残念ながら、本作品において『救いはない』んです
戦争だからね
ルネスによる反乱
そう後世で呼ばれる事となった戦いの後の事を記す
贖罪の道へ
魔王フォデスを討伐するという歴史的快挙の中心的存在であったルネス王子エフラムと王女エイリーク
反乱後、エフラムは騎士ゼトを供にルネス王国全土を見回る事とした
これは表向きは反乱軍の残党などへの対処としていたが、市民達を相手にしていた王国軍の兵士達から
今更戻って来て、王様気取りかよ!ふざけるな!!
苦しかった時逃げ回っていたお前らに従えっかよ!!
と彼等が言っていた事を聞いたからだ
エフラムは確かに王族としてはかなり問題となる行動を戦前していた
しかし、その反面王族としての扱いを何の不思議もなく享受してもいたのである
アンタらには俺達が見えてないんだ!!
そう数少ない反乱軍の生き残りの人物から言われた時、エフラムやエイリークは勿論、ゼトやフランツも返す言葉を持たなかった
苦しい生活を送っている。そう聞いても何処かでそれを甘く見ていたのではないか?
そうエフラムは改めて思い知らされた形だ
実際、国を失ったエフラムにせよエイリークやゼト達も苦しい立場でこそあったが、食べる物や住む場所に不自由したと言う事は無かった
当時、エフラムは妹エイリークの身を案じ、その為にエイリークの元へと戦力を集中させた
それにより、エフラムの元には
その為、本当の意味での『ルネスに住む庶民の生活』というモノをエフラムは理解して、いや出来なかった
それを反乱で痛感したエフラムは自身の目で確かめる事にする
どれだけ時間がかかっても
王位は妹のエイリークに譲った
彼女は反乱軍との戦闘に出ておらず、国を問わず様々な者と関わった彼女ならば戦しか出来ない己よりもマトモな国を創り上げられるだろう。そういった判断からであったが、これもこれで『無責任』という声があがった
エフラム自身も身勝手なのは承知しているし、批判されるのも覚悟している
それでも己の眼で確かめたかったのだ
半年ほど経ったある日、ロストンのラーチェルがエフラムの元を訪れた
ラーチェルはゼトと話し合いをしたらしく、ゼトは何度もラーチェルに抗議したが受け入れられず
では貴方はエイリークが苦しい思いをしているのに何もなさらないおつもりですか?
との言葉により
エフラム様。どうか御身を一番に
との言葉を残して、エイリークを支えるべくエフラムの元を離れた
元よりエフラムは一人で動くつもりだったので、気にしなかったのだが
何を言われますの?
わたくしが貴方を支えてみせますわ!
とラーチェルに言われ、困惑した
俺は父から託された筈の国を放置して戦いに明け暮れた
その挙句守るべき民を苦しめ、終いには国を更に荒廃させた男だ
言っては何だが、君の様な女性が共にいる様な男ではないと思うが
エフラムはこの半年でルネス王国という国の歪さを嫌と言うほど見てきた
あの戦いから半年以上経つ
その間にルネス王国は少しずつ復興しているとは、思う
事実として、エフラム達がルネス王都を奪還してからルネス王都に残したカイルとフォルデ。その二人に従った者達により、エフラム達がフォデスを倒して戻って来た時には王都は少しずつではあるが復興の兆しを見せていたから
しかし、そう思っていたエフラムとゼトであったが、実際に国を回ってみると廃墟となった家屋は勿論のこと、集落自体が放棄されている場所も数多く見て来た
人の住んでいない建物。しかもそれが集落という形で存在しているのを見るとエフラムとゼトはどれだけの人があの戦いにより犠牲となったのかを改めて痛感する事となった
エフラム殿。差し出がましい事を申しますが、貴殿は一度ルネスに戻られるべき
ルネス王国を取り戻してからグラドを攻めたとしても決して遅くはありませぬぞ
エフラム達がエイリークに助けられてフレリアで今後の方針を決めた話し合いの直後、フレリアの文官の一人はそう言ってきたのを今更ながらに思い出す
一度民心を失えば、取り戻すには気の長くなるような時間を必要とします。エフラム王子が若いとはいえ
いえ、若いからこそ一時の判断の誤りが命取りとなる場合もございましょう
あくまでもグラドを早期に打倒する事に拘りを見せるエフラムに彼は続けた
しかし、あの時のエフラムは尊敬する父を喪い、愛すべき国を焼かれ、信頼していた腹心が敵に内通していた事を知って心底動揺しており、それこそ正気ではなかったと言えた
『戦の狂気に呑まれる』とはよく言う表現だが、正にあの時のエフラムはグラド憎しの感情で動いていなかっただろうか?
数年経った今、それを自身に問いかけたとしても明確に否と言う事は出来ない自分を今更ながらに理解してしまった
もしも、などと言う都合の良い物は存在しない
しかし、仮にエフラムがあの時考えを改めていたのであれば、恩師であるデュッセルの命は失われていただろうが、数多くのルネスの民の命は救えたのではないか?
エフラムはその様な考えに囚われそうになり、唇をきつく噛み締めた
ふん
なるほどな。貴様は確かに
光栄に思うがいい。このグラド六将が1人『月長石のヴァルター』が敵である貴様を認めるのだからな
だが、支配する者としての貴様は残念だが評価するに値せぬ愚物そのものだ。はっきり言えば貴様らルネスの兄妹を信じて待つルネスの民がいっそ憐れに思える程にな
俺は王族でもないし、統治者でもない
が、その俺から見ても貴様らの在り方は
精々その想いと現実の落差に苦しむがいい
ジャハナ近郊での戦闘時、敵将ヴァルターはエフラムにそう言っていたのを思い出す
あの時のエフラムは何のことか理解していなかったが、今思い返してみればヴァルターは見えていたのだろう
本当に俺は情けない男だ
沢山の人間に忠告されておきながら、結局俺は
気を落とすな
なんて言うつもりはありませんわ。でもその後悔を生かすも殺すも貴方次第ではありませんか?エフラム
悩んでも、苦しくても貴方は前に進む事を選んだはず
私の知るエフラムとはそんな殿方でしてよ?
…すまんな、ラーチェル
確かに今俺に出来るのは
ラーチェルはあの魔王との戦いより前。それこそグラドで魔石が出来た頃位から祖国であるロストンを離れ、魔物の被害に遭っている民衆を救うべく積極的に魔物退治を行っている
活動的であり、割と無鉄砲に見えるラーチェルだが流石はロストンのマンセル教皇の縁者と言うべきか、彼女は周りの人間を本当に良く見ている。そうエフラムはあの大戦時に何度も思わされたものだ
実はルネス国内を見回っているエフラムとラーチェルは大戦時から『良い仲』であった
義妹となるエイリークとの関係も良好であり、ゼトを始めとしたルネス王国関係者との関係も悪くない
本人はロストンの関係者でありながら、フレリアのヒーニアス、ターナとも親しく、ジャハナの王となったヨシュアにその王妃となったナターシャとは色々な相談を受ける立場でもある
彼女一人で、大陸の主要国家の橋渡しが出来る程の人脈を大戦中に築いていたのだから驚きである
当時の対グラド、そして後に対魔王フォデスの為の軍勢となったエフラム達であったが、ラーチェル程の人脈を持つ人物となるとエフラム、エイリークのルネス兄妹にヒーニアスとターナのフレリア兄妹位であった
これは元々ルネス王都より逃れたエイリークの動きが発端となり、結成された軍勢である事、その後援者がフレリア王国であった為であり何ら不思議ではない
だが、ラーチェルは自身がロストン教皇マンセルの縁者である事を明かしたのはルネスの聖石が砕かれる少し前
それまではあくまでも『貴族の娘』という立ち位置を崩しておらずその頃から国を問わぬ交流があった
彼女の護衛を務めていたドズラにせよ、レナックにせよ、立場の違いから彼女に対する態度は違えども、最後まで彼女の護衛をやり遂げた事からも彼女自身の持つ『魅力』の様なものがあるだろう事は疑うべくもない
特にレナックは日頃愚痴をこぼしていながらも、彼女の護衛を完遂しているが
いやぁ、何で俺お嬢の護衛を投げ出さなかったんだろうなぁ
彼は後に首を傾げる事も多かったという
レナックは
戦場において、『鍵開け』や『罠解除』は必要不可欠と言っても良く、特に未踏破の遺跡などの探索において盗賊職の存在は欠かす事の出来ぬ存在である
言ってしまえば、レナックがどこかでラーチェルに見切りを付けて離れたとしても彼ならば何の問題もなく生きていく事が出来たはず
そんな彼も結局フォデス討伐までラーチェルに付き合ったのだから、それはもうレナックという人物を昔から知る者達からは
ラーチェルってのは何者だよ!?
と畏敬の念すら集めたという
そして時には強引ともいえる勢いで周囲を引っ張っていったラーチェルとエフラムではいつもエフラムが引っ張られてきた
…そうだな。すまないが付き合ってくれるか?ラーチェル
勿論!
ついてくるなと言われても聞くつもりなんてありませんでしたけど
その後、エフラムは1年以上の月日をかけてラーチェルと共にルネス王国を巡った
批判される事も多かったが、徐々にではあるが失った信用をエフラムは取り戻していく事となる
なお、その途上でエフラムとラーチェルは結ばれる事となり王都に帰還した後、女王エイリークやロストンのマンセル教皇と全力の模擬戦を強いられる事になるのだが、これはまた別の話
代償
魔王フォデスを討伐した後、故郷ジャハナへと帰国したヨシュア
だが、彼を待っていたのは国民や荒れ果てたジャハナを復興させようとジャハナがグラド軍によって破壊された報せを受けて帰国した傭兵達からの白い視線だった
それも仕方ない事だろう
グラド帝国によりジャハナが危機的状況となった訳だが、決定的な崩壊はエイリーク達がジャハナに来た事がきっかけとなったのだから
加えてジャハナ王都が被害を受けたにも関わらず、苦しむ民を放置してヨシュアはルネス解放に尽力した
そこで帰国したのであればここまで敵視されなかったが、聖石を護る為にはるばるロストンまで赴き、結果として魔王フォデスを討伐した
無論それは偉業ではある
しかしである
功罪を併せて差し引きゼロとなる事は特に為政者や支配階級において認められる事は中々ない
特にジャハナは一連の戦闘にて王国を動かすべき中枢を担う人材がかなりの数失われている
しかも、その殆どは今は亡き女王イシュメアの支持者であり、その息子であるヨシュアにも一定の理解を示す者が多数含まれていた
それらが一気に失われた事は『ヨシュアの理解者』が国内から大量に減った事を意味しており、加えて砂漠という地形的な問題もあり尚且つ食糧を輸入する取引相手であるグラドは皇帝ウィガルドが討ち取られた事により混乱。もう一つの取引相手のルネスはグラド帝国の占領軍により実質統治能力を喪失していた
つまり、ジャハナを復興させるにしても資材や食糧などについての目処が立たない状況となっていた訳である
とどめに傭兵達の多くがルネス王国の辺境へと長期に渡って出ており、国外から戻った傭兵達を上手く取りまとめられる人物や組織が無かった事も問題となっていた
最終的にはカルチノ共和国から物資を融通してもらう事となったのだが、相手は商人達が取りまとめる国家
交渉能力の低い当時のジャハナはかなりの苦戦を強いられる事となってしまう
これはカルチノの親グラド派がフレリアのヒーニアス王子を害そうとした事に対して金銭的解決を目論んだカルチノの事情によるものであったりするのだが、幸か不幸かそれをジャハナの者達が知る事は終ぞ無かった
この様な事情もあり、元々荒廃したジャハナ王都であったが、長期間にわたって食料品の不足に陥る事となり少数ながらに餓死者も出している。故にヨシュアへの風当たりはキツいなどという
ヨシュアよりも先に帰国していたジスト達もまた相当苦しい立場となっていた
ジスト達がジャハナ王宮にて衛士隊と戦闘していたのは他ならぬジスト達に協力していた傭兵達の口から発覚しており、しかも荒廃したジャハナにジスト達が貢献できた事が少ない事とジスト傭兵団が有名な事も相まって周囲からの視線は厳しいものとなってしまっている
ジストは傭兵として生活するには重すぎる怪我を負っており、一応雇用主であるヒーニアスの好意でかなりの見舞い金が出されているにはいるがかえってそれが周りからの反発を生んだすらいた
新王ヨシュアがジャハナの民達から認められるには実に10年以上の月日を必要とするのだが、結果としてジャハナでの王政は終焉を迎えた。後世の歴史家達は
ヨシュア王が国民から信を得るまでの時間は正しくジャハナにとって『不必要な時間』であったと批判される事となる
再興の為に
グラド帝国は滅び、新たにグラド共和国と名を改める事となったグラド。本来であればこのマギ=ヴァル大陸で主流となっている王政を継続すべきであったが皇帝ウィガルドは帝都における戦闘で戦死し、息子であるリオン皇子は魔王フォデスに操られた末に魔王復活の片棒を担ぎルネスのエフラム王子により倒されていた
ウィガルドの子供はリオンのみであり、文字通り『大陸の敵』となってしまったグラドの指導者として手を挙げる貴族は皆無
結果、ウィガルドを支えた官吏達が中心となって一時的に統治機構を設立。魔王フォデス討伐後にグラドで起きた大震災において国内の様々な処置に奔走する事となった
事態が収束に向かうと彼等は自身の責任を取り、1人残らず絞首台に上がる事を希望する
勿論、グラドがキチンと維持できるだけの統治能力を有したと判断してからの事ではあったが
口の悪い者達は彼等を『グラドの恥』と非難したが、彼等はグラドが共和制に移行して安定するまでの間に不平不満を持つ貴族達を徹底的に排除、ないしは無力化しており共和制の体制構築と安定に尽力した。とは後世の評価だ
なおウィガルドの覇道を支えた『グラド
は野心家として。『血碧石』は魔王の僕として後世の創作でも扱われている
『黒曜石』については唾棄すべき裏切り者として歴史においても扱われており、書物によっては元々ルネスに内通していたかの様な記述がされているものもある程であった
グラド共和国と名を改めながら震災から順調に立ち直った事により大陸の他の国家の民衆の中で王政に対する不信感が急速に高まる事となる
結果ジャハナが真っ先に王政廃止の動きを見せ、続いてルネス王国も女王エイリークが議会を認めるなどの段階的に共和制への移行を認める事となった
唯一、フレリアのみが賢王ヘイデンの跡を継いだヒーニアスの元で纏まっていたが、ヒーニアスの死後やはり共和制へと移行していく
歴史の皮肉とでも言うべきか、大陸の脅威と見られていた魔王フォデスを討伐したエフラム、エイリーク達の活躍がきっかけとなって大陸全土にあった王政は崩壊していくのであった
だが、これが果たして良かったのかについては今もって議論が尽きない話題である
『市民による政治』
それを大陸で初めて実現しようとしたルネスの反乱
100年以上が経つ今となってもその存在が歴史に埋もれる事なく語り継がれている
マギ=ヴァル大陸史
『市民と王政』より抜粋
という訳でルネス反乱後の事を少しばかり書いてみました
プレイヤーとしてはデュッセル将軍やノール嫌いではないですけど、もしグラド側の人間からしたら恨み骨髄だと思うのですよ
実はロストンとカルチノだけは体制を維持できたという何とも言えないビターエンドだったりします