基本として、過去のプロット擬きを元にして書いていますが、勢いで書いている部分が多分にあります
しかも途轍もないアンチ、ヘイト的な表現もあるという謎仕様
なのに読んでくれる皆様に感謝申し上げます
なお、今回で完結出来ませんでしたぁ(白目)
ま、まさか来月までかかるなんて事は
ないと思う
ないと良いなぁ
ないと思いたい
いつも通り独自設定や独自解釈が無双乱舞してますので、それでも宜しければどうぞ見てやって下さい
グラド軍の残党をジャハナ王都付近で撃破したエイリーク達は進路をルネス王都へと向けた
ルネスの聖石を守る為、そして民を救う為に
此処が王都だというのか?
ひどい
嘘よね
どうやらグラド軍はマトモな統治をしていない様だな
ルネス王都を入ったエイリーク達を迎えたのは非情な現実
人通りが多かった筈の大通りには人1人として居らず
商人達で賑わっていた広場も閑散とし
いるのは、グラド兵と思しき柄の悪い者たちのみ
かつてルネス王国の王都として栄えた町の面影などどこにも存在しなかった
家を訪ねても殆どの家は無人であり、数少ない住人の話では此処王都を統治しているのはエフラム付きの騎士であったオルソンだという
そして気になったのが、『ルネス国内にて民から食糧を巻き上げる傭兵達』の存在だった
勿論言うまでもないが、これは間違いである
正確には『ルネスの村落から依頼を受けている傭兵が報酬として食糧をもらっている』となる
だが、人とは慣れる生き物であり、此処王都に今も住んでいる人間というのは『グラド軍に積極的に協力する事で生きてきた者達』である
彼等からすれば
自分達はグラドに頭を下げてまで生きているのに傭兵を雇っていながら助けに来ない裏切り者の集まり
と傭兵に守られている者たちが見えていた
更にエイリーク達が王都に戻ると聞いて、傭兵達に守られて生活を送っていた一部の住人達が王都に何とか戻っていたのだ
彼等からすれば『傭兵達に支払うべき食糧』なのに『傭兵達が過剰に自分達から巻き上げている』と思っていたのである
命の危機にあった頃は『助けてもらったから』と言い
命の危機が無くなれば『過剰な報酬だ』と言い始めたのである
言うまでもなく、護衛対象である住人のいるところで戦闘をすれば要らない被害や犠牲が出てしまう為、彼等傭兵達は出来る限り住人のいない所で山賊や魔物を倒していた
それが一部の者からすると『居もしない山賊や魔物を退治した』と偽って自分達の少ない食糧を奪っていく無法者に見えていたのであった
そもそもルネス国内において、傭兵の社会的地位は低く一般的な感覚では『山賊と然程に変わりない』という認識だった
これはルネス王国が確かな実力と高い展開力を誇る騎士団を有していたからこそのものだ
実際にはルネス王国軍とて傭兵を戦線に突入する事もしばしばあったのだが、国威の為にも傭兵を運用している事を前面に出すのを躊躇ったという背景があったりする
傭兵はジャハナの戦力という思い込みがルネス王国内にもあり、それ故に傭兵を称賛するというのは彼等の感覚ではあり得なかった
その様な事情もあり、エイリーク達に届く情報はかなり捻じ曲げられたものとなってしまったのだ
しかも、エイリーク達に力を貸している者達はお世辞にも国家の中枢で働いていたり、政治的能力に優れている者がいない
王族はいても、まだまだ教育が足りないし、その側近であるゼトやギリアムなども政治からは距離を置いているのが災いした形となる
次期王位継承者やその血族に近しいものが政治的行為をするという事自体が危険極まる事をゼトもギリアムも理解していたのだから
これがオルソン程の立場となると逆に『武に逸るエフラムを諌める役割』として一定の政治的思考や立場も必要となる
同じ立場であるヒーニアスはその辺の分別がつくと国王ヘイデンより信用されているからこそ、ギリアムやモルダ達に政治的思考や立場を求める必要はなかったという違いがあった
更に事実を知っているグラド王都のグラド文官達やフレリア王都の貴族達は
更に傭兵であるジスト達やヨシュアから見ても今回の傭兵達の行動はおおよそ理解できる話で無かった為に下手な弁護も出来ない状況となっていた
ヒトは見たいものを見て、信じたいものを真実とする
その為、住人達の意見をそのままエイリークやエフラム達は受け入れてしまったのだ
無理もない
自分達が暮らしていた王都があまりにもひどい有様だったのだから
王宮内での激闘の末、オルソンを倒し王都を解放したエイリーク達
ここで彼女達はまた大きなミスをおかす
聖石を守るべく、残る聖石を保有するロストンへと向かう事にしたのだ
まぁ大陸の平和を守る為、そして友人であるリオン皇子を救う為という意味ならば全くの誤りではない
が、ルネス王国の王族という意味においてならば最悪の選択だったといえよう
フレリアにはまだ国王であるヘイデンが健在であり、ヘイデンを支える組織も問題なく機能していると言えなくもない
ジャハナについてはヨシュアが王子として帰還したとしても、ヨシュアがエイリーク達と共にジャハナ王宮へと攻め寄せた事実は変わらない
だがそれでもジャハナの事を思うのであれば、彼は何をおいてもジャハナに帰還すべきだった
グラドはジャハナと異なり、皇帝ウィガルドと皇子リオンが居ないとはいえ、統治の要である文官達は健在
実のところ、ルネス王国に余裕など全くないと言っても大袈裟でも何でもない
何せ王都は荒れ果て、文官は全滅。それに加えて国の治安を維持するに足る騎士達もゼト、フランツのみという有様
カイル、フォルデの両名はルネス王都に残す事となるが、満足に動けない2人では到底荒廃したルネス王国の鎮定など望むべくもないだろう
加えてかなりの人数の住人達はルネス王都を離れ、傭兵達と共に少しでも安全な場所を確保しようとしている
既に傭兵達と共にいる民衆はルネス王国を見放したと言っても過言ではなかったのだ
なお、このタイミングでエイリークかエフラムが王都に残り荒廃したルネス王国の再建に取り掛かっていれば、彼等とて不満こそあれど渋々ながらにルネス王国の民として戻ったであろう
が、エイリークとエフラムはそうしなかった
その報を聞いた王都より逃れてきた者たちはいよいよ王族への不信感を高めてしまい、更にレンバール方面に集積されていた食糧や武器とその北方のフレリア領とルネス領の境目に置いてあった武器と食糧
それを確保した民衆は遂にルネス王国からの分離独立を宣言するに至った
本来なら、エイリークやエフラム達にすぐさま送られねばならぬ報告だったが、グラドはともかくとして
そんなある意味では世界が大きく動いている中、クレムトは自身の隠し拠点にいた
やれやれ、魔法陣に反応があるから来てみれば本当にお前かよ
(うる、せぇよ)
彼の秘蔵の魔術者や古の危険な魔書などを保管する拠点の一室が文字通り『血に
そこにはジャハナ王都近郊の戦闘で行方不明になっているケセルダの姿があった
喉が潰れ、腹部からは大量の出血
それでもケセルダは生きていた
相変わらず丈夫な事で
いや結構な事だな
(どういうつもりだ?)
一応とはいえお前とは長く組んだんだ
だからこそ、やっただろ?『あの護符』をよ?
護符などとクレムトは言っているが、簡易式の魔法陣であり、『血液』
によって起動する類のものだ
当然だが、多量の出血をしていたケセルダなら容易に発動条件を満たす事ができた訳である
クレムトの信条は
死ななきゃ安い
であり、なんだかんだいってこの趣味人は大陸全土を見渡しても上位の実力をもっていたりするのだから非常に
因みにケセルダの怪我もクレムトであれば普通に治せたりするのだが
お前はグラドの将軍として少しばかりやり過ぎた
なんで、ケセルダとして生きていくのは不可能だからこうする他なかった訳だ
(なるほど。俺の喉を潰したままにする事で俺の身元がバレねぇ様にする訳かよ)
そうだな。とりあえず動く事くらいは出来んだろ?
暫くは慣れとけ。飯は食えずとも
(・・・助けられた以上、文句はいわねぇよ)
じゃ、俺は依頼の途中だから行くからな?
(ああ)
クレムトは傭兵達の元に戻ったのだが、どうにも様子がおかしい事に気付いた
何というか良くない空気なのだ
面倒事なんだろうが、はぁ
クレムトは内心で盛大なため息をつきながら傭兵仲間達の所へ足早に向かう
クレムト!
・・・どうしたよ?
明らかに慌てている仲間の様子を見て、クレムトは内心辟易していたが、状況を知らなければ動く事すら儘ならない為渋々話を聞く事にした
実は
傭兵仲間の話を聞いたクレムトは
(勘弁しろよ、おい)
と天を仰ぐしかなかった
クレムト不在時に起きたこと
それは
周辺を警戒していた傭兵の1人がリグバルド要塞の近くで大量の食糧と武器を発見
それをすぐにルネス住人達の集まる仮の拠点に運んだ
住人達は喜び、久しぶりに満足できるだけの食事を摂ることができた訳だ
更にその後、フレリアとの国境の
それ自体は
だが、空腹を満たした住人達の間にルネス王都陥落からいつまで経ってもルネス王国を解放しようともしないエフラム王子とエイリーク王女、それに従っているルネス騎士達への愚痴とも不満とも取れる会話が増えていった
今までは生きる事に精一杯だった為に見る余裕がなかったソレを彼等はいよいよ問題視する事になったのだ
この集団は増えつつあり、新しく合流してきた住人が『エフラム王子がグラド帝都を落とした』と伝えた事で更に不満は高まる事となる
だが、彼らには『戦う力』がない。いや正確には『武器がなかった』
そう今までは
しかし、今回の一件で彼らは武器を手にしてしまった
聖石破壊の事を知っていても
それは国がすべき事であり、その為に自分達が苦しむのは何故だ?
といった風潮も生まれていた
ヒトは理不尽な目にあった時、それを何とか納得させる為に何かしらの理由を求めてしまうモノ
故に1人が呟いた事が全てを動かす事となったともいえる
俺達あんな連中についていけるのかな?
誰しもが口にこそ出さなかったものの、一度は考えた事だった
聞けば今自分達を守ってくれている傭兵達の故郷もエイリーク王女が率いる軍が滅ぼしたというではないか?
自分達は国の王族に見捨てられ、自分達を守る傭兵の故郷をも奪われる。しかも自分達の事を見向きもしない連中に
傭兵達はジャハナ王宮が襲撃された事を知っても顔色を変えなかったが、悲しんでいないとは誰一人として思っていない
金に汚い傭兵というイメージを持っていたが、彼等傭兵はほぼ無報酬でありながらも必死に戦ってくれているのを住人達は理解しているのだから
それでも傭兵達は
不満があっても今は耐えるべきだろう
何、グラド帝都を落としたとなればルネスに帰還するだろうし、そうなりゃあ少しはマトモな生活に戻れるさ
と励ましてくれていたのも大きかった
故郷を失ってなお、他者を気遣える彼等からの言葉である
不満があったとしても、それを飲み込まねばならぬと住人達も思いとどまった
だが
ルネス王都を解放したエフラム、エイリークは
言うまでもないが、ルネス王国は王都付近だけで成り立っているものでは決してなく、寧ろ王都付近などルネス王国全体のほんの一部に過ぎない
その治安を回復しただけで国を離れた事を聞いた住人達はルネス王家に失望し、ルネス王国に頼る事をやめる決意を固めた
そして、ルネス王都に向かっていた傭兵達の1人がルネス王国軍の手にかかり死亡したとの話が彼等に届けられた
いつまで経っても支援の手が来ない事で痺れを切らした傭兵達はルネス王都に行き、窮状を伝える事で何とかしようと考えたのだ
ところが、エフラムとエイリーク達に齎されていた情報は『ルネス国内で傭兵達が住人から食糧を巻き上げている』と言う内容
当然だがエフラムやエイリークの側に立っている人間からすれば傭兵は『ルネスの民を脅かす敵』と見えてしまう
その為、ルネス王都で警戒にあたっていたフレリア軍は彼等傭兵を
複数人いた為に他の傭兵達は直ぐに撤退する事を決断
それが伝わってしまった形となった訳である
当然そんな事実もないし、エフラム達の事情を知らない住人達は怒りを露わにした
王都に向かい殺されたのが傭兵達の中でも比較的穏和な人物であった事も住人達の怒りを助長する事になってしまう
殺された傭兵は避難する住人。特に子供から人気のあった人物であり、『傭兵のおじちゃん』と子供達から親しまれていた程である
難しい交渉となる事は目に見えていたからこそ、話し合いになる人物を送り出したのが裏目に出た形となった訳だ
この報が伝えられると住人達にとってルネス王国の人間は自分達を守るどころか危害を加えるモノとなったのである
結果、制止する傭兵達の声も届く事なく彼等は狂騒の、熱狂のままにルネス王国を捨てる事にしたのだった
本来、傭兵を斬り捨てた事は王都にいるカイルやフォルデに報告せねばならない義務がフレリア軍にあったが、フレリア側は一切報告を上げなかった
何せ自分達の同僚が数多く死んだのに、自分達フレリアには何もない
逆に国を失った筈のルネス騎士どもは自分達の犠牲や奮闘があったにも関わらず、平然と国を取り戻している
フレリアの為に死ぬならまだしも、ルネスの為に死ぬ理由も道理もありはしない
フレリア軍の人間の中にはそういった不満が大きくなりつつあった
勿論、この様な空気が理解できぬほどカイルとフォルデも無能でも恩知らずでもないが、だからとて身体も満足に動かせぬ身で出来ることなど殆どなかったのも事実
使者を送ろうにもその使者自体がフレリアの人間という有様なのだ。どうしようもない
それ故、ルネスとフレリアの兵士達の溝は日に日に深く広くなりつつあったのだ
フレリアは血を流した
ルネスの為に
ではルネスは何が出来る?
フレリアの為に
そういう事なのだ
しかも、今回ロストンへの派兵についてはフレリア軍は僅かな兵を出すのみとなった
ジャハナ王都近郊での戦闘にてエイリーク達に従っていた騎士は全滅し、弓兵隊も甚大な被害を受けた
エフラムに率いられたフレリア正規騎士団もまたヴァルター麾下の『槍の雨』により甚大な被害を被り、ルネスとグラドにジャハナの戦力が事実上壊滅した事により相対的にフレリアの軍事的、そして政治的立場が他国を凌ぐ事になるのは間違いなかった
その為にはフレリアにいる軍事力を可能な限り保持せねばならない
そうフレリア本土の貴族や文官、更にはエイリークやエフラムに同道しているフレリア軍の指揮官達は思っている
だからこそ、その薔薇色の未来に泥を塗ったエイリークとエフラムを彼等は憎悪しているのだが
現状1番兵力を有しているのはロストン
更に大陸で唯一残る聖石を有するのもまたロストンである
このままではグラドとの戦争に殆ど参加していない筈のロストンが戦後発言力を増しかねない
グラドと戦争初期から戦い続け、多大な犠牲者を出してグラド帝都を攻略したのはフレリア軍であり、ルネスのエフラムでも手をこまねいていたロストンでも無意味に滅んだジャハナでもない!
その栄誉に与るのは我々フレリアなのだ!!
最早妄執に片足をつっこんでいそうな主張だが、彼等は本気でそう思っていたのだ
事実としてそれだけの犠牲をフレリアは払っているので、決して的外れとも言い難いのがまた始末におえない理由だろう
ルネスは『滅んだ国』であり、フレリアは健在
亡国の復興の為に力を貸す
何とまぁ素晴らしい事だろうか
これが
だが、現実においてその様な事は意味をなさない
自国の利益の為に動くのが国の上にいるものの務めであり、責務なのだ
仮に復興したルネス王国から何らかの利益をもたらされるとして、
軍事力?
騎士団が壊滅したルネスの騎士団とはどこにいる?
領土?
民心も乱れているルネス領にどれだけのうまみがあると?
では王配なら?
それであれば、短期的には利益とならないが、後々フレリアの血がルネス王家に入る事を考えるなら分からなくもない
とはいえ、ルネス側としてそれは避けたい事態であろう
大陸の聖石を奉ずる国家に上下はなく、各国が対等な立場であるからこそ大陸の平和は保たれている部分が大きい
その均衡を崩すが如き動き方は正しく大陸に住まう者達全てに対する裏切りに他ならないのだから
今回の一連の騒乱にてフレリアは最精鋭の騎士団はおろか、その予備的部隊すら失った
再建にはそれ相応の資金や手間、何よりも騎士の育成の為の時間が必要となる
更に最精鋭騎士団の騎士達には前線における小隊または中隊指揮官としての指揮官教育や、初歩的とはいえ政治についても学ばせておりフレリア軍にとっての『屋台骨』と言っても決して誇大表現ではない
全滅を免れこそしたが、それは騎士が皆殺しにされていないだけであり残った騎士達も
フレリアの為に死ぬのであれば、彼等騎士とて本懐であろうが、
しかも、それを指揮していたのが元とはいえ、グラド三騎のデュッセルというのだからもうどうしようも無い
更にデュッセルの指示も悪かったといえる
デュッセルは竜騎士の動きを見て、作戦を看破しエフラムを真っ先に退かせた
勿論指揮官であるエフラムが倒れてはマトモな戦闘にならなかっただろうから、その判断は決して間違っているとは言い切れない
しかし、そのせいでフレリア騎士達が逃れる時間を失ったのも事実
元々降将であるデュッセルに対する風当たりは非常に強いのだから
既にロストンの聖石を守る事に意識が向いているエイリークとエフラム、それにヒーニアスとターナだったが、彼女たちだけではどうにも出来ない問題が少しずつだが積み上がりつつあった
エイリークはリオンに騙され、結果としてルネスの聖石を破壊され、最後の
ロストンへの道中、フレリアの天馬騎士団を率いてグラド残党を討伐していたシレーネを仲間に加え、一路ロストンへと進路を取る
大陸に覇を唱えていたグラド帝国であったが、皇帝ウィガルドの死と帝都陥落により、グラド軍も混乱の坩堝と化した。更にジャハナ王都近郊での戦闘でグラド六将のうち『月長石のヴァルター』と『虎目石のケセルダ』が相次いで敗れ、六将のうち残るは『血碧石のアーヴ』のみとなってしまう
元より人望のかけらもないアーヴに従う者など多くなく、しかもアーヴ麾下の魔道兵団すら統制出来ていない
当然ながら、部下の統制すらとれない。いや
なので、グラド残党などと言っても最早野盗と然程に変わりなく寧ろ下手に統制されている分だけ危険度が高いという始末だったのである
そういった連中にシレーネとその配下の騎士団は遭遇し、壊滅させられたという訳だ
そんな事をしている間にもルネスにおける反王国派ともいえる勢力は急速にその勢力を拡大しつつあった
何せ殆どの集落は魔物や山賊などの脅威に怯えており、明日も知れぬ身であり身を寄せあって生きていたのだから
彼等とて王国をエイリークにエフラムを信じたい
だが、いつまで経っても届かぬ王都からの部隊や食糧など
場所によっては本来忌むべきである『口減らし』すら公然と行われていた程
そんな彼等が『自分達を放置して王族達はまだ戦争を続けている』事を知ってしまえば、詳しい事情が分からない以上、エイリーク達に良い感情を抱くことは不可能であったといえるだろう
更に反乱軍と便宜上呼称するが、反乱軍は潤沢な食糧を持っており更に幾らかの拠点において食糧の生産を始めていた
飢え死にを覚悟している集落の者にとって、食事が取れるというその一点だけでも抗いきれない利点だったといえよう
結果雪崩の如き勢いでルネス西部辺境を反乱軍は次々と平定
更に平定した集落から戦える者達を選出して傭兵達に鍛えてもらおうとしたのである
この動きに当初傭兵達は反対していたが、最早この流れは止められないと判断した彼等も反乱軍に全面的に協力する事とした
彼等とて祖国であるジャハナを結果的に滅ぼしたエイリーク達ルネス軍やフレリア軍に決して好意を持っていたわけではなかったのだから
傭兵クレムトも『事ここに至ってはどうにもならん』と制止する側の中心人物として動いていたが、ルネス王国に牙を剥く事を決意した
友人であるケセルダを殺されかけた事については
とはいえ、彼としてもルネスには色々思うところがあるので、こうなればとことんまでやってやろうという気になってしまう
状況的に考えて突然降って沸いた様な食糧と武器は間違いなくグラドとフレリアのものだろう
つまりフレリア国王ヘイデンの心算はともかくとして、フレリアの実務を取り仕切る連中はルネスの再生など望んでいない事は明白
まぁそうだろう
ジャハナ王都に転移して話を聞いてみれば、エイリーク王女の軍勢などと言っているが、その数的主力はフレリア軍だったそうだ
当然だがグラド帝都を落としたエフラム王子の軍勢も同様である事は疑いの余地もないだろう
となれば功績を奪われた上に多大な犠牲を払う事になったフレリアのルネスに対する隔意は下手すると敵意にもなり得る程高いだろう
グラドについては言うまでもない
大陸における影響力が下がったグラドからすれば
となればグラドによる軍事的または政治的介入の可能性は限りなく低いとなるだろう
フレリアについてはどこまで『賢王』ヘイデンの目を誤魔化せるか?にかかっているだろう。自身の子供達がロストンに向かっている事をどうしても一人の親として注視してしまうだろうし、そう周りの者達もそれとなく誘導する筈
こちらは士気旺盛な民兵集団と仲間であり、ルネス王国との話し合いを主張していた仲間を殺されて怒り心頭の経験豊富な傭兵達
・・・ふむ
クレムトは現状を整理して考えた
仕方ない
アイツも呼ぶか。生憎と『アイツの国』ではないが、ある意味では独立勢力と化した此処は国と言えなくもない
ならアイツの夢に少しはかかるだろうさ
クレムトは苦笑して、転移魔法で何処かへと消えた
それから暫く後、クレムトは仮面をつけた一人の人物を伴い独立軍の臨時指揮所へ足を踏み入れた
おう、どうしたよクレムト?
おやクレムト殿。どうなされた?
入室したクレムトに声をかけたのは傭兵達の取りまとめ役をしている傭兵と傭兵達を雇っていた村長である
戦闘については門外漢であると村長は自覚していたのでアドバイザーとして常に傭兵達の誰かを自分の近くに置いていた
クレムトは何処かへふらっと出かける事からそのメンバーに入れられていないが、傭兵達の中で最も魔法に詳しく、戦術ではなく戦略的に物事を考えられる人物として村長や傭兵達は頼りにしている
そんなクレムトが見慣れない妙な男を連れてきたとなれば、誰もが気にかかるのはごく自然な事と言えるだろう
あー、こいつは喉をやられててしかも顔も無茶苦茶に焼かれてるからこうやって仮面をつけてるんだ
セルデスって言うんだが
セルデス?聞かない名前だな?
そ、それはまた
何故と聞いても?
クレムトの紹介に傭兵の男は聞き覚えのない名前だと訝しみ、村長はかなりひいていた
間引きってやつよ
喉を潰して大声を出せなくした上で、全身を焼く。一応治療したものの、顔については結局再生しきれなかったって訳さ
なるほどな
腕はたつのか?
それなりにはやれるだろう
そもそも、セルデスって名前で活躍してるのだって知ってる奴は
なら不満はねぇよ。こんな状況だ
戦える奴がいる事を喜ばない者はいねえさ
そうですな
私としても反対するつもりはありませんよ
(ペコリ)
宜しくだとよ
事情が事情だから、俺が率いるが構わんな?
(良くもまぁ通したもんだぜ)
なぁに、基本的に今まで功績を上げてきたのは伊達じゃねえって事さ
セルデスもといケセルダの呆れにも似た感想にクレムトは得意げに応じる
無論セルデスが受け入れられたのはクレムトへの信用だけでは決してない
如何にクレムトが優れたサモナーであったとしても、召喚できるのは亡霊戦士一体であり、仮に複数展開するとなれば一体一体の制御が甘くなり良い的にしかならないのがオチである
現在望む望まぬに関わらず、彼等は反乱軍としてルネス王国に刃を向ける形となった
ルネス王都からの派兵こそまだであるが、何れルネス王国とて静観する訳がない
いや
反乱軍と言えば聞こえは良いが、結局のところ
この大陸における国家、即ちルネス、フレリア、ロストン、ジャハナ、グラドという主要5カ国は全て王政である。グラドは皇帝による帝政であるが、国王が皇帝に置き換わっただけであり、世襲制である事も含めてそこまでの差異はない
それ以外ではカルチノ共和国が存在するが、共和制をうたっていてもそれを主導する穏健派のクリムトや親グラド派のパブロとの対立などまだまだ課題は多く、安定した統治機構とは言い難いのが実情である
更に言うのであれば、共和制と言っても国を動かす長老達は商人であり、国を動かすに足る資金力やなどを持っているのが前提であり、当然ながら市民の意見とかけ離れた政策が推し進められる事もしばしば
というよりも、この大陸において『教育』とは王族や貴族、国に仕える騎士や文官または大きな商家の人間など特定の者しか受ける事の出来ないある意味では特権階級の証ともいえるものなのだ
書物などを漁るクレムトの様な変わり者でもなければ、そこまでの教養を身につけるなど夢のまた夢である
この反乱軍の軍事的首魁は傭兵であるが、あくまでも反乱軍の主体は傭兵ではなくルネスにて苦しみの生活に喘いだ民衆である
そもそも、傭兵達からすればルネス王国に叛逆するなどと想像の外の考え方であり、破天荒な生き方に見える傭兵達の方が実は現実的な考え方に則って生きているまであったりするのだから笑えない
とはいえ、ルネスの民の気持ちも分かる上に故郷であるジャハナを滅ぼさせた事と仲間でありルネスの子供達を気にかけていた傭兵がルネス王国の者の手にかかった事も相まって反乱軍に協力する者ばかりだったのだから何とも妙な話と言えなくもなかろう
『傭兵とはただ現実的であれ』
とは誰が言ったのか
そういう意味においてならば、ここに集う傭兵達は間違いなく傭兵失格であるだろう
が、傭兵達は底抜けに明るく振る舞っており反乱する事に対して不安のあるルネスの民にとってある意味では救いとなっているのもまた事実であったりする
とうの傭兵達は『国に挑む事の無意味さ』を理解しているからこそ、自分達の破滅を理解している
その為、最後に楽しいひとときを過ごそうとしているだけなのだが、それがまた絶望しそうな反乱軍に与した者達に仄かな希望を与えるのだから皮肉としか言いようもない
そして狂気は伝播する者であり、狂騒に支配された集団の中では『マトモな判断』の出来る者の立場こそが
膨れ上がる仲間達
それを鍛え上げる傭兵
日増しに増える『王族不要論』
既にこの集団を止める事は不可能になっていた
だが、この集団を束ねる立場にある村長やその相談役として機能している傭兵達はせめて
参謀役として期待されているクレムトも
フレリアやグラドまで敵に回してどうする?
この集団の攻撃対象はあくまでもルネス王国に与する者だけに限定すべきだろう
とアドバイスしている
ここで重要なのが、クレムトはルネス王国に与する者と表現した事である
間違ってもルネス王国に属する者とは表現していなかった
何せ戦力の払底しているルネス王国に満足な自前の戦力など存在する訳もなく、普通に考えればルネス王都にいる戦力はフレリア軍である事は明白
先の発言と矛盾するが、フレリア王国全てを敵に回す可能性のあるフレリア領へと侵攻はあり得ぬと断じ、ルネス王都やその近辺にいるフレリア軍のみを敵と定めるべきと主張したのだ
とはいえ、暴徒の集団よりはマシとはいえどいざとなれば山賊達と対峙する覚悟と力のあるグラドやジャハナの民衆と違い、ルネスの民の殆どは騎士やルネス兵士達に戦闘を任せきりの謂わば『専業的』民衆といえるだろう
そんな連中に付け焼き刃程度の作戦を教え込んでマトモな戦闘が出来ると思うのであれば、それこそ『頭がお花畑』と言われたとしても否定出来ない
如何に教え込んだところで所詮は即成教育であり、付け焼き刃にしかならぬが道理
それが一端の戦力として数えられるにはそれなりの場数を踏まねばならないのだ
戦場で動ける事
戦場で働ける事
戦場で活躍できる事
それは全て
反乱の声を上げたとしても主戦力は傭兵達
戦意が高かろうがそれだけで生き残れるほど戦場は甘くないし、良く言われている戦力の神とやらもそこまで慈悲深くもない
医学など治療魔法というふざけたものがある以上、発展の余地もなかった
メタ的な話になるが、『ただの村人』であったコーマやネイミーなどが活躍できる方が寧ろどうかしているまである
ロス?
ユアン?曲がりなりにもポカラの里でリュウジンサマを守っていたサレフに教え?を乞うていましたが?
アメリアは上の2人に比べて微妙ではあるが、この世界線ではクレムトとかいう変わり者に師事していたので、まあ
とまぁ、真に村人と呼べる人間は殆どいなかったりする
どこぞのアカネイアの後継の世界では鍋を被った村人が途轍もないポテンシャルを秘めていたりするが、それとて
なんだかんだ言って血筋や経験は大切というお話なのである
当然ながらそういう人間が反乱軍にいる可能性もあるにはあるが、そもそも武器を持たぬ民であった彼等が魔物や曲がりなりにも武装した山賊や元ルネスの民でありながらそちらに走った者に抵抗出来たとは到底思えないのもまた事実なのである
ぶっちゃけると才能があったとて生き延びている可能性は低く、生き延びていても最早心が折れている者もいるだろう事は想像出来てしまうだろう
狂騒により動いている者が多いとは言え、そうでない者もいる
傭兵達から見れば才能のありそうな若者もちらほらいたが、だからと言って戦いたくない若者を無理矢理戦場に出すのはそれこそ自分達傭兵の存在意義にも関わる問題となる
たとえ外道と言われたとしても、
とはいえ、現有戦力でルネス王都に仕掛けるのは正しく時期尚早である。そもそもルネスの混乱は国を鎮めれるかも知れない戦力を有しながらも外征に注力したエフラムとエイリーク達の行動に原因の一端がある
言うまでもなく、侵攻してきたグラドが1番悪いのだが、声を上げたとしてあの時点で何が変わったとは反乱軍の市民達も傭兵達とてかけらも思っていない
ともあれ、彼らが蜂起した理由は現在残っているルネス王族であるエフラムとエイリーク。そしてその側近達に自分達の怒りの程を思い知らせるものであり、その者達の居ないルネス王都に侵攻したとしても何の意味がない
そう言ってクレムトは逸る反乱軍の市民達を説得した
彼は最早市民達を止めるのは道理や理屈では不可能と悟っており、ならばいっその事『市民達の妄念』と共に滅びさせる方が彼等と今後のルネスの為だと割り切っていた
無論自分も含め、参加している傭兵達は逃れられないだろうし、元より逃げるつもりもない
死なば諸共
毒喰らわば皿まで
傭兵達の中でも故郷をそしてジャハナ王宮に居た|知り合い(衛士達や文官達》が亡くなった事で死に場所を求めている者がかなりの数いたというのも理由だった
仲間達が死に場所を求めるならば、自分達もまた傭兵として潔く散ろうというのが皆の共通した意見だった
事実、挙兵してから今まで傭兵達の中に離脱者はなく、寧ろジャハナ王都からジストを介してヒーニアスに雇われていた傭兵達が参加する始末だった
彼等は恐らく事態が沈静化した場合、ヨシュアが国王としてジャハナに戻って来るだろう事を理解していたのだから
経緯はどうあれ故郷を滅ぼす事に手を貸した者を国王として迎えようとは思えない
そして、その片棒を担いだ自分達も許されるとはおもっていない
いや
赦してはならぬのだ
彼等とて自身の祖国を滅ぼす手伝いをした事について良心が痛まない筈も無かった
なまじ、傭兵の国であるが故にジャハナ王都の住民が傭兵達に理解を示しているのが彼等には辛かった。まだ声高に責められた方がマシとすら言えよう
傭兵だからとて、許される事ではない筈
彼等は罪の意識から逃れる為にジャハナ王都の復興に全力を注いだ
日中は復興に協力し、夜は傭兵仲間と共に酒を文字通り浴びる様に飲む
まるでこの辛い現実から逃れるかの様に
だが、何一つ彼等の心が晴れる事はなかった
そう、無かったのだ
だから彼等は日に日に復興していくジャハナ王都と反比例するかの様に消耗し荒れていった
ある傭兵は死んだジャハナ王宮の衛士が夢に出たと言う
別に彼を責めている訳ではなかったそうだ
だが、悲しい顔をして彼をじっと見つめていたらしい
別の傭兵は自身の剣の師であるカーライルに鍛えられていた頃の夢を見る
カーライルは寡黙であり、無駄な事はおろか必要な事すら言の葉に乗せる事をしない人物であったが、それでも褒めるときはまだ若かった彼の頭に手を乗せて目を合わせた上て深く頷いた
彼はそんな不器用だが、真っ直ぐな師の事を尊敬していたのだ
勿論、夢から醒めればカーライルは故人であるからいる筈もない
だが余りにもその残酷な事実はその男の精神を打ちのめすには十分な破壊力を秘めていた訳で
その内彼は目覚める事を恐れる様になってしまったのだ
そうやって何人もの歴戦の傭兵達が徐々に、だが確実に精神を病んでいく事となる
まだ鬱屈とした感情のままに暴れるなどするならば救いもあっただろう
だが、そんな救いは一切なく毎日の様に繰り返される夢と復興していく街を見ても全く喜べぬ自身の感情に気付いた時、彼等は絶望感に打ちのめされる事となった
勿論彼等とて自分達がした事の重大さを痛感しているからこその痛みである事は分かっている
が、分かっていても耐えられる痛みと耐えられない痛みがあり、今回のそれは後者であった
故にジャハナ王宮へと攻め入った傭兵達はルネスにて民衆が蜂起した事を知り、死に場所を求めて参じたのである
結果として傭兵達の戦力は増強され、今後の事に不安を感じていたごく一部の市民達も勝ち目があると思ってしまったのだ
市民達と言っても、ルネス各地の村落の長を務めた人物が取りまとめ役的な立場であったが為に、グラド皇帝ウィガルドが即位してからの『傭兵は勝ち目がある方に参ずる』という定説を彼は知っていた
故に今後の事を不安視していた彼としても『ジャハナからの更なる傭兵の増員』という事実を目にしてしまえば自分達に勝ちの目があるのでは?と考えたとしても誰が責められようか?
勿論、ここに集った傭兵達は『死に場所』を求めて此処にいる訳だが、そんな事を彼を始めとした市民達は知る筈もない
諦観の中でも自分の役割を果たそうとする傭兵達
届かぬ
その2つが不思議な事に同居しているのが反乱軍という組織だったのだ
必死で訓練する市民達を見るクレムトとセルデスもといケセルダ
どうよ?オマエが心底発していた国の形の一つだが?
クレムトは心底どうでも良さそうにセルデスに話しかける
(なんだよ、これは)
セルデスいや、面倒なので基本的にケセルダと書く事にするが彼は心底驚いていた
オマエは言ってたよな?『国をつくる』って
こういうもんだろうよ、国をつくろうとするってのは
希望でなく、絶望の為に足を進めその先の景色は一切見えないというとんでもない話
だが、ケセルダは誰か上位者から与えられた領国による建国をよしとしていないのをクレムトは良く知っている
となれば、ケセルダの望んだ道とは叛逆であり、簒奪である
クレムトが当時マトモに取り合わなかったのは、国を創るといいながらその実それがどれだけ悍ましい事の上に成り立つのかを知ろうともしなかったからなのだ
元々ある枠組みの中に新興国家を作るというのはケセルダが思う以上の混乱を齎すモノなのだ
だからこそ、クレムトはケセルダの夢とやらを聞いてから口うるさく「なら書物などを読んで精々学べよ」と言っていた
まぁ、それは結局果たされる事はなかった訳だが
だからこそ、クレムトは嗤う
所詮俺もお前も分かってなかったんだよ。これだけの犠牲の上に立つって事がどれだけ悍ましく残酷な事なのかをな
この世の全てを呪う様に
エイリーク達は魔の樹海を越え、復活した魔王フォデスを遂に打倒した
誰もが思った
これでようやく大陸に平和が戻ってくる
と
エイリークとエフラムは亡き友人であるリオンの死を悼み、それぞれが戻るべき所へと戻っていく事となる
その筈だった
激戦を繰り広げたエイリーク達は当然疲弊しており、エイリークやエフラムに要所要所でアドバイスをくれたロストン出身のラーチェルの勧めもあり、エイリーク達は進路をロストンへと向けた
今、何と仰られた?
マンセル様、それは本当なのですか?
ロストンの指導者であるマンセルより告げられた言葉にエフラムとエイリークは絶句した
ルネス辺境地域にて反乱軍を名乗る武装勢力が蜂起
既にルネス南西部を支配下におき、ルネス王国に対して敵対的姿勢を見せている
との事だった
既にグラドの侵攻にて壊滅的被害を受けているルネス王国やジャハナ王都付近での戦闘でかなりの被害を出したフレリア軍でも対抗するのが難しい程の勢力になりつつあるというかなり危険な状況
更に今回のルネスにおける反乱軍討伐にはロストンは協力出来ないとの事
何せ反乱軍などと言ってもマンセルが聞くところによると、兵の大半はルネス領の民であり、話に聞く傭兵もいるにはいるが彼等が扇動した訳でも示唆した訳でもないとの事
いわばこれは『ルネス王国』における民衆による大規模な反乱であり、魔王や魔物という絶対的な脅威相手ならば協力できるものの、国内の問題となればロストンによる派兵は立派な『内政干渉』となってしまう
加えて民衆による反乱という事は目の前のエフラムとエイリークの明らかな失政であり、その様な事にロストンとしても協力する訳にはいかなかった
民衆相手となれば、それこそロストンの風聞にも関わる問題であり、流石に派兵するとマンセルであろうとも軽々に言い出せる話ではなかったのである
なお、一報が届いてから武官文官双方に意見を聞けば答えは『否』であった事も理由の一つとなるだろう
下の者を粗忽に扱う組織はその内腐り落ちるのは辣腕で知られているマンセルにとて理解できる話なのだから
なお、フレリアは貴族達の
事此処に至り、ヘイデンは今回のエフラムへの協力がフレリアの貴族を始めとした者達から好意的に見られていない事を今更ながらに理解する事となった
それだけ貴族達の
ルネス王都を
無論、事が事であるから本国に残った近衛隊長や文官筆頭もその報告を受けたのだが、その余りの被害の大きさに両名共愕然とした
エフラムにつけたフレリア軍主力、即ちフレリア軍が最精鋭の部隊の内八割以上が戦死。残る二割の内三割程の者が精神を病んでしまい今後の軍務に耐えられないだろう。との内容だった
つまりフレリア軍主力は出した時の一割半程度の兵しか残っていないという事である
更に凶報は続く
エイリーク王女につけたフレリア軍。此方は二戦級の予備部隊であるが騎士部隊は文字通り全滅し、弓兵隊も三割程しか残らなかったとの事
しかも、である
この壊滅的被害を受けたのはグラド帝都で皇帝ウィガルドを討ち果たしてからの被害なのであるときた
特にフレリア軍主力部隊は本来なら出る必要もなかった戦闘に駆り出された挙句、これだけの被害を受けたというのだから全くもって笑えない話である
近衛隊長や文官筆頭という立場から言わせて貰えば、ジャハナ王都近郊での戦闘にエフラムが介入したというのは無謀極まる話でしかない
元々広大なグラド帝国領を帝都目指して迅速に進軍する為、後方部隊以外は騎馬部隊のみで固めた部隊
言うまでなく、部隊の維持にも運用にも金のかかる部隊であり、間違っても『他国』の為に動かすべき部隊ではない
有事の際の『切り札』とすべき決戦戦力として位置づけられていたのがこの部隊だったのだから
それを滅んだルネスの王族であるエフラム王子に率いられる
そう聞いた時の近衛隊長や文官達は内心で国王ヘイデンや王族への恨み言をそれこそダース単位でぶつけた程であった
しかも、挙げた武功はルネス王国再建の為に全て指揮官であるエフラムが持っていくというおまけ付け
それはそれは普段の紳士としての振る舞いなど忘れたかの様な荒ぶりようだったそうな
加えて国王ヘイデンに
此処まで我等フレリアがルネス再建に助力するのです。当然何かしらの対価をあちらは示したのでしょうな?
と聞くと
うむ。国が安定した暁には必ずこの恩は返す。そうだ
とまぁ、何ともふざけた話を聞いたのだからエフラムに対する評価は下がるところを知らなかった
国内が荒廃し、民心も離れつつあるルネスが安定するのにどれだけの
再建に必要な
ではまさか民から徴収でもするのか?
その様な事をすれば反乱が起きるだろうし、そんな余裕のある民はいないだろう
ルネス王国に蓄えている財?
そんなもの真っ先に
つまり今のルネスにあるのは『グラド帝国皇帝を打ち破った』という名声に『魔王を討伐した』という名声のみ
どちらも確かに比類なき功績であるのは否定しないが、だからとて支援を無尽蔵にする事に頷けるか?と聞かれれば答えは
グラド軍とその皇帝を打ち破ったのはフレリアの支援あっての事
魔王を討伐したのはエイリークとエフラムに協力した者達の尽力あっての事
加えて言えば、そもそも魔王フォデスが復活した理由として
フレリアの聖石は初期に、ジャハナの聖石は末期に
グラドの聖石は動乱の前に、それぞれ破壊ないしその力を失っている
ではルネスの聖石は?
報告によると、ルネスの聖石は隠されていたそうでルネス王都解放後にエイリークとエフラムの手に渡ったとされている
しかしながら、ロストンにいるフレリアの密偵からの報告によると一行がロストンに着いた時にはルネスの聖石は破壊されていたとの事だ
そして、エイリーク王女はルネスの聖石破壊についてかなり自身の責任を感じているというではないか?
つまり、ルネスの聖石破壊は
幾らなんでも魔王を討伐したからといって、その封印を解く一因となった事実は余りにも、重い
更にルネス再建に必要な助力を得るのであれば、まず疑問が出てしまうだろう
何故ルネス王都を解放して速やかに国内を復興させなかったのか?というものが
勿論、大陸の事を
これがフレリアのヘイデンやロストンのマンセルの考えであれば、何一つ問題はないだろう
彼等の国は安定しているのだから
そも、エイリークとエフラムがルネスを離れたのは『王都近郊』の治安が回復した事によるもの
だが、その鎮定する主戦力はルネス以外の者達であり、エフラムとエイリークは何をさておいても優先的に『ルネス軍』を再建しなければならなかった
勿論、統治機構であるルネス王国。その再建も喫緊の課題であったが、何を置いてでも領民の命と生活を守る姿勢を打ち出す
それさえできていたならば、どんな国とて支援を惜しむ事はなかっただろう
裏を返せば、自国民の事一つ守れない、守る気のないモノに手を貸す義理も理由もない
という事でもあった
かつてフレリアにエイリークとエフラムが揃った時、とある文官はこう尋ねた
これからどうなさるおつもりかな?
と
それに対してエイリークは
聖石の危機をロストンとジャハナに伝えるべきだと思います
それには此度グラドの侵攻を受け、尚且つフレリアにも親しい私が行くのが良いと考えています
と答えた
質問した文官としても『それは道理だな』と思い、
だが
ならば俺は兵を率いてグラド帝国に攻め寄せる
と
先程エイリーク王女は『自身がロストンとジャハナに赴く』と言ったのをこの王子は聞いていなかったのだろうか?
失礼ながら、エフラム王子
それは些か以上に無謀と言わざるを得ないのではありませぬかな?
軍の総責任者であるフレリアの軍務卿がエフラムの発言を否定的に捉えた
だが、その裏には
『お前達に動かせる兵がどこにある?現実を見ろ』
というメッセージがこめられていたのである
この様な会話方式は貴族や王族、はては高い地位にある者であれば当然理解していなければならないもの
相手の面目を潰す事なく、相手に伝える手段として迂遠ではあるが、それなりに有効だったのだから
しかし、相手は若い上に祖国であるルネス王国を占領された上に自身の尊敬する父を喪い、信頼していたオルソンに裏切られたエフラム
加えてオルソンは武功に逸るエフラムを諫める事なく、良く言えば自由に。悪く言えば奔放にしたといえた
その結果
いや、言いたくはないがこのフレリアの聖石を破壊した以上、グラドの目的が各国の聖石破壊ならフレリアは攻撃される事はないだろう
となれば、敵の目は未だ聖石を保持しているジャハナやロストンに向くはずだ。勝機はある
と軍務卿の言葉の意味を全く取り違えた答えを寄越す事になる
軍務卿と文官は
(コイツはダメだな)
とその瞬間エフラムを、いやルネス王国を見放した
ヘイデンが
・・・それで構わぬのか、エフラム王子?
と
故に如何に『賢王』と呼ばれているヘイデンであっても、配下達の反対が多くてはエフラム達への支援は行えなかった
更に魔王討伐の報が齎されると、軍務卿達はルネス王国に駐留しているフレリア軍
止めとばかりにロストンに戻るであろうヒーニアスとターナ達に対しても『速やかにフレリア国内への帰還』を要請する
仮にルネス王国で現在活動している反乱軍にフレリアが手を出した場合、反乱軍の矛先がフレリアに向きかねない上に、大量の戦死者を出した事による国内の一時的混乱も想定されている
何せ『想定されていない戦場』でフレリア軍は大きな被害を受けた
しかも、『ルネス再建』の為に様々な情報を積極的に広めねばならない事情もあり、真逆の『情報統制』は愚策
フレリア軍の大規模な出兵により、各地の防衛力も減っている上に『友邦』であるルネスとの国境付近に部隊を展開する理由は魔物やグラド残党に対する措置以上の意味を持ち得なかった
とはいえ、配備されているのは二線級どころかそれ以下の練度の部隊が主である
しかも統率が取れていると言ってもそのレベルについては疑問が残る。反乱軍が反乱に至った経緯を知った場合、討伐どころか反乱軍に加担する恐れすらあるのだから、下手に接触させる事すらさせられないのが実情という有様なのだ
ジャハナは無政府状態
グラドは元より反ルネス感情が強い
となれば、エイリーク達を積極的に支援する可能性はないに等しい
孤立無援
そう評しても間違いでないのが、今のルネス王国だったのである
ラーチェルはエフラムとエイリークに手を貸したがっていたが、マンセルはそれを許さなかった
当然お付きのドズラ、レナックもだ
ミルラはエフラムへの助力を考えていたが、サレフは反対した
ミルラは
その存在が反乱を起こしたとは言え、無辜の民を害するなどあってはならないのだから
ヨシュアは何とか手伝おうとしたが、これについてマンセルは一喝した
貴殿がすべきは自身の友誼の為に剣を振るう事ではなかろう?一刻も早くジャハナへと戻り、祖国の民の為に働かねばならぬ。そうでなければ亡きイシュメア殿やカーライル殿も浮かばれまい
ぐうの音も出ない正論であり、ヨシュアは即座にジャハナへと戻る事になった
怪我を癒した身で魔王との戦いに於いても活躍したジスト傭兵団だったが、流石にルネスまで同行するかどうかについては即答を避けた
幾ら傭兵とて、民を手にかけるのは躊躇われるからだ
特にまだ若い、いや幼いと言っても良いユアンがいる状況ではロクな事にならないとジスト、マリカ、テティスの判断は一致していたのだから
旧グラド軍関係者であるデュッセル、クーガー、ノール、ナターシャそしてアメリアはルネスへの同行を申し出た
既に国へと帰られぬ身である事を皆理解しているから
結局、ルネスまで同行するのはエイリーク、エフラムの他にゼト、フランツ、ガルシア、ロス、コーマ、ネイミー、デュッセル、クーガー、ノール、ナターシャ、アメリアとなった
アスレイとルーテについては残念ながら、同行を拒否されている
アスレイは神職にある身でありながら、民と敵対する訳にはいかないという理由
ルーテは
確かに私は優秀です。しかし、この魔法は魔物や敵を倒す為にあっても市民を倒す為のものではありませんので
との事だった
ターナは最後までエイリークとエフラムを助けたいと願ったが、これに関してフレリアに属する者は誰一人としてターナを助けようとはせず、無理矢理フレリアに戻す事にした
エフラム、エイリーク
私としても色々手を尽くしたのだが、いや言い訳だな
とヒーニアスは非公式の場とはいえ、二人に頭を下げた。本来なら止めるべきギリアム達も一様に頭を下げた事から彼等も本意ではない事を二人は痛いほど感じた
ロストンを離れ、一路ルネスを目指すエイリーク達
そこには魔王フォデスを倒した時の熱はなく、足取りは重かった
ルネス王都よりフレリア軍が撤退した
王都付近に紛れ込ませた協力者からの
儂らのしている事は先祖代々の方々から恨まれようし、多くの血が流れよう
反乱軍の首魁である村長の声が響く
じゃが、儂らとて生きていたい
あの混乱の中で死んでいった妻や子供、孫達とてそうじゃったじゃろう
誰もが目を閉じて、あの地獄を思い出す
儂らは何の為に生きておる?ただ毎年税を払う為か?
違う筈じゃ。儂らとて平和に生きていたいし、いざという時守ってもらえるからこそ、皆武器を持つ事なく生きてきたのじゃ
グラド軍の者に攫われた者が言っておったそうじゃ。グラド軍はエイリーク王女の指輪を求めていた、と
エイリークがレンバール付近で奮闘していたエフラムを助けるべく、フレリアのギリアム、モルダ、ヴァネッサとゼト、フランツを伴いレンバール方面へと向かっていた時の事だった
とある暗黒魔道士がエイリークの指輪を子供達の命と引き換えに渡す様に迫った事があった
その際、まだ大陸では珍しかった魔物を利用した上に霧の中という気象条件をも用いてエイリーク達を追い詰めた
幸い、子供達の命は助けられたがその際魔道士の言った言葉を覚えている子供がいたのだ
助けられた子供の親は当初エイリーク達に感謝していたのだが、苦しくなる生活が長引くにつれ、『自分の子供がエイリーク王女の指輪のせいで殺されかけた』と見事に事実を曲解した(彼等にとっての)真実を吹聴する様になり、それが回り回って村長の耳にも届いたという訳だった
故にこういう時にそれが利用されるのはごく自然な事といえるだろう
村長の檄を受けた反乱軍はいよいよルネス王都へと進撃を始めた
地理的にもルネス国内を移動する反乱軍と、慣れない土地を移動しなければならないエイリーク達ではその進軍速度に埋め難い差が生じてしまう
ルネス王都に先着したのは反乱軍であり、エイリーク達に先駆けての着陣
とはいえ、兵糧などについてはしっかり準備していたので略奪などするつもりは毛頭なかったのだ
これについては参陣した全ての人間に周知徹底させる事とし、仮にその様な事が行われていた場合、実行者のみならず傍観している者すら即座に
これは
組織は信賞必罰によって成立させるべき
というクレムトからの提案が理由だった
勿論、村長を始めとした市民側の者達は明らかに「やり過ぎでは?」のの空気を出していたが
決起した理由をお忘れか?
『
その我々が乱暴狼藉を同じルネスの民に振うのであれば、何の為に立ち上がったのでしょうか?
ぐうの音も出ない正論だった
これだけの規模の軍団ともなれば、一度でも統制が崩れたら立て直せないでしょう
なればこそ『一罰百戒』を実行する他に方法はありますかね?
このクレムトの発言に傭兵側も賛同した為に、この厳格とも言える決まりが出来たといえよう
何せ戦場の厳しさも残酷さも愉しさも知らない連中が兵となるのだ
であればこそ、どれだけ自分達の言うことを理解して、納得するかは未知数
良く誤解されがちだが、
他の大陸は分からないが傭兵というモノはかなりの規則に拘束されているモノ
依頼を自己都合で放棄するのは原則として認められておらず、もし仮にそれをした場合は到底支払いしきれない額の
ジストを介してヒーニアス達に雇われていた傭兵がジャハナ王宮での戦闘に参加
勿論、傭兵としての信用にも関わる話なので基本として『依頼は完遂』
するもの
故に乱暴や狼藉、ましてや略奪などしてしまったが最後、その人物の(傭兵としての)人生が終わる
出来るはずもないのだ
まぁ、『自称』傭兵というならず者はそういうことを平気でするが、彼等はジャハナにおける『傭兵試験』など受けているはずもない所謂『騙り』という奴だ
ジャハナにおける主要産業である傭兵業
当然ながら他国のそれとは一線を画す程の厳格な規定が存在する
実力があり、尚且つ幾度か依頼を受けさせてその内容を精査する
更に傭兵として活動を始めてから『原則』2年以内に幾度か抜き打ちでの試験やランダムに選んでその依頼内容と活動についてこれも精査し、問題があった場合、改善の為の指導が入る
中にはこれを知っているのか『2年ほど』はマトモに活動するが、その後ロクでもない依頼の受け方をする不届き者も少なからず存在した
それ故に『原則』となっている
なお、数回は『厳重注意』となるがそれでも改善が見られない場合は『傭兵』としての登録抹消もしくは悪質だと判断された場合は
なお、処理にあたるのは傭兵としての実力も確かなベテランの傭兵達であり何れも
逃れられた傭兵は未だかつていない
なお、傭兵としては珍しい
曰く
まぁ多少なりとも経験になるだろうし、な
と軽い事を言っているが、狙われた方からすれば全く洒落にならない
しかもクレムトを狙った場合は
当然ながら、
その上、クレムトの技量もそれなりに高い為
だが、これでも勇者やソードマスターを複数人相手どるよりはマシというどうしようもない話だったらするのだから、なんとも恐ろしい話と言えよう
とまぁ、そんな厳格極まるルールの下で動く事に慣れている傭兵達は規律ある兵士である事は言うまでもないだろう
反乱軍はその時を不気味ともいえる静寂をもって待ち続ける事にした
一方、ルネス王都を預かっているカイルとフォルデであったが、フレリア軍が駐留していた頃、少しずつではあるが各地に潜伏していたルネス騎士や兵士達が二人の元へと集まっていた
騎士については二人も見知った者が多く、安堵したものである
兵士についてはルネス王国軍においても数が多かった為に全員が知り合いという訳にはいかなかったが
ある程度とはいえ、兵力を回復したルネス軍であったが、反乱を起こしたとはいえ元はこの国の民
出来る限り被害を出したくないというのがカイルとフォルデや合流した騎士達の本音だった
なお、この時点でもルネス王国にて傭兵達が民から食糧を
寧ろ合流した騎士達や兵士達はその話を本気で信じてしまい
致命的な崩壊につながる事になる
動くことの無い反乱軍に不審なものを感じながらも時は過ぎ、エイリーク達がルネス王都に到着する日がやってきた
なお、反乱軍はルネス王都の西部に布陣しており、ロストンから帰還したエイリーク達はルネス王都の東部から帰還した為に衝突は回避されていた
さしものエフラムとて、『自国の民』を問答無用で討伐しようという気はなかったのだから
そして、ルネス王都にて情報のすり合わせが行なわれ、カイルとフォルデは自分達の予想以上に危険な状況にある事を今更ながらに理解した
申し訳ありません、エフラム様。エイリーク様
自分もカイルもその様な事になっていたとは思っておらず、情けない限りです
いや、お前達はその身体だ
責められるべきは寧ろ俺だろう。すまん二人とも、苦労をかけた
頭を下げる二人にエフラムは二人に非が無い事を明言した上で労った
しかし想像以上の大軍勢です
どう収められますか?
ゼト。まず話し合いをすべきだと思います
そうだな、エイリークの言うとおりだ
話し合いの場を設けて話し合おう。犠牲などない方が良いに決まっているからな
ゼトの発言にエイリークが話し合いを提案し、エフラムもそれに同意した
では私が軍使としてあちらに参りましょう
・・・すまん。お前に任せる他ない
危険極まる軍使にゼトが立候補し、苦々しく思いながらもエフラムはそれを認めた
良くおいで下さいましたな、ゼト殿
一応この反乱軍の責任者をしておりますです
補佐役のクレムトだ。一応ジャハナの元傭兵となるな
ジャハナの!?
決死の覚悟で軍使を務めようとするゼトの覚悟とは裏腹に反乱軍はゼトを普通に迎え入れた
その場にいるのは首魁である村長と交渉の場に補佐役として指名されたクレムト
村長の自己紹介に続くクレムトのそれにゼトは驚いた
やはり傭兵達が動いていたのですか
??変な事を言うものだな
そもそも貴殿らが早々にルネスを解放していれば私達が態々動く必要もなかっただろうし、もしかしたらジャハナも滅んでいなかったかもしれんだろうに
というか、何が言いたいのだ?
ゼトの発言と明らかに好意的とは言えない視線を向けられたクレムトは不愉快そうに言い捨てたうえで疑問を口にした
あなた方傭兵が民から食糧を強奪していると
クレムトはゼトの発言を受けて
おいおい、言いがかりも甚だしいな。俺達が強奪しただと?語るに落ちるとはこの事かよ
と明らかにゼトを侮辱する様な言い方をした
あのなぁ、俺達は『傭兵』だぞ?
オタクらが何を考えているのかは知らんが『報酬』があって動くのは当たり前だろう?
それとも何か?魔物や山賊が跋扈していたあの状況下で『俺達を雇える』だけの金が用意できたとでも本気で思ってんのかよ?
だとしたら期待はずれもいいところだな。こんなのがルネス一の騎士というならこの国はいっそ滅ぶべきだろうよ
最早クレムトはゼトに対する侮蔑の態度を隠そうともしない
ゼト殿
彼等は儂らが『食糧』にて雇ったのです
クレムト殿の言うとおり、あの時の儂らに他に支払えるものはありませなんだ
しかし
ゼトとしては村長が脅されているのだと思わざるを得ない状況と判断してもおかしくはない
ああ、村長。こういう奴に何を言っても無駄だ
おおかたルネス王都奪還がされると思って逃げ出した連中あたりから言われたんだろうが
クレムトは一呼吸おいて
話し合いに向かった使者を斬り殺す真似をした恥知らず共に何を言っても無駄無駄。時間の浪費だ、帰ってもらおうか
ゼトの
使者を、殺した?
ゼトは絶句した
その様な話は先の話し合いにおいて一度も出ていないのだから
どういうことでしょうか?
ゼトの疑問にクレムトは口元を歪め
なるほどなぁ。そういう事か
どうやらゼトとやら、貴殿らは余程フレリア軍から嫌われている様だ。その様子では知らなかったのだろうがな
ま、これ以上話しても
と発言し、ゼトを陣幕から追い出した
やるじゃねぇか、フレリア軍。そうきたか
クレムトは嗤った
使者を殺した!?
待て、そんな話は聞いていない。そうだろ?カイル
ええ。そんな報告はありませんでした
王宮に戻ったゼトは直ぐに主要なメンバーを集めて話し合いの場を設けた
・・・・なるほど
恐らくはフレリア軍の独断でしょうな
フレリアの!?
デュッセルの重々しい発言にエイリークの悲鳴にも近い声があがる
ええ、恐らくはですが
元々エフラム王子に従う事自体に不満があった様でした。その上、あの戦闘で多くの犠牲者を出し、しかもそれを統率したのがグラドの降将である私ともなれば
そういう事でしたか
その上、魔王討伐という何よりも名誉になりそうな場には呼ばれずルネス王都の守備
加えて上役は怪我をした俺とカイルだと
・・不覚です
デュッセルの考えにゼトも補足を入れ、フォルデとカイルはショックを受ける
では、傭兵達による食糧強奪についても誤解なのか?
少なくとも、あちらの首魁である人物はそう言っておりました
補佐役のクレムトとやらに脅されているのだと思いましたが
ごめんなさい!今ゼトさん、クレムトって
エフラムとゼトの話を聞いていたアメリアであったが、聞き逃せない単語が出てきた為、思わず口を挟んだ
アメリアさん、その人を知っているのですか?
あ、はい
実はグラド軍に志願する前、少し色々と教えてくれた人がいて
確かそう仰ってましたね
皆が沈黙してアメリアとエイリークの話を聞く
その人がクレムトさんです
ジャハナで傭兵をしてるって。でも、どうして?
アメリアは望んでいなかった再会に動揺を隠しきれなかった
しかし、非戦を願うエイリークとエフラムの想いとは裏腹に
アイツらだけは許せない!
一気に増大したルネス軍の中にも危険分子が紛れ込んでいた事を誰一人として知らなかったのである
戦闘描写は難しい!(デデン!)
なお、その戦闘がメインのはずの作品の二次創作を書いている人間の言葉である
そう言えば聖魔に仮面キャラいなかったよな?
せや!なら仮面キャラ捏造するか
という何とも言えない理由もあり、ケセルダ君続投
なお、この物語は『誰も幸せになれない』系の話である事を此処に宣言します(今更)
というかね、聖魔の場合魔王倒したとしても普通に収まるとは思えなかった訳でして
そもそも公式では『グラドで起きた大地震』についての支援を各国が好ましく思っていない的な発言がされていた気がするのであきらかーに救えない話だと思うんですよ
まぁ『バーハラの悲劇』に比べたらまだマシかもしれませんけど(白目)
こんな作品ですが、間違いなく次回が最終話なのでもしも気が向いたらお付き合い下さると幸いです
ではご一読ありがとうございました
最近寒暖差が中々酷いので皆様ご自愛下さるようお祈りしております