムであったが、さりとて無抵抗であった文官達まで皆殺しにする様な人物ではない
エフラムは武の師匠でもあるデュッセルからの助命嘆願を受けたという形で彼等の処刑を避けた
それが文官達にとって、幸せであったかどうかは別であるが
皇帝ウィガルドは頻繁に地震の起きるこのグラド帝国を立て直し、その上で災害が起きたとしても民衆の事を忘れる事など一度とてなかった。だが、民に対して過剰な負担をしいる事はなく、周辺国とも融和政策を実行し民衆にとって最も負担となる『軍事行動』そのものを限りなく減らす事に成功する。故に国の内外から『穏健帝』と呼ばれ、臣民から常に仰ぎ見られる存在だった
だが、此処しばらくの皇帝は民のことを安んじるどころか大義なき戦争の繰り返しによりグラド帝国はおろか、護るべき臣民にすら過度な負担をかけ続けていた
文官筆頭であったある男はその様な状況に耐えかね、ウィガルドへと直言した
陛下!恐れながら申し上げたく!
陛下の今のなさりようは陛下が最も忌み嫌われておられる暴君そのものにございますぞ!
何卒、何卒思い留まり下さいますよう伏して申し上げまする
そう言い、男はウィガルドに向かい頭を下げ、跪いた
これはグラドの宮廷作法とでもいうものであり、『我が弁受け入れられなくば、死を与えられよ』という最上級のものである
言うまでも無いが、これが受け入れられないのであれば弁を向けられた者は進言した者を殺さねばならない
故に
ならぬ
そう、ウィガルドが答えを返した時、彼の胸中の無念はいかばかりだったであろうか?
彼が出来たのは無言で深く頭を下げる事だけであった
その日、グラド帝国の文官筆頭は還らぬ者となり、殆どの文官達は明らかに様子のおかしくなった皇帝への不信を抱くようになる
それから暫くのちに『大規模な軍団を支えられるだけの物資』を用意する様命が出てしまい、彼等の胸中に一抹の不安がよぎった
殆どの武官達は功を競っているルネス侵攻
当然、文官達からすれば狂気の沙汰でしかなかった
ルネス王国は大陸の中央に存在する国家である
つまり何処へでも侵攻出来ると云える
がそれは逆に『どの国からでも侵攻される』リスクを常に負わねばならない事と同義
文官達はありとあらゆる手を講じ、何としてでもこれ以上の『暴挙』を止めようとした
ルネス占領軍に対しての補給を少なくする事でグラド軍の維持が出来ない様にしたり、敢えてフレリアとの国境付近にあるリグバルド要塞へと追加増員についての決済を遅らせたりと
露見すればまず間違いなく死罪であり、ともすれば一族にまでその累は及びかねない
であるからこそ、文官達は自身の妻や子供達との一切の縁を切り、全ての責任が自分のみに向かうようにした上での事
仮に陛下がこれに気付くのであれば、まだ説得のしようもある
だが、気付かなければ
そして彼等の皇帝陛下は気付く事なくそれを認可した
彼等はその時点でこの国の終わりを覚悟する事となる
だが、構わなかった
我等が皇帝陛下に仕えるなら死すら厭わぬが、陛下の『ような』者に仕えてこの国の民の生活を破壊するなど、とてもではないが認められなかったのだから
悪鬼羅刹と罵られようが後世まで悪名を残そうが、彼等にとっての第一はグラド帝国臣民の生活基盤の確保だったのだから
それがむざむざ滅ぼした筈の国に逆襲され、遂には皇帝たるウィガルドすら討たれたのだ
グラドの誉とまで称されたグラド三騎
蛍石のセライナは王都防衛の際に戦死
日長石のグレンは任務中に消息不明だが、恐らく死んでいるだろう。
ここまでは良い
たとえセライナとグレンの内心はどうあれどグラド帝国の将として最後まで帝国と皇帝陛下に忠を尽くしたのだから
だが、グラド三騎の筆頭であり後のグラド六将においても格別の待遇を受けながら敵であるフレリア軍に寝返った黒曜石、デュッセル
この男について論ずる必要を彼等は認めていない
仮にも皇帝陛下より『黒曜石』の名を
グラド三騎筆頭の座を
何よりもあのルネス侵攻において活躍しておきながら
どの面下げて
それだけでも業腹ものだというのに、祖国であるグラドを滅ぼす片棒を担ぐなどグラド帝国軍人、いやグラド帝国臣民としてもあり得ない
唾棄すべき裏切り者であるデュッセルの嘆願により命を永らえた事を知った一部の文官達はその命を絶とうとしたが、他の同僚達により制止されている
国の中心ともいえる皇帝ウィガルドを喪い、国の護りを担当する筈のグラド三騎は崩壊(彼等は追加人員であるヴァルター、ケセルダ、アーヴについて全く認めておらず、公文書においてすらもグラド六将という単語は『一度として』使用されていなかったりする)
皇子であるリオンについては、エフラム達が帝都を去った後にリオンの側にいた魔道士より話を聞くまでは捜すべきとの認識で一致していたが
・・・つまり何かね?皇子は未来を知る為に大陸の守り石たる聖石を実験に使ったというのか?
しかも、それを制止せねばならぬはずの貴様らは止めるどころかその研究に没頭した、と?
はい、その通りです
どんな喜劇だ、これは!人の領域から外れた事を望み!その為に聖石を歪め!挙句の果てには陛下の御身を利用して他国の聖石すら砕いたというのか!
グラド帝都の王宮、いや正確には
王つまりこの国では皇帝のいる場所であり、そうでない此処はあまりにもその響きと異なりいっそ憐れですらある
その一室にて混乱を極めているグラド国内を何とかしようと苦慮している文官達の元へとある魔道士が訪ねてきた
その者はかつてリオン皇子と共にグラドの聖石について調べていたと言う。調べると言っても学術的なものではなく、魔術的な方向だった
つまり、不遜にも聖石を使い『未来を予知しよう』としたと言う
それを聞いた一人の文官はあまりの内容に怒りの声をあげる
グラドという国は地震活動が活発であり、家屋の倒壊などについて報告が必ず入るほど
だが、それと比較して人的被害はウィガルドの御代の治世においては年々減少傾向に向かっていた
皇帝ウィガルドはグラドの大工や左官達建設関係の技能を持つ者に対しての優遇措置を用意。国内の建造物について少しずつではあるが、耐震性の高いものへと更新させていった
更にグラド国軍から直接戦闘能力に優れない為、騎士として不採用となった者や退役した軍関係者などを積極的に雇用し、人口密集地において交代制の昼夜通して地震などに対する対策をする組織を創り上げた
地震とは
その様な時に即応出来る部隊として彼等を雇用したのだ
地震発生直後は担当地区で避難の呼びかけ
避難場所の確保や当座の食糧の確保や混乱時に便乗しての略奪や不法取引の防止に王都への速やかな連絡などを組織として行なう
更にその地を治めている領主に対しても報告を行なうと共に、様々な災害復興に対する協力を
彼等はグラド王国直属の組織であり、緊急時にはその時限定だが地方領主達への命令権も有している
無論、混乱が収まると直ちに王都の文官が緊急時の対応や命令などについて精査する事により、民衆や商人それに地方領主への命令が妥当なものであるのかを審議する場も設けられる事で彼等への抑えとしているが
ウィガルドが即位して程なくグラド帝国はかつてない規模の地震災害に襲われた事があった
その際、堅牢な筈のグラド王城も崩落
不幸中の幸いというべきか昼間の出来事であった為、人的被害は軽微であり、ウィガルドは即座に国内の災害状況の確認を文武両官に指示した
王城が崩落するほどの規模であった為、各地の村落などでも同様に崩落したモノが多く、ウィガルドはその再建に国内の技能者達を動員。結果として常にない速度で復興が進んだ
だが、そのかわりに崩落した王城についての再建の目処は災害から半年経っても全く進んでおらず、一部の権威至上者達はウィガルドのやり方に不満を持つ事となってしまう
ウィガルドは
王城の再建ともなれば、国内の復興が遅れる事は自明
ならば、我等に必要な場所を最低限確保し国内の復興を優先すべきであろう
と王城の早期再建を主張する者達の主張を退けた
グラド帝国を襲った地震の報は遅れながらにルネス、フレリア、ジャハナに伝わり各国は災害支援を申し入れた
とはいえ内容が『崩落したグラド王城の再建』というものであり、自国の技能者達によりグラド王城を造るというある意味では危険なものであったといえる
何せ造るという事はその建物の構造を詳細に知る事と同義であり、皇帝を最後に守る盾でもある王城の構造を知られるというのは言うまでもなく危険な事でしかなかった
ルネスの王は建造費についてルネス負担でも良い
と言っていた事からもその利益の大きさがわかる事だろう
常ならば受け入れる事など到底出来る内容ではない
だが、ウィガルドはそれを受け入れた
何せ王城再建には途方もない資金と資源、何よりも人員が必要となる
国内の被害が甚大な事を理解しているウィガルドからすればそれを他国がやってくれるのであれば、それこそ諸手を挙げて歓迎しようというものだった
だが、困ったのは言い出したルネス側である
何せ『受け入れるはずがない』からこその大きすぎる支援内容であったのだ
それがあっさりと受け入れられるとなると色々問題
頭を抱えた国王だったが
よくよく考えると戦争するかもしれない相手に自分の居城造らせるわけないよな?
という事はあのウィガルドとやらは戦争を仕掛けるつもりはない?
仕掛けたとしてもウチが戦っている最中にフレリアとジャハナにも参戦して貰えばいいし、しかも王城の弱点は筒抜け
あれ?別にそこまで悪い話ではない?
と思い直し、友好国であるフレリアに資金援助を申し入れ、ルネスはグラド王城再建を約束した
なお、この際の財政出費が問題となりルネスとフレリアにおいて代替わりする事になるのだが、少なくとも『貧しい国』であるグラド帝国の出征の危険性が大きく下がったという意味においてはこの判断を間違いとは言い切れなかったりする
それ故に以前、フレリアにルネスとグラドの王宮の構造が似ているという話となったのだ
正確にはルネスの職人達が造ったから自然と『ルネス式』になったとも言うのであるが
ウィガルドは帝位相続の際の戦いにおいて、寡兵でありながら相手を打ち破り、国内の反対勢力を抑えた
加えて今回の一件によりグラド新皇帝の評価を下げさせる事により、結果としてグラドへの軍事的圧力や警戒を解かせる事にも成功
故に彼は『穏健帝』と呼ばれたのだ
その唯一の後継者が
というよりもこの大陸における後継者の育成方法自体が色々とおかしいと言わざるを得ない
ルネスのエフラムは次期国王でありながら、政務を学んでいるとは到底思えない純軍事的行動を好む節がある様にしか見えない
普通、王都が陥落したら奪還するなりエイリークみたいに友好国であるフレリアへと救援を求めるべき
どこをどう考えたら『敵国に踏み込んで相手の進軍を遅らせる』という発想になるのか
更に国王不在でその上指揮系統が崩壊したであろう各地にいたはずのルネス軍とて、各個撃破されただろう事は想像に難くない
僅かな手勢でレンバールを攻めるくらいならば味方を集める方が現実的だろう
更に一度危険なところをエイリークたちの援護によって助けられて、その上フレリア軍を率いてグラドに再侵攻するとはとてもではないが、民の平穏を守る事に頓着しているとは思えない
エイリークはエイリークで兄エフラムがグラド侵攻をするのであればせめて彼女達だけでもルネスの民を救いに行くべきだった
ロストンのラーチェルについてとジャハナのヨシュアについては語るまでもないだろう
どこの国の王族が国をほったらかして諸国の『魔物退治』や『傭兵業』をやるというのだろうか?
まぁ、別タイトルになるが親子二代に渡って自分の国をおざなりにした風の王国の王族(しかも次期後継者)がいるが、あれはもう手遅れだろうから除外するとしよう
フレリアのヒーニアス王子は『まだ比較的マシ』な方だろう
その分妹姫であるターナ王女が奔放であるが、釣り合いが取れていると好意的に解釈出来る余地は残されているだろう
グラドのリオン皇子については、自国の領民の苦しみを理解しての行為であるから多少の弁解の余地はあるかも知れない
が、ノールをはじめとしたリオンと共に研究に携わっていた魔道士については普通に考えて族滅されたとしても何ら不思議ではない
恩情を与えられたとして、当人の自死が許されるレベルだろう
とはいえ、状況は分かったが情状酌量の余地はない事もまた事実
確かにエフラム王子やエイリーク王女との友誼がリオン皇子にはあるだろう
それがどうしたと言うのか?
グラドの臣民を救おうとする志は素晴らしい
だが、その為に大陸全土を戦火に晒して良いはずもない
グラドによる大陸統一はグラド帝国という明確な統治者が存在する
だが、聖石を破壊する為の各国への侵攻というのはあくまでも『聖石破壊』が優先される以上、現在のルネスの様な無秩序が大陸全土に誕生する事となる
仮に聖石破壊の『ついでに』大陸を統一したとしても魔物達が跋扈する大陸において、人々は何に縋って生きてゆけば良い?
伝承によると、現在大陸に増えつつある魔物とて、階位としては下の方であり、強力な魔物が増えると言う事は『魔王フォデス』の復活が近い事を示すとされている
魔王が復活したとして、それを討伐出来る保証はない
極めて低い確率だが、魔王を討伐したとしても現在のグラドではそれに貢献出来るとは思い難い
となれば、当然魔王討伐後に魔王復活の責任がグラドに伸し掛かる事もまた確実となろう
既にフレリア軍による侵攻により各地は疲弊し、グラド軍がいた為に行動を自重していた賊徒どもも動き出すだろう
その上各地の領主達が皇帝不在となった上に純然な
だが、彼等にも一つだけ活路があった
ならばやる他にないか
うむ。彼奴等には気の毒だがこのままではグラドの存続すら危ういのが実情よ。犠牲になる連中には心底同情するが、な
魔道士が去った後、文官達は窮状を打破すべく今後の動き方について議論を重ねていた
しかし、よもやリグバルドの近くにいるとは
フレリアの連中とてルネスの再興は認めても、『戦前』以上にルネスが力を持つ事など認めまい。国王や王子、王女が幾ら声を上げたとしてもフレリアは今回一番割りを食ったのだ
災い転じて福となす、か
全く笑えぬ話だ
恐らく連中は義憤に駆られたのだろう
その志や信念については尊敬しよう。我々とて常ならば全面的に協力を惜しむまい
だが、我々もグラドを。その民を守らねばならぬ
たとえ他国の民を贄に差し出したとしても、だ
彼等はグラドを守る為に行動を開始した
同じ頃、フレリア王都
やれやれ、陛下にも困ったものよ
確かにルネスは友邦ではあろう。だが、それはルネスの齎す益をこのフレリアが享受出来ればこそ
王都が落ち、王族を守る騎士達も殆ど居らぬルネスに何の価値があるというのだ!
しかもエフラムとやらは我が軍の主力を動かしてグラドに攻め入ったそではないか
まぁ、グラドの帝都が落ちた上にあの皇帝を始末してくれたのは有り難いが
何を言うか!
あの皇帝は自国の発展に力を入れていたのだぞ!我等フレリアとて少なからぬ恩恵があったというに
せめてあの皇帝を拘束するに留めておけば良かったのだ!
確かにな
あの広大な、しかし地震の頻発する土地を我々が治めるとなればそれこそどれだけの手間と時間に費用がかかるか
考えただけでも嫌になるわ
しかし、だからとて放置は出来まい
グラドの正規軍は実質壊滅したと言うではないか?まさか統治者が不在のまま放置する訳にもいくまいて
地方の領主共に支配させると言うのはどうか?
無理に決まってあろう
皇帝の先代の治世は酷いものだったのを忘れたか!?
しかしなぁ、気が進まんぞ
とは言ってもルネスの小僧や小娘達に任せるのは論外だが
王都の一室にて会話する者達
彼等はフレリアの貴族や文官でも高い地位にある者であり、今後の事について話し合っている所だ
冗談はよせ
我等の支援がありながら、どちらも国を取り戻そうとしなかった連中だぞ?
そもそもルネス王都付近にいる住人など『マトモな』訳もあるまい
グラドの帝都を攻略する事やジャハナの王都に向かう事を考えればルネス王都に向かった方が早いのは当たり前だろうに
ルネスは文字通り屋台骨をへし折られた状態。それに加えて国民の支持を失った王族に何が出来るというのやら
陛下はともかくとして、王子も王女も情けないものよ
せっかくターナ様が王都を抜け出せる様にしたというのに
せめてヒーニアス王子なりターナ王女なりがルネスの王族と結ばれるのであれば、それを名目にルネスを併合出来なくもないが
勘弁しろ
貴様は北部だから良いが、それと向き合う私たち南部の貴族からすれば悪夢でしかないわ
統治されてない無法地帯などたとえ金を積まれても欲しいとは思わぬよ
小僧と小娘どちらか、もしくは両方死んでくれたならどれだけ良かったか
皆口々に愚痴とも言える事を言い合う
しかし、どうするのだ?
決まっておろう。ルネスの復興は認めてもその完全な復活など認める筋合いはない
食糧や武器については既に用意している
皆の同意が得られたなら、すぐにでも我が領内から送るが
棄てられたと思った民の恨みは決して消えぬ
グラドに取り入り王都付近で生活できている連中だけがルネスの民とでも思ったが貴様らの命取りよ
ルネス領内から分離独立させる
それでルネスは終わるだろう
ではこちらで工作するか?
いらぬ
民衆というモノはな、『恨みつらみは忘れても恩は容易く忘れるもの』
だからな
フレリアの利益の為に彼等も動き出す
それから少し後、フレリアとグラドの国境に近くグラドの誇る要塞リグバルド付近のルネス領にて、民衆が一斉に決起
ルネス王国よりの独立を宣言した
その中にはグラドの無法や山賊や魔物から民衆を守っていた傭兵達の姿もあった
所と時は少し戻り、ジャハナ付近での戦闘へ
くくっ、よくもまぁそれだけの軍勢で帝都を落とせたモノだな
見事という他なかろう、なぁルネスの王子よ?
貴様はっ!
ヴァルターとエフラムが対峙する
既に長距離からの攻撃に特化していた魔道士やロングアーチなどのシューター群は壊滅的被害を受けていた
グラド本国の騎士達とヒーニアス配下の騎士こそ始末できたが、そこに注意を向けていた無防備な所へとエフラムとデュッセルが率いるフレリア正規師団の精鋭が全力で殴り込んだのだ
彼等の布陣していたのは砂漠と平地の境目であり、騎兵のみの編成であるエフラム達の強攻を阻む者は僅かばかりの護衛のみ
その様正しく鎧袖一触
護衛を排除した彼等は長距離からの攻撃に特化した部隊へと攻撃をかけたのである
勿論、攻撃にさらされている彼等とて遠距離から相手を攻撃できるだけの技量を持つ者達
特に熟達した技量を持つスナイパー達は即座にロングアーチを放棄してエフラム達に弓の雨を浴びせた
しかし、既に加速していた騎兵相手に冷静さを欠いた弓射はあまり意味を成さずエフラムやデュッセルはそう言った即応してきた者を真っ先に狙った事もあり、結果として大した被害を与える事なく壊滅する事となった訳だ
しかし、それでも彼等は時間を稼いだ訳で
その間にヴァルター率いる『邪竜騎士団』がエフラム達に急接近していた
あくまでヒーニアス達に差し向けていたのは『分隊クラス』であり兵数としては全体の三割にすら届いていない程度
そして彼等は急激に
エフラムは怪訝な顔をしたが、デュッセルはその意味を間違える事なく理解すると
エフラム殿!下がるぞ!
と声をかけた
どういう事だ?
説明している暇はない!
直ぐに距離を取らねば全滅するぞ!!
納得していないエフラムだったが、冷静沈着であるデュッセルがここまで焦っている事からエフラムもその危険性を感じ取り
全軍、退けっ!
と号令をかけるも
遅い
ヴァルターの無慈悲な一言が聞こえるはずのないエフラムの耳にも届いた気がした
その瞬間である
ドドドドドドド
頭上から死が舞い降りた
ここより遥か遠くの大陸にてとある軍団が使用したとされる戦法
その名を死の雨
制空権を取った竜騎士達から地上に向けて放たれる槍の雨、である
言うまでもないが、槍は先端にその殺傷能力の殆どが集中している事もあり、最も重量が重い箇所でもある
それを下にして、全力で地上方向へ投擲する
槍の元々の殺傷力に加えて重力落下に伴う加速力と槍の重さ
これが合わさった時の殺傷力は尋常の戦場ではなし得ないと言っても過言ではない
それがフレリア正規師団達の『真上』から襲い掛かったのだ
機動性を重視する関係上、騎士達は盾を装備する事はあまりない
しかも今回の様に長距離の強行軍ともなれば、騎乗する馬に対する過剰な負荷となりえる要因の一つである盾は用意されていなかった
いや、正確には用意されていたのだが、そもそも今回この戦場に来ること自体が予定外であり、尚且つ急いで駆けつけねばならなかった為に盾の輸送については後方支援部隊に任せていた
そうであるからこそ、兜も同じ理由から装備していないのだからこの攻撃は正しく死を招き寄せる一撃となった
な、何っ!
やはりか
阿鼻叫喚、地獄絵図
そう評したとしても何らおかしくない光景であった
頭上よりの無防備な頭部目がけての無慈悲な槍の投擲
しかもヴァルター麾下の騎士団は40名を超える
1人1本であっても40本もの槍がほぼ同時に地上へ向けて放たれたのだ
如何に天馬騎士を有しているフレリアとてこの様な攻撃方法は思い付いたとしても実行するはずもない
当然、その様な攻撃に対して即座に有効な防御手段など思いつくはずもなかった
当然だが、それで邪竜騎士団の攻撃が終わるはずもない
彼等は混乱し、重傷を負ったフレリア騎士達に確実な死を与えていった
騎士が生きていても、騎乗する愛馬を失う者
馬は生きていても、乗り手である騎士を失った者
その悉くに等しく死を与えている
戦場だったはずが僅かな時間で一方的な殺戮の舞台となってしまった
やはりか
デュッセル、急いで立て直さなければ全滅するぞ!
私が戦線を立て直しましょう
わかった!なら俺は敵将を討つ!
壊乱するフレリア軍の統制をデュッセルに任せたエフラムは敵の指揮官であるヴァルターの元へと一目散に向かった
そして、冒頭の会話となったのだ
貴様!あんなやり方をよくも!
くくく、戦場に良いも悪いもない
あるのは命を奪い合う獣達だけだろう?
目の前の惨状を引き起こしたヴァルターへの怒りを露わにするエフラムに対して、ヴァルターは全く動じる気配はない
貴様とて戦場を愉しんでいよう?
敵を討つのが楽しい。敵の裏をかくのが愉しくてたまらない
そう貴様の今までのやり方が合っているぞ?
なにっ!
槍を合わせながら、お互いの主張をぶつけ合う2人
貴様はルネス王都が陥落したと知ってなお、レンバールに攻め込んだ
何故だ?
お前達の足を止める為だっ!
それは思い違いというものだな
あの時点でルネス王都のみならず、ルネス全土にグラド軍は攻勢をかけていた。たかが一拠点奪われた程度で軍という巨大な組織が足を止めると本気で思っているのか?
っっ!
貴様はただ滅んだルネスの『誇り』とやらの為だけにレンバールという小城を落としたに過ぎん
そもそも己に従っている騎士の葛藤すら見抜けぬばかりか裏切り一つ阻止できぬ小僧風情に何が出来る?
ぐっ
ヴァルターは確かに狂人だ。それはヴァルター自身も認めるところだろう。だがそれ故に戦いというものについてヴァルターは一切の妥協を許さない
戦場において何よりも重視されるべきは何か?
誇りや名誉?
それがあれば敵に勝てるのか?
違う。勝つ為ならどの様な悪逆すら飲み干せるだけの器だとヴァルターは確信している
守るべき者の為に戦いに身を投じる者もいる
守るべき物の為に望まぬ戦いに挑む者もいよう
それが領民なのか、名誉や誇りなのか、ヴァルターの様に渇望なのか
そんな事はどうでも良い
負けてしまえば、必ずナニカが失われる
血を流し、命を削り、手を伸ばし、足を進めようとそれでも届かないのが勝利なのだ
ヴァルターとて負け戦というものに縁がなかったわけではない
あの忌々しい理想主義者といえる男の下にいた時や、グラドを一度放逐されてから、そして今日此処に至るまでそれなりの数の負けを重ねてきた
常勝無敗とは絵空事であり、傲慢となる元であるとヴァルターは思っている
負けたことのない者はいつまで経っても『敗者』の事を我が身の事として理解できぬ
『勝利の美酒』とよく言うが、全くその通りだとヴァルター自身も思っている
如何に美味なる酒だとしても、飲み過ぎればそれは身体にとって毒にしかならずいつしか『勝利』が当たり前となってしまう
無論勝つに越した事はないが、勝つ算段をつける事もそうだが立場によっては優先すべき事もある
一兵卒ならとにかく『生き残る事』を
隊を預かれば『部下を生き残らせる事』を
軍団を預かるなら『部下の無駄死にをさせない事』
といった具合であろうか?
小隊長クラスならば部下を切り捨てる事など、よほどの窮地でもなければしてはならない
軍団長であっても決して好ましい話ではないだろう
が、徴兵されたのではなく志願した以上、一兵卒以外の者であれば残酷な話だが『死ぬ事も選ばねばならない時』もあるのは間違いない
泥を被るべきは『軍人』であり、仮に兵站が切れたのであれば『文官』
もあり得るがそれだけ
間違っても『国王』や『王族』が兵の命を切り捨てる事を選んではならない
仮にその選択を選ぶ事になっても、誰かが其の責を肩代わりしなければならないのだ
今回の件でルネス王子エフラムは『グラドを攻める』という『戦果』を求めた
そんな事をしたところで、ルネス本国が解放されるわけでもないにも関わらず
もしも、国内にまとまった反グラドの勢力があるのであれば、その選択もあっただろう
エフラムが兵をグラド本国に向ける事で、ルネス国内のグラド軍を本国救援に向かわせる事により、国内での反対勢力が活躍しやすくなるのだから
だが、指揮系統の中枢であるルネス王都が早期に陥落し、王女であるエイリークを逃すために殆どのルネス要人達は結果としてファードに従い殉死した
これにより王政のトップである国王を喪ったばかりか、統治機構としてのルネス王国自体の機能も麻痺してしまい、グラド軍の侵攻に対してルネス各地の騎士や軍関係者などが効果的な対応を取る事すら出来ず、各個撃破されるだけとなる
加えてルネス侵攻において、ヴァルター麾下の部隊なども動員された事により、地上部隊のみのルネス側に比べてルネス全土への浸透も早い事となった事もルネス側の対応が効果的に作用しなかった理由の一つだろう
国内に有力な抵抗勢力がないのであれば、当然だがルネス王国領におけるグラド軍の振る舞いはどうしても酷くなるものだ
占領地政策というのは非常に難しい問題を含むものであり、『制圧、終わり!』とはならない
はっきり言うと『非常に面倒』な話なのだ
しかも本来ならば統治担当である文官達との話し合いがあるべきところを軍部主導での作戦となっており、全く占領地政策について用意がなされていなかった
加えてその文官達はルネス侵攻についてかなり不満に思っており、普段の様な迅速さは発揮されなかったという事情つき
グラドの文官達からすれば
手を広げるとしてもそんな簡単に出来るものではないのだから軽々に侵略戦争などしないで欲しい
と言うのが偽らざる本音だった
グラドにはグラドの土地柄や気象条件があり、極端な話だがグラドの土地で出来ていた事がジャハナの地で出来るわけもない
それはルネス、フレリア、ロストンでも同じ事
そもそも侵略者という時点で統治を受け入れるハードルは高くなる
勿論苛政をしていたならばその限りではないが、少なくともルネスにせよフレリアにせよジャハナにせよその様な事はなかった
グラド本国と同じ水準でグラドの統治を受け入れさせようとすると、途方もない時間と労力を必要とするのは目に見えている
まぁ、単純に言えば『人手が足りない』というわけだ
更にルネスの文官達は殉死しているともなれば、ルネスの治世から調べた上で統治方法を模索せねばならなくなる訳で
やってやれるか!!
というのも彼等の本音だろう
だからこそ、侵攻計画などについては事前の調整か必要不可欠
勝ったら塗り絵みたいに塗り潰せば良い訳では決してない
なので、今回に関しては
ルネスの民は犠牲になって?
と言うのが文官達の意見であったりする
というよりも、王族であるエフラム王子かエイリーク王女のどちらかが生きていればフレリアにでも逃れて、すぐさまルネスを奪還すると思い込んでいた部分もある
だからこそ、捨てても惜しくない
結果は彼等の予想を裏切る事になったのだが、非情な話であっても
ルネスの民が認めた王族
なのだから、同情するつもりもなかった
ヴァルターは自身が『壊れている事』を自覚している
その自覚のもとに破壊と絶望を振り撒く事を良しとしているのだ
大陸の為、友人の為
それも良いだろう
だが、目の前の小僧は自身がどれだけおかしい事をしているか理解していない
その力で他者を捩じ伏せておきながら、まるでその意味を理解していない
だからこそ、ヴァルターはエフラムとこうして言葉を交わしているのだ
戦闘中にベラベラと!
くく、貴様の様に上品な連中には到底理解できまいがこれもまた戦闘よ。全く愚かしい事だ、それすら分からんとは
エフラムはどうやっても空中を移動するワイバーンに騎乗したヴァルターへの攻撃手段が限定されてしまう
ヴァルターが真に殺す気であるならば、それこそ一撃離脱を繰り返すか先の様に空中から槍などを降らせれば良い
それだけで容易く決着はつく
が、そんな決着をヴァルターは望んでいない
さて、お喋りはそろそろ終わりだ
さぁ貴様の実力でこの私の命を奪って見せろよ?
ヴァルターはそう言い放つとワイバーンを空中に舞い上がらせ、エフラムを見据えた
(仕掛けどころは一瞬!間違えるな、エフラム!!)
エフラムは己を内心で鼓舞し、槍を構えた
さぁこの世とのお別れの時だ
来いっ!!
同時刻、戦場の北側では勝敗が定まりつつあった
やれやれだぜ
どいつもこいつもだらしねぇときたもんだ
ケセルダは次々と倒れていく
既にグラド正規軍の兵達は全滅し、残っていた者は傭兵ばかり
しかも、『勢いのあるグラド軍』に協力すれば良い目が見れると思っている連中が多いときた
アイアスの様に『義理や忠誠』を重んずる傭兵やクレムトの様に『勝たせる』傭兵はこの場にはおらず、誰もが命を長らえる為だけに戦っているという有様
一応、出世頭のケセルダがいるからある程度の統率は取れていたが、南の方でヴァルター麾下の騎士団が戦っているのは此方からでも視認できる
その為、その騎士団の数が目に見えて減っていくのを目の当たりにした傭兵達は『何かおかしい』と察してしまう
実際にはデュッセルが立て直しに奔走しているとはいえ、フレリア正規軍の受けた被害は壊滅的と言っても過言ではなく、敵騎士団と交戦しているのは専らヒーニアス、ネイミーのスナイパー組とサレフ、ルーテにアスレイの魔道士組となっている
ヒーニアスの元に辛うじて残っている弓兵隊と残存している騎士と連携する事により、ギリギリの戦いを維持していた
随行している司祭やシスターが回復に尽力しているが、エイリーク達に同行しているモルダやナターシャに比べると魔力量や技量などにおいて劣ってしまう上に、戦場での自衛手段にも欠く
その為負傷兵は後方に下げる必要があるのだが、ヒーニアス達が現在戦闘をしているのは砂漠地帯の南端であり、敵の指揮官も騎士などの動きが制限される砂漠地帯の上での戦闘をヒーニアス達に強いる事で戦闘を優位に進めようと苦慮している
確かに邪竜騎士団はグラド軍でも屈指の技量を持つ軍団だ
しかし、幾ら精鋭であったとしても砂漠というかなり厳しい環境下にあっては常の実力を出せるはずもない
騎士達はまだしも、騎竜達の水分補給がどうしても難しくなる以上は消耗の度合いも大きかったからである
帝都より合流した先に全滅した騎士達も幾らかは補給物資を携えてきたが、それだけでは到底賄えるはずもない
これは帝都にいるグラド文官達からすればこの場に参じたグラド軍は全て『不必要』なものとして扱っており、彼らが見ているのは疲弊した国土とその領民に低下するであろうグラドの影響力を如何にして少なくするか?であるからだ
大陸に破壊を振り撒きたいなら勝手にすれば良い
我等は
既に皇帝が討ち取られ、一時的にではあってもグラド王城を制圧されたのだ
それを認めれない者などこれからのグラド再建には無用。寧ろ居るだけ不穏分子になりかねない
とすら思っていたのである
当然だが、ルネスに展開しているグラド軍についても既に補給については完全に絶っており、軍に回すはずの食糧などの各種物資を国内やとある場所へと回す事としている
軍は肥大化し過ぎた上に、今いるグラド軍など亡き皇帝陛下やグラドそのものに忠を尽くしているわけでもない
グラド六将などと言っていても、今も彼等がグラド軍として認めているのはセライナとグレンのみ
他の連中についてはグラド軍将と名乗っていても認めるつもりは一切ない
勿論、国を滅ぼす一因となった彼等も事態がある程度収束したと判断次第命を絶つつもり
だがせめて祖国のこれから歩む道が多少なりとも良くなる様に努めるのが彼等のグラドに対する最期の奉公だと思っていたりするが、当事者であってもヴァルターやケセルダに彼等の心の内まではわかるはずもなかった
グラド軍に従軍している傭兵はあくまでも『自身の利益』の為にグラド軍へと協力しているのであって、その為なら『自分の故郷』を焼く事すら厭わない
それは裏を返せばグラド軍に与する事が害になるならグラド軍に留まる必要などないという事でもある
グラドの敗勢が見えてきた事で彼等は自身の身の安全の為に動くのは何ら不思議ではない
が、そんな事はエイリーク達には関係ない訳で
前に進むしかない者達と後ろに下がる事を意識し始めた者達では相当の実力差がない限り、前者に勝敗の天秤は傾くもの
傭兵であるケセルダには彼等の考えは手に取る様に分かるからこそ、呆れ返るしかなかったといえよう
(今更足抜け出来る訳ねぇだろうがよ、バカが)
既に引き返せるところは過ぎている
であればこそ、必死に足掻くしか残された道はない
さてと、どうやらそっちの勝ちみたいだな。えぇ?
ケセルダとしても事此処まで至れば負けを認める他ない
降伏するのですか?
エイリーク様、危険ですよ!?
ケセルダのともすれば降伏宣言とも受け取れる発言を聞いたエイリークはケセルダに足を踏み出そうとしたが、アメリアはそれを許さなかった
このケセルダって人、諦めている人の目じゃないです!
・・え?
アメリアはクレムトから教わる時に言われていた
これからお前が相手するのは正々堂々ばかりの連中じゃねぇだろう
『勝つ為なら、主君の為ならどんな汚名でも着る事を厭わない』奴や『生き延びる為なら仲間すら売り渡す奴』だっているだろう
だからこそ、相手の目を見るこった
目、ですか?
そうだ。今はそんなに経験積んでないから分からんだろうが、そのうちわかる様になるだろうさ
個人的にはアメリアみたいな歳の嬢ちゃんにそれがわかって欲しいとは全く思わんが、知っておくと便利だぞ?
はい!覚えておきます!
アメリアはその後グラド軍に従軍して直ぐにルネスのエイリーク王女達に降伏、以後は彼女達に同行している
その中でグラド軍や山賊に魔物やジャハナの衛士達などを相手にしてきた
だからこそ、目の前のケセルダという男の目は
やれやれ
アメリア、だったか?
お前さん本当に俺の知り合いみたいな考え方してやがんな
・・・待てよ、お前さんの斧の使いかたもアイツのやり方に似てやがるな。まさかお前さん、どっかの傭兵にでも戦い方を習ったのか?
ケセルダは獰猛な顔をしてアメリアを誉めた。しかしふと何かに気付いた様でアメリアに問いかけてくる
傭兵かどうかは知りませんけど、確かに戦い方とかを教えてもらいました
まさか陰気そうな闇魔法使う奴で『クレムト』とか言わねえだろうな?
?
確かにそんな名前だったと思いますけど、それがどうかしたんですか?
アメリアの答えにケセルダは下を向いて、肩を震わせた
そうか、そうか!アイツの教え子かよ!!
そして、ケセルダは大声で笑った
いや
余りにも皮肉なこの出会いを
アイツの教え子となりゃあ話は別だ
さぁ、行くぜ?
そこのお姫様が巻き込まれたく無かったら、さっさとそこの岩陰にでも隠れてもらうんだな?
エイリーク様。すいませんが
・・アメリア、気をつけてくださいね?
ケセルダの提案を受けて、アメリアはエイリークに避難を促す
ケセルダの放つ雰囲気は明らかにさっきまでのそれとは違う事がアメリアだけでなく、エイリークにも分かった為にエイリークも素直に応じるしかない
既に周りにはグラド軍やその傭兵達の姿もなく、残敵掃討の気配すら漂い始めている
散々探していた奴がまさか弟子をとっていたなんてな
しかもその弟子が俺と敵対するたぁ、わからねえもんだ
言葉だけを聞けば愚痴に聞こえるが、アメリアとエイリークにはどこか喜びと悲しみが同居しているかの様な印象をうける
さて、準備は出来たかよ?
・・はい
じゃあ
いくぜっ!!
ケセルダは砂を強く蹴って、アメリアへと斬りかかってくる
ケセルダとクレムトの付き合いはかなり長い
というか、ケセルダにとってクレムトは
元々荒くれ者だったケセルダは傭兵としての実力はともかくとして、とにかく自分の感情のままに振る舞う事が多く、実力に反して依頼成功率は余り高くなかった時期があった
その際、ジャハナの傭兵組合から付けられたのがクレムトだ
なんだお前は?
アンタがケセルダか?俺はクレムト
しばらくの間アンタの監視役と補佐を務めることになった
はぁ?てめぇみたいな奴に何で俺が
依頼者とのトラブルに酒場でのトラブル。終いには賭け事でまでトラブルを起こしてると聞くが?
・・ちっ!
自覚はあるんだな。少しは安心した
別に『飲むな賭けるな』なんて言うつもりはない
あん?
だが少しは考えてからしろと
説教かよ、くだらねえ
下らないのには同意するがな。それをしなきゃならないくらい、今のアンタはまずい立場だった事も理解してほしいところだが
はっきり言って最初の印象は最悪だった
だが、当時のケセルダは荒れに荒れていた時期であり、何もかも上手くいっていなかった
正直なところとしてケセルダもどうすれば良いのか迷っていた部分もあったのは事実
だが
テメェみたいな奴に指図されるのは我慢ならねぇ!
勝負しやがれ!!
はぁ、面倒な事を言いやがる
別に構わんけどよ
はっ、あとで後悔すんなよ!
当時のケセルダにとって力こそが全て
なのに
く、くそがっ!
猪突猛進。まるで獣だな
まあギリギリなんだけと
ケセルダは目の前の気に食わない男にまったく歯が立たなかった(ケセルダ視点では)
というか、である
ケセルダは傭兵である。そして傭兵を始めとした物理で戦う者というのは例外を除き殆どの者が魔法に対する耐性は非常に低い
勿論、逆もそうであるのだが魔道士の場合はある程度のレベルになると自身に障壁を張るのが基本となり、全くの無抵抗という事はなくなる
しかも、クレムトは闇魔法の使い手
闇魔法の使い手は基本として『対人魔法』に優れており、その関係上障壁を早くに習得する
しかも発動こそ他の魔法に比べると遅いが、当たると凄く、痛いのだ
ケセルダとてそれなりに場数をくぐっているが、闇魔法の使い手を相手にした事はまだなく、苦戦したとしても不思議ではなかったといえよう。が、そうであるからこそ慎重に動かなければならなかったのもまた事実であり、それが出来なかったのは間違いなくケセルダの失態と言えるだろう
まあそんなこんなで自分よりも格下と思っていたクレムトに惨敗したケセルダなので、『足手まとい』だから要らねえ。という理屈は使えなくなったのは当然とすら言えるわけで
武器を安くすれば良いじゃねぇかよ?
アホか。お前の力量ならいいかもしれんが、敵が全部お前より弱いなんて誰が保証できるよ?
依頼にはんな事書いてねぇだろうが
あのなぁ
依頼する側としては『出来るだけ安く依頼したい』んだぞ?それこそちんけな魔物退治なんて言っておいて、いざ行ってみれば山賊だ騎士崩れが相手だったなんて事はそれなりにあるんだが
・・・あんのかよ
あるんだよ。誰もがマトモに依頼料払う訳じゃねえからな
こう言った事は割とよくある話
特に村落からの依頼では『村で出せるお金がない』という名目で実際の退治する対象の数を少なくして依頼する事はままある話
山賊が10人程度と聞いて行ってみれば、山賊が
当然だが、幾ら個々の実力が大した事ない山賊相手であっても武器や回復薬などの消耗は避けられない
特に武器の消耗の増加はそのまま傭兵の懐具合に直撃するので、そう言ったケースは傭兵から嫌がられる
加えてたまに軍からの脱走兵が野盗として活動している場合もあるが、この場合は更に面倒
曲がりなりにも正規兵である以上、そこらの山賊などより技量が高い事はあり得る話の上に見極めがうまいので、逃げる事にも躊躇いがない
逃げられてしまうと当然依頼失敗となる場合が多く、とても面倒なのだ
そんなこんなでケセルダとクレムトは10年以上の付き合いとなっていた
どちらとしても
ねぇわ
と言いそうではあるが、少なくともケセルダにとってそこまで長く付き合えた友人などいなかった
なお、かなりの変わり者であるクレムトとて同じなのだが、この2人妙な所で似通っており、どちらも憎まれ口しか叩けないへそ曲がりであった為、遂にそれを知る事はなかったりする
グラドで出世したケセルダはなんのかんのいっても信用できるクレムトを自身の副官としたかった
なんともありきたりではあるが、それだけ信頼していたという事なのだろう
だが、結局クレムトは見つかる事もなくグラド六将にまでのし上がったが肝心のグラド軍自体が半ば崩壊しつつあるという何とも笑えない事態となっている
そんな中で相手をしている女がまさかのクレムトが鍛えた戦士ともなれば、これはもう神なんぞ信じる気が欠片もないケセルダであっても、なんらかの
であればこそ、目の前の女に自分の全てをぶつけて、負けたとしても
後進を育てるなどケセルダからすれば理解できない感情であったが、なるほどこうして見ると悪くない
おらぁ、敵に呑まれてんじゃねえょ!
気持ちで負けてどうすんだ!!
ぐっ
アメリアは猛攻を仕掛けてきたケセルダの勢いに押されていた
確かに上級クラスであるジェネラルになったとはいえ、やはりと言うべきか即成であった事は否めない
基礎はクレムトがある程度固めたとはいえ、あくまでもクレムトの本職は魔道士であり、部隊の盾となるアーマーナイトやジェネラルの様な動き方は門外漢
槍や斧の扱い方も山賊などの手慣れていない者からすれば大したものだが、騎士や傭兵などからすれば甘く見て及第点。少し厳しく見れば実践的とは言えない具合
無論、アメリアとて先達であるギリアムなどに教えを請うているが、時間的余裕のない状態では全てを教える事など到底不可能
そんなアメリアが経験豊富なケセルダと曲がりなりにも戦えているのは間違いなく彼女自身の弛まぬ努力によるものだろう
そうでなければ、ルネス王女であるエイリークという要人の護衛をアメリアに任せるはずもない
足を止めず、少しずつでも前に!
それがアメリアがクレムトに教わってからずっと実践してきた事であったのだから
(ちっ、思ったよりもやりやがるな)
ケセルダはアメリアと激闘を繰り広げながら、内心苛立っている
実はケセルダが『万全のコンディション』であれば、アメリアなど歯牙にも掛けないくらいの実力差がある
だが、聖石の間におけるジャハナの女王イシュメアとの予想外の激突によりケセルダもそれなりに手傷を負っていた
本来であれば、即座に治療するところだったがジャハナ王都に火を放った以上ジャハナは頼れぬ上にヴァルター配下の軍団に回復役は居らず、回復薬も存在していない
その為、ケセルダはイシュメアとの戦いにおいて受けた傷をそのままにアメリアと戦っていたのである
アメリアは
これは回避するのに縦からの打ち下ろしに比べると少しばかり動きが大きくなる
その為、回避しきれない攻撃がケセルダの胴部に蓄積しているという状況になっていた
勿論回避しきれない攻撃、しかもそれが斧である以上ケセルダの腹部から少しずつではあるが出血している
薄皮が斬られているのだから当たり前ではあるのだが
更に砂漠、しかも日中での戦闘である
水分と共に塩分なども少しずつだが失われていく
ケセルダはエイリーク達を待ち受ける形で先に砂漠へと布陣していた
当然アメリアよりも疲弊するのは早くなる
まぁアメリアとて重厚な鎧を纏っている以上、それこそ軽装のケセルダよりも消耗の速度は早いのだが、その辺はアメリアの師であるクレムトがある程度の対策を施していた
その時は当然訪れる
ガゴッ!!
ケセルダの持っていた斧が遂にアメリアの持つ斧により弾き飛ばされたのだ。代償としてアメリアの斧も破壊されたが
けっ、やるじゃねぇか
既に少量の出血であった腹部からの出血は誰が見ても危ないレベルになっており、ケセルダの顔色も優れなかった
失血状態である
私の、勝ちです!
アメリアは持ち替えた槍をケセルダに向けて宣言した
ああ、否定はしないぜ。俺はアメリア、アンタに負けた
・・・
だがな
ケセルダは懐に手を入れると
甘えっつんでんだろ!そんくらいで俺が!負けを!!認めるわけがねぇだろうがよ!!!
懐剣を取り出し、アメリアへと飛びかかった
だが
っ!
はぁっ!!
がっ!
飛びかかったケセルダの喉にアメリアは槍を突き立てた
いいか、アメリア
敵を始末するには心臓か、脳を破壊するのが手っ取り早い
はい
しかし、なれている連中ならこの辺の防御はしっかりしている
そこで狙うのが喉だ
のど、ですか?
喉は空気を肺に送り込むのに重要な場所
此処を潰されると幾ら呼吸しようとも肺に空気が行かないからそのうち死ぬ
そうなんですか?
応よ。だからやばそうな相手なら喉を狙う事も選択肢として入れとけよ?
(けっ、無様なもんだ。虎目石だなんだ持ち上げられて調子に乗ってこのザマなんぞ、笑えねぇな)
ケセルダは砂の上に大の字になって転がっていた
声も喉が潰されたせいでまるで出ない
だが、不思議と穏やかな気分だった
しかし、ケセルダの悪友と呼ばれる
え?
えっ?
ケセルダの身体は光に包まれて何処かへと行ってしまった
呆然とするアメリアとエイリークを残して
あん?
どしたよ、クレムト?
あー、ちょっとだけ野暮用してくるわ
お、おう?
そう言うとクレムトは魔法陣を展開して何処へと消えて行った
ジャハナ王都付近にて遂にグラド六将の2人を打ち破ったエイリーク、ヒーニアスと合流したエフラムたちはエイリークとエフラムの故郷であるルネス解放に向かう事となる
だが、彼女達には知る由も無かった
後に歴史家は語る
これが終わりの始まりだったと
と言う訳で砂漠戦閉幕です!
タイトルにある抗い続ける者たちとはエイリーク達でもあり、グラド軍の人間達でもあり、グラド帝都の文官達でもあったりします
まぁ皆それぞれ目指すモノが違うので争う訳です
次回位が最終話となる『予定』となりますがよろしければお付き合いください
お気に入り登録、評価ありがとうございます
ではまた次回